『花咲いて』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
花が咲いて
花が咲いて、あぁまたこの季節が来たんだと気がついた。希望と不安と期待が入り交じり、新しい幕開けを感じ、全てが素晴らしいものに見えたあの日たち。
全ての「始まり」のときその花はいつも咲いていた。私たちは何度も「始まり」を繰り返す。
色んな「始まり」を経験してきたけれど、どれも大切なものだった。きっとこれからも新しい「始まり」に出会っていく。この花が咲く度に。
「父様。私は、どうも桜が好きではありません。」
「どうしてだい。」
急な私の話に、父様は書き物の手を止めずに、耳だけ傾けた。いつものことなので、私は続ける。
「早くに散ってしまうからです。満開になっても、3つで雨降らしになってしまう。なんとも淋しいではありませんか。」
私が父様に零すと、父様は書き物の手を止めることなく、私に問いた。
「では、何が好きなんだい。」
「私は向日葵が好きです。」
「どうしてだい。」
「日に向かい笑うような姿がなんとも美しいからです。鮮やかな黄色も素敵だ。」
私の解いに父様は笑った。朗らかな顔は、朝顔のようだ。
「しかし、枯れてしまったら、茶色く濁るではないか。その姿は美しいかい。」
「枯れてしまっては、愛おしいとは思えないです。咲いている時を好いています。」
そういうと、父様は顎に手を当て、考える姿勢を取った。
「なるほど。しかし、父様は桜を愛しているよ。」
「なぜでしょうか。」
「桜は、肌を桃色に染めた美しい時に散っていくんだよ。最後まで美しくいようとする姿が愛おしいではないか。」
「たしかに、そうですね。桜は美しくある印象がありますね。」
「あぁ、それにね…」
父様はそう言って、この話は終わった。これ以上続けることもないので、私は立ち上がり、父様の湯呑みに入れる茶を沸かすために立った。
追憶に浸っていると、私の腕を引く妻に問いかけられた。
「貴方は、桜がお好きかしら。」
「あぁ、好いているよ。」
「私は、あまり好きではないわ。早くに散ってしまう姿が、あんまりにも寂しいでは、ありませんか。」
頬を膨らませ、下を向く妻を見て、幼い頃の私を見ているようだった。父からもこのように見えていただろうか。
「最後まで美しく散っていこうとする姿が愛おしいではないか。」
それに、私を見上げて話す妻の頬に当たる桃色の花弁が、妻の頬を染めるように見えて、愛おしく思える。
No.26 _花咲いて_
→短編・フラワーレインボーパワー・ウェイクアップ!!
「もうすぐ、咲きます」
そんな張り紙をされて、このサボテンは捨てられていた。
夜中の街灯の下、電柱に寄り添うように捨てられていたサボテン。そのビジュアルがあまりに物悲しくて、私はこのサボテンを家に連れて帰った。感傷的だったのだと思う。勤めていた会社が忙しすぎて、サボテンの孤独と仕事に忙殺される自分を重ねた。だから、救いたかった。
あれから1年、サボテンはまだ咲いていない。
もしかして見逃したのかなとか、環境があってないのかなとか、スマートフォンでサボテンの育て方を調べながらの1年はあっという間だった。
そして今年、ようやく蕾がついた。ちょっとした感動。
「まだ咲かないね~」
夕方、仕事を終えて帰宅した私はサボテン相手に晩酌を楽しんでいた。
夏の夜空はまだ夕暮れの紫を空に残している。1年前は考えもしなかった景色だ。
サボテンを拾って程なくして、私は転職した。
「よし!」
何となく酔いも手伝って、私はサボテンに両手のひらを差し出した。
「フラワーレインボーパワー・ウェイクアップ!! 花、咲いて!!」
ちょっとしたお遊びだ。こんなので咲いたら……――って!?
「えっ、ウソ!? 咲いた!!」
可愛い花がちょこんと姿を現した。このサボテンのメンタル、もしかして小学生女子並!?
