『言葉はいらない、ただ・・・』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
乙女の笑顔を俺だけに見せて欲しい。
言葉はいらない、ただ・・・
私といる時は私のことだけを考えて欲しい、ただそれだけの話。
私と貴方の関係は辞書で引いたら出てくる言葉に当てはまりますか。
貴方には他に夢中なってる誰かがいる事は知っているし、もうそんな事はいいのです。
身体を預ける度に「好き」と言うのは何故。
誰かに向けているはずの言葉を私に重ねているのでしょう。
言葉じゃなくて、ただ貴方の愛が知りたいだけ。
あのめちゃくちゃに歪んだ君の言語で喋ってほしい。
まだギターやってるよね?
#言葉はいらない、ただ・・・
朝6時15分。
3年2組の教室で、2人の女子生徒が向かい合っていた。朝練がある部活のために校門は6時に開けられる。とはいえ、それは運動部のための措置であって、教室に生徒がいるのは異常だった。
「そういえば、よく鍵を開けてもらえたね」
机に軽く腰をかけたボブヘアの生徒、ナナミが言った。
「……開けてもらってなんかない。私が昨日、閉めずに帰っただけ」
壁に寄りかかっている、耳の高さで長髪を一つに縛った生徒、ヒナノが目線を蛍光灯に向けて言った。電気はつけていない。教室は薄暗いが、教師や他の生徒にバレたら面倒だから明かりはつけない。
そもそも明かりなど、2人には必要なかった。
「優等生なのにそんなことしていいんだ」
「優等生だからできるの」
「それもそうだね。アタシがやったら……というか、アタシが鍵閉め当番になったら絶対担任のやつ、確認しにくる」
「ふっ、容易に想像がつくわ」
「鼻で笑いやがって」
ナナミが笑う。白い小さな歯が赤い唇から覗く。自然の血色ではない、ルージュを塗った唇。目元も、肌も、髪の色だっていじっていない、生まれ持った造形のままだが、唇だけ、違う。上下の唇は人工の赤で彩られていた。
ヒナノも同じだった。一文字に結ばれた唇は真っ赤だ。ネクタイを緩めているナナミとは違い校則通りに真面目に着こなした制服、キーホルダー一つ付いてない鞄、磨かれたローファー。優等生然とした佇まいの中で唇だけが異質だった。
2人の唇を染めた有名ブランドのリキッドルージュは、窓枠に転がっている。明るいところで見れば目を引く熟れたリンゴのような赤色は、薄暗い教室では赤黒く毒々しい色に見えた。まるで血液、さらにいえば静脈血のような赤黒さだ。
この赤い液体を持ってきたのはヒナノだ。午前6時10分、ナナミが教室に着いた時にはもうヒナノは来ていて、ナナミを手招きして机に座らせると、無言でペンケースからルージュを取り出し、ナナミの唇にチップを乗せた。ナナミも無言でされるがままに、薄く唇を開いてチップが唇から離れるのを待った。
ナナミにルージュを塗り終わると、ヒナノはナナミにルージュを持たせた。やることは一つしかない。ナナミもヒナノの唇にチップを這わせて、紫がかった桜色を赤く染めた。そして、そのまま互いの唇が乾くまで、ナナミが言葉を発するまで沈黙していた。
「で、何がしたいの?優等生さん。こんな時間に約束だなんて、アタシの生活態度わかってるくせに」
「……正直、来てくれないだろうって、思ってた」
「なんでよ。ヒナノのためなら起きますよ。夜更かしだって飽きるし」
「夜遊びじゃなくて?」
「んー、まぁ、火遊びはしてないかな」
「どうだか」
「本当だよ。飽きたもん」
うーん、とナナミは伸びをしながら言う。どんな見た目をしていようと、IQがどのようであろうと、人間は所詮人間だ。誰と遊んだところで同じことの繰り返しにしかならない。何もかもマンネリで、もうお腹いっぱいだ。依存する人もいるというが、ナナミは何にも依存できない。快楽にさえも。
