『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『蝶よ花よ』
私は昔から蝶よ花よと大事に大事に育てられた。
逆にそれが重りになるほど、
だけどそれは私を想ってのことだと思うから。
今はわからないけど、いつか大人になったら感謝できるようになるのかな、今は少し待っててね。
蝶よ花よ、私を連れて行って。
ねぇ、私を連れて行って。
誰も届かない場所まで、誰も知らない遠い場所まで
光り輝くあの空へ
「私もいきたい」
なんで?なんで?、置いて行くの…
お願い、お願いします。
「もう、悪い子辞めるから、許して、何でもするから」
「だから、だから、私を置いて行かないで…」
『助けて』
彼女の声は何処に届いたのだろうか。
彼女の声は誰に届いたのだろうか。
ただ、
誰もいない空を虚しく眺めることしかできなかった。
❧
13 ✿.*・蝶よ花よ✿.*・
君はどこに行くの?
学校終わりの帰り道、蝶々がいたからなんとなくついて行ってみることにした。
家とは反対方向にふわふわと飛んでいく君。
角を右に曲がって、それから真っ直ぐ進んで次は左、くねくね曲がりくねった道を通って、階段を登ってまた右に曲がったとこで蝶々はどこかえ飛んで行ってしまった。
目の前の景色は自分が住んでいる地域とは思えないほどの
美しさだった。
一面ひまわり畑だった。
君は私の知らない場所を教えてくれた
次の日からほぼ毎日そこに足を運ぶようになっていた__
蝶よ花よ
私達を誰もいない綺麗な場所まで
連れて行って
あなたとの素敵な場所へ
蝶よ花よと言えば、蝶でも花でも望めば望むだけ与えられて、丁重に育て上げられた深窓の姫君や、過保護の中で育った世間知らずなどが思い出されるかもしれない。
もしそうだとしたら、蝶も、花も、豊かさや幸福といった、正の面でのイメージを連想させるということだろうか。
蝶は蝶でも、色鮮やかではないもの、昼ではなく夜に飛ぶものもいる。
それこそ、蝶や蛾の区別なんて曖昧で、国によっては一くくりのところもある。
花は花でも花びらを持たないものも、虫を食うどころか、花をトイレのようにして小動物の排泄物を養分にしているものもいる。
色々な生き方の蝶や花がいるのだから、場所が違えば「蝶よ花よ」も意味が異なるのだろうか。
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広がる花畑に、数多の蝶が舞っている程ではない。
蝶よ花よ、という程でもない。
狭い空き地に雑草が蔓延り、二、三の名の知らない花に蝶が一匹止まっているだけ。
「そんな、どこにでもある有り触れた光景の一部となって朽ちたい……」
「これを飲んだら続きを聞いてやるよ」
熱中症で倒れる寸前の同僚に、私はOS-1を渡してやった。
お題『蝶よ花よ』
蝶よ花よと育てられた妹が齢三十にして一人暮らしを始めるらしい。「だから、おねーちゃんがサポートしてあげてね」と親からLINEが来た時、正直げんなりした。
妹は、言葉を話すのが遅くて親がつきっきりで面倒見たり、学校になじめなくて不登校になっても親は「行かなくて良いからね」と甘やかした。さすがにそんな状況は私が看過できなくて、一度妹を無理矢理学校に連れて行ったら、校門の前で大声で泣くし、呼び出された親にものすごく叱られた。
それ以来、あまり関わらないようにしてきたし、高校卒業したら速攻一人暮らしを始めた。「おねーちゃんはしっかりしてるもんね」と親から言われて、すんなり許してもらえた。
大学になって以降、社会人になっても、あまり帰省をしてこなかったし、最近帰省したのなんて私が結婚を決めた時に夫を連れてきたことくらいだ。
ようやく『私の家庭』が持てると思った矢先にこのニュースである。「やだ、面倒見たくない」とつっぱねたが、「そこをなんとか」と親に言われて私は今、しぶしぶ妹が住むマンションに来てしまった。引越の荷物はもう運んであるとのこと。