慌ててスマートフォンを取り出す。動かないサボテンに連続シャッターを切る。浮かれた私と花の冠を乗っけたサボテン。
夏の宵の口、シャッター音が部屋に響いた。
テーマ; 花咲いて
「花咲いて」
花咲いて 桃色滲む 手には汗
:花咲いて
床に赤い花を咲かせる。
歩いてきた道を示すように、ポツ、ポツ。
呆然としていたから目の前にある電柱に気が付かなくて鼻から突っ込んだ。強く噛み締めて切った唇の血と、鼻から垂れる液体が混ざって顎に流れ、慌てて下を向いた。ボタ、と落ちた赤い一滴。表面張力でギリギリ保っていたストレスカップにそいつが入り込んできたもんだから耐えられなかった。我慢の限界と鳴き喚く蝉の声で強烈な目眩がした。
努力だとか、才能だとか、そういったものが辛くて足を引きずって歩いている。重たい足枷みたいな。
「なんかすっごい賞を取れたんだ! 今度表彰されるって……へへ」
水を飲んでも飲んでも口の中がやけに乾いた。震える指でカップをつまみ上げていることが相手にバレていたら、底の底に残っていたプライドすらへし折られてしまっていたかもしれない。なんとか取り繕って「おめでとう」と言えたのは、あいつが人と目を合わせられない人間だったからだ。気恥ずかしそうに自分のコップだけを見つめてくれていて助かった。
「おめでとう」
笑えなかった。他人の成功を喜ぶことができない小さい自分にも、バケモノみたいなスピードで成長していくお前にも。
「なんで?」って言葉が滑り落ちた。なんでそんなに優れているんだ、なんでそんなことができるんだ、なんで自分はできないんだ、の「なんで」。そう思うことすら惨めで恥ずかしい。優れている人は皆どこかで何かの努力をしているのに、それを「なんで」なんて言葉でまとめるなんてあまりにも浅膚だ。その人の努力を踏みにじっているも同然の言葉だ。なのに、そんな言葉を口にした。
覚束ない足取りで帰路を辿った。いっそ泣き喚いてしまえたら楽だろうに、あまりのショックで涙がひと粒も出てこなかった。何も考えたくない。ゴツンと鼻をぶつけた激しい痛みでようやく我に返ったが、直ぐにまた朦朧としてどうやって家に帰ったかは覚えていない。右足を引きずって帰ったような気もする。重い足枷をつけられているみたいに。
リビングの床で蹲っていた。頭を上げると乾ききっていなかった鼻血が一滴床に落ちた。拭かなきゃ。
振り返って廊下の方を見た。床にポツポツ赤い色が付いている。玄関の方は真っ暗でよく見えないがきっとそっちも汚しているだろう。早く掃除をしようと立ち上がるが、目の前がジワっと黒くなって砂嵐のようなものが見えた。結局また蹲ってギュッと目を閉じる。体調が悪い、寒気がする、早くシャワーを浴びて眠ってしまいたい。
そっと目を開けて辺りを見回す。床の方で何かが蠢いている。虫だろうかとよく目を凝らしてみると、ポツポツ落としてきた血から、ゆらゆらと何かが生えてきていた。赤い花、真っ赤な花だ。真っ赤な花弁を大きく広げて膨張しながらどんどん上へと伸びていく。手に何かが触れて飛び跳ねるように立ち上がった。先程落とした血からも花が生えてきて、どんどん大きくなっていく。右足に蔦が絡まってきて思い切り締め付けられる。どこもかしこも暗くて赤い。早くここから逃げなければ。そう思うのに、動けなかった。カタカタ震えるばかりの指先、いっそ泣き喚いてしまいたいほどの恐怖。なんで、なんで、なんで!
――身に覚えがあった。おめでとうを素直に言えず震えて、努力とか才能とかに気圧されて、挙げ句の果てに「なんで」なんて、全部自分が辿ってきた道じゃないか。自ら蒔いてきた種じゃないか。ああ、なんだ、なんだ。はは、そうだ、分かっていた、あいつの方が伸びることくらい、最初から目に見えていたのに、今更ショックを受けているだなんて。甘えてたんだよ。ずっと甘ったれだったんだ。
「おめでとう」
黄金に輝く丸い花を胸に咲かせている。
キラ、キラ、ただただ眩しかった。
8. 花咲いて
祖父母宅のトイレの壁には、知っている限りずっと変わらず1枚のカレンダーが貼ってある。2006年のカレンダー。自分が生まれた年だ。書道家が各月に一言書いているもので、やはり生まれた月の言葉は目に留まる。
笑顔の種蒔けば、〇〇の花が咲く
漢字二文字が思い出せない。それがこのお題を見たときのことだった。
翌日から体調を崩し、数日間の多くの時間を布団の中で過ごした。そのときに思い出したのだ。
笑顔の種蒔けば、健康の花が咲く
このお題は「花咲いて」だった。花が咲いたら種ができて、また土に蒔かれる。
私は今まで、あれは健康に重きを置いた言葉だと思っていた。
今まで、健康を目指しては適切な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠が出来ないと自分を責めてしまうこともあった。
しかし、今思い返せば、健康は花であり、すなわち過程なのだ。ゴールは笑顔や幸福なのに、それを忘れていた。
