『誇らしさ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君と初めて会った日のこと
君と駄弁った帰り道のこと
君と遊んだ暑い日のこと
君と秘した寒い日のこと
君と過ごした短い日々のこと
君を
裏切り者の君を親愛したこと
オーダー通りの一部始終を
それでも君は受け入れたこと
君を
君を確かに
眇められても供える花
祈り願う花の数は
‹いつまでも捨てられないもの›
この手がこの足が
この命がこの魂が
誰かを助け何かを守り
そして平和になるのなら
そう胸を張る君のこと
一等一番の笑顔のこと
自己犠牲の英雄の盲信を
私は絶対に許さない
‹誇らしさ›
呼んでいるよと招く音
誰もいないよと呟いた
助けを求めて急かす音
誰もいないよと呟いた
藻掻き沈み恨み響く音
誰もいないよと呟いた
「一人で何をしているの?」
「何でもないよ、帰ろうか」
‹夜の海›
空を見上げていた。
昼から夕へと時を移し、蒼から朱へと色を変えていく。そんな空をただ見ていた。
童の笑う声が聞こえた気がして、視線を巡らせる。
遠くに東屋が一つ。そこへ向かい子らが笑いながら、歌いながら駆けていく。東屋で待つ人影が、優しく子らを出迎えていた。
気づけば、黄昏時。
子らは帰るのだろう。出迎えた人影に手を振って、光となり空へと昇っていく。
光を追って空を見上げた。空の朱は色を暗くして、夜を招き始めている。その空を漂い、光は蛍のように淡く、星のように煌めき消えていった。
「迷い子よ」
呼ばれ視線を下せば、先ほど子らを出迎えた男の姿。
己に合わせて身を屈めた男と目が合うと、僅かにその目が見開かれる。
「満理《みつり》。黄《こう》」
男の唇から溢れた名。見ただけで分かるのかと苦笑を漏らした。
居住まいを正し、男の目を見据える。
「感謝を。貴方の存在が二人を生かしている」
民を慈しみ、民のためと命を賭して抗った二人の主。彼の存在が術師を人として生かし、弟を人として繋ぎ留めていた。それはおそらく今も、根底では変わりはしない。
目を逸らさず礼を述べれば、男の目に悲哀が浮かぶ。
「国を滅ぼした痴者には過ぎたる言葉よ。今の我には誹りこそ相応しい」
「その言葉こそ二人を誹るもの。主を今なお誇りと思う二人に対する侮辱でしかない」
男の言葉に眉根が寄る。言葉を返せばそうか、と呟き哀しげに微笑み目を伏せた。
己の成した事に悔いはなくとも、二人に対してはそうではないのだろう。
二人が男を誇りに思うように、男もまた二人を誇らしく思うが故に選択を悔いているように見え、小さく息を吐く。
「二人は貴方に似ている」
特に弟は、神として人のために主であった男の在り方を模倣している。そしてもう一人の術師もまた。
かつての日々を否定し続ける彼の炎を思う。詮無き事と知りながら口を開いた。
「だが貴方は、満理を置いて行くべきではなかった」
そこにどんな理由があろうとも。
真意を問うように、伏せられていた目が合う。それには黙したまま、答える事はせずただその目を見返した。
それでも男には十分であったのだろう。柔らかく笑んで、身を起こした。
「そうだな。満理には酷な事をした。許せとは言わぬ。だが悔いていると伝えてはくれぬか」
男の言葉に頷く。
己が伝えずとも、戻れば目を通して見られるのだろうが、それはあえて伝える事はせず。
「満理がおればと幾度となく思うた。さすれば都を落とす事もできたのであろう…されどあれが最上だと、そう思うておるよ」
東屋へと戻る男を見送り、目を閉じる。
霞む意識の端に、慈しむように頭を撫でる誰かの手を感じていた。
「おや、起きられたのですか」
赤子を抱いて濡縁に座る術師は、視線を向けず手招いた。
歩み寄りながらも、どう話すべきかを悩む。視てきたものを見るために呼び寄せているのだから、結果は変わらない。だが何も知らぬままに見せるのは気が引けた。
側に寄れば、術師の手が胸元の呪符に伸び。
「満理。二人の事は、まだ憎いか?」
