『落下』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
内腑のひっくり返る感覚
たった3秒前のような
あるいは15年は前からのような
風を泳ぐ袖口が
ずっと擽ったかったような
引き千切れるように痛かったような
目の前の景色より
脳内の光景が光速に過ぎて行くような
悔しさも苦しさも全部置いて
でも自由には程遠いような
そんな永遠のような
けどずっと刹那のような
そんな
潰、
‹落下›
それは光り輝く美しいものでしょうか
誰もに万遍無く与えられるものでしょうか
カウントダウンに等しいものだったでしょうか
不公平に奪われ消費されるものだったでしょうか
あるいは
あるいは、
そうきっと、
航海の先、君にとっての宝島となる、
その未知を選び掴めるなら。
‹未来›
落下
暗闇の底に落ちていく
どこまでもどこまでも
底では何を思ってもいい
唯一私だけが入れる場所
今日
辛かったことも
腹がたったことも
悔しかったことも
怒りに震えたことも
全部底で吐き出す
1日でも早くこんな環境から抜け出せるように
私は努力する
絶対負けない
あんなやつに
怒りを乗り越え、私は頑張る
「落下」という言葉から一番に連想したイメージは、夜空に大輪の花を咲かせる打ち上げ花火だった
花火は、まさに落下していく美しい様を魅せる芸術だと思っている
先日まで花火師が主人公のドラマが放送されていたが、その一瞬の感動の為に何ヵ月もの時間を費やして造りあげられる花火が、何故あれほどまでに人の心を動かすのかが少し分かった気がした
美しいものを造り上げたいという一念で、代々受け継がれて来た秘伝の色合いに調合された火薬をひとつひとつを丁寧に敷き詰めていく、気の遠くなるような人の手による作業
そして、気候や気温、湿度といった人の力ではどうにもならない条件とのコラボレーションが生み出す奇跡
ひとつとして同じものは存在しない
その一瞬を見逃したらもう二度と同じ花火は見ることが出来ないという事実に
人はどこか人生を重ね合わせて見ているのかも知れない
夜空に浮かぶ大輪の花火のかけらが落下していく様に、これまでの人生を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか
人生の最後に、自分の為だけの花火を打ち上げてもらい、「そこそこ良い人生だったかも」
と花火のかけらのごとく、潔く命の炎を落下させてみたい
『落下』
たまに暑くて眠れない時に
崖から落下する夢見るな
そう言えば
落下(君に幸多かれ)
落ちていく。落ちていく。
今この瞬間も物凄い速度で急降下している。
周りに飛び交う悲鳴と怒号が凄まじい。
―――阿鼻叫喚。さながら地獄絵図。
「………にはまだ、早いか」
周りの喧騒とは対照的に、俺はひとり静かに呟いた。
立ち上がり右往左往する人混みの中、至って冷静にペンを走らせる。
冷静、というより俺は感覚がとっくに麻痺していた。
―――もう助からない。
………嫌という程肌で感じ取ってしまっていた。
こんな上空何千メートルの位置にあって、小さな窓からは炎しか見えない。
万が一の望みを賭けて、助かろうとする人々のいじらしさに虚しさを覚えながら―――俺はさらにペンを走らせる。もう殴り書きに近い。
“ごめん。ごめんな。
こんなところで死ぬなんて。
君を置いていく俺を責めてくれ”
左側で耳を劈く爆発音。
衝撃で書く手が揺れる。
………ただでさえ震えが止まらず上手く書けないってのに、勘弁してほしい。
“お願いがある。
俺の棺に君から貰ったラブレターを入れてほしい。
俺の自室の戸棚の、3番目の引き出しの奥に入っている。
遺体は燃え尽きてないかもしれないが、葬儀の際にどうか入れてほしい”
今度は反対側の後方から鈍い破裂音。
ああ。ああ。
まだ書きたい、書き足りない、
どうか、どうか神様、
―――急激な急降下に目眩がしたが、俺は必死で紙とペンを握り締める。
離すものか。
離すものか。
ごめん、
どうか君に 幸、あ れ
「奥さま」
―――訃報の一報が届いてから、記憶が曖昧だった。
現地に飛び、彼の最期の場所に足を踏み入れるまで長い時間を擁した。
「………もう、破片しかないのね」
飛行機の残骸は見るに堪えないもので、生存者はひとりもいなかった。
燃料全てを炎に変え、遺体はおろか所持品でさえ発見は困難を極めた。
『お土産は君の大好きなカリソンにするよ。
もちろん覚えてるさ、通称幸せのお菓子』
幸せの………
―――涙が溢れそうになるが、彼女は唇を噛み締めて空を仰ぐ。
………泣いたらあの人が心配する。
これ以上あの人を苦しめてどうするの。
「………奥さま。そろそろお戻りに」
「―――ええ」
促され、彼女がそっと背を向け歩き出したその時。
一陣の風が吹き抜けた。
「!………」
強風に思わず手で顔を遮る、―――その掌の内に。
? なに、紙……?
