『街の明かり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私を連れ出そうとしてるの
突然嫌気が差した
暗い部屋といい感じの照明の灯りが
私を甘やかしていたことに気付いてからは
すべてが青く見える。
何もかも孤独。
突然切ない曲の英単語を呟きたくなる感覚、誰も分かり得ない私の暗闇。
いつだって閉ざしていた、かーてんの外には
私の咳ごみも聞こえない、何もかも見えてない。
悲しい、哀しい体の穴すべてを閉ざして。
四角に閉じこもる。
コミカルなリズムは今いらないの、ただ暗い言葉が欲しい。
街の明かりは私の暗い部屋を照らす。
私の他には誰もいない部屋に
誰かがノックしてくる。
入り込んだ光、その名を知っている。
歪む足場、誰も入れたことないの、
それならと光は、 私 を連れ出した。
私は連れ出されたの。信用もしていない街灯のしたへ。
数秒前の部屋の景色は鮮明で、自分のことが完全に分からなくなって。
頭を掻き混ぜられた私の目の前には確かな明かり。
硬い地面に足は行き場をなくす。
でもなんだか自然と愛せてきちゃう、
明かりの数を数えようとしても数えられないその膨大さに
わくわくしたの。
部屋の外へ
部屋の外へ
部屋の外へ部屋の外へ。
【街の明かり】
【街の明かり】
昔、若い頃まさしく青春時代のころ、東京に住む叔母の家を拠点にして都会の雰囲気を楽しんでいた頃があった。せいぜい5日くらいなので本当にお遊び感覚だった。
夕方、叔母の家に戻る電車の中でいつも感じていたのは都会の夕暮れの寂しさである。ネオンやビルの灯りなど、これでもかというくらい街の明かりは煌々と光っているのに寂しく感じていた。
私が一度も離れることなく住んでいたのは本当の田舎、夜は漆黒の闇のような田舎だったのに寂しさを感じたことがなかった。
楽しい時を過ごし叔母の家に帰る1日の疲れだったのか、もっと遊びたいのに帰らなければならない寂しさだったのか。
時は流れて…
ひとりしかいない子どもが進学のため住んだこともない、行ったこともない初めての土地で一人暮らしをすることになり、準備のため一緒にその土地へ行った。用意もすんで子どもひとりを残し帰路の新幹線に乗った。そのとき車窓から見る街の明かりにどうしようもない寂しさを感じ、景色を見る振りをしながらあふれでる涙を拭き続けていた。都会よりもくらい街の明かりなのに、どうしようもなく寂しかった。
そのとき感じた寂しさは若いとき都会の夕暮れの街の明かりに感じた寂しさと同じことに気づいた。
街の明かりに感じる寂しさは結局、自分自身の心の寂しさだったのだ。街の明かりに私の心が映っていただけなのだろう。
今はひとりで遠くに行くことも少なくなったが新幹線でローカル線に乗り換えるとき、時折寂しさを感じる。その寂しさは街の明かりに感じる寂しさではなく、お出かけして楽しかった非日常の世界から、姑や夫がいるところへ帰る寂しさだと思っている。
鮮やかな光が私を照らす
鮮やかな光が大勢の人たちを照らす
冷たいかぜにふかれながら
大勢の喧騒のなか
誰もが一人
静かに歩く
綺麗な夜景はそこで頑張っている人たちの力でできている。
/「街の明かり」
風が、煙草の煙を攫っていく。それをぼんやりと眺めながら、煙草を燻らせる。
眼下に拡がる見慣れた景色は、今日も漆黒から抗おうと煌めきを放つ。
無意識的な恐怖から逃れる為に、必然的に人間達は行なっているのだろうな。
どれだけ文明が発達しても所詮、人間は脆い。心も、身体も。
この明かりの数だけ人間がいて、そして私を楽しませてくれるということ。
ただそれだけ、私には関係がない。
「さて、今宵も私と遊んでいただきましょう」
今日の獲物に期待が膨らむのを抑えきれずに、笑みが溢れる。
「みーつけた」
『街の明かり』
街の明かり
街の明かりっていいよね。
ちゃんと、みんながこの世界が平和に過ごせてるって思える。
夜の中、星のように光る街の明かり。
点滅している光
赤色の光
たくさんの光がある
夜の闇に消えずに
ふとした瞬間、どこかに行ってしまいたくなる
私のことを誰も知らない場所に行きたい
街の華やかな明かりが受け入れられなくて逃げ出したくなる
こんな私はおかしいですか?
