『花束』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
母は花が好きな人だ。だから、棺桶に祭壇の花を折って入れて燃やすなんてかわいそう、お花は全部持って帰って家に飾ってくれた方が嬉しいと常々言ってた。「夫も言ってました。」母が葬儀場のスタッフに話している。「そんな風に言われる方は初めてです。」と葬儀場のスタッフも困惑している。結局、小さな花束と一人1~2本ずつ、花を折らずに供えることになった。
通夜の夜、出来上がった祭壇を見ながら、母は「棺桶にあの辺の花は入れないでね。持って帰って飾るから。」と言った。祭壇に飾られた遺影の中の父が笑ってる気がした。
葬儀がすみ、残った多くの花はたくさんの花束になった。父から母への最後のプレゼントだ。その花束を孫たちが持ち、祖母である母を囲んでいる。
『花束』
飾る花瓶がない。
愛情の伝え方も、受け取り方も分からない。
ダズンローズを贈ろう。
感謝。
誠実。
幸福。
信頼。
希望。
愛情。
情熱。
真実。
尊敬。
栄光。
努力。
そして永遠。
すべてをあなたに。
#花束
《花束》
家族?大切な人?それとも、、
いい感じの人とか?笑
ばぁーちゃん、じーちゃんとか?
LIKE?LOVE?
あなたは誰に花束を贈りたい?
今日もあと半日頑張りましょう!
母の日に送る花束。
私はそれで一度も喜ばれたことがない。
「花なんてただ飾って終わるだけで邪魔だから。」
そういっていつも捨てられてしまう。
#『花束』
No.39
昔好きだった男が住んでいたけれど、ついに連れてきてもらえることのなかった北千住という街を、何年か経って初めて訪れた。
当時どんな気持ちがあって彼と自分とを天秤にかけたのか覚えていないけれど、彼がいなくなったことだけは何年経ってもずっと消えずに残っている。
ふと迷い込んだ北千住の歓楽街は寂れていたけれど、呼び込みの女たちはそれぞれに鮮やかな春の服を着ていた。
きっとこの街には四季などなく、何十通りもの春が気ままな風に乗って年中を巡っているのかもしれない。
桜の春があり、藤があり、つつじ、バラ、梅、たんぽぽ、etc...
今日はどの春風に煽られて男たちは束の間のハメを外すのだろう。
落ちこぼれた歓楽街の隙間にて、春の花のように揺れる女たちの並びは、素人が無骨に手作りした花束みたいだった。
私の居場所のないこの街に少しばかり後ろめたい気持ちを残して、居場所とも言い難い暮らしの街へと帰路に着く。
お題:花束
父が母に花束を渡した。
両手で抱えるくらい大きな花束だった。
あいにく母は花の扱い方が苦手だから、その花束は少しすると枯れて茶色の草木になってしまった。
「これでいいのよ」
母は言った。
「毎年毎年、あの人が贈ってくれるんだから。」
だから、増えすぎると困るでしょ?と言う。
毎年毎年贈られる花束は、大掃除の時に懐かしみながら袋に詰められる。
少し、慢心しすぎだと思う。
でも、それが愛なんだろうか。
だって、父は母の言う通り、毎年花束を抱えて帰宅するのだから。
私は言葉を呑み込んでポテチの袋を開けた。
クシャ、とあの枯れた花束と同じ音がした。
2024 2/10(土) 17『花束』
「花束」
「ありがとう、健康で」
メッセージカードが添えられた
大きな花束が誕生日に
喜びより戸惑いで
素直にお礼が言えず
あれから7年
最初で最後の
大嫌いだった父からの花束
花束。花束っていうとホストクラブやキャバクラな印象がある。後はオープン記念くらいかな。
考えてみれば生まれてこのかた花束というものに縁がない。流石に見たことはあるはずだけど贈ったり贈られたりしたことは一度もない。
でもこれって普通だよな。普通は花束なんてそう縁がないものじゃないか。
まぁ結婚してる人なんかは結婚式とかで縁があるかもしれないけどそれくらいだろ。プレゼントに花束を、なんて人そうそういないべ。
二月ももう半ば近くまで来てしまった。引っ越しのためにいらない物を集荷で買い取ってもらいたいんだけど手続きがめんどうでやってない。