手が止まる。見るものすべてを魅了するほどの妖艶な笑みを浮かべ。
刹那、首に走る痛みと共に視界が暗転する。
「満月《みつき》」
目を開き見渡せば、首を失い崩れていく体が見え嘆息する。
相変わらず、余裕のない男だ。痛む首に顔を顰めながら視線を移せば、瞳にどろりとした昏い激情を灯した術師と目が合った。
「暫くは赤子のままでいてくださいまし。次は誤って殺してしまいかねませぬ故に」
つまりはもう話すなという事か。
眼を覆う手を大人しく受け入れる。微かな手の震えに視たものを察している事を悟り、その傷つくだけの行為を哀しく思った。
「なんて度し難き男でございましょうや。今更悔いたとして、それはすべて詮無き事」
嘲るような、哀しむような声音。見終えた後も手は外されず、表情は見えない。
手を伸ばし目を覆う手を掴むも、非力な赤子では外す事も出来ず。名を呼ぶ事すらも出来はしない。
泣いているのだろうか。
おたたさま、と声なく呼んだ。
「満月」
酷く凪いだ声と共に手を外される。
泣いてはいない。少女のような美しい顔を歪め、深縹の瞳に怒りと呆れを浮かべて見下ろされる。
「私を母と呼ぶなと申しましたでしょうに。赤子とはなんと物覚えの悪い生き物か」
どうやら通じてしまったらしい。
しかしその瞳に翳りは見えず。安堵に笑みを溢せば、術師は呆れたように頬を抓った。
手加減はされているが痛む事に変わりなく、その手を外そうと身を捩る。
「満月は真に愚か者でございますね。私が気づいていないと思うておりましたか?」
ぎくり、と身を強張らせ、術師を見上げた。その顔は大分穏やかだ。
謝罪の言葉を口にしかけ、結局は口にせず。強くなる頬の痛みに顔を顰めながらも、強く睨みつけた。
お前が悪い、と声なく告げれば、術師の笑みが深くなる。
「謝罪も出来ぬとは嘆かわしい。致し方ありませぬ。母の役目として、確と躾る事にいたしましょう」
愉しげな術師から視線を逸らし、すなまかった、と一言声なく口にする。それでも頬を抓る手は外れる事はない。
仕方がないかと、幾分か力が抜けた手に手を重ね、目を閉じる。
どうかお手柔らかにと胸中で呟いた。
20240817 『誇らしさ』
「誇らしさ」
私、今日も飛び降りていないよ。
今日もこの道を嫌々歩いているよ。
どうして、生きているの?
【#76】
「誇らしさ」
私は小国の王女。そしてあなたは私を守る兵士。
今、私のお城は火の海の中。
私以外の家族はもう捕らえられてしまったみたい。
たくさんいた兄は寒い日の薪のように燃やされ、
ふたりの姉は綺麗な髪を頭ごと斬り落とされた。
両親も今ごろ───。
私の誇りは、この家に生まれたこと。
お父様は国民を守りながら、彼らがより豊かな暮らしを送れるよう日々努めていた。
お母様だって、この美しい国を慈しみ、文化を育てた。
お兄様もお姉様も、暖かくて優しい、紳士淑女の鑑のようなひとたちだった。
そんなこの家が、この国が、私は大好きだったのに。
お父様の政策が気に食わない、利権にしがみつく臣下達が反乱を起こして、そして今に至る。
私だってただ、この国を見守りたかっただけなのに。
「姫様!諦めないでください!」
「なぜここに?私を置いて逃げるよう言ったはずでしょう!」
「自分は仕事を放棄できません!」
「私はせめてひとりでも多く助かってほしくて言ったの!」
「分かっています。でも、ここで自分が姫様を守らなければ!」
「だってあなたは、この城を守れる、たった一人の姫様なのですから!……その人を守れないで、自分には何が守れるっていうんですか?!」
炎でだんだんこの部屋も暑くなってきた。
それ以外だけではない。
音が───武器の音が聞こえる。
あぁ、私もあなたも、もう助からない。
「姫様……もう、最後ですね。さっきは諦めるなと言ったのに、もう助かる手立てはなさそうです。」
「だから……自分の最後の気持ちを伝えてもいいですか?」
「……。」
「自分は、ずっと姫様のことが好きでした。身分もこれだけ違うのに、あなたに恋心を抱いてしまったんです。」
