『街の明かり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夜の帳が下りれども、街は眠る事なく。
「明るいね。ちょっと前は暗かったのに」
昼と然程変わらぬ明るさを保つ街並みを横目に、猫は足取り軽く歩いていく。
目的は特になく。気の向くままに進路を変える。
「おい待て、猫。勝手にふらふらするんじゃねぇ。それと百年以上前は、ちょっととは言わん」
「確かに。人間にしてみれば、五十年すら長いな」
猫を追う影は二つ。深い蒼の瞳を持つ、人の形をとった蜘蛛が二人。
早足で近寄り、猫の首を掴んで持ち上げた。
「こら、猫を子猫のように持ち上げるな」
「うっせぇ。だったらおとなしくしてろ。着いてく方の身にもなれよ」
蜘蛛の言葉に、猫は不機嫌そうに激しく尾を揺らす。
小さく唸りを上げれば、もう一人の蜘蛛は手慣れた様子で猫を抱き上げ喉を擽る。途端に唸りは機嫌良く喉を鳴らす音に変わり、尾もゆらゆらと穏やかに揺れ出した。
「今日は何処に行くの?」
喉を擽る指はそのままに、蜘蛛が問う。それに猫は知らぬと答え。けれどもその眼は街の端、明かりの潰えた空き家に向いている。
「あのボロ屋か?物好きだな」
「行こうか」
猫を抱いたまま、蜘蛛は歩く。
道行く人々は未だ眠らず。けれど誰一人として、猫と蜘蛛らを気にかける者はない。
端に近づくにつれ騒めきは遠く、明かりは乏しく。
その家の周囲だけ、時が止まったかのように暗く静けさを保っていた。
「瑪瑙、猫を下ろせ。銅藍と待ってて」
「分かった」
地に降り立つと同時。猫の姿から人へと化ける。
一つ伸びをして、呼び鈴を押した。
「…はい」
「夜にごめんなさい。道に迷ってしまったの」
暫しの静寂。
近づく人の気配。かちり、と玄関の明かりが点いて。
その瞬間、遠くの明かりがすべて潰えた。
「こんな所に人が来るなんてねぇ。迷ったといってはいたが、誰かに会いに来たのかい?」
「昔の知り合いを訪ねに来たのだけれど。家には行けないし、暗いしで。どうしてしまったのかしら?」
街を振り返り、首を傾げて猫は言う。
その言葉に出てきた初老の女性は息を呑み、次いで悲しげに目を伏せた。
「ここはねぇ。数年前に大きな事件があって。街の中の人はだぁれもいなくなったんだよ。今残っているのは、あたしら端に住む年寄りぐらいなものさ…だからあんたの知り合いも、いないだろうねぇ」
「そうですか。教えてくれてありがとうございます」
「気を落とすんじゃないよ…それより今日はもう遅いからね。何もないが泊まっていくかい?」
気遣わしげな女性に、猫は笑って首を振る。
「大丈夫。少し立ち寄っただけだから、迎えはあるの。それじゃあ、さようなら」
「気をつけるんだよ」
女性に見送られながら、蜘蛛の元へ。
迎える二人を連れて歩き出す。
街の中は暗く。遠く微かに呻く声が聞こえ。
「何がどうなってんだよ。これ」
街の端。ぽつりぽつりと灯る明かりに、不可解さを隠さず蜘蛛は言う。
猫は欠伸を一つして。元の猫に戻るとゆらりと尾を揺らす。
「見るものすべてが正しくはないだけさ。よぉく覚えておくといいよ…世界はたまに逆しまになるからねぇ。迷い込んだら、気づくまでそのままさ」
くつくつ笑う猫はとても上機嫌で。
再び足取り軽く歩き出す。
目的はなく。気の向くまま、好きな方へ。
「そろそろ出会って半年だ。色々覚えて、立派なイチニンマエになるんだよ?」
「何だそれ?つか、出会って半年じゃなくて、五百年じゃねぇのか?」
問いかけに、猫は立ち止まり蜘蛛を見る。
「人間と猫を一緒にしてはいけないよ。五百年だろうと千年だろうと、猫が思えば半年だ」
「屁理屈か…なら一人前っつうのはなんだよ?」
「半年過ぎれば立派な大人だろう?独り立ちをしなければ」
当然の事だと告げる猫は、その言葉に表情を険しくする蜘蛛の二人に気づかない。
猫は自由気まま。思うまま。
誰かの機微になど気にかける事もない。
「さて、次は何処に行こうか」
「それなら今度は人のいる街で、美味しいものでも食べないかい?」
「それはいいな。猫は今、肉が食べたい気分だ」
「じゃあ行こうか。おいで、猫」
呼ばれ差し出された手に擦り寄り、大人しく抱かれる。顎を擽ぐられれば、すぐに喉がなった。
猫は気づかない。
