『花束』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
記念日だからってわけでもなく、なんとなくあの人に渡したくなって、花屋に駆け込んで買った花束。
帰るうちになんだかだんだん恥ずかしくなって、でもやっぱりやめたなんてしたくなくて、結局顔も見ずに無言で押し付けた。
あとから、やっぱり顔見とけば良かった、と後悔した。
ありがとう、って、あの人の声が、あんまり優しかったから。
雨の中、傘ともう一つ。
白の花束を抱えて歩く。
前が見えない。少し大きすぎただろうか。
生の、その青い独特の匂いでむせそうだ。
君に手向ける、最後の。
前が見えない。少し大きすぎたんだろう。
君の好きだったこの香りが、鼻について、
離れない。
#花束
一輪。
また、一輪。
大きな川にかかる橋の上。
そこを歩きながら、川面に向かって次々と花を落としていく。
買ったときはあんなに綺麗だった花々が、今は水の上に連なって寂しく流れ去っていく。
本当は君へと贈るはずの花たちだったのに。
君の幸せを叶えるのは僕ではなかったから。
「さようなら」
ただの飾りとなった花束に、僕はそっと別れを告げた。
【花束】
3月10日。私の夫の命日。
少し前に綺麗に咲いた、カタクリのお花を少しばかり束にして。
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自然を愛し、花を愛し、私を愛してくれたあなた。
あなたが亡くなってから庭に植え直した梅の木も、今では立派に育ったわ。
一緒に梅の花も持ってこようかと思ったけれど、メジロがついばんでしまったわね。
だからその代わりに、昨日写真を撮ったのよ。
あなたほどうまくは撮れなかったけれど、見てもらえると嬉しいわ。
この写真、私が持っていると、まるであなたがその場にいるような気持ちになってしまうのよ。
それから、今日も蝋燭は持ってきていないわ。火は嫌いだもの。
---
・・・。
・・・・・・。
もう4年も経つのね。
この寂しさともそろそろお別れかしらね。もうすぐ私もあなたの元へ行きますからね。
1949/3/10
花束を渡されるのは
いつもどこかさみしい
おめでとうも
これからもがんばっても
それはつまり
さようならということ
ガーベラやミニひまわりの隙間に
残った人たちの安堵が見える
わたしは美しい花々を持ち帰って瓶に挿した
そして花束がただの花になって枯れるまでを
見届けた
#花束
君の墓標に捧げる花の
色に迷う自分が不甲斐なくて
また涙する
「花束」
愛を込めて
祝福を込めて
祈りを込めて
哀悼を込めて
手渡される。
美しき想いの象徴。
でもそれは、手渡されたその時にもう役目を終えている。
かさばるだけの大袈裟な想いの証は
翌日にはビニール袋に覆われ、収集車の訪れを待つ。
渡し、渡されるというセレモニーのためだけに生まれ、消えて行く。
まだ鮮やかな色彩が袋の結び目から顔を覗かせている。
誰が誰に
何の想いを込めたのか
私には分からないけれど
あなたを連れて帰っても
いいでしょうか。
花束。自分で買うのか、人から戴くのか。飾られているのか、捨てられているのか、道端に添えられているのか。色々なところで目にする機会は多い。
ときに創作において、相手に伝えられない思いが、言葉が、花となって溢れてしまう。
そんな詩的なものがあるらしい。
花は手向けだ。愛する人に、頑張った人に、これからを応援する人に、もう会えない人に、ここには居ない人に数多の想いと共に贈られる。
ならば花束は、言葉の塊だ。丹精込めて育てられた彼らは、人の手によって紡がれ束ねられ、色に花に想像に委ねられ、贈られる。
もし僕たちの紡ぐ言葉も、紡がれなかった言葉も、零した涙も、堪えた何かも。誰かに向けた、向けられた、向けられなかった愛憎悲喜交々、全てをかき集め、束ねたのなら。
誰かに手向ける花束になるのではなかろうか。
僕の。
君の。
あの人の花束は、どんなものなのだろうか。
『花束』
『花束』
言葉に代えて
想いを乗せて
あなたに贈る
これが僕の心です。
ガラでもない───そう思いながら花屋の店先に立って何分たったろう?