「どうせ助からないなら、最後くらい正直にならせてください。せめて最後までおそばで仕えさせてください!」
「……あぁ、やっと言えた。」
安堵した表情を見ているうちに、だんだん私の命を狙う者たちが近づいて、ついにはこの部屋の扉を蹴破った。
もう、駄目みたいね。
その時。勇敢なあなたは立ち向かった。
細い腕で重い剣を振り回して、彼らを薙ぎ倒す。
でも、でも。あなたはひどい傷を負った。
苦しそうに倒れるあなたの顔を見る。微かに口を動かしていたから、私は耳を澄ました。
「……姫様。僕は最後まであなたを守れた。僕にとって、愛する人を守り続けることは、これ以上なく、誇らしいことです。だからせめて、生きてください。私を忘れないでください。」
苦しそうな息をして、あなたは息絶えた。
誇らしさのために、私のために。
涙で滲んだあなたを見つめているうちに、ひとつの刃が私の背中を貫いた。
あなたの誇り高き死を、私は無駄にしてしまった。
私が最後に見たものは、あなたの青白い亡骸と、広がる赤だけだった。
自分が誇れるところって
大半、履歴書にかけなくって
だから自分が誇れるところって
知る人ぞ知るって感じ
へへ、いいでしょ
生きるのに必要はないがこれがないものは生きてるだけで活きてない
誇らしさ
あなたは私の自慢の人だから、いろんな人に褒められることはとても誇らしい気持ちになる
「お前が殺したんだ!勇者様を!」
魔王討伐後、勇者一行が王都へ戻って来た。
数日後。魔王討伐を祝っての祭りをする際に、肝心の勇者がおらず、残ったパーティメンバーの、魔法使い、僧侶、戦士の俺に勇者殺害の疑いがかけられた。
勇者の一番の親友だった俺が疑われることはないと思っていたが、魔法使いと僧侶は、荒くれ者の俺が気に入らないらしい。
さらに、その前夜に勇者の部屋に行き、出た俺を目撃した人もいるらしい。
そして俺は今、処刑台にいる。町民の祭り気分が台無しだ。どうやらここまでのようだ。
...俺は全てを知っている。勇者は他殺ではない。自殺だということを。
彼は間違いなく、最期まで勇者だった。魔王死後、一番近くにいた彼は特殊な瘴気に当てられ、その身を蝕まれていた。
誰も気づけなかった。隠していたから。
彼はこのままでは人ならざる者になると直感的に理解したのだろう。だから自害した。
一つ一つ絡まった糸を解くように説明すれば、納得してくれるかも知れないし、証拠も出てくるだろう。第一、今俺が死ぬことはない。
でも俺は彼の親友として、彼の遺した誇りを殺さない為に、俺も墓場まで持っていく。
「お前には誇りも何もないのか。何か言ったらどうだ。」
最期に言う言葉?そんなの決まってる。
「勇者サマは最期まで立派だったよ。俺と違ってな!」
俺のちっぽけなプライドで好き勝手させてもらうよ。ルーク。
2024/08/20 #誇らしさ
周りの誰かが焦っていると
不思議と私は冷静になる
ならば、私が焦っている振りをすれば
周りは不思議と冷静になるのだろうか
他人(ひと)が冷静に胸張って生きられるのなら
蔑まれようが私は喜んでそれを演じる
そうでありたい
私は何の努力もしてないからそれを誰かに誇ることなんてできないけれど、ただこの国の民である誇らしさを与えてくれた数々の人と自然に御礼を言いたくなることはあります。
今日で言えば、通りすがりの子ども連れの自転車の方が落としてしまったものを、降りなくても良いよー!と即座にニコニコしながら拾ってあげていた、ちょっと派手目のお姉さん、あなたのことです。
努力しなくても
元々、持ち合わせているものこそ
あなたの誇らしさ
いつかだれかに無邪気に微笑んだ
その表情こそ
あなたの持つ本来の誇らしさ
今は笑えなくても
誇らしく思うこと?素敵な友達がいることかな。可愛くて、かっこよくて、優しくて、素直で、友達想いな、大好きな友達。それもね、1人じゃないの。私の友達は、みんな素敵。
ふふ、羨ましいでしょう?