優しく抱かれ、喉を擽るその指が。
少し乱雑に頭を撫ぜるその手が。
猫を縛る糸を巻きつけている事を。
猫を飼い慣らす為の呪いを施されている事を。
猫は気づかない。
ただ蜘蛛といるこの時を、猫なりに楽しんでいるだけだ。
20240709 『街の明かり』
眼下に、ぽつぽつと家々の明かりが灯る。まだ橙の残る空の下、同じく赤みを含んだ温かみのある光が増えていくのを、なんとはなしに眺めた。
暖色の灯は心が暖かくなるというのに、ギラギラとした突き刺す街あかりの方が馴染んでしまった。
長くここにいたせいだろう。
帰路に着く人間の道標になる灯火は待っている人があるからだ。自分があの明かりをつけることはあっても、ついている家に帰ることはない。
感傷でもなく事実として。
寒い日に暖かい部屋に帰ることも、暑い日に換気のされた部屋に帰ることも、穏やかな日に食事の用意された部屋に帰ることも、ない。
寂しいわけではないが、そんな経験はきっとずっとできないのは残念かとは思う。別に、家族ごっこがしたいわけでもないけれど。
目を凝らして、人の影が捉えることができるか試してみる。
手すりに肘をついて見慣れた景色を眺める自分に、並ぶ影が夕闇にひとつ。
いなくなればすぐに隣にくる相棒は、話があるわけでも、何をしたいわけでもなく、たぶんおちつかないだけなのだ。
共に部屋を暖めて、一緒に部屋の換気をし、並んで食事の用意をする。
そんな相手はいたなぁと、不思議そうにしている鼻を摘んでやった。
【※一応二次創作ですが、どうしても外せない口調以外、作品がわかってしまう名前などの名称は出てきていません(…の、つもりです)】
ここを訪れるのは久しぶりだった。
自宅マンションから車で三十分と少し。何の変哲もないただの山道。道を縁どる白いガードレールは少し錆びつき、所々それに凹凸が見られることから、時の経過を感じさせる。山の中を走る途中にある、少しだけ外側に飛び出た場所。車を停めるには十分だった。以前はバイクで訪れることが多かった場所だけれど、あの日彼と出会ってからは、ここへ訪れる手段は専ら車を選んでいた。
はぁ、と肺の空気を外へ出せば、外気温で冷やされた吐息が白い霧となって冬の夜空へ消えていく。目の前には煌びやかな街。背中には、暗闇に溶けそうなほどの艶やかなブラックのセダン。
――あの日も、こんな風に街の明かりを眺めていた。
しかし、あの日と今とで異なる点が一つだけある。
不意に、背後から車のドアが静かに開き、バタンと閉まる音がした。途端、自然と口元に笑みが浮かぶ。
「フッ、やーっと起きたか!」
振り向きざまに車から出てきた彼に声を掛けてみれば、未だに状況がよく分からないのか、彼の目は眠たげな半目だったが、その眉間には随分と怪訝そうにしわが寄せられている。
「……何だよ?連れて行きたい場所って、ココだったのか?」
わざわざ内緒にすることも無かっただろ、と呆れたように溜息をつく彼だったが、まだこちらの真意を図りきれていないのか、眉間にしわは刻まれたままだ。
実を言うと、最初から内緒でもなんでも無かったのだが、そういうことに興味を持つはずもない彼がこの日が何の日か分かるはずもないかと内心苦笑する。
「ああ、まあな」
再び視線を煌びやかな街に戻した。ふわふわと漂う明かりを見ていれば、自然とあの日のことを思い出す。
――見下ろす夜景は今と何ら変わりなかった。今と違うのは、背にしているのが車か、バイクかだけ。当時愛用していたのは、スポーツモデルという名に相応しい外装をしているGSX-S1000GTというツーリングバイクだった。値段の割にハイスペックなそれは一番のお気に入りで、仕事へ行くときもプライベートで遊びに行くときも一緒だった。
そんな愛バイクが不調をきたし、専門業者を呼んで待機していたときのことだった。
『こんばんは』
静寂な空間に、突如として凛とした声が響いた。
驚いて振り返れば、この街灯もなく月明かりだけが頼りの暗闇の中で、彼の持つ蒼い双眸だけが唯一許されているように光を放っていて、その美しさに思わず息を飲んだ。
『え、と……?』
声が出せたのは幸いだった。すると彼は、『驚かせてすみません』と言って、クスッと可笑しそうに微笑する。
『こんな所で何をしているのかな、と思いまして』
何か、悩み事でも?
