久しぶりにあの夢を見た。
母さんが喚く。
机のものが散らばる。
グラスが落下する。
ガラスの割れる音。
劈くような鳴き声。
罵声、怒鳴り声が僕に浴びせられる。
あんたなんか生まれなきゃ良かった、と。
いつの間にか握り拳を作っていた。
爪の跡が手の中にくっきりとついている。
夢だったんだよな。
もうこれは終わったことだ。
僕はもう、あの時の“僕”じゃない。
誰に何と言われようと、僕はもうあの日に還らない。
だってそうでしょ。
誰も僕を助けてくれなかったんだから。
なら自分で変わるしかない。
だからあの頃の“僕”を形成するもの全部棄てた。
故郷も名前も戸籍も全部。
でも、頭の中身だけは棄てられない。
こんなに無駄なもので埋め尽くされてるのに、
どうしたって綺麗にデリートできなくて。
そう悩みだす頃にまた、あの悪夢を見る。
忘れるな、と言われてるような気がして目眩がする。
もういい加減解放されたいのに。
僕にどこまでもついてくるあの日々が、憎い。
6/19/2024, 2:58:50 AM