“幸 あれ”
それを手にしたまま、彼女が振り返る。
―――砂塵が舞い、わたしの周りを名残惜しむように風が通り抜けた後。
彼がすぐ傍で笑ったような気がした。
END.
幸せとは、他人を交えなければ得られぬ感情である。
幸せとは、他人と自分を完全に切り離した先に初めて得られる感情である。
どちらも正しくどちらも残酷だ。
自分はどちらの幸せを得たいのか。
「『勝手に』落下『する』、『意図的に』落下『させる』、『誰かによって』落下『させられる』。
あとは何だ、『自由』落下?落下『防止対策』?」
サーバーが「落ちる」とかは、落下ってより陥落が近いよな。某所在住物書きはスマホの画面を見ながら、ネット検索結果を辿っている。
「テーブルからパンが落ちる時、ほぼ確実にジャムを塗った面を下にして落下する、てのもあった」
落下って、結構いろんなハナシに持っていきやすいな。実際に書けるかは別として。
物書きはカキリ首を傾け、鳴らし、ため息を吐く。
――――――
夢オチネタが書きやすい気がする物書きです。
だって適当に夢を見ておいて、キリの良いところで現実サイドの自分の足を引っ張れば、簡単に「『落下』する心地」で起きることができるのです。
あの一気に落下する感覚、ネットによると「ジャーキング」と言うらしいですが、別の記事では「ミオクローヌス」なんて単語が出てきます。
どっちでしょうね。素人の不勉強なので、分かりません。 と、いう雑学は置いといて。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、偉大な化け狐、善き御狐となるべく、人界で絶賛修行中。
まだまだお得意様はひとりだけですが、ぺたぺたコンコン、お餅をついてアレコレ入れて、狐のおまじないをひと振り、ふた振り。
週に1〜2回の頻度で売り歩きます。
子狐のお餅は不思議なお餅。ウカノミタマの大神様のご利益ある、心の病や魂の傷を癒やし、ちょっと運を良くしてくれます。
高コスパで、バチクソありがたいお餅なのです。
今日もコンコン子狐は、お守りさげて人間に化けて、白いホタルブクロの明かりと、お餅を入れた葛のカゴを手に、たったひとりのお得意様の、アパートのインターホンを鳴らしました。
今回のお餅は特別なお餅。1年に1回だけの「落とし餅」。昔々から続く、ひとつの農耕儀礼でした。
「おとくいさんも、今年のおとしもち、どうぞ」
キラキラ硬貨が好きな子狐のため、コインケースを持ってきたお得意様。真面目な雪国出身者でして、名前を藤森といいます。
その藤森を、うんと見上げて、コンコン子狐、いつもより少し小さめなお餅を差し出しました。
「『落とし餅』?」
「そろそろ、ぜんこく、つっつウラウラ、田植えが揃うの。早いとこは3月で、遅いとこは今頃なの」
「そうだな」
「田植えが終わったら、さのぼりなの。泥落としで、虫追いなの。稲を食べちゃう悪い虫さん、心を弱らせる悪い虫さん、落とすの」
「そう……だな、多分?」
「だからおとくいさんも、おとしもちで、今年の悪い虫さん落とし。どうぞ」
「そうか」
「心のばるさーん、魂のごきーじぇっと」
「それはちょっと違うと思う」
「とんでとんで、まわっておち〜るぅ」
「聞いてくれ子狐。多分、違う」
それは、田植えの終わりを祝い、五穀豊穣と悪疫退散を祈る、1年に1度だけのお餅でした。
かつてほぼ全国で祝われた、時期も形式も餅の有無さえ違えど、労働のねぎらいと豊作を願う根っこはきっと一緒であった、しかし昨今各地で失われつつある、日本の昔々でした。
藤森の雪降る故郷でも「さなぶり」として僅かに残る、稲田と生き四季を辿る風習の欠片でした。
「虫落としの餅か」
懐かしさと共に、餅をひと噛み、ふた噛み。落とし餅は藤森の心魂の中の、悪い虫にもっちゃり引っ付いて、それらを善良に落としていきます。