いらない物をメルカリとかで売ればそれなりに金になりそうだけどなにぶん物が多すぎてめんどくさいんだよな。
それならいっそ断捨離のつもりでまとめて中古屋に売ろうと思い準備するも手続きがめんどうで今に至る。そろそろやらないとな。
花束を君に渡そう白い菊の花束を、ついでに君の好きな缶コーヒーも一緒に。どんな顔をしてくれるだろう、笑うだろうか困るだろうかあぁ君に会えるのが楽しみで楽しみで仕方がない。
こんな山の中へ来てくれだなんて無茶なことをいう君が愛おしい、家の近くへ来てくれだなんて言う君が愛おしい。
あぁ君は体が弱いのにそんなところにいたら風邪をひいてしまうよ、缶コーヒーを持ってきたんだ、あと花束も。
酷くねじ曲がったガードレールに供える。
毎日を
リボンでくるみ
プレゼント
僕の全てを
花束にして
「花束」
『記念日に』
今日も記念日が作られる 誰もが知ってる祝日か あるいは私だけの特別な日か 聖蹟桜ヶ丘の階段に花束ひとつ 歩道橋から探すよ 白い車だけ せめて気持ちだけは海へ 砂のベッドで眠りたい
大切なあなたに届け心の花束。想いを伝えたい時、相手に興味を持ってもらえるようプレゼントを渡す気持ちで話す。これができれば幸せな日を過ごせるんだろな。
「今年は薔薇だ」
数年前から誕生日に花束が届くようになった。
差出人の名前は無い。贈られる花はいつも白い花が一種類。カードも何も無いから最初は気味が悪かったけど、花束自体に何も変なところは無かったし、何より花が本当に綺麗で、ありがたく受け取ることにした。
去年はカーネーション。一昨年は百合。その前は小振りの蘭だった。そのもう一年前は何だったか。スプレーマムだったか。
もう忘れてしまったけれど綺麗な白だったことは覚えている。部屋に飾るだけで華やかになった気がして、顔も名前も知らない贈り主にひそかに感謝した。
◆◆◆
「で、今年も届いたと」
「うん」
「それがこれ?」
「うん。見事な薔薇だよね。こんな大輪で、形が綺麗なのばっかり」
「去年はカーネーションだって?」
「うん」
「全部白?」
「うん、そう」
「·····」
「綺麗だよね。この薔薇もさ、見て。トゲが取ってあるんだよ。気遣いが嬉しいなぁ」
「·····」
「アンタ、引っ越した方がいいかもね」
「へ?」
「これ、棺に入れる為の薔薇だよ」
「――」
「ご遺体の顔に傷が付かないようにトゲを取って入れるんだよ」
「·····ど、え? ·····棺って、」
「スプレーマム、蘭、百合、カーネーション、だっけ? 全部白で? ·····それ、棺に入れるお別れ花だよ」
「なんで?」
「さぁ、嫌がらせ、かな? ストーカーかも」
「·····なん、なんで? 誰が、なんで? わ、私、毎年誕生日に楽しみにして·····、綺麗で、」
「引っ越した方がいいよ。なるべく早い内に」
「·····っ!!」
ガシャン!!
床に散らばる花びらが彼女の目には滲んで見えていることだろう。
――そうして早く、私の元に来ればいい。
END
「花束」
『花束』
私の父は花屋をやっていた。花が繋ぐ縁というのはいろいろとあるのだろうが、一番身近なものはこの店先で父と母が出会い、私が生まれたことだろう。そんな父が開いた花屋を今は娘の私が切り盛りしている。
「バラの花を100本もらいたい!」
開店すぐに勢いのあるお客様が入ってきた。バラの花100本というのは花屋をやっているとたまに遭遇する注文だ。だいたいは冗談や、やっぱナシでとなる類のものなのだが、ひとまず笑顔で対応する。
「お客様、即日ご入用でしょうか?」
「ああ!今すぐに頼む!今夜に間に合わせたい!」
内心舌打ちするが努めて笑顔で対応する。
「申し訳ありませんがお客様、只今この店に100本のバラのご用意は御座いません。本日中となりますとここよりも大きめの花屋を当たっていただくほうが……」
「いや!僕はこの店がいいんだ!なんとかならないだろうか!」
内心舌打ちが止まらない。人の話や都合を聞けない人間だろうか。
「失礼ですがお客様、私の店でなければならない理由をお伺いしても?」
「それはだな!かつて僕の父がこの店で同じようにバラを買ったことがあるからだ!」