そう問うた彼の瞳は強く、それは強く意志を放っていた。何故か、どこか尋問されているような、じりじりと追い詰められているような感覚がした。
それでも、居心地が悪いものではなくて、寧ろゾクゾクと背中が歓喜に粟立つような。
――そんな彼の蒼い双眼に強く惹かれたのを、今でも鮮明に覚えている。
あの強烈な印象は忘れられるわけもなかった。
その日、何故自分に声を掛けてきたのかと問えば、返ってきた答えは案外、呆気からんとした理由だった。
『貴方が……何処か遠くへ行ってしまうような気がしたんです』
ふんわりと明かりを灯し続ける街を眺めながらそう呟いた彼の目には、何か憂いているような色が浮かんでいた。まるでそれは、とろりと蜂蜜を垂らした宝石が美しく艷めいているようで、その艶やかさを目にした途端、不意に喉がごくりと音を立てる。
それが聞こえていたのか否か、彼はそんな雰囲気を誤魔化すように眉を下げて笑みを浮かべた。
彼はきっと、自分のことを何も知らないだろう。当たり前だった。彼にとって“は”その夜が、初めての邂逅だったのだから。
口にした理由だって、言葉以上の意味なんて無いだろう。きっと、自分が自殺しようとしているとでも思われていたのだろう。そんなことは充分に分かっていた。
――それでも、手を伸ばさずには居られなかった。
『っ……あの?』
するりと伸ばした手は、いとも簡単に彼の頬に触れた。
こんなことをするつもりは一切無かった。これからも、この先も。この出会いだって、偶然が引き起こした時のイタズラに過ぎない。
しかし、この偶然の出会いだって、この夜以前の“出逢い”だって、きっと――運命だったのだ。
『心配してくださって、ありがとうございます』
私は消えたりしませんよ……ーーー。
かつて、呼んでいた呼称を囁くと同時に、彼の双眸が大きく見開かれた。それを間近で見ていれば、また自然と頬が緩む。
気がつけば、彼の腰をやわく抱き寄せ、呆気にとられて開いたままのくちびるに、そっと自分のそれを重ねていた――……
「ん……ぉい、ここ外……っ」
「……ンー、もうちょい」
グイ、と肩を掴まれて押し返されるが、それはひどく弱い抵抗だった。本当に嫌だと抵抗するならば、すぐに彼の得意な蹴りが飛んでくることだろうから、この程度の抵抗など抗っているうちに入らない。そうタカをくくって、少しだけ調子に乗った。
しばらく彼のやわいくちびるを堪能していれば、あの時よりも随分とろけやすくなった蒼の宝石が、いつの間にか甘そうな蜜を浮かべているのに気が付き、これ以上は色々な意味でアブナイので、名残惜しくも彼のくちびるを解放する。
「ハァ……っ、ん……おまえ、やり過ぎ」
「いてッ。ん、わりぃ」
じとりと軽く睨みつけられて、頭には拳がこつんと静かに当てられた。
それでも、頬は緩み続けていた。目の前の彼はきっと、それに呆れているのだろうが、大人しく腕の中に収まっているところをみれば、機嫌は良さそうに感じられる。
「で? オレをこの場所へ連れてきた理由は?」
連日連夜、仕事と向き合っていたために、終わった途端に死んだように眠っていた彼を半ば誘拐するような形でここまで運んできたわけだが、彼はどこか面白そうに口角を上げている。
その様子に、この日が何の日か分かったのだろうかと淡い期待を抱いたが、それもどうでもいいかと思えてくる。なぜなら、この状況に置かれている彼の表情が、どこまでも楽しそうだったから。
「……一年前の、この日」
そこまで零した瞬間、彼は納得したように「ああ……そういうことか」と不意に微笑んだ。
「「オレたちが初めて顔を合わせた日」」
その日の夜、お互いの姿形を初めてハッキリと見た。