「お布施は、いくらが良いだろう?」
私のところでは、餅や御札を貰ったり、舞を舞ってもらったりする礼に、たしかお布施を渡していたから。
藤森は付け足して、説明しました。
コンコン子狐、まんまるおめめをキラキラさせて、小さなおててをうんと上げて、答えます。
「いっせんまんえんです」
パッタリ。藤森のコインケースが、落下しました。
「冗談だろう?」
「キツネうそいわない。いっせんまんえんです」
「よし分かった質問を変えよう。私が食ったこの餅と、虫落としの御札の値段は?」
「おとくいさん価格、おもちおんりー500円、ウカサマのおふだ3枚付き2000円。ぜーこみ」
「……御札付きを、ひとつ」
「おキツネみくじ5000円おつけしますか」
「そんなコンビニの箸やスプーンを付けるノリで言わないでくれ。いらない……」
久しぶりにあの夢を見た。
母さんが喚く。
机のものが散らばる。
グラスが落下する。
ガラスの割れる音。
劈くような鳴き声。
罵声、怒鳴り声が僕に浴びせられる。
あんたなんか生まれなきゃ良かった、と。
いつの間にか握り拳を作っていた。
爪の跡が手の中にくっきりとついている。
夢だったんだよな。
もうこれは終わったことだ。
僕はもう、あの時の“僕”じゃない。
誰に何と言われようと、僕はもうあの日に還らない。
だってそうでしょ。
誰も僕を助けてくれなかったんだから。
なら自分で変わるしかない。
だからあの頃の“僕”を形成するもの全部棄てた。
故郷も名前も戸籍も全部。
でも、頭の中身だけは棄てられない。
こんなに無駄なもので埋め尽くされてるのに、
どうしたって綺麗にデリートできなくて。
そう悩みだす頃にまた、あの悪夢を見る。
忘れるな、と言われてるような気がして目眩がする。
もういい加減解放されたいのに。
僕にどこまでもついてくるあの日々が、憎い。
落花生
「落」ちた「花」から実が「生」えるから
参照:株式会社川越屋
ジェットコースター
落下の浮遊感がおもしろい
パラグライダー
風を感じて空を飛ぶことができる
飛び込み
着⽔までの⼀連の動作の技術、美しさを競う競技です。⾶込から着⽔まで、わずか2秒弱という短い時間内に様々な技を繰り出し、評価点を競います。
参照:公益財団法人日本水泳連盟
飛び降り
危険だとわかっていてもわからなくなってしまう
多くは人間が高所から落下すること、その中でも落下を利用した自殺の方法のことに限定して「飛び降り」と呼ぶ場合が多い。
参照:Wikipedia
落ちる、落ちる、落ちていく。
どこまでも、どこまでも。
落ちた先に、何があるかはわからないけど。
落ちていく、どこまでも。
そろそろ落ちるのも終わりかなと思ったら、
不意に身体が軽くなって。
ふわりと、落下速度が穏やかになった。
ふわり、ふわり、落ちていく。
そろそろ底かな? 見えてきた。
落ちた先で、待っていたのは君だった。
君の腕の中に、すっぽり収まる。
ずっと待ってたんだよ、と君は笑う。
ああそうだ。
君に会いたくて、僕はここに飛び込んだんだった。
記憶だけ、先に抜け落ちていたみたい。
待たせてごめんね、もう離れないから。
そう言って、君をぎゅっと抱きしめた。
雨上がり 緑現れ 手にスマホ
おつかいも 筋力ついて 快調
おそらく私は突き落とされる。
職場の職員用階段で、ある職員の手によって。
最近、そんな妄想に取り憑かれている。
私を落下に導く人は、二人の子供の母親。夫がいるが、過去に私を好きだと言った男と付き合っている。
そして私は心の奥底で、彼女のことを思っていた。でも彼女は私の気持ちを汲んではくれなかった。
それどころか、私を嫌悪し、嫉妬すらしている。