そういえば、と脳裏に浮かぶ父が100本のバラを注文した客がいた、と話していた事があった。父は客の勢いに断りきれず、同業の花屋や卸業者に電話を掛けまくり、車をほうぼうへ走らせて花を調達したのだと疲れた様子で言っていた。
親子の遺伝というやつがあるのなら、間違いなくその時の客の子が目の前のこいつだろう。そして、親子の遺伝というやつが私にも当て嵌まるのなら注文を受けて立つことになるのだが、正直嫌だった。
「……お客様、お時間なかなかに掛かりますし、あとそれからお値段もけっこう張りますが、いかがなさいますか?」
「かまわない!よろしく頼む!」
正直嫌だったが、お客様に力強く注文されてしまったので受けて立たないわけに行かなくなった。父の気持ちが今ならとても良くわかる。これも親子の遺伝というやつか。
そうして電話を掛けまくり、車をほうぼうへ走らせてどうにかバラの花100本の花束が完成した。花代とラッピング代と手間賃ともろもろを乗せて請求した代金に、日が傾いた頃にやって来たお客様はさして驚く様子も見せずに気前よく払ってくれた。
「ありがとう!よくやってくれた!これで僕も胸を張ってプロポーズに臨めるよ!」
腕いっぱいの花束を嬉しそうに抱えてお客様は颯爽と店を後にする。いい笑顔だなと疲れた頭で思ってしまったので少し多めに見積もった代金に罪悪感が湧いてきたが、疲れたものは疲れた。後片付けにのろのろと取り掛かるうちに閉店になり、しばらくしてから先ほどのお客様が入ってきた。
「プロポーズを断られてしまった。しかもディナーが始まる前から」
100本のバラの花束を抱えて、とても落ち込んだ様子で。
「プロポーズが上手くいかなかったから、うちに恨み言を言いに来たんですか?」
疲れていたので接客態度を忘れていたが、閉店時間過ぎたしなと思い直した。
「いいや、逆さ!感謝と、謝罪を伝えに来たんだ」
目の前に100本のバラの花束が差し出される。
「無茶な注文をしてしまったのにやり遂げてくれてありがとう。貴女には迷惑をかけてしまったのに、成果を上げることができなくてすまない」
だから詫びの印として受け取ってほしい、とお客様は恭しく跪いて言った。花屋である以上、花束を捨てることはできない。それに罪悪感も存在を増してきた。だから花束を受け取って作業台の上に置き、跪いたままのお客様を立たせて言う。
「近くにいい居酒屋があるんで、飲みに行きましょう。ちょうど臨時収入も入ったので」
どういうことだいと言うお客様をいいからいいからと言いくるめて店を後にする。失恋の愚痴ぐらいは聞いてやろうという気持ちでの行動だったのだが、それが後々花屋へ婿入りさせることへと繋がっていくとはこの時点では誰にもわからなかった。
花が繋ぐ縁というのはいろいろなものがある。
『花束』
今日は親しき友人たちに花束を贈る日だそうです。
ええ、私が勝手に決めました。
いつもお世話になっているセバスチャンには、
カモミールの花束を贈ることにしました。
花束を受け取ったセバスチャンは
その場に固まってしまいました。
「あ、いえ…このようなものをいただいたのは
初めてで、その、ありがとうございます」
戸惑っている様子でしたが嫌がる素振りは
見せなかったので、私はホッとしました。
クンクンと花束の匂いを嗅ぐ姿に笑みがこぼれます。
魔術師にはライラックの花束を贈りました。
「ありがとうございます。私もお嬢様へ日頃の感謝として、花束を用意したのでどうぞ受け取ってくださいませ」
そう言って黒薔薇の花束を差し出す魔術師。
「まあ、おかしな魔法でもかけられて
いないでしょうね?」
「安心してください。私の想いしか込められて
いませんから」
青い目を持つレディには、
勿忘草と白百合の花束を贈りました。
花束を受け取った彼女は私に抱きついてきました。
いきなり飛びかかってくるとはなんてはしたない子!
彼女は花が綻ぶような笑顔で言いました。
「大好きよ!」
私の完全なる自己満足のために作った記念日ですが、
皆様に喜んでいただけたのならなりよりですわ。
おーほっほっほ!
