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 向日葵を基調にまとめられた花たちは雪道ではよく目立つ。俺が歩くとゆらゆらと揺れて、すれ違う通行人は季節はずれの花を不思議そうに振り返って見ていた。

 山奥にある不思議な花屋。

 たまたま機会があり立ち寄ってみた。
カランとドアベルが鳴り、目を見張る。山は雪化粧をしていたのに花屋には四季が集まり別の空間が広がっていた。
「ようこそ」
 現れたのは花屋のオーナー。優しく上品な雰囲気を持つ女性だった。
「人に贈りたくて」
「えぇ。お力になりますよ」
 防寒着のままの俺と春物を着ているオーナー。寒くも暑くもない、適温だった。もしかしたらこの場所で季節を管理しているのかもしれない、なんて君がいたら言うんだろうな。

 君の好きな向日葵を中心に同じ色合いと、白を混ぜて、受け取る君の姿を思い描く。花の一本一本に意味を込めたくてオーナーに相談すると
「相手の方をとても大切に想ってらっしゃるんですね。お客様は情熱的です。私まで恥ずかしくなってきました」
と頬を染めながら言われてしまった。
「薔薇はもう贈ったんですか?」
「前に一本だけ。」
「まぁ…!」
 オーナーが花をまとめ、包装されると花の表情が引き締まった。
「素敵に咲きますように」
 魔法の呪文のように唱え、「またお待ちしています」と丁寧に見送ってくれた。まだ蕾のものがあったから言っていた言葉はその事だと思っていたんだ。

………
……

「これどうしたの?」
「不思議な噂をたよりにちょっとね」

 君に渡すと冬に会えない花たちに目を瞬かせ、顔を寄せて、「ありがとう」と君が綻んで意味に気付く。

よく咲いてる。
「どういたしまして」
 腕に大切に抱えられたそれは君を飾る『花束』だった。

2/10/2023, 3:43:21 AM