中に入ると、ごった返した部屋の中で箱から出した年季が入ったくまのぬいぐるみと会話しているロリータ姿の妹とご対面。引越の片付けをなにもしようともしない。もうこの時点でいらいらする。
「来たよ」
と声を掛けると、妹がびくっと体を震わせて、ぬいぐるみで口許を隠しながらこちらを盗み見るようにした。妹は、両親以外とは会話ができないのである。
私はため息をつきながら、梱包されてるたなのビニールを破る。それから、たくさん置かれてる箱の一つを無遠慮に開ける。なかからアニメ調イラストのイケメンを模したぬいぐるみだの、アクスタだのポスターだの、まぁいろいろ出てくる。
無言で適当にそれらを棚に並べると妹が横に立ってぬいぐるみを抱えながら見つめてくる。
「え、なに?」
「それ、ちがう」
「はぁ!?」
ぼそぼそ喋る妹についにいらついて私は立ち上がって彼女に迫る。
「だったら、自分でやんなさいよ! 自分の部屋でしょうが!」
「だっ、だだ、だって……今までママとパパがやってくれたから、やり方わかんない」
いい年した妹の目に涙が浮かぶ。私は頭をかきながら荒い息をつくと
「じゃあ、あんたなんで一人暮らししようと思ったのよ!」
「そ、それは……そろそろ三十歳だから、自立したいなって、おもって」
ほぉん、そういう考えはあるんだ。ということに私は驚く。どういうきっかけでそうなったか分からないが、そう思ったこと、その時点で妹を見直すことにしよう。
「わかった。じゃあ、どこになにを配置すればいいか教えなさいよ。あんたこだわりありそうだから分かるでしょ」
「う、うん!」
それから私は夜通し、妹の部屋のセッティングをやった。私がほとんど七割やって妹はどうしていいか分からない時があって時折突っ立ってることが多かったけど、
なんだかんだ妹だからこそ、どうにかしてあげたくなるんだなと思い出した。どうやら、私は蝶よ花よと妹を甘やかした両親と根本が変わらないのかもしれない。
「蝶よ花よ」
蝶よ花よと愛でられたであろうあなたは。
私の心臓をちくちく刺した。
大きい瞳に映った蝿は。
ちょっと素敵な化け物だった。
蝶よ花よと愛でられたくて。
貴方の隣の地位をもらった。
裏ではあなたの悪口がランデブーしてた。
クラスのグルラに貴方はいなかった。
蝶よ花よと愛でられていても。
貴方の心臓は痛がりでしょって。
そんなの貴方が分かっていたから。
そっと涙を少しすくった。
蝶よ花よと愛でられるより。
二人でリボンをゆるく結ぼう。
蝿の私に居場所をくれたから。
私もグルラを抜けてやろう。
蝶よ花よと愛でてやるから。
蝶よ花よと愛でてほしいな。
蝿よ塵よと言うやつなんて。
見ないフリして泣きましょう。
蝶よ花よと愛でられたいなら。
貴方をずーっと愛でてやるから。
二人の低い体温をくっつけて。
指を絡めて遊びましょう。
どこへ行ったのだろう
皆いなくなってしまった
蝶よ花よ
蝶よ花よってちやほやの語源らしい
蝶や花や→ちやほやなんだってね
ちやほやされるのは好きではない
道化になれと言われているみたい
蝶よ花よ
最近の新入社員は蝶よ花よである
蝶を触るように優しく、花の育てるように丁寧に扱わなければならない。
(単なる嫌味)
就職氷河期の自分達とは大違い。
(単なる妬み)
私達はミスをすれば即座に怒鳴られ、失敗は許されない空気だった。
そんな中必死で食らいついてここまで残ってきた。
しかし、今はミスをしても一緒に改善策を探し、決して失敗を責めないよう指導するよう言われている。
そしてそれを私達が出来てなければ、やはり上から怒鳴られる。
うーん
俺達ってめっちゃ損じゃね?笑
(単なるひがみ)
蝶よ花よと育てられた
私は鳥籠の中
ママは出ちゃダメというけれど
お外の世界が知りたいの
だからこの窓からピーターパンが現れて
お空を飛んで連れさって欲しいと思ってるんだ
曾祖父の代に起こした事業に成功し、以降、我が家は使用人を何人も抱えるほどの裕福な家で、それは今も変わらない。