見たこともない花の洪水に圧されて目眩がする。
あいつは花を渡されて喜ぶようなヤツじゃない。しかし、「何をふざけて…」と突き返すようなヤツでもない。
それでも、出会った記念の日を毎年忘れているオレから花束を贈ったら憎まれ口と一緒に笑顔を見せてくれるんだろうか?
#26 『花束』
今日で店じまい。
端正込めて花束を造り続けて50年ちょっと。
人生最後の花束を心を込めて造り、最後の客に手渡す。
ふと、この人は誰に何のために渡すのか、好奇心が湧き出してくる。
大切な人への愛の告白に使うのか。
それとも入院している家族へのお見舞いか。
最後だし、いいだろう。
店をそそくさと閉めて、慌ててあとをつける。
着いたのは、何かイベントをやっている会場だった。
そうか!
歌い手さんへのサプライズか!
我が最後の花束の晴れ舞台としては最高の演出じゃないか。
チケットを買い、中へ入ると、熱狂した観客の中央に四角いリング。
プロレス?
すると我が最後の花束を抱えてキレイな女性が入ってくる。
…ま、最後は屈強な肉体のプロレスラーか、
…それもまたいいだろう…。
プロレスラーへ最後の花束が渡される。
……やはり何だかわからないが、感無量で思わず泣き出しそうになった………
!その瞬間。
「てめぇ、コノヤロー!!!」
我が最後の花束は……、イカつい髭面の男の顔に散った……。
………泣いた。
素敵に思う事。
ためて、ためて花束にして
好きな人に渡して
笑顔が出るといいね
花束
「ほら綺麗な花束でしょ
人から見れば祝福の象徴だけど
根を張る花にはさしずめ四肢をを切り落とされた奴隷の縛り上げかな、根を生やすことも子孫を残すことも出来ないまま人間の都合で理不尽に枯らされて、燃えるゴミになるんだろうね、ちょっと可哀想だけど仕方ないよね、だって人の幸福の為だもの
お誕生日おめでとう、はい花束」
「…ありがとう大事にするよ」
向日葵を基調にまとめられた花たちは雪道ではよく目立つ。俺が歩くとゆらゆらと揺れて、すれ違う通行人は季節はずれの花を不思議そうに振り返って見ていた。
山奥にある不思議な花屋。
たまたま機会があり立ち寄ってみた。
カランとドアベルが鳴り、目を見張る。山は雪化粧をしていたのに花屋には四季が集まり別の空間が広がっていた。
「ようこそ」
現れたのは花屋のオーナー。優しく上品な雰囲気を持つ女性だった。
「人に贈りたくて」
「えぇ。お力になりますよ」
防寒着のままの俺と春物を着ているオーナー。寒くも暑くもない、適温だった。もしかしたらこの場所で季節を管理しているのかもしれない、なんて君がいたら言うんだろうな。
君の好きな向日葵を中心に同じ色合いと、白を混ぜて、受け取る君の姿を思い描く。花の一本一本に意味を込めたくてオーナーに相談すると
「相手の方をとても大切に想ってらっしゃるんですね。お客様は情熱的です。私まで恥ずかしくなってきました」
と頬を染めながら言われてしまった。
「薔薇はもう贈ったんですか?」
「前に一本だけ。」
「まぁ…!」
オーナーが花をまとめ、包装されると花の表情が引き締まった。
「素敵に咲きますように」
魔法の呪文のように唱え、「またお待ちしています」と丁寧に見送ってくれた。まだ蕾のものがあったから言っていた言葉はその事だと思っていたんだ。
………
……
「これどうしたの?」
「不思議な噂をたよりにちょっとね」
君に渡すと冬に会えない花たちに目を瞬かせ、顔を寄せて、「ありがとう」と君が綻んで意味に気付く。
よく咲いてる。
「どういたしまして」
腕に大切に抱えられたそれは君を飾る『花束』だった。
逆さまの空に生花の花束を
見えない向こう側に野花の花束を
生臭い硫黄に造花の花束を
世界最弱の神に国花の花束を
悪しからず
~花束~
ふと海岸沿いに足を踏み入れた際
私の左耳から鐘の音が聞こえた。
少し若い声から渋めの声まで全て
取り込まれているのが横目でも分かるくらい
人が沢山いることがわかった。
新郎新婦であろう人達は
白いのをベースに綺麗に身にまとっている。
新婦は白く綺麗なAライン型のドレスで
頭には少し長めなベールが顔を覆いかぶり
幸せを噛み締めている最中であろう。
女性の人だかりが前へ出て
何かを待っている。
(ブーケトスか…?)