「飽きた、か。私も飽きた」
「何に?」
「人生に」
「優等生さんは毎日堅苦しくて人生の楽しみを知らないように見えるけど」
「そうでもないよ。だって、なんでも想像がつく。やってみたところで、全てがデジャヴュ。結果も感想もわかりきってる。新鮮さも驚きも何もない」
ヒナノは目を閉じる。何もかもが想像の範囲内の世界で、これ以上、何をどう楽しめば良いのだろう。今までやったことのない物事に挑戦したところで、湧き上がってくる感情はお馴染みのもの。知識や体験としては新しいものを獲得するかもしれないが、情緒には何一つ追加要素がない。退屈な喜怒哀楽のサイクルに辟易する。
「あー、ね。頭が良すぎるのも大変」
「ね、わかってくれると思った」
「あはは、まーね。何年隣にいると思うの?」
「なら、もうわかるでしょう?」
ずっと天井を見ていたヒナノの目線がナナミに向く。左側だけ耳が出るように髪を留める、金色のアメピンが昇ってきた朝日を受けて眩く光る。
「あと10分でタイムリミット」
「ふーん?」
「言葉はいらない。ただ・・・」
ナナミは頷いた。正直、ナナミもヒナノと同じ気持ちだった。だから今朝、行事の時ですらしない早起きをして学校に——自身の教室から2つ離れたヒナノのクラスの教室に——来たのだ。
ヒナノは窓を開けた。窓の先のテニスコートにはまだ誰も来ていない。窓の真下、豆柘植の植栽に向かってルージュを投げ捨てる。こんもりと丸い低木の中に、細長い直方体のルージュが消えた。
ナナミはヒナノのネクタイに手を掛けるとグッと引っ張る。ヒナノもナナミの緩んだネクタイを握って勢いよく引っ張った。互いの首がギリギリと締まる。歪む視界の中、ナナミは自身のネクタイをヒナノの手から奪うと、手に持っていたヒナノのネクタイと結んだ。首元で結ばれる2本のネクタイ。身体が密着する。互いの肩に顎が乗る。
せーのっ
声にならない、唇だけの掛け声。首に触れる頬の動きでタイミングを測る。
同時に窓から身を乗り出した。日光が眩しい。2人は目を閉じて、重力に引っ張られるまま落ちていった。
言葉はいらないよね、だって
もうこの気持ちは君に届かないもの
言葉はいらない、ただ・・・
そばにいて
見守ってほしいです
😍😍😍
「言葉はいらない、ただ…」
優先道路を走っていて横から出てきた車にぶつけられて車が横転した事故の翌日
運転手のおばあさんが謝罪にきた
事故当日も横転した車から全員救出された後に現れ、何故か救助を手伝ってくれたおじいさんに謝罪していた
警察、救急に電話をしていた素振りもなかった
翌日、水色の洋服を着て謝罪に来たおばあさんは、フルーツと賞味期限本日のケーキを10個、お詫びとして渡してくださった。流石に頂けませんと言えば、「貰って頂かないと困ります」と仰った。それはそうよね、と思い渋々受け取った
聞けば足もお悪く、お年も70を超えていらっしゃるようだ。そういえば昨日助けて頂いたおじいさんも杖を突かれていたからきっと貴女と同じように足がお悪かったのよね。おじいさんは杖を放り出して子どもを受け取ってくれました。感謝してもしきれません
その後、ケーキを10個頂いた我が家は貴女の予想通り大変困りましたが、友人にも急遽お手伝い頂きなんとか捨てずに済みました。良い友人を持てて私は幸せ者ですね
その後おばあさんがどうされてるのかは知りませんが、もうお会いする事はないでしょう
それでは最後に独り言、
絶対悪いの足だけじゃない
黙って免許返納しろ
私が通っていた高校では、3学期の終わりにクラスの紹介とか担任の似顔絵とか何かひと言とかが書かれた薄い小冊子が作られていたんです。文集というよりはもっと気楽で自由な感じ。で、3年生の時、クラス全員が一行ずつ何か書いていこうとなって、私が書いたのが、