「……律儀な奴。こんな細けえこと覚えてたのかよ」
「細かくなんかねえよ。お前とオレが“ハジメテ”を経験した、記念すべき日だろ?」
すると、彼は途端に頬を桃色に染め、キッと睨みつけてきたかと思えば、「変な言い方すんな!」と怒られてしまった。
そんな彼にカラカラと笑いながら、この後のことを考えて、もう一度彼の腰をグッと抱き寄せる。
「……おい、オレは嫌だぞ?」
「さーて、なんの事やら?」
「てめっ、とぼけんな! 何だこの手は! 女扱いすんじゃねえ!」
女扱いなんてした事無かったはずなのだが。
少しだけムッと口が尖ったが、こうなった彼は強情で誰にも絆されないことを知っていたので、回していた腕を「へーへー、分かりましたよ」と言いながらしぶしぶ解いてやる。
「ったく……油断も隙もありゃしねえぜ」
「なーんでいつも流されてくれねーのかねぇ?」
「ハンッ、知るかよ。オメーの誘い方が悪いんじゃねえのか?」
そう言ってニヤリと口角をイタズラに上げたのを見た途端、今度は自分の腰に彼の腕が回される。
「エッ。マジで……? オレのこと、抱けるの? つか、抱いて、くれんの?」
いつになく心臓が破裂しそうなくらいにドキドキしていた。
「なんでそんな嬉しそうなんだよ……?」
いやいや、そんなの、だって。嬉しいに決まってる。
自分はいつも、彼を抱く側だった。別に特別そうしたいとか、思っていたわけじゃないけれど。所謂、そういう事に臨もうとしたとき、彼が自ら体に負担のかかる方を選んで、準備して来てくれていたのだ。何も知識が無かった訳では無いが、恥を忍んでそれを教えてくれた彼にはとても翻弄されたし、その存在が心の底から愛おしく感じてしまって。そのまま、溢れくる衝動のままに、その日の夜は彼をこの腕に大切に抱いた。それからの夜の営みでも、以前経験した方に慣れたいということで、すっかり位置が固定していったように思う。
愛する彼とならどちらでもいいと思っていた。抱く側でも、抱かれる側でも、ソレを共にすること自体が相手に想いを伝えることに違いは無い。どちらでも同じことだった。
それでも、心配はあった。いくら彼を組み敷いたとて、彼は男であって、女では無い。本来受け入れるべきでないそこへ、自分を受け入れてくれている。本来使うべきところを、使っていない。
雄は雄としての本能がある。それは自分自身がいちばんよく分かっていた。
“好意にする相手を、自分だけのものにしてしまいたい”
“他でもないこの腕に閉じ込めてしまいたい”
そんな風に、自分の意思では止められないほどの強い欲求がある――ということを。
だからこそ、彼からの行動は、嬉しいの一言に尽きるのだ。
意思では抑えきれないほどの欲求を抱くということは、自分に好意を抱いている証拠に違いなかったのだから。
「嬉しいよ」
ふわりと、自分でも驚くくらいに甘い声が零れ落ちた。
「おい……それ、ワザとか?」
驚いてあっ、と呆けていれば、突如として彼の低音が耳をくすぐる。ハッとして彼の顔をよく見てみれば、先ほどまで蕩けかけていた蒼い宝石が、今度は満月の光を反射して、その瞳の中に鋭い一線の光を形作っていた。
その二つの蒼い宝石に射抜かれた瞬間、ぶわっと体温が一気に上昇し、顔から火を吹きそうなほど体内から熱を感じてしまい、張り詰めた弦を弾いたような突発的な動揺は、普段ならば隠せたはずなのに、今の自分はなぜか咄嗟にそう出来なかった。
「うっ、いや、わざとじゃねえし……?」
照れ隠しが下手というにもほどがあるだろう、と心の中で自問した。仕事柄、ポーカーフェイスが上手いはずなのに。
「かわいいな」
「は――」