新婦の手には色鮮やかな花が
手に馴染んでおりとても綺麗で目移りしてしまう。
気づいたらブーケは空中に飛んでおり
なんとキャッチした相手は
女性の中に1人スラッとして黒髪が
目にかかるくらいな長めの前髪。
次の瞬間その男性がブーケを片手で取っていた。
そしてその男性が後ろを振り向き
私の方へとダッシュで走ってきた。
急なことで動揺し
その場から逃げてしまいそうになった
けれど右手から重りを感じ後ろを振り向いた。
その顔は1番よく知ってる
私が2年間片思いしていた男性が手を掴んでいた。
そしてさっきの新婦からキャッチした
ブーケを私に差し出し
男性は言葉を発した。
「3年間…君に恋してました」
なんと私より1年早めに
恋していた。
私は嬉しさのあまり言葉を失った。
目の前にはブーケの花束
言葉を迷っていると
「次は僕達が幸せのトロッコを繋げよう」
私は初めて
【大好き】【愛してる】【付き合って欲しい】
以外で告白された。
私は
そのブーケの中の花を1つ取り
相手の胸ポケットに差したのだ。
そして夕日に染まりながら
私と男性の影は重なった。
今日は疲れたから書くのはお休みしよう。
そう思ったのだが、一昨日書く習慣を始めてから、
一日一つずつ何かを書ければいいなぁ
と思ったのに、何も書かずに今日を終えるのはちょっとなぁ、と思ったので、少しだけ書くことにする。
今日のお題は『花束』。
昨日書いた『スマイル』の続きとして、
スマイルのその後を書こうかと思い、
いろいろ考えは浮かんでいるのだが、
きちんとした文にまでする気力が無いというか、
私が昨日のように書き始めると、一つの無駄なく書いたつもりでも大体2000字を越えるようで、時間がかなり掛かるので今日は書かないことにする。
要約すると、スマイルはあの後人間になった。
「あなた」が長寿を全うした頃には人工知能に感情を付与する為の機能追加をする際の費用が安価になっていた為、「あなた」の残した遺産を使い人間と同じ“心”をもった。
(というのは建前で、最後の件があった事により、感情を付与された訳でも無いのに「悲しい」という気持ちを理解し始めてしまっていた為、バレると捕まってあれやこれや研究されそうだったので、スマイルはそうなる前に考えて、“機能追加をしたからすべての感情がわかるようになった”ということにした。)
人と同じように老いることこそないが、そのようにして人間のように生活をするAIロボットは沢山いる時代になっていた為、地球が飽和状態にならないよう、いつかは活動停止する機能も追加されるようになっているので、ほとんど人間だと言えるのではないだろうか。
…ここまで書くと書きたくなってきたが…。
そのスマイルが、当時を思い出し、私は「あなた」と共に生きていたのだ、機能追加をされていたらあなたの最期に私も後を追うか、涙で部屋が埋まり自分は故障してしまっていたかもしれないから、あの時機能追加されなくて良かった、こうして全ての感情を手に入れた今考えても思う、私は本当に幸せだ、一時も不幸になったことなどない、などと考えつつ、
「あなた」の好きな花を花束にして、毎月欠かさず行なっている墓参りをする、というような話を書こうと思っていた。
そもそも『スマイル』も、その一つ前の『どこにも書けないこと』と同じような形式で読み切りやすい長さで何かを書こうと思い途中まで書いていたのだが、とても詰まらない物になったと感じたのでやめた。