「言葉はいらない、ただまっすぐ逢いたいだけ」
だったんですよ。
何年もの時を経て、まさかここで欠片と再会するなんて。
やぁやぁ、懐かしいね。
これは当時お付き合いしていた人に向けて書かれたものなのですが、その人はちょっと無口でね、言葉足らずな日々でしたわ。
家も遠かったし、すれ違ってばかりで、不器用で。
言葉よりも一緒にいたかったんだろうね。
言葉なんていらなかった、ふたりでいれば世界も溶け合うような気がしていたあの頃。
無敵ですね。
まぁでも、そうは言っても言葉は大事です。
「言わなくても分かるでしょ」
なんてそう簡単には通用しません。
今だったら、
「いや、言わなわからんし」
「私、エスパータイプちゃうねん」
って、言ってると思います。
_______________
余談ですが、このアプリでお気に入りにしている人が何人がいますが、新しいお題が出てその人の新しい文章を読んでハートを送る時、そこに言葉は入らないけど心の中では
「あぁぁぁー、今日も好きやぁぁぁー!」
と、叫びながら送ってます。
言葉はいらない、ただ...私のハートは言葉よりも多分うるさい。
(伝わるといいな)
言葉はいらない、ただ・・・
なんとなく疲れた時とか、辛いなーって時には、同棲してる恋人に抱きつきにいく。
お互いそれが分かってるから、疲れた顔で、のそのそと側に行けば、ほら、こうやって手を広げて待ってくれる
それに甘えて倒れこむと、優しく抱きしめてくれる。
どうしたの〜なんて言って、優しく頭を撫でてくれる。
言葉なんかいらない。勿論、優しい声で投げかけられる、温もりいっぱいな君の言葉も大好きだけど。
ただ、君を抱きしめて感じる、耳にかかる暖かい息と、トントンと背中を叩く音の心地良さと、私の針をじんわりと溶かす、36度5分の君の体温さえあれば、もう、何もいらない。
言葉はいらない、ただ・・・
側にいて欲しい
そう思った
思えば不幸な事故だった
自分がこうして今生きているのも
奇跡みたいなものだろう
駆けつけた君は
僕を見て
言葉を失って
どんな言葉をかければいいか
どんな言葉をかけたって
意味がないこと
気付いてしまったのだろう
そんな君だから
僕は君が好きなんだ
だから今はただ
側にいて欲しい
筆をとって、色をのせる
小さなカンヴァスの上
落とした色のなんと艶やかなこと
描いた風景は貴方と見たかった場所
彩った思いは貴方に伝えたかった事
絵の中にいる貴方は私の憧れ
焦がれ続けて、届かなかった
この世に二つとない一条の光だったのです
言葉はいらない。ただ・・・
無理に会話を続けようとせずにただ隣を歩いてくれる。
気まずくはない。1人じゃなくても居心地が良い。
そんな距離感の人が自分の周りに、友達に、
1人でもいてくれるのが、これ以上ない幸運なのかな。
#15 【言葉はいらない、ただ……】
好きだった。
大好きだった。
ふたりが初めてあの駅で、ちゃんと対面した時、雑踏の中からお互いを見つけた瞬間
まるでドラマみたいにふたりは早足で駆け寄って、身体をぴったりくっつけてただただ無言で抱き合ったね。
二人はやがて一緒に暮らし始めた。
ガランとした部屋に少しずつ家財を揃えていく、おままごとみたいな生活。
あの頃のあなたには、恋以外に人生やアイデンティティをかけるくらいに大切なものがあって
当時生まれて初めて本当の自由を手に入れた私も、恋以外にも夢中になれるものと出逢った。
もちろん二人は、好きあっていたから
だから少しくらい、生活がすれ違ってしまって
夜寝る頃にしか会えなくなって、朝出かける頃にはまだ眠っている顔しか見られなくなっても