こんな私を変だと思いますか?
そんな疑問を一人抱えてまた、不適合な華やかな街に駆け出していく
今日のテーマ
《街の明かり》
眼下に広がる景色に感嘆の息を吐く。
展望デッキから見下ろす街並みは、まるでジオラマのよう。
ほんの数十分前までは、わたしもあの景色を形作るピースの1つだったのだと思うと、何だか不思議に思えてくる。
すぐ近くではモニタータイプの望遠鏡を見ている子供が母親らしき女性に自分の家を確認している様子が窺えた。
微笑ましいなと思っていたら、一緒に来た友人も同じ感想を抱いたようで、微かにくすりと笑っていた。
「やっぱりこういうトコはカップルか観光客か親子連れが多いね」
「まあ、実際、観光スポットだしね」
友だち同士で来ているような子達もいないわけではないけど、その数は多いとは言えない。
だからといってわたし達が周囲から浮いていて注目を集めているかといえばそんなこともない。
観光客にしろ、カップルにしろ、景色を楽しむのに夢中で他人のことを気にしたりなどしないからだ。
わたし達もまた、すぐに意識を目の前の景色へと戻すと、あちこち指差しながら楽しむことにした。
あっちが新宿のビル群だから、右の方にあるあの建物はサンシャインだろう、とか。
向こうに見えるのは富士山じゃないか、いや別の山だろう、とか。
家の方角があっちだから、学校はあの辺りかな、とか。
夏至からまだそう日も経っていないこともあって陽は長い。
それでもこの時間、空の色は夕方のオレンジから夜の紺碧へとじわじわ色を変えてきていた。
展望デッキに上がってきたばかりの頃はまだ西の空は明るかったのに、今は残照を残すばかり。
東側はもうすっかり夜の景色になっている。
オフィスビルやマンション群、道を照らす街灯、商店や家々――それらが寄り集まってこの景色を作り出している。
この明かりのひとつひとつが人が生活している証なのだ。
自分達の住み慣れた街が、こうして俯瞰で見るとこんなにも綺麗な夜景の一部になっているということに感慨を覚えずにいられない。
「あたし達も普段はこの景色の中にいるんだよね」
「そうだね」
「なんか、不思議な感じする」
さっきわたしが感じたのと同じことを彼女が言う。
友だち同士、似たようなことを考えるものらしい。いや、友だちゆえに、なのだろうか。
いつも一緒にいるから考え方も似てくるのかもしれないと思い直す。
そうしてわたし達は時間をかけてゆっくりフロアを一周し、思う存分夜景を堪能した。
併設されたカフェに入ってホッと一息つく。
時間帯もあってか、お客さんはカップル率が高めだった。
「今日は誘ってくれてありがとう。こういう機会でもなかったらきっと来なかったから貴重な体験できたよ」
「こっちこそ、つきあってくれてありがとね。チケット無駄にしなくて済んで良かった」
「彼氏さんには悪いけど、あたしには役得だったかな。久しぶりに遊べたし、おまけにタダであんたと展望台デートできたし」
満更冗談でもなさそうにそんなことを言って彼女が笑う。
たしかにいつでも行かれる程度の距離に住んでいると、却って足を運ぶ機会はあまりないかもしれない。
そして、そういえばこうして2人で遊ぶのも久しぶりだったなと気がついた。
本当は、今日はここへは彼と来るはずだったのだ。
つきあい始めて1年の記念に、一緒に行こうねって約束していたから。
でも、残念ながら彼は急な研修が入ったとかで来られなくなってしまった。
展望台のチケットは事前に買っていたので、駄目元で友人を誘って今に至るという次第である。
仕事なのだから仕方ないと思う反面、1人で記念日を過ごすのは淋しくて、だからこうしてつきあってもらえて本当に良かった。
おかげで変に凹んだりすることもなく楽しく過ごすことができた。
「ディナーの予約とかはしてないの?」
「さすがにそっちはキャンセルしたよ」
「そっか。ってことは、この後も予定はないんだよね? それなら夕飯がてらどっか飲みにでも行く?」
「行く行く! こないだネットで美味しそうなお店見つけたんだ」
たぶん彼女はこのままわたしが1人で家に帰ったら寂しくなったり凹んだりすることを見越して誘ってくれているのだろう。
その優しい気遣いに胸が温かくなる。
だからわたしも彼女にこれ以上気を使わせないよう、殊更に前のめりで頷いてみせた。
本音を言えば、やっぱりこの景色は彼と見たかった。
あの街の明かりの中に、いつか2人で暮らす部屋の明かりを加えられたら――そんな話ができたら良かったとも思う。
でも、それはまた次の機会に持ち越しだ。
今は大好きな親友と共に、楽しい時間を満喫しよう。
最後に互いのスマホで夜景を背景に記念撮影をして、わたし達は展望デッキを後にした。
