『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
戻らない時
叶わない願い
水底で眠るのは
ひび割れた貝殻
#貝殻
幼い頃にあの子からもらった、砂場で拾ってきたと言うちゃちい貝殻で作ってくれたネックレス。
私の手を握ってニコリと無邪気に笑う君が、離れていても感じられるから、それがもう頭を通らなくなった今でも手放せないのだ。
貝殻
貝殻を拾った。
綺麗な透き通る海の砂浜で。
何となく来たくなって、車を走らせてやってきた海。人は少なく、とても静かで落ち着いている。時間は朝5時。
「もう少ししたら、帰ろう」
今日、用事があるわけではないけれど、居ようと思ったらずっと居続けられてしまいそうだから、取り敢えずもう少ししたら帰ろう。
サアーっサアーっと波音。
耳心地がとても良い。
「綺麗な貝殻ですね」
突然誰かから声をかけられた。
不審者だったらどうしよう…。
「あ、すみません!いきなり声をかけてしまって。俺別にあやしいもんじゃないですからっ!」
彼はそういうとサーフボードを持っている手を私側に近づけ、サーフィンしに来たんです。と言ってきた。
「サーフィン、するんですか?」
「はい。ほぼ毎日。」
「毎日ですか?凄いですね!」
「もう習慣になってしまっていて、やらないほうが気持ち悪いんです」
「あの…、少し、見学させて貰っても良いですか?」
「ええ、いいですよ!好きなだけ見てって下さい」
彼はそういうと海へと向かっていった。
私は人見知り。けれど彼とは何だが普通に喋れた。何だか不思議。
暫く彼のサーフィンを見学させて貰い、帰ろうとした時…、
「あ、あのっ!」
彼から呼び止められた。
「何ですか?」
彼は近くにあった枝を取り、砂浜に何かを書いていく。
「今、スマホもってます?」
「はい、持ってますけど…」
「これ、写真に撮っといて下さい」
私は言われたまま砂浜を写真に撮った。
よく見ると、連絡先だった。
「俺、今スマホ持ってないので、俺の連絡先です」
「何で今日初めて会った私に教えるんですか?危ないですよ、今時」
「平気です。絶対変な事はしない人だ。」
あまりにきっぱり言われたので少し驚いた私。まあ、何もしないけれど、
「俺、今ナンパしてるんですかね?勝手にそう思っただけですけど、また、お会いしたいから……、」
あまりに素直に言われたので拍子抜けしてしまった私。わかりました。連絡先保存しておきますと一言いい、私は帰宅した。
彼と会ってから数日後。朝のニュースを見ていたら彼が出てきた。今大注目のサーファーだという。
私が、彼の連絡先が記された写真を見つめながら連絡したのは昨日。
彼は嬉しそうな文面で返事をくれた。
不思議な出会いに何だが運命を感じそうな自分をいさめながら、私は朝ごはんの準備をする。
取り敢えず、彼にまた会ったら、名前を教えなければ、そう、思いながら…。
貝殻を拾ってポケットにいれて、
そこから時空が広がりますよ、
それはどこの記憶かな、
そこで何をしているのでしょうか、
たくさんの世界と繋がる窓となります。
小さなボトルに入った
ピンク色のさくら貝
子どもの指先みたいでかわいい
砂浜で見つけた
白い巻貝
耳にあてると波の音が聞こえる
テレビでみた
大きなほら貝
神秘的な音色
どれも貝殻
自然が創り出したもの
護っていかなくちゃね
私たちが………
君は、とても忙しい人だ。
今朝は日の出前に、仕事だと家を出ていった。
恐らく今夜も帰りは深夜で、食事も適当な店で軽く済ませてくるんだろう。
心配だ、君はもう若くはないから。
口で言ったところで、きっと君には届かない。
「心配し過ぎ、大丈夫、ジムで鍛えてるから」
そう言って、ちょっとだけ困ったような笑みを浮かべる君の顔が、脳裏を過ぎった。
せめて君が職場で倒れないようにと、私はキッチンに立つ。
さて何を作ろうか、君は体格のわりに食が細く、その上、食わず嫌いだ。
仕事中でも簡単につまめるものが良いだろう、君の好きな紅茶に合う焼き菓子を作ろう。
マドレーヌなんて、いいんじゃないかな。
好きだろ?、君。
テーマ「貝殻」
潮騒のうた
髪を乱す風のいたずら
波が消した落書きと
二人の足跡…
手に残る
貝殻ひとつにも
想い出は輝き
君が見つけた
薄紅色の桜貝が
あの秋の日の
優しかった時間を
連れてくる
# 貝殻 (268)
毎年、夏になると田舎の祖父母の家に泊まりに行く
今年も夏休みに入り、祖父母の家に泊まり、同い年の幼なじみと海辺を歩く
大きいショッピングモールもない退屈な田舎でも、こうしてただ歩くだけで、楽しかった
ビーチサンダルを脱ぎ、海に入る幼なじみの後ろには、もう既に落ちかけてるオレンジ色に眩しい夕日