それでもずっと、仲良しで、恋人同士でいられると思ってたの。
でも違ったよね。
あなたも私も、一緒の家に暮らしてるのにだんだん心が離れてしまって、だんだん寂しさが積もってしまって、本当に大切なものを見失って
お互いの間違いに気がついた時には、もうどうにも後戻り出来なくなってた。
互いの罪を告白した夜
こんなに大好きなのに、どうして別れなければいけないんだろうって
あなたの背中の体温を感じながら、涙が止まらなかった。
別々の家に帰るようになっても、あなたに新しい恋が訪れても、いつもいつも雑踏にあなたを探していたし、いつもいつもあなたの幸せを願っていた。
今でも、私はあなたを大好きだよ。
もしもまたどこかで逢えるような奇跡があったら
もうなににも遠慮しないで、無言であなたに近寄っていって、同じ目線で同じ匂いのするあなたを抱き締めたい。
もう二度と離さないように。
※ふたりの恋が終わってから、彼は少しずつおかしくなっていって
数年後には周囲の人にものすごい迷惑をかけて、ふっつりと消息が途絶えてしまった。
身体の弱い人だったし、健康を気にかけるようなタイプじゃなかったから、多分もう、生きては逢えないんだろうなって思っている。
今も、時々夢に出てきてくれるけど
あの頃のまま、同じ目線のまま、同じ体臭のままなんだよ。
あなたはきっと、私ほどはわたしのことを想っていないだろうけれど。
大好きだった。
本当に大好きだった。
言葉はいらない..ただ...
君の華やかな死に際に泥を塗るだけ
新学期まであと数日、私は夏休みの宿題の処理に追われていた。
親や友人から散々言われ、計画を建てて臨んだ今年の夏休み。
けれど、事は計画通りに進むことは無く、夏休み終盤にも関わらず宿題の半分も終わってなかった。
原因は分かっている。
宿題の進捗が思わしくないのに、友人の沙都子の家に毎日遊びに行ったこと。
でも後悔はしてない。
だって楽しかったから。
美味しいお菓子が出てくるんだよね。
『宿題は後でも出来る』、『今はお菓子を堪能しよう』を合言葉に、未来の自分を信じて遊びに行った。
けれど今朝、ついに宿題が終わってないことが親にばれた。
今日ばかりは家から出さないと部屋に軟禁状態だ。
過去の私よ、なんで頑張ってくれなかったのか。
私は過去の自分を恨みながら、窮地を脱するため宿題と向き合っていた。
けれど向き合うだけ……
まったく分からん。
何が分からないのかも分からん。
何も手を付けられないまま時が流れる。
こうなったら、最後の手段。
漫画でも読むか
どうせできないなら、楽しく一日を過ごそう。
それに漫画を読んでいるうちに、何か思いつくかもしれない。
そう思って近くにある漫画を取ろうとしたとき、お母さんが私を呼ぶ声がした。
「百合子、お友達よ」
誰かと遊ぶ約束してたっけ?
私は不思議に思いながらも、部屋を出る。
けれどこの地獄のような時間から逃げられるなら誰でもいい。
私は仮初の自由を感じながら玄関に向かうと、そこにはお母さんと楽しそうに談笑する沙都子の姿があった。
なんで沙都子がここに?
私が沙都子の突然の来訪に驚いていると、沙都子は悪そうな笑みを浮かべた。
「無様ね、百合子。
だから夏休みの宿題は早く終わらせさいと言ったでしょう」
私の顔を見るなり、嫌味を言う沙都子。
わざわざ嫌味を言いに来たのだろうか?
遊びに行けないことをメッセージで送った時は、『了解』の二文字しか返さなかったくせに。
「そうなのよ、百合子ったらあれだけ言ったのに宿題しなくってねえ。
ほんと、誰に似たのかしら」
沙都子の言葉に、お母さんが便乗する。
そこは『そんなことないわ』じゃないの!?