#誇らしさ
『誇らしさ』
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
過呼吸描写があります。
トラウマな方は読まず、そのままスワイプを続けるのを推奨します。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「私は、すごいんだ」
平日の朝九時。
通常なら学校へ行っている学生の私は、今日も鏡とにらめっこをしながらおまじないを唱える。
「私はすごいんだ。あんな奴らより、強くて、逞しくて」
ブサイクながらの誇らしい顔で何度も何度も、そう唱える。
「それに頭もいいんだ。アイツらより、完璧な人生を歩んでいるんだ……なんでも知っているんだ」
まるで、弱い人間が偽りの強さを被るかのように、何度も何度もそう唱える。
言の葉が尽きるまで、何度も、何度も。
そうすればきっと、いつかは強くなる。いつかは、学校へ行ける。そう、いつかは。
「……いつかは、きっと……必ず……学校へ……」
声が震える。下瞼が熱くなる。
誇らしかった顔が、ぐしゃぐしゃになっていく。
大丈夫、大丈夫。私は強い。
声で、心で、言葉で何度も詐欺をかける。
この詐欺がどこからかの指示なんて分からない。とにかく、誇らしげに、弱さを隠しながら、「私は強い」という詐欺を私のどこかにかける。
「いつか、は、学校へ、行ける、から……」
呼吸が上がっていく。
「だい、じょうぶ、だい、じょう、ぶ……」
息が上手くできない。
苦しい、思うように息が吸えない、吐けない。
息しないと、息しないと。死んじゃう。
私、強いのに、死んだらダメなのに。
苦しい、苦しいよ。
息しないと、あれ、息ってどうやるんだっけ、分かんない、えっと。
あれ、視界が暗くて、誰か。
「ーーっ!!」
あれ……お母さん……?
あ、お母さんだ……。
お母さんが見えて、私は安心したんだろう。
そのまま意識を手放した。
誇らしさなんて持てない。
夏休みなんてなければよかったの。
誇らしさ
自身の芯となる部分と自信、強い意思、プライド
これがバランスよくならないと。
自分にも誇る事があるんだろうか?
完璧主義では傲慢に見えるしなぁ。違うけど。
書き始めはイメージとしてはこんな感じ。
凛とした雰囲気を持った姿は見守る両親の誇らしさを満足させるものだった。
立ち振る舞いに穏やかで思慮深い言葉や仕草に見惚れる者も多い。
本人は必死で努力して期待に応えるべき正しいと思われる行動をしているだけだった。
そして疑問に思う。これは自分のしたい事か?
うん。これ以上浮かばない。結末がいつも締まりが悪いので、浮かんだら続きを書こうかな。
兄がいた。
首を吊って死んだ。
兄はいつも言っていた。
逃げるが勝ちだと。
一体兄はどこまで逃げたというのだろうか。
愛犬は 尻をおとして 誇らしげ
お座りじゃなく 伏せと言ったの!
巣立鳥 跡を濁さず 飛び出して
動画で姿 みる日がきたか
【誇らしさ】
テーマ : 誇らしさ
『自分のことを愛せない人は他人も愛せない』
そうでも、なかった
別に自分のこと大嫌いでも好きな人は愛せた
自分のこと大嫌いな僕を好きな人は愛してくれた
結局、被害者ぶった綺麗事なんて
ただの文字にすぎなかった
※イジメ表現あり注意
『カチカチ中学』
僕は童話が大好きだ。小さい子にもわかりやすくて、面白くて、教訓がある。童話は素晴らしい。誇りに思う。中学生になってもその気持ちは変わらない。童話を読んで育ったから、よくいい子とか、優しいとか褒めてもらえる。照れるけど凄く嬉しい。
今日はテストが返された。自慢するつもりじゃないけど、全教科満点の学年1位だった。地道に努力することが大切って「3匹のこぶた」で学んだからね。クラスメイトの1人に、「お前って天才だよな〜。その上、運動もできて優しくて真面目で… 勝てるわけがない。」と言われた。「褒めてくれてありがとう。でも君にも良いところがたくさんあるよ。友達思いで、みんなを笑わせられるところとか!」僕はそう言った。「ホントいい性格だわ〜。勉強は置いといて、その性格はどう生まれたん?」僕はその質問に食い気味で答えた。「僕、童話が好きなんだ!そこから学んだ!3匹のこぶたとか、金の斧銀の斧とか!」大好きなものを誰かに言える!この幸せに浮かれていた。…直後重い石をぶつけられて沈んだ。「えっ!お前絵本好きなの?w子供じゃんwダサw女子全員蛙化だろうねww」…え? え?理解ができない。でも、酷いことを言われたことはわかった。目頭がかぁっと熱くなる。「…冗談冗談っ」微笑んで返した。自分が誇りに思っているもの、尊敬しているもの、大好きなもの、それを悪く言われたら、自分自身が否定されたみたい。許せない。カチカチ山の教訓は「悪い事をした人には天罰が下る」僕は悪い狸に天罰を下さなきゃ!