私と兄は両親ではなく祖父母に育てられた。
礼儀作法に始まり、勉強、スポーツ、音楽とありとあらゆる事を叩き込まれた。
それこそ自由になる時間など少なく、両親と顔を合わせるのは食事の時くらい、という程に。
けれどそこには祖父母の愛情があった。
この先の人生で、私たちが恥をかくことがないよう、要らぬ苦労をすることがないようにと。
私と三つ年の離れた妹は、母に育てられた。
生まれて直ぐ兄や私を祖父母に取られたような形となった母は、妹は自分の手で育てると祖父母に直談判した。
父も母の希望に添い、母と共に祖父母に願い出たと言う。
祖父母は渋っていたが、子供を自分らの手で育てたいという父の願いを無下にはできず、妹のことに関しては口を出さない約束をしたのだそう。
妹とは両親同様、食事の時くらいしか顔を合わせることがなかった。
私も兄も勉強や習い事に忙しく、あまり家には居なかったから。
だからか、兄とは違い妹には家族の愛情のようなものを感じたことがなかった。
兄が16歳、私が14歳の時、祖父母によって許嫁が決められた。
兄の相手は祖父の友人の孫娘、兄と同い年の奏さんは優しく、綺麗で素敵な女性。
私の相手は父の知り合い、と言うか取引先の息子さんで泰広さん、私のひとつ年上の方。
所謂、政略結婚で、この時代に政略結婚なんて、と思われるかも知れないけれど私は別に構わなかった。
この家に生まれた時点でそういうものだと聞かされて育ってきたのだから。
寧ろ、泰広さんはモデルのようにスタイルも良く、とても格好良い方だったので内心良かったと思っていた。
「⋯⋯えっ?」
「だからぁ、泰広さんは私が貰うね。お姉ちゃん」
夕食時、事もなげにそう言った妹に私は言葉を失った。
貰う?どういう事?泰広さんは私の許嫁だけど?
祖父は4年前、祖母は3年前に亡くなった。
兄は大学卒業と同時に奏さんと結婚し、父が祖父から継いだ会社で働いている。
今は会社近くのマンションで奏さんと新婚生活を楽しんでいる。
私はと言うと、大学に進学し勉学に励んでいる。
来年大学を卒業したら泰広さんと結婚する予定だったのだけれども。
「そういうことなの。あちらも了承してくださったわ」
「泰広さん、お姉ちゃんより私の方が好きなんだって」
「当然でしょう、あなたの方が可愛いんだから」
「だから、来年、泰広さんと結婚するのは私なの。ゴメンねお姉ちゃん、私、お姉ちゃんより先に結婚しちゃうねぇ」
母と妹が、お気に入りの服を譲れとでも言うかのように話しているのに目眩がした。
特別、泰広さんに恋愛感情がある訳では無い。
泰広さんと妹が、そういう仲なのであれば、喜んで許嫁の座を渡すのだが、これは⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯わかりました」
私や兄と違い、両親によって、蝶よ花よと育てられた妹は我慢することを知らない人間に育った。
欲しいものがあればすぐに手に入れたいと、父や母におねだりをする。
そして父も母もそんな妹に甘い。
おかげで色々な物を妹に取られた。
祖母に貰ったビスクドール、祖父から贈られたネックレス、友人から誕生日に貰ったぬいぐるみは、気がついたら妹の部屋にあり、しばらく後にボロボロの状態で私の部屋に投げ入れられていた。
その時妹は『もう飽きたから要らない』と言った。
人の物を黙って取っていきながら、要らないとはどういうことなのか。
私はボロボロになったぬいぐるみを一晩かけて直した。
それからもお気に入りの服、靴、鞄と、気がつくと妹に取られている。
初めのうちは返すよう、妹に言ったが、いつも母が姉なんだから譲れと言う。
毎回毎回言われれば、こちらはもう言い返す気力さえなくなる。
だから、自分の好きな物ではなく、妹が好きにならない物を身に付けるようになった。
シンプルなデザインの可愛くもない無難な物だけを。
幼い頃、両親と手を繋いで歩く妹を見た時、羨ましいと思ったことがある。