確かに宿題してないけど。
言い返せないけど!
「何しに来たの?」
私はお母さんを無視して沙都子に尋ねる。
都合の悪い事は触れないのが吉だ。
「あら、遊びに来たのだけどダメだったかしら?
いつもは百合子の方から来るけど、たまには私が来てもいいと思ったの」
沙都子は意外そうな顔で私を見る。
ちょっととぼけた顔なのに腹が立つ。
「そうじゃなくて、私連絡もらってないよ。
そしたら抜け出して――違う、遊べないから断ったのにさ。
分かったら帰って」
一瞬お母さんから殺気が飛んできたので言い直す。
沙都子と宿題、どっちの相手が楽かと言えば宿題の方だ。
今の私に余裕はないから早く帰って欲しい。
だが私の祈りは効き遂げられず、沙都子は『よく分からない』といった顔で私を見ていた。
まさか粘る気か!?
「あら、遊びに行くのに連絡が必要なのかしら?」
「そうだよ!
こっちにも事情ってものが――」
「でもあなたが遊びに来るときに、連絡を貰った事は無いわよ。
まあ、来ない日のほうが少ないから、突然のアナタの来訪でも困ったことは無いけどね」
「うぐ」
まさかのブーメラン!?
沙都子め……
やはり遊びに来たんじゃなくて、私で遊びに来たんだな。
「ああ、百合子が毎日遊びに行ってるの沙都子ちゃんの所だったのね。
迷惑かけているでしょう?」
「もう慣れました」
ウチの母が、沙都子をちゃん付けで呼ぶほど仲良くなってる……
なんか嫌だなあ……
これが嫉妬か。
ていうか!
「私が迷惑をかけてる前提で話進めないで!」
「「かけているでしょ?」」
二人のハモリが私の自尊心を傷つける。
ここには私の味方はいないようだ。
「とーにーかーくー。
私は宿題するんだからね。
遊べないから!
ほら帰って!」
「なら仕方がないわね。
遊ぶのは中止ね」
なんか思ったより、あっさり引き下がったな……
これでようやく宿題に集中出来る。
そう思っていると、沙都子は靴を脱いで家に上がって来た。
「沙都子ちゃん、申し訳ないけどお願いするわね」
「ご安心ください
必ず成し遂げますわ」
「頼もしいわ。
後でお菓子を持っていくわね」
「ありが――」
「待ったーーー!」
私は二人の間に割って入る。
「ねえ、何の話?
沙都子も帰るんだよね?」
「帰らないわよ」
「待って、意味が分からない」
「どうせ、宿題進んでないんでしょ?
私が見てあげるわ」
「え?」
シュクダイヲミテアゲル。
何を言っているんだ、沙都子は……
「あら不満なの?
嫌なのが顔に出ているわ」
「いやだよ、沙都子はスパルタだもん……」
「我がまま言っては駄目よ」
「嫌だ!
私は一人で宿題する!
誰にも邪魔はさせない!」
「待ちなさい百合子」
お母さんが私の肩を力強く掴む。
このまま有耶無耶にして部屋に戻ろうと思ったのに、肩を掴まれたら逃げられない。
「沙都子ちゃんと一緒に宿題しなさい。
でないと……」
「でないと?」
「あなたの漫画コレクション、全部捨てるわ」
「そんな……」
「嫌なら、沙都子ちゃんと宿題しなさい。
いいわね」
「…………はい」
お母さんが肩から手を離すと、代わりに腕をとる人間がいた
沙都子だった。
「さあ、バリバリ行くわよ!