あなたが最後に渡しにくれたのはシオンの花束だった
紫色の小さく可憐なその花は、なぜかさみしげな表情を浮かべている
私は花言葉なんて全然知らなかったから、この花束であなたがどんなことを伝えたかったのかわからなかった、が
理解したときにはもう手遅れだった
ー シオン 「あなたを忘れない」、「追憶」ー
彼は末期がんだった
余命3ヶ月との宣告を受けていたそうだ
入院して治療を受けるという手段もあったが、彼はあえて
入院せず、普通の生活を過ごしていた
そんなこと知らずに私は…
シオンにはもう一つ意味がある
「愛の象徴」
私は彼の前にシオンを置く
シオンは顔を上げ、蒼い空を真っ直ぐ見つめていた
花束に関して、誰にも話していない「しょん…」とする話がある。10年ほど前に、私の働いていたバイト先の店長が独立してオーナーになるというタイミングがあった。割とロマンチストな店長だったので、私はサプライズで花束を渡そうと思い、家とバイト先の間にある小洒落た花屋に初めて入った。奥には小さなおじいさんがムッとした顔で座っており、私はやや緊張しながら花束にする花を選んでいた。
「全体的にオレンジっぽくなるよう、1000円前後で小さい花束を作っていただけますか…?」
とおずおずと問うと、おじいさんはカウンターから這い出てきて、なれた手付きで花を選び、束ねてくれた。しかしラッピングの段階でおじいさんは深刻な顔になる。
「ラッピングはいつも息子に任せてるのでやったことがない」
えっ!最初に言ってくれれば考慮するのに…!そこにあるアレンジメント済みのやつ買いましたのに!しかし、不要な枝葉や花びらをとってしまったそのお花を戻させるわけにもいかん。
「…一緒にやりましょう…!!」
そして私はおじいさんと力を合わせ、苦心してラッピングを施していく。しかし、私とてなんのスキルも持っていない。できあがったのは花束というには無理のある、こどもが野山でつんできたような物体だった。見様見真似でくるんと巻こうとしたリボンがくちゃくちゃとよじれて、哀愁がただよう。
私は面白おかしく事情を話して店長に花束を渡した。店長は…笑って喜んではいたが、同時に、目に哀れみや寂しさのようなものを湛えていた。
誰が悪いでもないこの出来事を、私は花束を見かけるたびに思い出すのだ。
「玲人(れいと)が好き」
帰り道、俺は人生で初めて好きな人に告白された。
「___って事が......ちょっと玲人!?!?服服!!」
「え?......ぅわっ!!ヤベッ!!」
俺は拓也(たくや)の家で、お昼に食べていたパスタのミートソースを服に溢していた。慌ててティッシュペーパーで取るも、シミが出来てしまった。これはなかなか落ちないかもしれない。床を見るが落ちていないらしい、良かった。
「玲人何かあった?最近ずっとぼけぇぇーっとしてるし」
「ちょっと言い方。まぁ.........色々あってさ」
「なんだよ色々って」
「...色々」
まさか告白された、だなんて言えるわけがない。
「.........もしかして帰り道なんかあったのか?」
「えっ」
「葉瀬(ようせ)と喧嘩でもしたのかよ」
「してないっ、けど......」
俺はそこで黙ってしまった。あぁもう、なんでこうなるんだよ。
俺はあの日を思い出す。
好き、と言われたあと凄い爽やかな顔で『返事はいらないよ。ごめんね』と言って、彼女は走って帰ってしまった。
俺はずっと、葉瀬は拓也が好きなんだと思ってた。だから俺は驚いてすぐに返事が出なかったんだ。
俺も好きなのに。
拓也は俺の服の代わりになるものを探している。
「......拓也」
「ん?」
「...伝えそびれた話って、どうやって言えばいい?」
「伝えそびれた話?...うーん、それとなく匂わせるとか?はい、服」
「ありがと」
俺は拓也から服を受け取る。
「あ、でも葉瀬にやるんだったら察せ系は止めた方がいい。そういうの嫌いだったはず」
「え、そうなの?うーん...」
「葉瀬にならどストレートに伝えるのが一番言いと思うよ。それが駄目なら花とか。意外と花言葉とか知ってるし、察せ系の中では全然許容範囲なんじゃない?」
「花...か」
確かに、彼女は子供っぽい所があるがそれはその場を盛り上げるためのキャラ作りで、素は凄く大人びていたはず。相手の事を嫌ってほど気を遣っている。
そんな彼女が花言葉を知っていても不思議ではない。
「......花にしようかな...うん、拓也ありがとう。スッキリしたよ」
「良かった。またなんかあったら言えよ?玲人の落ち込み顔は見たくねぇからな」
そう言ってニコニコと笑う。
拓也も葉瀬と似て素は本当、相手の事を嫌ってほど考えてるよね。