私にあって彼女にはない、唯一のもの…私の若さに。
今では男は、彼女のことしか見ていない。私が男を振った瞬間から、私には何の興味もなくなっているはずだ。何なら、あの日男が私にした告白も、“若い女”に男をとられるのではないかと不安がる彼女のためだったのだと、あとになって聞いた。
それほどまでに男に愛されているというのに、彼女は私を、ただ自分よりも若いという事実だけで妬み続けている。私が好いているのは男ではなく彼女だというのに。
好きな人に振り向いてもらえないばかりでなく、自分では対処できないことで妬まれ、嫌われる淋しさなど、彼女にはきっと関係のない事なのだろう。
それでも私は彼女に突き落とされる瞬間、微笑を浮かべようと思う。それが、彼女に対する私の思いの全てだから。
(落下)
「落下」
落ちて
落ちて
落ちて
底までたどり着いたとき
どんな空が見えるだろうか
絶望から何も見えない夜空だろうか
世間の光から離れた事による満点の星空だろうか
はたまた空なんて見えないのだろうか
落ちてしまわないと分からないことだってある
1度落ちてしまったのならもがかず流れに身を任せて
底まで落ちてしまおう
きれいな花が咲いているかもしれないしね
テーマ「落下」の作品を眺めた。なるほど。それは元々高い位置に居るときと、高く上がったあとに、起こることか。
個人的な話だと、ジェットコースターは好きだが、フリーフォールはかなり死を感じる。体の安定を失う無重力感と、地面に当たって潰れる想像が、ずっと未知なる恐怖なのだと思う。バンジージャンプなんて一生したくない。
だが、人生が落下していることに気づかないのはもっと怖い。
落下
動画とかゲームでキャラクターが高いところから落下することがあるけどああいうの見ると自分も落ちるような感覚がして血の気が引く。怖いよね高いところは。
外国人なんかは恐怖遺伝子がどうとかで高いところ平気っていうけど本当なのかね。でも高いところからの動画は外国人が多い印象がある。パルクールっていったかな。
調べたらパルクールは違うっぽいな。なんにせよ画面越しでも落下する映像は怖い。
私は通勤中で、向こう側の道へ渡るために
横断歩道で信号が青になるのを待っていた
街路樹が並ぶ、静かな空気を感じ
暖かい陽の光を浴びながら
一瞬のことだった
上から落ちてきたのは
セーラー服を着た女の子
驚いたのと同時に
「何処から…?」の疑問と
目の前で砕け散ったいのちを見つめ
ぐじゃぐじゃになった気持ちを
胃の内容物と一緒に吐き出した
ここの周りには飛び降りられるような
高い建物なんてどこにもないのに
─────── 落下 2024-06-19(いつか見た夢)
「落下」
なんか「落下」と聞くと「落ちる」とか「下がる」とか
考えてしまう。それを気にするとしんどい。
あまり、考えてはいけない。私は闇落ちしかねない。
気をつけないと、いけない。
空を見上げるのは好き
高いところから遠くを眺めるのも好き
でも真下を見るのは怖い
呼吸が浅くなって手の感覚がなくなる
落下
戻ってこれないような響き
でも落ちたら落ちたで
そこに楽園があるのかもしれない
このアプリを開いた時に最初に出てくる文章記入画面のグラデーションが、『落下』の色に似ている
ここから落ちてしまえば、もうここへは戻って来られないだろうな。と思う。
同時に、ここから落ちてしまえば、今の苦しみからは逃れられるのかもな。とも。
今はまだ、ギリギリな綱渡りをしている。
ここから足を滑らせたら、一巻の終わり。怖い。楽になれるのかもしれない。気持ちが揺れ動く。
でも、そんなことを考えたってしょうがない。まだ踏ん張る。もう少しだけ、頑張ってみる。
その先がどうなるかはわからないけど、まだ落ちていきたくはない。
『落下』