宿題が待ってるわ」
「あの、お手柔らかに……」
「弱音は許さないんだから」
漫画を読むつもりだったのに、なんでこんなことに……
こうして私は沙都子の突然の来訪によって、楽しい予定がキャンセルされるのであった……
今夜はずっと隣にいてよ。
そう言った君の顔を見て、考えることもなく頷いていた。ひとりにしたくなかった。君が消えてしまいそうだった。君の願いだったけれど、むしろ君に願いたかった。
ひとりにしないで。
影を落とした顔に気付かないふりをして、君の手を握る。空いた手では先程まで過去の映画を放送していたテレビを消す。音の消えた室内は、今の自分たちには少し明るすぎる。照明のリモコンに持ち替えて部屋を橙に灯す。
手を繋いでしまうと、どうにも離すのが惜しまれる。手に動きがあったことで離すと思われたのかもしれない。絡め合った指に、手に力が込められる。離す気がないことを示すようにこちらからも力を込めれば、甲を撫でられた。
照明を落としきった部屋。ひとりで寝るには十分だが、ふたりでは少々狭く感じる大きさのベッド。そこでふたり静かに横になる。手は離してしまったが、その代わり抱き合っている。今夜は少し君が小さく見える。
今夜は月が出ていなかったような気がする。街灯が消えてしまえば、途端に真っ暗になってしまうような夜。人の声も聞こえてこない、虫も鳴いていない静かな夜。
どうして君は寂しさを覚えたの?
その問いに答えはないが、そもそも問いかけてもいない。お互いに口を開かずに寄り添う。今の君に必要なのは、そばにいることだけ。自分が隣にいることを感じてもらえればいい。今夜ばかりは言葉ですらも無粋だ。心を繋ぐために言葉を紡ぐのはまた明日からにしよう。今はただ、君のそばにいたい。
言葉はいらない、ただ…
行動で示せ
今すぐに取り掛かれ
最後まで諦めずに考え抜け
腹を括れば、どんな形であれ結果が出る
掃除機をかける音で目が覚めた。
今日の太陽は随分と機嫌が良いようだ。
彼が家事をする横でスマホをいじるのも気が引けるので布団でも干してみる。
掃除を終えた彼がコーヒーをいれてくれる。いつもはブラックを飲む彼がミルクと砂糖を入れる。私も真似して今日は甘めのコーヒーだ。
甘さとあたたかさがスっと心に溶けてゆく。
何とはなしにテレビをつけてみた。ぼんやりとワイドショーを眺める。内容はあまり頭に入ってこない。
気づけば彼は隣で本を読んでいた。
私はお昼ごはんの支度にとりかかるとしよう。
今日のお昼ごはんは昨日の残りの唐揚げがメインだ。お米を炊いて、冷蔵庫に少しだけ残ったお野菜たちは適当に切ってスープにする。
もうすぐ炊ける白米の香りとコンソメの香りで部屋が満たされたころ、彼がキッチンを覗きに来た。
唐揚げをレンジにかけてくれる。これだけの量では不満なのか、冷凍庫からストックのたこ焼きを取り出してチンしている。
ご飯とスープも盛り付けて、さぁ、お昼ごはんの時間だ。
今日も少しだけ微笑みながら彼がご飯を食べてくれる。私はそれだけで幸せだ。
食器を片付けたらいよいよ本格的なダラダラタイムのはじまり。彼は本の続きを読み、私はずっと見たかった韓ドラを一気見する。
彼は別にあたたかい言葉をくれるわけじゃないし、気の利いたこと一つ言ってくれた記憶はない。
でも彼の隣はいつもあたたかい。私の居場所はここなのだと言ってくれてるような気がする。
静かな日曜はゆっくりと過ぎていく。
言葉はいらない、ただ…
言葉はいらない、ただ空を見上げるだけでいい。
花火は夏の風物詩だ。夜空に輝く花火は言葉では言い表せない程力強く美しい。
毎日書くのは大変だ…
2024.8.29 6
言葉はいらない、ただ・・・
私は耳が聞こえない
けど、毎日お構いなしに話しかけてくる人がいる
それが悪口だってのも、わかってる
それくらい16年も生きてれば見分けつく
でも、泣けない
助けて欲しいのに
言葉じゃ難しいことばっかり
私は言葉以外で伝えて欲しいものがたくさんある
誰か…、お願い