フッと彼が笑みを零した瞬間、気がつけばくちびるを奪われていた。いつもとは逆の立場に少し戸惑いつつ、恥ずかしさと、嬉しさが入り交じり、心臓が変な音を立て始める。
完全に受け身なのも癪だったので、少しだけ舌を使って歯筋をなぞってイタズラしてやれば、彼はぴくりと反応を示した後、まるで大人しくしとけとでもいうように上顎をねっとりとなぶられた。
「ふぁ……ん……」
自分のものとは思えない声が漏れる。恥ずかしさはとっくに頂点に達している。今にも泣き出してしまいたい。
しかしそれと同時に体は尽く正直なもので、心臓は歓喜に震えていて、やがて彼の体温を全身で感じられるようにと体温は上昇を続け、体に触れる彼の手から指から身体から、彼のぬくもりが自分の体へと伝っていき、それがまた体内の熱を膨張させた。
冬の寒さなど頭には無かった。忘れ去る頃、ようやくくちびるが解放される。
今、自分はどんな表情をしているのだろうか。
少し気になったが、見たくは無い。
きっと、情けない表情に違いないだろうから。
それでも、彼の表情を見れば、それがどんなものか一目瞭然だった。だって、分かってしまうのだ。
いつも彼が見せてくれていた、情欲をそそるあの艶やかな表情。
あれを目の前にすれば、オレはきっと。今、目の前の彼がしているように。
こんな風に、雄の雰囲気が立ち込めるような目をしていただろうから。
「ここに連れてきてくれて、ありがとうな」
身長などはほぼ変わらず、体格だってそれほど差は無い。それでも、彼の笑った顔は人一倍美しいと思わずにはいられない。
きゅん、と人知れず胸が鳴く。
「ああ、そうだ。今日は、お前とオレが“ハジメテ”を経験した日、だったっけか?」
そう言って笑う彼を見て、釣られて自分もふはっと笑ってしまう。
新しい“ハジメテ”を、この先もずっと隣に居てくれると約束した愛しい存在と共に、今夜――……
暗くなってきたな…人が多い駅通りを歩きながら空を周りに聳え立つオフィスビルが一斉と言っていい程、各部屋の電気が点き始めた。
夏は暗くなるのが遅いから気づかなかったけどもう20時近くなっている。急いで外回りから戻れば他の人は退社したのか部署内はほぼ居なくなっていた。
片付けをして退勤をする。こんな事なら直帰にすれば良かったと後悔しながらエレベーターを待っていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「よっ!お疲れさん」
「クロもお疲れ様」
「今日珍しく遅いじゃん。忙しかった?」
「いや、外回りから帰ってくるの遅くなっちゃって…」
「あー、夏って夜になる感覚分からなくなるよな」
「クロも遅かったね」
「俺は会議の資料纏めるの時間かかってな、外回りのが性に合ってるんだけどなぁ」
会社から出れば辺りは真っ暗。
ビルの明かりはまだ沢山ついている。
「夜景って綺麗だと思うけど半分は残業の人達で成り立ってるのかなって時々考えちゃうよね」
「やめろよ、夢ねーな」
一日の疲れからか足取りが重い。
クロの方が足が長いから早く帰れそうなのに私の歩く速度に合わせてくれるの、優しいなって思う。
「なぁ、折角だしこのまま飲みに行こうぜ」
さりげなく距離が近くなり少しドキリとする。
「いいよ〜。でも今日疲れたからすぐ酔っちゃうかも」
「…そしたら勿論、お持ち帰りしても良いよな?」
「え?…クロ?!」
話が終わるや否やギュッと手を繋がれて状況についていけないままクロについて行くしかなかった。
-街の明かり-
お題:街の明かり
優しい光が灯る雪降る今日。
私は待ち合わせ場所に足を走らせる。
遅くなっちゃったっ…
クリスマスだからって、張り切りすぎて約束時間よりも10分も遅れちゃうなんてっ…
岳くん、怒ってないかなっ…?
