小説家になりたい一般人。

Open App










『誇らしさ』

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
過呼吸描写があります。
トラウマな方は読まず、そのままスワイプを続けるのを推奨します。
 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※










「私は、すごいんだ」

平日の朝九時。
通常なら学校へ行っている学生の私は、今日も鏡とにらめっこをしながらおまじないを唱える。

「私はすごいんだ。あんな奴らより、強くて、逞しくて」

ブサイクながらの誇らしい顔で何度も何度も、そう唱える。

「それに頭もいいんだ。アイツらより、完璧な人生を歩んでいるんだ……なんでも知っているんだ」

まるで、弱い人間が偽りの強さを被るかのように、何度も何度もそう唱える。
言の葉が尽きるまで、何度も、何度も。
そうすればきっと、いつかは強くなる。いつかは、学校へ行ける。そう、いつかは。
「……いつかは、きっと……必ず……学校へ……」

声が震える。下瞼が熱くなる。
誇らしかった顔が、ぐしゃぐしゃになっていく。


大丈夫、大丈夫。私は強い。


声で、心で、言葉で何度も詐欺をかける。
この詐欺がどこからかの指示なんて分からない。とにかく、誇らしげに、弱さを隠しながら、「私は強い」という詐欺を私のどこかにかける。


「いつか、は、学校へ、行ける、から……」
呼吸が上がっていく。
「だい、じょうぶ、だい、じょう、ぶ……」

息が上手くできない。
苦しい、思うように息が吸えない、吐けない。
息しないと、息しないと。死んじゃう。
私、強いのに、死んだらダメなのに。
苦しい、苦しいよ。
息しないと、あれ、息ってどうやるんだっけ、分かんない、えっと。

あれ、視界が暗くて、誰か。

「ーーっ!!」

あれ……お母さん……?
あ、お母さんだ……。


お母さんが見えて、私は安心したんだろう。
そのまま意識を手放した。

8/17/2024, 9:18:43 AM