私と兄は両親とあんな風に歩いた記憶がない。
食事の時もマナーを守らず、食べるものを選り好みし、自分の嫌いな物があれば使用人に文句を言う。
祖父母が何時も冷たい眼差しで妹ではなく父と母を見ていた理由が今ならわかる。
両親の子育ては『優しい虐待』だ。
社会に出て、子供が苦労することがないように、子供をきちんと躾る、その最低限の事ができていない。
これから苦労するのは、妹だ。
そして自分がそういう状態であるという事を彼女は気づけるだろうか。
まぁ、そんな妹に手を差し伸べるほど、私は妹に愛情を持っていないのだけれど。
食事を終え、私は部屋に戻り兄に連絡する。
泰広さんのこと、それから今後のことを相談するために。
取り敢えず、この家は出ようと思う。
一度でいいから、一人暮らしがしたかったし。
確か兄所有のマンションに空きが出たと言っていた気がする。
そうだ、結婚する必要が無くなるのなら、留学してみるのも悪くない。
世界を旅行して回るのもいいかもしれない。
キャンピングカーで日本一周というのも、いい経験になるだろう。
兄は少しの間私が、自由に生きるのを許してくれるだろうか。
ずっとでなくて構わないし、必要があれば政略結婚でも何でもする。
だからそれまでの少しの間だけでも、私は自由を満喫してみたいと思う。
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(´-ι_-`) 身が美しいのが『躾』
「『蝶よ花よ』ってさ。
『親が子供を』、『蝶や花を人間が慈しみ愛でる、それと同レベルに、格別にかわいがり』、『愛をもって大切に育てること』なのな」
てっきり「子供自身が」、「『ほら蝶々、ほらお花』と、綺麗な物・綺麗事100%の『無菌』な環境に置かれて」、「下品下劣・世俗を知らない、ガチのピュアっ子に育つこと」だと思ってたわ。
某所在住物書きは題目の意味を調べ、己の誤った解釈に気付き、数度頷いて純粋に知識を改めた。
「意外と、『実は間違って覚えてました』っていう言葉とかことわざとか、多そうよな」
ため息ひとつ、物書きは額に手を当てる。
「で、……『蝶よ花よ』で何をどう書けと?」
――――――
半額ドライフルーツでレモンティーを作ろうとしたら、分量多過ぎて水出し茶の味がせず、ただのレモン水になった物書きです。相変わらず酷い暑さの盛夏、いかがお過ごしでしょうか。
「蝶よ花よ」と題しまして、今回はこんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、綺麗なお花、綺麗な石、お星様もビー玉もキラキラちょうちょも、ともかく美しいものが大好きな食いしん坊。
お揚げさんを食べては季節の蝶を愛でて、
お稲荷さんを食べては季節の花を楽しみます。
深めの森の中にある稲荷神社には、在来種の蝶もお花もキノコもいっぱい。
最近はどこから飛んできたやら、ゲーミングトンボな虹色の、チョウトンボもぶらり、迷い込みます。
蝶よ、花よ。汝、稲荷神社の豊かさを示す指標よ。
美しく豊かな命が、子狐の神社を飾ります。
清く純粋な心魂が、子狐の神社を彩ります。
子狐は善い者も良い物も大好き。
今日も今日とてコンコンこやこや、神社のお庭を散歩して、蝶と遊んで花を楽しみます。
ところでさっきから手水のあたりで蝶がいっぱい群れていますがアレは一体何がどうしたことやら。
「水でも、飲んでいるんじゃないか?」
おとくいさん、アレなぁに。
コンコン子狐、稲荷神社の美しい花を撮りに訪れていた常連参拝者さんの、服を引っ張り聞きました。
「ミツバチが手水の水を飲みに来る動画を、見たことがある。蝶のことは不勉強だが、もしかしたら」
まぁ、本当に蝶のことは何も知らないから、誤情報の可能性の方が高いけれど。どうだろう。
雪国出身の善良な参拝者さんは、子狐に予防線ひとつ張って言いました。
え?「狐が人語を解するのは非現実的」?