待ち合わせの場所に着くと、紺色のダウンを見に纏った幼なじみで彼氏の岳くんが目に映る。
わっ、カッコいい……
「あ、咲」
私に気付き、名前を呼んだ岳。
「お、遅くなってごめんね」
「……今日いつもと違うね」
「あ、う、ごめん。クリスマスだからって、張り切っちゃって。待たせちゃったよね……!?ほんとにごめん」
落ち込んで下を向いた私にぎゅっと岳くんは抱きしめてきた。
「咲、今日めっちゃ可愛い」
「っ…」
岳くん、人がいるのに……っ
恥ずかしいっ…
「可愛い咲が見れたから、待ったことなんて許すよ。俺のためだよね……?」
「うんっ…岳くんに可愛いって思ってほしかったのっ……」
「咲は可愛いなぁ……自慢の彼女だよ」
「えへへ」
「じゃあ、行こっか」
「!うんっ」
クリスマスの夜、私は今までで1番温かい日を過ごした。
街の灯り。街灯。飲み屋街の裏路地の灯り。橋からみる街のビルの灯り。キレイ。
すべての人の人生ドラマ、そっと照らしてくれている。
ギラついた
波状攻撃
浴びながら
今日も今日とて
同伴出勤
【街の明かり】
「街の明かり」
街の明かりに照らされて、今日もここは賑やかだ。
この活気がいつまでも続くと良いな。
梅雨空の下
当てもなく彷徨う
振り返ることもせず
立ち止まることもせず
ひたすら進んで行く
どれくらい経っただろう?
大きな壁にぶつかった時
迷いや不安もあるけれど
思い出してみて
街灯の灯りに照らされた
自分の道がそこにあるから
#42「街の明かり」
都会でもなく、田舎でもないため
この道は、街灯がすこし遠感覚にある。
歩かなければ、1寸先は闇の中
歩けば、暖色の明かりが包み込んでくれる
まるで、僕のこころの中
歩かなければ、と使命感
疲れて足を止めれば、1寸先は闇の中
歩けば、理不尽なことは多いけれど
小さな達成感と幸せが、包み込んでくれる
歩こう
たとえ、歩いた先の街頭が消えかかっていても
きっと明日が待っている
夕暮れの
電車の窓から見える
オレンジ色の光に
ずっと憧れていた
私にとっては
幸福の象徴の色だった
たくさんの生活がそこにはあって
それぞれの幸せが
そこで生きている
幸福色のペンを握りしめ
理想だけを描いたところで
何も変わりはしないのに
私はまだ縋るのを辞められない
憧れだけが
キラキラと輝いている。
とある中学校2年一組のクラスの授業が始まろうとしていた。「キンコンカンコンキーンコーンカーンコーン」始まりのチャイムがなった。先生が「それでは授業を始めます」授業が始まった。先生が授業をしていると「カタ…カタ…カタ…カタ…」という音が聞こえてきた。クラスにいる全員が「なんの音?」といい静まりました。すると「カタ…カタ…カタ…カタカタ」どんどん近づいてきている。すると突然放送がなった。先生が「皆さん謎の化け物が現れました。パソコン室に避難してください!!繰り返します。謎の化け物が現れたため パソコン室 に避難してください!!」と言ったするとまた「カタ…カタ…カタ…カタ…」と聞こえ、その途端また放送がなった「謎の化け物の特徴は、木の棒で全身ができています。繰り返します…謎の化け……………」途中で声が消えた途端にスピーカーから「ぎゃーー!!!!!!」と聞こえ放送が止まった。教室にいた先生が「皆さん避難します。今すぐ列になって避難訓練の時と同じようにに避難します。」と言った。みんなは、列になってパソコン室に避難を始めた。その間も「カタ…カタ…」と聞こえながらもなんとか化け物と遭遇せずにパソコン室に避難ができた。みんなは、怯えていた。先生たちも各クラスにいた先生たちしかいなくて、おそらくさっきの放送の時職員室にいた先生たちは、化け物に襲われたのか戦ってるのかもしれないと、先生たちが言ってた。避難してから15分ほど過ぎた頃パソコン室にどんどん「カタ…カタ…カタ…」近づいてきている、一人の先生が小さい窓から外を見ると目の前に化け物が居た。先生は、驚いてその場に倒れた。その瞬間化け物が入ってきた。生徒全員が叫んだ「キャー…」