後日、その写真を見て大いに悔しがった彼が、リベンジとばかりにわたしの誕生日に改めて連れて行ってくれたのはまた別のお話。
歩道橋の上で夜風に吹かれていた。上るテールランプと、下るヘッドライトとの間に立てば、眠らない信号機の青色に、押し流されたい孤独感。
上京した日は、何もかもがうまくいく気がしていた。花が咲くどころか、芽生えもない日々に、いつしか朝日とともに、自分自身への不信がめざめていった。
今日も今日とて、路上の歌にギターの音色、就活スーツに自己啓発本。野望を、野心を、星の光ごと食らって爛々と光る街。生ぬるい夏の風に滴った汗は、アスファルトに飲み干されて、跡形もなく消えた。
もっとよこせ、と街がざわめく。裸一貫、失うものなど何もなかったはずのこの身から、時間のジャックを、若さのクイーンを、情熱のキングを、切り捨て、切り捨て、皿の上に投げ出せば、ナイフとフォークで味わい奪う、上品ぶった奇術師の唇。
なあ、明日はうまくいくかもしれないだろう。
舌なめずりの甘い響きに、手に入らない夢がくゆる。食い散らかされた残骸が、夢の続きを求めてすがっていた。探る眼が、握りしめて差し出せない手札をチラリと見遣るが、躊躇う姿に興味を失い、ため息をこぼした。引き止めなければ。脂に濡れた、酷薄そうな唇を拭うこの奇術師が、席を立つ前に―――
食後のワインを飲まないか。
絞り出す声で呼び止める。ふと、驚きを瞬かせた唇が、にまりと微笑んだ。差し出されたグラスの縁に、ひしゃげたハートのエースを投げ入れる。ぐるり、くらりと奇術師が回す、グラスの艶を両目で追えば、カードがワインに変わりゆく。ゆらゆらと、眼前に立ち昇る夢、夢、夢。
燃える火ならばこの身をもろとも、けれど街の明かりはガラスの中に。誘われるままに恋い焦がれ、手を伸ばすたびに阻まれて、弄ばれる羽虫が嘆く。こんなはずじゃあなかった、と。
【街の明かり】
2023/07/09 【街の明かり】
目が覚める。
少し体が痛い。そうか、そういえば勉強したまま寝ちゃったんだっけ。
机にへばりついていた重い頭を持ち上げて伸びをする。
自分の体がものすごい悲鳴を上げている。
外を見ると、完全に締め切ったカーテンの隙間から日が差し込んできていた。時計の短針がちょうど「6」を指している。
まだ余裕はあるけど、今日は少し早めに出るか。
俺は椅子から立ち上がり、服を着替える。
筆箱とノートぐらいしか入っていない小さなリュックを背負いまんしょんを出る。
エントランスを抜けると、街には学校帰りの学生達で溢れかえっていた。
「お、こんばんは。今日は早いんですね。」
校門前には事務員のおじいちゃん教師が掃除をしながら立っていた。
「こんばんは。今日は早く起きたんで。」
軽い返事だけして廊下を歩き進める。
定時制のこの学校に通い始めて2年。これだけ通えば、昼夜逆転の生活も慣れたものだ。
外を見ればいつも夜景が広がっている。
やはり東京の明かりは街灯って感じだよな。どこもかしこも明るく見える。
俺は、目線を窓の外の景色から空へと移す。
-やっぱり、星は見えないな。
東京に来てからずっとそんなことを考える。
昔住んでいた俺の故郷。あそこは街灯どころかコンビニのように光が漏れ出すような建物もほとんどなく、夜は文字通りの暗闇。
-などではない。
どれだけ街が暗くても、必ずそこには星があった。眩しいくらいの強い光だった。
東京と、俺の故郷。
今いる東京は、あの何もかも吸い込んでしまうかのような広い空は、そこにはなかった。
61街の灯り
「知ってるか小林、夜景って、誰かの残業でできてるらしいぞ」
「つまり金曜の夜にエラー対応をやってる僕たちも今、この街の夜景の一部なんですかね…」
「そういうことになる。ちなみにこのビルはベイエリアからよく見える」
「そういえば僕、彼女と別れてからあっちの方なんて一回も行ってない!ははは!」
「俺もだ!ははは!」
「なのに、我々の残業をダシにデートスポットで盛り上がってるカップルがいるということになりますね。許せませんね先輩」
「まったくだな後輩。さらに言うなら、今日の真夜中、ベイエリアにクルーズ船が集まってライトアップされる。それを目当てに、いつもよりさらにカップルが集まっている」
「わああああ!!!!そんな特別な夜景の一部になんか、絶対なりたくない!死んでも真夜中までに帰りましょうね先輩!!」
「そうだな!!死ぬ気でやるぞ!!!」
「街の明かり」
高層ビルの展望フロア
高台にある展望台
山あいの見晴らしの良いところ
山の頂からの眺望
宇宙ステーションから見える光の集まり
どこから見る街の明かりがお好きですか?