そして、週末。葉瀬と会う約束をした日。拓也と話すと善は急げだとかなんだとかで、その場で約束をさせられた。でもこれで良かったのかも。
俺は早速お花屋さんに足を運んだ。
カラン、コロン
「...あの、すみません」
「はい」
「その......俺、花をプレゼントしたいんですけど......どんなのを渡したらいいですか...?」
実は俺は極度の人見知りで、お店の人に話しかけるのも少し怖かったため声が震えてしまった。
「相手の方が喜ぶようなお花にしましょう。例えば...その方の好きな色の花などありますか?」
「あ...青色とか、水色が好きです」
「成る程...」
「...あの、その...彼女、花言葉とかよく知ってて......想いの入った花がいいかなって...」
「失礼ですが、どのような想いでしょうか?」
「えっと......この前告白されて...同じ気持ちだって、返事をしたくて...」
「わぁ、素敵な話ですね...!」
「ありがとうございます...」
でも店員さんは優しく一緒に考えてくれる。ここのお花屋さん初めて来たけど、ここで良かった。
店員さんが俺の考えている花の前に連れていってくれる。そこには俺の希望通りの、青く小さくて可愛らしい花があった。
「...この花はいかがですか?」
「これは?」
「勿忘草と言います。花の色によって花言葉が違うんです。この青い勿忘草の花言葉は『真実の愛』『誠の愛』です。夫婦やカップルの記念日などによく送られています。ドライフラワーにして、栞にも出来るんです。どうでしょうか?」
花言葉もいい......よし。
「...これにします。これでお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員さんは花を手際よく包んでいく。流石プロだな、とぼんやり眺めていた。
「お待たせしました」
「わ......凄い綺麗...!ありがとうございました」
「いえいえ」
葉瀬も花を見るのが好きだと言っていたはず、だから。
「また来ます......今度は彼女と」
「楽しみにしています」
言えた。ちょっと恥ずかしかったけど言えた。
また来ます、って。
花も綺麗だ。俺は渡すのが楽しみになっていた。
「...とは言ったものの」
直前まで来るとやはり怖じけついてしまって、なかなかインターホンを押せない。
ちゃんと言うんだ。そのためにここに居て、花も買った。押せ、押すんだ!!
俺は震える指でインターホンを押した。
はーい、と声がしてしばらくすると彼女が出てきた。
「玲人...?えっとそれは......」
やはり花を見て驚いている。
「勿忘草、だよ...」
「勿忘草?」
「...あのさ...この前の告白だけど...」
「え、あれは」
「...っ俺!」
いきなり出た大声に葉瀬はビクッ、と肩を震わせる。
俺は深呼吸をして、葉瀬を真っ直ぐ見る。そして
「俺も、葉瀬が好き、ですっ、これ......受け取ってくださいっ」
彼女に花束をぐいっ、と渡して伝えた。
「...え?玲人は秋が好きなんじゃ...」
「よ、葉瀬が好き...です...」
「ほん、とに?」
「本当です...」
顔が熱い。
たぶん今、顔真っ赤なんだろうな。
手も足も震えてきた。
花束落としそう。
受け取ってくれなかったらどうしよう。
そんな事が俺の頭の中に浮かんでくる。
「......俺、じゃ駄目ですかっ」
絞り出した声がこれか。もっとカッコよく、俺は君しか見えていないよ、とか君が思ってるより好きだよ、とか言いたかった。
俺は震える呼吸で花束を見つめる。
その時、手が伸びてきた。
カサ、と花束を取る。彼女はそれを抱えて笑う。
「駄目じゃないです。私も玲人が好き、私と付き合って貰えませんか?」
告白してきた時の爽やかさと似ているが違う。
本当に、凄く嬉しそうに笑うね。
「...俺でよければ、よろしく、お願いします...」
「......玲人、バグしていい?」
「え?う、うん。わっ!!」
俺が頷くと葉瀬はガバッ、と飛び付いてきた。ぎゅうぎゅうと肩を抱き、すりすりと寄ってくる。
「...っ...私もこれからよろしくっ!!」
可愛らしい声が願いが叶ったかのように話す。
俺も葉瀬を抱きしめ返した。
人生で一番幸せだと思った瞬間だった。
お題 「花束」
出演 玲人 葉瀬
私は『自分を花束で表せ』と言われたら、紫、黄色、緑のチューリップを1本ずつ手に取ってその3本で花束を作る。
私を知らない人は、この花束からどんな印象を受けるだろうか。
私を知っている人は、私らしいと思うだろうか。
これは私が大切にしたい感情だ。私らしいかは分からないけれど、これ以上もこれ以外もない、私の花束。
(花束)