創作)番外編4話 街の明かり
私はとっさに家を出た。
入学した学校で入る部活について、両親がバスケ部を強要してきたのが原因。
飛び出した時にはすでに暗くなり始めていた。
無心でただひたすら走っていて、道が分からなくてなってしまった。
何も、持って居ない。
路地裏に入り込んでしまい、何も見えなくなってしまった。
すると突然、光が近付いてきた。
ここは車が通れるような場所では無いため、車では無い。
すると、声が聞こえた。
「蓮ちゃん!!大丈夫?!」
まだ春で、しかも夜に近付いているのに、汗だくで、息切れしながら彼が放った言葉。
優しく抱きしめられて、安心した。
歩いている内に住んでいる街に近付いてきた。
迷い込んだ街よりも明るく、その光景を見た瞬間涙が溢れてきた。
それに気付いた彼が
「大丈夫だよ、安心してよ」
と、言いながら、ずっと繋いでいた手をもう少し強く握った。
そして、より彼の優しさ、温かさが身に沁みた。
(こんにちは!nononeです!!私ねー、プライベートでも、この物語の妄想をしていて、そういう所で誠くんを「子供っぽくて優しくて番犬!!」と、いう性格にしているんですよー!!普段の千尋くんと会長との3人の絡みでは子供っぽい感じですが、元々はめっちゃ優しいんですよ、周りの事よく見てて、、喧嘩も結構強いという設定にしてて、不審者が居ると噛みついて、警察に届ける!!という犬っぽい場面もあるんです!!
私が考えてた事なので初耳だと思いますが、こういう風に私が各キャラクターについての性格などを話していけたらと思います!!!私の、この物語内での最推しは誠くんです💖💌
今日は八木蓮ちゃんが家出?的な事をして、誠くんが走って探してくれた、というお話です!!)
不眠症だった時
寝るの諦めてよくドライブしてた
コンビニの明かり見つけると
すごく安心したなあ
起きてる人がいるんだ、って。
街の明かり
街灯のない道のほうが落ち着くんだ。
ほら、夜の墓地だって落ち着くだろう。
夜の墓地で問うてみたところで答えはなかった。
ー完ー
死神は雪の深い夜街に辿り着いた
今日の職場だ
ローブ目深に網を持つ
鎌ではない網だ
この世界では死者の魂は網ですくい取る
ふよふよと揺蕩う光をそうっとすくっていく
粗方取り終えた死神は、人気のない路地に
少女を見た
粗末な服で、この寒さは凌げまい
少女の側でその時を待つ
籠に入ったマッチは古く、箱が潰れているものもある
少女は少しでも暖をとろうとしたのだろう
廻りにはマッチの燃えカスが散っていた
死神に掬い取られる魂は
こぼれ落ちたマッチとともに
今夜も街を彩った
『街の明かり』
街の明かりが、夜の闇を切り開く
暗く、重い闇に、明るく、軽い槍が突き刺さる
その槍は、僕にとっては眩しすぎた
家に帰っても、窓から差し込む光によって、静かな夜など存在しない
車の音、人々の雑踏、正体はわからないが、何かの音
今欲しているのは、静かで、穏やかで、暗い、そんな夜なのに
今は、びかびかとした、街の明かりが、ごうごうとした、人々の生きている証拠が
自分の生活の妨げとなる、障害となる
私の求める夜は、どこに行ってしまったのだろうか
また、あの頃の夜を…
真っ暗な夜に車の窓から遠くに見える街の光を眺めることが、幼い私のちょっとした楽しみだった。
街を照らす色とりどりな数多の光が、流れるようにキラキラする様子が、まるでテーマパークにいるみたいで、心を踊らせた。
「綺麗だね〜!」
妹とそう言いながら、その光を眺めるのが好きだった。
実家は田舎にあったので、家に近づくに連れて街の光が減っていくのが、少し寂しかった記憶がある。
そんな楽しい気持ちも、少し寂しい気持ちもしっかり覚えているのに。