「夕飯の時間だから、そろそろ帰ろう」
目を細めながらそう言うと、え〜、と言いながらも渋々浜辺に出て、砂で汚れた足を海水で洗いサンダルを履くのを待った
家に戻ろうとすると服を軽く引っ張られ、
「ねぇ、貝殻、拾って行こうよ!」
そして2人で、誰もいない砂浜で貝殻を探した
家に着くと、帰りが遅いと、少しだけ怒られた
急いで手を洗って、2人で見つけた綺麗なピンク色の貝殻を洗って、祖母の作ったご飯を食べた
そして、大人になった今、あの時見つけたピンク色の貝殻は、2人の手首に繋がれてる
最後に、彼から受け取った物は小さな貝殻。
彼と海に行った時偶然見つけた。
海のような色をした綺麗な貝殻。
彼は病気になって入院してるときも其れを肌見放さず持っていた。
でも、自分がそろそろ死んでしまう事をわかっていたのかはわからない。
彼が死んでしまう一週間前。
彼がその後貝殻をくれた。
「俺、どうせ先無いじゃん?だからさ、此れも一緒に燃やされる位なら君持っててよ」
「でも....死んじゃうとしてさ、一緒に燃やされた方がいいんじゃない?此れ気に入ってたじゃん」
「其れでも...其れでも、俺は此れを君に持ってて欲しいんだ....駄目、かな?」
そんな事言われたら断れないじゃん。
「いいよ」
「有難う!ニコ」
その笑顔は何処か悲しそうで、触ったら崩れてしまいそうだった。
# 114
道路に大きな貝殻が落ちていた。
円くて平たい帆立のような形の貝殻だが金属光沢を持っている。
拾い上げて日にかざすと薄い部分が七色に輝いた。
海も魚屋も近くにはない。誰かが落としていったのだろうか。
珍しいので撮影したり光を反射させて遊んでいると、道路の半分に落ちていた巨大な影がゆっくりと動き出した。空を見上げてそれが建物の影ではなかったことを知る。
巨大な蛇。ヨルムンガンドだ。
海から出現したと数日前に海外ニュースで見たけれど、来日していたとは知らなかった。
高層ビルより太さのある豊かな胴を優雅にくねらせて軌道エレベータを登っていく。その鱗は日光を反射して「貝殻」と同じ色に輝いた。
昨今の宇宙開発ブームに乗ってヨルムンガンドも宇宙進出するつもりなのか。
広くなった人間世界に合わせて世界蛇も成長するつもりなのかもしれない。
固く包み込み
守り抜いてきた
命が尽きて
役目を終え
柔らかな砂に埋もれて
眠る貝殻
崩れ落ちた
廃屋のように
気にも留められず
ただ静かに
夢を見てる
時々
綺麗だと拾われて
飾られて
日の目を見るけれど
すぐに忘れられて
時々
叫んでるんだ
あの潮の匂いのする
砂のベッドへ
僕を帰してと
「貝殻」
「貝殻」
こんなに色んな形を創るなんて
神様は暇だったのかな?
どうも違うらしい
基本工程は同じなのに
ちょっとした条件の違いで
多種多様な形になるんだって
人間もそうだよね
君の力は誰にも見えない
貝殻だとしても
君は誰にもない価値がある
人にはそれぞれ価値観があり
人にはよっては大したことがなくても
ある人が見ればかけがえのものだってあるはずだ
特定配信者は、
社会ではうまくいかなくても
配信上はとても必要なものである。
得意をいかそう、この言葉に尽きる
不得意な分野では人の能力は伸びない
やめろと言われても無意識に続けていることは
誰よりも得意となり、誰にも負けない武器となる
好きなことを見つけて伸ばし続けましょう
『貝って昔はお金として使われていたことを知ってる?』
物知りなあなたは、私にそう教えてくれた。
ちょうどこのくらいの季節に。
「へー、初めて知った。」
一つの貝殻を拾って、眺める。
「だから、“貨幣”とか、“購入”みたいにお金に関する漢字に貝が使われてる。」
あなたは、私が食いついてくれたことが嬉しかったのか、鼻高々に付け足す。
「なるほどねー、言われてみればそうだ。そこらじゅうに落ちてるのに、価値がある物だったんだね。」
「僕は、この世に価値の無いものなんて無いと思うね。」
貝を一つ拾いながら、柔らかく、でも力強い声で返事が返ってくる。
久しぶりにこの海に来て、思い出した。
何気ない、夏の終わりの出来事。
あなたとのこの“何気ない”日常が、有限で、この上なく価値のあるものだったと気づく。
手に持った貝殻。
奥に見える夕陽。
ぬるい空気に包まれる。
二度と来ない、再会。
貝殻
2枚合わさった貝殻が離れられないように
水平線のちかく、空と海が離れられないように
君と僕の手がずっと離れないように
貝殻だ
青色の、貝殻
拾いまくったな、ガキの頃
あの時は欠けてるとか色が悪いとか気にせずただひたすらに拾い集めてたっけな
いつからだろ、綺麗な貝殻しか価値がないと思い始めたのは
そう君が言った、あの青い貝殻だ
幼稚園を卒業した時に作ったタイムカプセルを開けた!