大丈夫。そもそもフィクションです。物語です。
ごんぎつね然り手袋買いに行く子狐然り、お話の中の狐はだいたい物を喋るのです。
細かいことを気にしてはなりません。
「なんでチョウチョさん、お水飲むの?」
「さぁ、何故だろう。蝶のことは本当に分からないから、私も憶測と想像でしか話せない」
「なんでおとくいさん、分かんないの?」
「ナンデアタックは勘弁してくれ。勝てない」
「なんで?」
「……よし子狐こうしよう。
今日も暑いし、お前の母さんの茶葉屋でアイスキャンディーを買ってくる。それまで蝶や花に、あそこの蝶が水を飲んでいる理由を聞いておいで」
「アイスたべる!チョウチョさん、聞いてくる!」
これはもう、かなわない。
子狐に質問攻めの参拝者さん、とうとう白旗上げまして、子狐の興味関心を蝶そのものから離します。
どうせ、蝶は何も話しません。
どうせ、花は何も語りません。
蝶よ花よ、何も言わず、子狐の心を逸らしておくれ。参拝者さんは一旦子狐とさようなら。
稲荷神社を離れまして、子狐と自分のふたり分、体を中から冷やすに丁度良いアイスキャンディーを、ひとり買いに行きました。
アイス買ってきた参拝者さんは、てっきり子狐は「チョウチョさんもお花さんも話してくれなかった」なんて飽きているとタカを括っておりましたが、
アイス買って帰ってきて、コンコン子狐開口イッパツ「チョウチョさん、『我々蝶が給水するのは複数の理由、複数の条件がありまして』だって」なんて言ったので、一気に目が点になりましたとさ。
『蝶よ花よ』
私の大叔母は身の回りのことを自分で何ひとつできないひとだ。それなのに人の好き嫌いが激しいためにお手伝いさんを雇ってもすぐに追い出してしまう。そのために私は祖母から頼み込まれ、少ないながらも給金をもらって身の回りの世話をしていた。
大叔母の若かりし頃はとびきりの美人だったらしい。昔の写真と今を見比べても美貌は変わらず。しかしそれはとるべき齢を重ねないまま老いてしまったとも言える。
「私の若い頃は殿方からひっきりなしに声をかけられていたのよ」
社交界の華と呼ばれ蝶よ花よと持て囃された栄華も今は昔。今日も耳にたこができるほどには聞かされてきた自慢話を聞き流しながら一日の家事をなんとか終える。一人には身に余るぐらいに重い仕事ではあるけれど、辞めようとは一度も思わなかった。大叔母の少女のような可愛らしさは時折うざったく、しかし庇護欲を掻き立てられる。大叔母に恋をしてきた殿方の気持ちがわかると同時に、生涯を共にしたいとは思われなかったのだろうかと余計なことを思ってしまった。
・蝶よ花よ
可愛らしいあの子の姿を、私はそう簡単に褒めたりなんかしない。
既に出来上がった"完成品"のあの子を、私は雑に評価なんてしない。
見えない所に彼女の良さと成果が詰まっているのだから、誰が見ても分かるところだけを愛さないでほしい。
僻み?嫉妬?どうぞご勝手に。
私はそんな事で彼女の価値を下げたりなんかしないし、そんじょそこらの人間より私は彼女を分かっているので。
分かっているからこそ、私は彼女を褒めないし評価しない。
ただそれだけ。
蝶よ花よと自分に関わる大人から甘やかされて育った娘
彼女が自分中心な考えになるのは必然だった
「私は今 チョコレートケーキが食べたいの!
