暗くなってきたな…人が多い駅通りを歩きながら空を周りに聳え立つオフィスビルが一斉と言っていい程、各部屋の電気が点き始めた。
夏は暗くなるのが遅いから気づかなかったけどもう20時近くなっている。急いで外回りから戻れば他の人は退社したのか部署内はほぼ居なくなっていた。
片付けをして退勤をする。こんな事なら直帰にすれば良かったと後悔しながらエレベーターを待っていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「よっ!お疲れさん」
「クロもお疲れ様」
「今日珍しく遅いじゃん。忙しかった?」
「いや、外回りから帰ってくるの遅くなっちゃって…」
「あー、夏って夜になる感覚分からなくなるよな」
「クロも遅かったね」
「俺は会議の資料纏めるの時間かかってな、外回りのが性に合ってるんだけどなぁ」
会社から出れば辺りは真っ暗。
ビルの明かりはまだ沢山ついている。
「夜景って綺麗だと思うけど半分は残業の人達で成り立ってるのかなって時々考えちゃうよね」
「やめろよ、夢ねーな」
一日の疲れからか足取りが重い。
クロの方が足が長いから早く帰れそうなのに私の歩く速度に合わせてくれるの、優しいなって思う。
「なぁ、折角だしこのまま飲みに行こうぜ」
さりげなく距離が近くなり少しドキリとする。
「いいよ〜。でも今日疲れたからすぐ酔っちゃうかも」
「…そしたら勿論、お持ち帰りしても良いよな?」
「え?…クロ?!」
話が終わるや否やギュッと手を繋がれて状況についていけないままクロについて行くしかなかった。
-街の明かり-
7/9/2024, 11:09:46 AM