カチカチ山のうさぎは、狸が背負っていた薪に火をつけて火傷をさせた。火傷は可哀想だな。そういえば彼はポエムを書いていた気がする。写真でも撮ってネットに投稿してみるか。次の日、僕は彼が帰った後、ポエムを盗った。置いていっていることを確認したからね。写真を撮り、机に戻す。新しいアカウントを作って、「同級生のポエム痛すぎワロタw 勝山中学2年3組19番狸森蝦夷太」と写真を添付して投稿。拡散されたタイミングでアカウントを消す。翌日、クラスで、いや学校はその話題で持ちきりだった。こんなのまだ序の口だ。 うさぎは火傷をした狸に唐辛子を混ぜた薬を塗らせて追い打ちをかけた。火傷はしてないし、痛いのは可哀想。彼の給食に下剤を入れた。午後の授業からいなくなってた。 最後うさぎは、狸を泥の舟に乗せて溺れ殺した。殺すのはダメだ。彼は自分の力や容姿に少し溺れている。そこをもう少し沈めてやろう。僕は彼を褒め称えた。ありとあらゆるところを。気分が良くなっているところで言う。「動画とか投稿してみたら?かっこいいし、面白いから絶対人気出るって!」彼は本気にして動画を投稿した。「イケメン中学生」として。もちろんアンチや批判コメでいっぱいだ。僕がポエムの人だとコメントしたら、トレンドに入っちゃった。一週間後、彼は自〇した。僕はいま心の中で誇らしさが溢れている。自分の好きなもので悪いやつに天罰を下すことができた。彼は自分が好き。僕の好きなものを悪く言ったんだから僕も言っていいよね。僕が彼を〇したわけじゃないし。やっぱり童話は凄い。一生僕の誇りだ。
◎誇らしさ
今年10歳になる少女は今、
誇らしさに満ち満ちていた。
なぜなら少女の額に、
同年代の子たちの中では一番早くに
小さな”つの”が浮き出てきたからだ。
産まれた時からある額のこぶが尖り始めて
”つの”になると、先端に色がつく。
その色によって使える妖術の種類が決まるため、里の皆で宴を催してその瞬間を待つのだ。
綺麗な服に身を包み、宴の準備の様子を友達と一緒に見てまわる。
蛙の姿焼き、干しザクロ、
イワシの味噌漬け、ぶどうの酒煮……など
御馳走が作られていく。
鬼灯の中に火の玉を入れて、辺りが明るく照らされていく。
太鼓の音が鳴ったら始まりの合図だ。
───がさり
藪の中で何かが動いた。
「誰かいるの?」
声をかけると少女より少し体の大きな男の子が顔を出した。
何故かその顔に違和感を感じてじっと凝視する。
「あっ!」
男の子には”つの”が無かった。
こぶも無かった。
男の子は少し恥ずかしそうに、持っていた包みを差し出した。
「これ、山の向こうの、俺の村からの
お祝い、です。おめでとうございます」
頑張って練習してきたであろう敬語はたどたどしくて、少し面白かった。
「ありがとう」
少女が包みを受け取ると男の子は踵を返そうとした。
「あ、まって!」
少女は着物の裾を掴んで男の子を引き留めた。
「折角来てくれたんだから、一緒に御馳走を食べようよ」
「で、でも、鬼人様。それは、ぶ、ぶ……無礼ではないのか……ですか?」
「誘いを断るほうが無礼じゃない?」
そう言って笑うと男の子もつられて笑顔になった。
少女は裾から手を離し、今度は男の子の手をしっかり握る。
「人間の子どもでも食べれるものを用意してもらうわ。だって、今日は私が主役だもの!」
「……へへっ、やったあ……です」
頬を鬼灯に赤く照らされながら
二人は歩きだした。
数年後、
桜舞う頃に
鬼人の里から山向こうの村まで
賑やかな花嫁行列ができるのは
また別のお話。