「落下」という言葉から一番に連想したイメージは、夜空に大輪の花を咲かせる打ち上げ花火だった
花火は、まさに落下していく美しい様を魅せる芸術だと思っている
先日まで花火師が主人公のドラマが放送されていたが、その一瞬の感動の為に何ヵ月もの時間を費やして造りあげられる花火が、何故あれほどまでに人の心を動かすのかが少し分かった気がした
美しいものを造り上げたいという一念で、代々受け継がれて来た秘伝の色合いに調合された火薬をひとつひとつを丁寧に敷き詰めていく、気の遠くなるような人の手による作業
そして、気候や気温、湿度といった人の力ではどうにもならない条件とのコラボレーションが生み出す奇跡
ひとつとして同じものは存在しない
その一瞬を見逃したらもう二度と同じ花火は見ることが出来ないという事実に
人はどこか人生を重ね合わせて見ているのかも知れない
夜空に浮かぶ大輪の花火のかけらが落下していく様に、これまでの人生を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか
人生の最後に、自分の為だけの花火を打ち上げてもらい、「そこそこ良い人生だったかも」
と花火のかけらのごとく、潔く命の炎を落下させてみたい
『落下』
6/19/2024, 3:31:53 AM