君は、とても忙しい人だ。
今朝は日の出前に、仕事だと家を出ていった。
恐らく今夜も帰りは深夜で、食事も適当な店で軽く済ませてくるんだろう。
心配だ、君はもう若くはないから。
口で言ったところで、きっと君には届かない。
「心配し過ぎ、大丈夫、ジムで鍛えてるから」
そう言って、ちょっとだけ困ったような笑みを浮かべる君の顔が、脳裏を過ぎった。
せめて君が職場で倒れないようにと、私はキッチンに立つ。
さて何を作ろうか、君は体格のわりに食が細く、その上、食わず嫌いだ。
仕事中でも簡単につまめるものが良いだろう、君の好きな紅茶に合う焼き菓子を作ろう。
マドレーヌなんて、いいんじゃないかな。
好きだろ?、君。
テーマ「貝殻」
9/5/2023, 7:38:31 PM