今すぐ用意しなさい!」
専属パティシエに命令する娘
雇い主の娘だ
どんなに無茶な命令でも従うしかないだろう
「おい、その言い方はないだろ」
「お父様!」
俺が止めに入ると娘は目を輝かせる
「娘がすまない
持ち場に戻ってくれ」
パティシエに声をかけると頭を下げてから部屋を出て行った
「お父様!?」
俺の言葉に娘は怒りを見せたが無視し、話し始める
「千鶴、甘やかして育てた私達が悪かった
だが、私はお前に言ったよな?
次 同じ様な態度をとるなら容赦はしない、と」
「そ、それは…」
口篭る娘にため息が出た
「使用人だけではない
お前は友人にも同じ様な態度だったそうじゃないか」
「……」
思い当たる節があるのか黙る娘
「お前は可愛い娘だ
だから、変わる猶予を与えた
それなのにお前は…」
そこで言葉を止め、娘の傍まで歩いて行く
「無げにした!!」
ダンッとテーブルを叩くと娘の肩が跳ねた
「お前には失望した
この家から出て行け」
それだけ言うと娘を見ずにその場から立ち去る
後ろから叫ぶ娘の声が聞こえるがそんなのは知った事ではない
世の中そう何度もチャンスは訪れないのだから
蝶よ花よと育てられた、というと世間知らずの箱入り娘がイメージされる。
世俗的なこととは無縁で、綺麗なものだけ見て大事に育てられたお嬢さん。
たまに、そんな蝶よ花よと育てられたはずのお嬢さんが正反対の方向に行ったりして、世の中をびっくりさせる。
反骨精神が噴出したか、どこかでぬかるみに嵌ったのだろう。
蝶よ花よと育てられても、家の外に出ればいろいろな人に会うし、スマホを与えられたらインターネットやSNSを通し、どうしたって人の悪意に触れる。
箱入り娘を維持するのは難しい。
ペットくらいなものか。
生まれ変わるなら、できれば金持ちの家の子猫になって、蝶よ花よと育てられたい。
エアコンのきいた部屋でゴロゴロしているだけで可愛がられるなら、絶対に箱から出ない。
『蝶よ花よ』
私は蝶でも花でもない
そこら辺のただの草
でもそれでいいの
ちやほやなんていらない
私が私であるだけで十分だから
美しい翅も華やかな香りもない
名も知られぬ多数の一
でもそれがいいの
持て囃されるのは望んでない
私は私に満足してるから
私の価値は私が知ってるから
——蝶よ花よ
蝶よ花よ
可愛がるみたいな意味だよなと思って調べたらそれで合ってた。しかし蝶よ花よか。
あいにくそこまで愛情を持って育てているなにかはないしそこまで愛情を持って育てられなかった。だから今回のお題はちょっと難しいな。
うーん、今日はほかに書くこともないしどうするかな。
そういえば昨日の夜は久しぶりにエアコンを切ったな。弱除湿なのに寒かったからこれならエアコンなしで朝まではいけるだろうと思って。
でも一時間もしないくらいでエアコンをつけた。やっぱりエアコンなしは暑い。
どうにもこのエアコンは性能がよすぎる面がある。おかげで快適に過ごせてるけど時々寒くなるんだよな。
それでも去年よりは断然ましだけど。暑いとまじで死ぬけど寒ければ厚着して布団被ればいいしな。
蝶よ花よと子供を可愛がるというけれど、俺は蝶よ花よと世界を愛してる。
まだ見ぬ世界。地元だけでも行ったことがない場所があって、日本だけでも行ったことがない県がある。
そこには何があって、どんな人がいるのだろうか?どんな食べ物があるのだろうか?季節ごとに違う表情があるけれど、全てを見てみたい。
それに海外にも行ってみたい。本には、日本では考えられないような文化が書いてある。
俺はそれを自分の五感で感じたい。
四季がない気候って?凍るほど寒いって?お弁当を作らないって?上下関係がないって?
それ、どんな感覚なんだろうか。
分からなくて、ワクワクするものが一杯ある。だから俺は世界を蝶よ花よと大事にしたい。
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