雪だるま

Open App


おそらく私は突き落とされる。
職場の職員用階段で、ある職員の手によって。


最近、そんな妄想に取り憑かれている。

























私を落下に導く人は、二人の子供の母親。夫がいるが、過去に私を好きだと言った男と付き合っている。
そして私は心の奥底で、彼女のことを思っていた。でも彼女は私の気持ちを汲んではくれなかった。
それどころか、私を嫌悪し、嫉妬すらしている。
私にあって彼女にはない、唯一のもの…私の若さに。
今では男は、彼女のことしか見ていない。私が男を振った瞬間から、私には何の興味もなくなっているはずだ。何なら、あの日男が私にした告白も、“若い女”に男をとられるのではないかと不安がる彼女のためだったのだと、あとになって聞いた。
それほどまでに男に愛されているというのに、彼女は私を、ただ自分よりも若いという事実だけで妬み続けている。私が好いているのは男ではなく彼女だというのに。
好きな人に振り向いてもらえないばかりでなく、自分では対処できないことで妬まれ、嫌われる淋しさなど、彼女にはきっと関係のない事なのだろう。






















それでも私は彼女に突き落とされる瞬間、微笑を浮かべようと思う。それが、彼女に対する私の思いの全てだから。


(落下)

6/19/2024, 2:32:19 AM