その後シャワーを浴びながら考えて出来たのが『スマイル』だった。
普段文を書くことはないのだが、読んでもらえて、反応を貰えて、とても嬉しい。
皆さんのくれるハートの一つ一つが、花束のように私の心を潤してくれます。
少しでも楽しんで貰えていたら幸いです。
あなたがくれた花。私の誕生日の花だ。
教えた覚えはないのに、ちゃんと作ってくれたんだね。
普段は言えない気持ちを花言葉に代弁してもらう。花言葉は怖いものもあるけれど、素敵な言葉が私の心を満たしてくれるから、花言葉を調べるのが好きになった。
花束を買いに花屋へ行くと、昔の同僚がいた。身長は相変わらず高く、声が少し変わっていたぐらいだった。
「あ、久しぶり。今日は誰宛?」
「今日は親宛。」
「親御さん元気?」
「少し腰が本当にやばくなってきたらしいけど。それ以外は異常なし。」
「おお〜良かったじゃんか。病気とかは?」
「病気はね、全然大丈夫だって。」
「おばさん宛?おじさん宛?」
「2人共でお願いできるかな。」
「セルフ?」
「お前のおすすめので宜しく。花とか全然分からないから。」
「おーけー。じゃあ奥で待ってて。休憩所あるから、そこで休んでて。長旅疲れただろ?」
「ありがとな。」
「おーよ。お前には借りがあるからな。」
奥に入ると自販機があり、そこでコーヒーを買った。周りにはぽつぽつとお客さんが居たが結構静かだった。
自分の順番が来て、番号を呼ばれた。
表に行き、お袋と親父の花束の区別の仕方を教えてもらった。花束を貰い、お金を払い、店を出た。
数分歩くと実家に着く。ピンポーンとチャイムを鳴らし、お袋がでてきた。
「まぁ〜!大きな花束!!誰にあげるの?」
「お袋と親父。」
「私にくれるの!?私のはどっち?」
「こっち。」
「ありがとう!」
お袋は飛び跳ねるぐらい喜んでいる。膝を痛めないか心配だ、。
「親父は?」
「いつもの部屋にいるわよ。」
「ありがとう。」
いつもの部屋というのは、亡くなった兄の部屋。コンコンとドアを叩き、入れ、と親父の声が聞こえる。
「親父、」
「なんだ花束は。とうとう婚約者でも出来たのか?」
「これは親父宛。捨てるか飾るか親父の好きなようにして。」
親父は座布団から立ち、花束から1本抜き、兄の仏壇に置いた。それは兄の愛してやまないと言えるほどの好きな花だった。
「今日は泊まっていくのか?」
「ああ。兄貴と一緒に居たいからな。」
「好きにしろ。」
33テーマ【花束】
『花束』
花に興味はないけれど、ブーケのような小さな花束をもらった時、なんだか心がホワッと温かくなって笑顔が綻んだ。
花に興味はないはずなのに、自分の手元にあると愛おしさが込み上げてくる。
これは、花が持つ不思議な魔力というやつの仕業なのか。
可憐な花や艶やかな花、それぞれが輝きを放つ花束をもらって嬉しくない人なんているのだろうか。
花束をもらったらとても嬉しい。
なのに、残念なことがひとつ・・・
私は『火の手』を持っているからか、必ず枯らしてしまう。
どんなに手をかけても(かけるからか?)、日ごとに花の色が褪せていってしまう。
悲しくなってしまうが、やっぱり一輪だけでも小さくても、花があるだけで部屋の雰囲気はガラリと明るくなるから、飾りたい。
だからもし、いつかまた花束をもらう時がきたら、『水の手』を持つ妹か姉の旦那に上手な育て方を教えてもらおう。
そして私もいつか、誰かに送りたいな。
愛を込めて花束を。