16年も前の私が、20歳の私に送った宝物が届いた。
黄色いねんどに沢山のビーズが埋め込んである瓶をこじ開けて中から出てきたのは、沢山の貝殻と小さなバラのろうそく、そして16年前の母からの手紙だった。
16年も経っていたけど、瓶の中はくたびれたろうそくのいい香りがした。
貝殻はきっと、父の実家のジャマイカに行った時に海で拾ったものだろう。
耳に当てたら波の音がした。
母からの手紙には、左利きなのに相変わらず整った母の字で想いが綴ってあった。
『きっと すてきなお嬢さんになっていることと思います』
-貝殻-
習作
あるゲームのCP小説です。
(根√のネタバレがある可能性があります)
※前作までとは別ゲームです。
⸺1700字程度
貝殻
「みてみて!これ、こう耳に当てるとザザー…ザザーって聴こえるんだよ!ほらほら持って!」
半ば強制的に持たされる。
そして、彼はにこにこと耳にあてるのを待っている。
しょうがない…
私は貝殻をあて、耳をすます。
少し、耳に蓋をされたような感覚。
周りにいる人達の声が少しだけ落ちる。
「確かに、海の音が鮮明に聴こえるような気がしますね。」
「そうでしょ、そうでしょ!1個持って帰ろうかしら」
こんなテンションが高いような様子も、彼や私の同期たちが見たらいつものようだと思うかもしれない。
でも、何か気持ちを隠しているような気がする。
「先輩」
「ん?どうかした?
……あらやだ、そんな真面目な顔して、まさか別れ話!??」
そんな一人寸劇をよそに先輩の手を引く。
「こっち来てください!」
「……?」
◇◇◇
私は人が殆どいない方へと足を運んだ。
「こんなとこまできて…もしかして…そういう、こと…!??」
先輩のそういうところが良くないと思います。
なんて頭には浮かぶものの、私も乗ってしまうんだからお互い様だ。
私は彼を、いや彼女を岩陰へ押しやり顎に手を添える。
『そうだ、って言ったらどうするんだい?』
彼女は目を反らし少し顔を赤らめる。
しかし、また目線を合わせる。
『私は受け入れるから、貴方の全てを』
「なーんてね!いや、本当にどうしたの?なんかあった?」
彼は即興劇をやめ、心配そうに尋ねる。
「先輩、何か隠してますよね」
「…うーん、流石に君にはお見通しか…」
「私が海に来たいと行ったから、ですか?
