「お前が殺したんだ!勇者様を!」
魔王討伐後、勇者一行が王都へ戻って来た。
数日後。魔王討伐を祝っての祭りをする際に、肝心の勇者がおらず、残ったパーティメンバーの、魔法使い、僧侶、戦士の俺に勇者殺害の疑いがかけられた。
勇者の一番の親友だった俺が疑われることはないと思っていたが、魔法使いと僧侶は、荒くれ者の俺が気に入らないらしい。
さらに、その前夜に勇者の部屋に行き、出た俺を目撃した人もいるらしい。
そして俺は今、処刑台にいる。町民の祭り気分が台無しだ。どうやらここまでのようだ。
...俺は全てを知っている。勇者は他殺ではない。自殺だということを。
彼は間違いなく、最期まで勇者だった。魔王死後、一番近くにいた彼は特殊な瘴気に当てられ、その身を蝕まれていた。
誰も気づけなかった。隠していたから。
彼はこのままでは人ならざる者になると直感的に理解したのだろう。だから自害した。
一つ一つ絡まった糸を解くように説明すれば、納得してくれるかも知れないし、証拠も出てくるだろう。第一、今俺が死ぬことはない。
でも俺は彼の親友として、彼の遺した誇りを殺さない為に、俺も墓場まで持っていく。
「お前には誇りも何もないのか。何か言ったらどうだ。」
最期に言う言葉?そんなの決まってる。
「勇者サマは最期まで立派だったよ。俺と違ってな!」
俺のちっぽけなプライドで好き勝手させてもらうよ。ルーク。
2024/08/20 #誇らしさ
8/17/2024, 9:51:40 AM