【街の明かり】
屋上から眺める景色は緑が多く、疲れた眼や頭をスッキリさせてくれて丁度良い。
普段から俺は休憩する時、喫煙室や休憩室よりも屋上に行く事が多かった。
今日は残業で、とうに日が落ちているが気分転換に屋上に向かう。
社内の自販機で買った缶コーヒーを飲み、街の明かりを見下ろしながら一服していると、背後から部下の声が聞こえた。
「課長。お疲れ様です」
「おう、お疲れ」
まだまだ新人に毛が生えた程度と思っていた部下だが、来期には主任に昇格する事が内定していると人事部に居る俺の同期が教えてくれた。彼女の同期の中では一番手だそうだ。
「私も此処に居て構いませんか?」
「ああ」
「有難うございます」
同意はしたものの、仕事抜きでするような話題などこちらは持ち合わせていない。ただ沈黙が流れるだけだと思うのだが、彼女はさして気にする風でもなく俺の左隣に来ると、早速着ていたジャケットの内ポケットをごそごそ探って小さな箱を取り出した。
「これ、良かったらどうぞ」
差し出された手の上には、昔懐かしいキャラメルの包みが一粒。
「キャラメルか」
「はい。課長、今日ずいぶんお疲れの様子でしたので。あ、ひょっとして甘い物苦手でした?」
「いや、貰おう。―――済まんな」
受け取って口に放り込むと、ふんわりとした柔らかい甘さが広がる。何だかホッとして、怠い気分も和らいだ。
「何かホッとするんですよね。劇的に疲労回復する訳じゃないですけど、もうちょっと頑張れそうって位の元気は出ると言うか……」
「確かに」
「だからよく持ち歩いてるんです」
そう言って彼女が伸びをしながら俺に笑い掛けたその時―――
グキッ!!
鈍い音と共に、彼女が一瞬俺の視界から消えた。
「痛ッ! たたた……!! ―――聞こえちゃいましたよね、今の」
「……バッチリな」
「はは……今日ずっとデスクワークだったもので、凝り固まっちゃってて」
うずくまって腰を擦っている彼女は、バツが悪そうに力なく笑う。
「ったく、情けねぇな」
まだ若ェのに、と呆れつつも自然と笑みが浮かぶ。
その時不思議とまた、怠さが少し軽減されるような気がした。
「……ホレ」
「はい?」
差し延べた手に彼女は眼を見張り、間抜けた声を上げる。
「立てるか」
「あ……有難うございます」
「立てるなら、ぎっくり腰じゃないようだな」
「はい。大丈夫そうです」
ポカンとしたまま俺の手に掴まり立ち上がると、彼女はじっと俺を見ていた。
(う……まさか手貸した位でセクハラとか言うつもりじゃあるまい?)