いつからか、窓の外に流れる街の明かりを見ても何も思わなくなってしまった。
それ以前に、窓の外を見ること自体少なくなってしまった気がする。
あの頃キラキラして見えた光も、今じゃただの景色に過ぎない。
それが少し寂しい。
お題『街の明かり』
今日はなんていい日なのだろう。
俺は夜道を歩き思う。
君と結婚して1年。
昨年はこの街の灯りが見えるところで俺は君にプロポーズをした。
俺は二つの指輪をつけている。
もうすぐ1年記念日だって言うのに、
俺の隣を旅立ってしまった君と俺の
二つの指輪だ。
君にお参りをした今日は、
あの時のように街の灯りが綺麗に
輝いていた。
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑥
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
【星空】
高峰桔梗と葛城晴美は無事に警察学校を卒業し晴れて警察官になった。
しかも、桔梗は授業と実習で、晴美は実技でトップだった。
おまけに、晴美の二輪走行の腕は群を抜いていた。
桜井華はふたりの卒業を祝ってくれた。
「凄いじゃないか、ふたりとも私と同じ警察署に配属されたから、署内では君達の話題でもちきりだよ。桔梗は警察官に向いているとは思ったが、まさかこれ程迄とはさすがに思わなかったよ。葛城君も特にバイクの腕前は教官以上だったらしいな、驚いたよ。これからは、同じ警察署員として一緒に市民の安全を守っていこう」
やっと華さんと一緒に仕事ができるんだ。そして、黒鉄銀次を逮捕するんだ。
緊張の中初出勤を迎えた。桔梗は華の先輩でもある高見巡査と駐車違反の取り締まりなどを行った。
一方、葛城晴美は白バイ隊員の訓練生として、養成所で訓練を受けることとなった。大抜擢である。
そして一年後、星空のキレイな夜に事件が起きた。
桔梗は高見巡査と、華は3年目の若い巡査と警ら中、猛スピードで大通りを走り抜ける車がいると連絡が入った。
車は桔梗達のいる方へ向かっているようだ。
さらに入った連絡によると、暴走車は銀行強盗の容疑者が逃走中なのだとわかった。
「高見先輩、桜井です。私達もそちらに向かってます。港に誘導して逃げ道を塞ぎましょう」
「了解、絶対に捕まえるぞ」
地元の道を熟知している華達にとってはそれ程難しい事ではなかったが、車両2台では、難しいと言わざるを得ない。
「しまった。この先の交差点で左側を塞いで右折させなければ逃げられてしまう」
その時、後方から白バイが猛スピードで華たちを追い抜いて行き、左側にプレッシャーをかけ右折させた。
「よし、これで奴等は袋のネズミだ。応援のパトカーも合流してきた。華、慎重にな」
「了解です。桔梗の事お願いします高見先輩」
「もちろんだ」
行き場を失った車から容疑者達が3人現れた。
「手を上げて後ろを向きなさい」
犬塚刑事が犯人に告げると3人はおとなしく従った。
ホッとした隙をついて車の中からもうひとりが勢いよく飛び出してきた。
主犯格と思われる男はナイフを持ち突破しやすそうな場所を見極め突っ込んでいった。
「桜井!」犬塚刑事が叫ぶ。
「ドケドケ退け!」男はナイフを振りかざして華めがけて突進していく。
すると、華も男に向かって走りだした。
これには男もビックリしたようで一瞬ひるんだ。
その隙を逃さず華は一本背負いで男を投げ飛ばした。
「悪いな、こう見えても私は柔道五段なんだ」
「華さん、伸びてるから聞こえてませんよ」
「桜井よくやったなお手柄だぞ」
「ありがとうございます」
「桜井先輩すごーい!」
少し離れた場所からこちらに向かってくる人がいる。
「あれは、葛城君じゃないか、さっきの白バイって葛城君だったのか?」
「お久しぶりです。皆さんのおかげで白バイ隊員になれました。これからもよろしくお願いします」
このあと、夜中まで女子会が続いたのは言うまでもないだろう。
つづく