無理させてしまったならすみません。」
「いやいや!それはもう終わった事だから、なにも気にしてないし、本当に楽しみだったよ。ただ…」
先輩が言い淀む。なにか、深刻な事かもしれない。
喉に溜まったものをごくりと呑み込む。
「君があまりにも可愛くて…」
「え…」
考えもしなかったことを言われ恥ずかしさのあまりその場に座り込む。
「恥ずかしいです…」
先輩はしゃがんだ私と同じ目線に立った。
そして、私の髪を優しく掬い、続ける。
「それに、その可愛い君を見ている人は僕だけではないんだと思い知らされた」
そういうと、彼は俯いてしまいどんな表情をしているか分からなくなった。
「先輩…?」
「こんな僕だめだなぁ…君にこんな感情を向けるべきではないと、隠していた筈だったのに」
顔を上げた彼のその表情を確認すると、彼は自嘲したような乾いた笑みを浮かべていた。
「『私は受け入れるから、貴方の全てを』」
私は、彼を優しく慈しむように、抱き締めた。
「先輩がさっき言ったんですよ。あれ、演技ではありましたけど、本心でもありましたよね?」
「ははっ…君には敵わないね…」
「どんな感情でも先輩に違いありませんから。私、先輩が思っているより心広いんですよ!」
口を膨らませて、ぷいと外を向き主張する。
先輩の方を見ると、あっ…と声が漏れた。
頬に彼の手の感触。
彼の唇が触れ、小さな音がなる。
「先輩…」
「なんで君はこんなにも可愛くて、魅力的で、僕の心を動かさせるんだろう。」
顔の輪郭、首、と順になぞられくすぐったく震える。
当の彼を見れば、優しく慈しむようなそんな表情をしていた。
「好きだよ。本当にありがとう」
「私も好きです」
先輩の頬に手を添え、今度は此方から
未だなれず、徐々に唇を近づける。
軽く音がするのも、ドキドキしてしまう。
そんな私を見かねてか、先輩が「ふふっ」と笑う。
私は顔を隠す。
慣れていないのは自分だけなのかと思うと恥ずかしい。
◇◇◇
少し冷たい風が吹く。
「じゃあそろそろ戻ろうか」
「はい」
自然にお互いの手が触れ、絡み合う。
それが幸せなんだと実感する。
「先輩」
「んー?」
「『私の目はずっと同じ方を見つめています』」
「今、この瞬間も」
先輩は顔を赤らめる。
「参ったなぁ…僕のアルジャンヌが可愛すぎる…」
「私のジャックエースは先輩、1人だけです!だから心配しなくて大丈夫ですよ」
◇◇◇
おまけ
「あ…そういえば、先輩が貝殻持って帰ろうと言っていたのに忘れちゃいました…」
「あぁ、気にしないでいいのに!ありがとね。また行けばいいさ、行ってくれるかい?」
「はい!もちろんです。」
「んー!好き!」
彼に思い切り、でも苦しくない程度に抱きつかれる。
その温もりを少しでも離さないように、離れないように
私も優しく抱き締めた。
貝殻なんて、何処にも見当たらない。
だってそこには海なんて無くて、ただただ深い緑が茂るだけだから。
それは樹海なんて呼ばれ方をするけれど、本来は神聖な土地。富士の麓にあるなんて、とても美しいじゃない?
けれど樹海は、魔境と呼ばれている。
コンパスの針でさえ狂うから、方向が分からなくなるんだそうだ。
私が行ったら間違いなく遭難し、餓死か漏れなく飢えた獣に食いちぎられている。
けれど死ぬまでに、一度は行ってみたいスポットではあるんだ。
きっと奥まで行けば、自殺者の遺品等が見つかるに違いない。
私も樹海で死のうと思ったことが、何度かあって。
よくよく考えたら地元の人に迷惑だし、行く労力をかけるのが惜しいから辞めた。
きっと、それが正解。
仕方無いから、観光で行こう……。
逝くときは、ひとり静かに。誰にも迷惑かけずに、逝きたい。
それは、とても難しいけれど、切実な願い。
【39,お題:貝殻】
「あっ!凪沙、夜の海だよ!見て見て!凪沙!」
「そんなに叫ばなくても聞こえてる!見つかっちゃうから静かに!」
日が沈んだ砂浜を、パタパタと駆けぬける
暗くなったら、1人で海に行っちゃいけないって決まりがあるけど、2人だし関係ない
屁理屈を頭の中で唱えながら、優海の後を追って砂浜を走った
わざわざ大人の目を盗んで夜に来たのは訳がある
「もー、どこに落としたの?!」
「えぇと、あっち?いや、向こうかも...?」
優海が家の鍵を失くしたのだ、昼にも探したが見つからなく
反射板のキーホルダーが付いているらしいので、夜に月明かりを頼りに探そう、ということだった
大人に頼ればいいって思うかもしれない。でも、......大人は信用できないから
「あーっ!あった、凪沙!あったよ!」
「あったの?よかったじゃん!」
鍵を握った片手をブンブン振り回しながらこっちに走ってくる、子供か
「じゃあ帰ろっか...て、何それ?貝殻?」
優海のもう片方の手には、大事そうに桃色の貝殻が握られていた
「これね、桜貝って言うんだよ!」
そう言うと、優海はその二枚貝を私に差し出した。
「桜貝は幸せを呼ぶ貝なんだ、俺。凪沙に世界で一番幸せになってほしい」
私はそれを受け取り、2つに割った。えっ、と言う声が聞こえたが気にしない
2つになった桜貝の片割れを、優海に押し付ける
「半分こね、私だけ幸せになるなんて嫌だし」
優海は、軽く目を見開き、それからフッと笑った
「やっっっったぁ!凪沙からのプレゼントだぁっ!」
「うるさい!静かに!」
手を繋いで家まで帰る
2人の手には大事そうに、桜貝が握られていた。