内心の動揺を抑え、さり気なく尋ねる。
「何だ、さっきから」
「いえ! 何でもないです。ただ、優しくされるのって慣れてないので」
この程度で「優しく」されたと言われるとは想像していなかった。
そう言うと、慌てて彼女が弁明する。
「だって皆、私の事普段女扱いしないじゃないですか。あ、勿論それで良いんですけど、その……」
弁明する内に、彼女の顔がみるみる紅潮していく。
いつも朗らかだが、基本的に冷静且つサバサバしている彼女のそんな動揺する姿など、滅多に見られるものじゃない。
「なっ、何がおかしいんですか!?」
我知らず笑っていた様で、彼女はムッとした表情で俺を睨む。
顔を真っ赤にして睨んで来たところで、怖くも何ともないのだが。
「ん? ……何、珍しいモン見たと思ってな」
(―――可愛い、と思ったのは黙っとくか。それこそセクハラだ)
最近は特に繁忙期で社内が若干ピリついていて、人前でこんな風に笑う事などほとんどなかった気がする。
だが、今こうして休憩時間を彼女と過ごすこの空気は、少し気恥ずかしいが……悪くない。
そう思ってしまった自分に戸惑い、俺は街の明かりを眺める振りで表情を隠した。
太陽が沈む夕暮れ時。
街中に、ぽつり、ぽつり、と明かりが灯っていく。
家族が揃った光景に。
大切な人を迎えたのだろう誰かの日常に。
今日も僕は胸をほっこりさせて帰路に着く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
そうして僕も。
そのほっこりする街の明かりの一部となった。
【街の明かり】
ガス灯が道を照らす。闇夜にはとても心強いだろう。
然し、わたしの様な生業の人間には少々仕事がやり辛くなる。
科学の発展は、喜ばしい事だ。人々の暮らしは、便利になり、豊かになる。
やはり、時代が進むに連れて、わたしのような常夜で生きる者の肩身は狭く変るようだ。
良いことでは、或るが何だか複雑な気持ちに成った。
難しいことは、止めよう。今日は、折角の久々の休みだし。
帰ったら、煙管か水煙草を吸って…ウイスキー…いや、ウォッカに檸檬を入れて、窓を開けて街の灯りを眺めよう。
此れが休日のわたしの至福の時だ。
町とは違って、ここの夜は明るい。
カーテンを開けると 街灯やネオン 居酒屋の灯がカラフルに入り込んでくる
そして君の髪を照らすのだ 蛍光色に照らされた君の髪は ゼリービーンズみたいだった
いまいることがあしたはないかもしれないから、いや、くろくなっちゃうから、すこしでものこそう、わたしの意志で
街の灯りが僕のことを照らす
雨が降る
照らさないでよ
そんなに見つめないでよ
そんなことしたら
…泣いているのがバレちゃうじゃないか、
「ねえ、やっぱ僕も連れてって?泣」
街の灯り。
その日は十年に一度の大型台風が来ていた。父と喧嘩した衝動で外に飛び出した私は少しだけ後悔していた。
街のほうへ歩いていくと、今から帰るのであろう人々が駅から出てくる。中には傘を持っておらず、雨宿りしている人もいた。財布もスマホも持ってこなかった私はできることが何もなくて、ただ強風と大雨の中を立ち尽くしていた。メガネが仕事をしなくなって、外してみると街の明かりが綺麗なイルミネーションに見える。
すると突然、全身に降りかかっていた雨が止まった。空を見上げると大きな真っ黒の傘が目に映った。隣に立った人をみると、ストライプ柄のスーツを着た女の人がいた。
「子どもがこんな日になにしてるの」
警察官かもしれないと思って逃げようとしたが、すぐに腕を掴まれた。
「きみ、訳ありだろう。良かったら私の家に来ない?」
知らない人に付いて行ってはいけないことぐらいわかってはいたが、家に帰りたくない気持ちの方が多かった。こくりと頷いて、女性と同じ傘の下を歩いた。
暗いほうへ暗いほうへと歩いていくと廃墟のような立派な豪邸が現れた。門扉から玄関までの道は綺麗にされているのに対して、そこ以外は雑草でいっぱいだ。中に入ってみるが、暗くてなにも見えなかった。それなのに、女性は暗い中迷うことなく歩いていく。見失わないように付いていくと、一つの部屋に通された。
「ここで待っていて」
案内されるまま、ソファに座った。薄暗い明かりから見えたのは壁一面に並ぶ人間と同じ大きさぐらいの人形だった。背中側の壁にも並んでいて、冷たいものが背中を伝う。しばらくして、女性がトレイに紅茶を乗せて部屋に入ってきた。
「あの、この人形たちはなんなんですか」
「あら、怖いの? これからあなたの友達になるのよ」
やっぱり帰ろう。そう思ってドアまで走ったが、開けられない。固く、閉ざされている。
「大丈夫よ。痛くしないから」
背中から回された手からは、人肌のような温かさは感じられなかった。振り返ろうとすると、女性の手、というよりは異様に長く伸びた爪が私の目を撫でてぷつりと何かを刺した。叫び声を上げるまもなく、同じ爪で鼓膜も破られた。
お父さん、家を飛び出してしまってごめんなさい。もう、帰れないと思うから。