私がするべきことは、種蒔きだった。笑顔でいれば、健康は付いてくる。そしてまた笑顔がもたらされる。意外で、しかし優しいメッセージだ。
祖父母が18年も遅れたカレンダーを依然貼り続けている訳が少し分かった気がした。
お花が咲いて、嬉しいことは嬉しいけど正直あんまりお花に興味が無い。桜とか綺麗ではあるんだけど、花より団子だから、すぐ飽きちゃう。おばあちゃんはお花が好きだけど、やっぱり見た目が好きなのかな。でも、それだけじゃない気がする。お花を育てる中で四季を感じるのがいいのかも。お花を育ててみたいけれど、多分自分は三日坊主になると思う。開花するのは自分の才能だけでいいや。そんな才能もないけれど。
花咲いて
他人に種を蒔かれ、育ち、花を咲かせ、身をつけて、
あとはただただ枯れていく。
花も人も、対して変わらない気がするの。
だからこそ、1番輝いている時期、咲いているとき。
たくさんたくさん輝いて、楽しまなきゃね。
光沢のある白いシャツに、紺色の小紋柄のネクタイ、
紺色の襟なしのベストの上には、紺色の無地のジャケット。
髪型は、上品なオールバック。
色白い端正な顔立ち、青年だった。
私が齢十八頃、親の薦めで半ば強引にお見合いをさせられた。
相手の家は、私の家よりも高貴な家格と血筋を持つ家で、
正直、私の家とは不釣り合いの見合いの席だった。
「很高兴见到你,我叫蔡 礼静。
(初めまして、ツァイ・リージンと申します。)」
彼は、澄んだ声で静かに名乗った。
こんなに穏やかな声の男性は初めてで、私は内心とても驚いていた。
そして、同時に『ああ、この人は本当に優しい人なのだな。』と、直感した。
「我也很高兴见到你,我叫胡 思涵。
(こちらこそ、初めまして、フー・スーハンと申します。)」
この方に自然と合わせて、私は優しい声で名乗った。
途切れ、途切れの会話ではあったけれど、彼との会話は心地良かった。
私は漢詩が好きだと言うと、彼も漢詩が好きだと教えてくれた。
流れで、庭園に咲いていた梅の花で、互いに漢詩を詠んだ。
彼は、私の詠んだ漢詩を絶賛してくれて、本当に嬉しかった。
この時、初めて漢詩が得意で良かったと思えた。
その後、彼との見合い話は順調に進み、今は彼と夫婦となった。
今でも彼は昔と変わらず、優しく穏やかで静かでありながら、
今では、揺るがぬ軸が在るように思う。
そんな夫のことが、堪らなく愛おしい。
いつも、ありがとう。そして、あなたを誰よりも愛しているわ。
あなたを愛する妻より
浴衣を着て君と並んだあの夏の日を思い出す。
きらきらな星と共に空に花咲いて
君の笑顔も咲いたあの日のことを。
空に咲いた花はあっという間に終わってしまったけど
君の笑顔は咲かせ続けると誓うよ
雨上がりの空
地面は湿り、空は真っさらに澄んでいた
黒い雲は徐々に遠くへ行き
眩しい太陽は、辺りの水滴をキラキラと輝かせている
爽やかな青空は、水たまりに反射して
一面を青く染めていた
ふと足元を見てみると
一輪の、黄色いタンポポが咲いていた
花弁の一枚一枚には大きな水滴がついている
水滴には一面の青空が広がっていた
水滴の一つ一つに、それぞれの空が丸っと映っていた
この世界は青かった
しかし、タンポポは
一輪でありながら、全ての青を包み込むように
元気な黄色をただ一人、輝かせていた
花咲いて
『こいこい』合の手を挟んで
切り出す札の柄を見る
『こいこい』香るは季節の象徴で
月に逢う日に年ごろ想う
『こいこい』汗さえ染み込んだ
蝉鳴く枝が過ごすは幾年
『こいこい』まじないに富まず
今宵の題は好きな花匂うひと
浴衣のきみが綺麗すぎて
花火の咲く空と、どちらを見たらいいかわからなくなるんだ。
「花咲いて」
7/16「空を見上げて心に浮かんだこと」とたぶん同一人物。
どんなに水やりをしても
色んな肥料を試しても
一向に咲くことはない私の才能
ただずっと、咲かない花を鑑賞
【花咲いて】
花咲いて、4Kの50インチ位のテレビで花の
花びらや花のがくやおしべやとかをアップ
で見ると小さい世界がその中にあるんじゃ
無いかと思えるくらい色鮮やかで緻密で綺麗
人間が造る事ができない神様のアートやね
神様のアートに満ち溢れた地球にありがとう
神様、ゴイゴイスー!
花咲いてパッと散る…
それは儚くて切ない…
私の心と同じだね。
まるで蓮の花のように
真っ暗な泥を掻き分けて
暗雲のような水面を突き破って
その花を咲かせるまではきっと途方もなく苦しく孤独に苛まれ時にはうずくまり絶望してしまう事もある
だけど忘れないで
暗闇の中でもきっとすぐそばには同じように苦しみもがく人たちがたくさんいる
あなたは1人じゃない
そうしてやっとの思いでその花を咲かせるの
何者にも変えがたい銀河のような美しい尊いあの花々を
触れるものすべてを輝かせる花々を
一人も漏れなくその花の種を宿しているの
あなたなら必ずその花を咲かせられる
だから大丈夫だよ
『花咲いて』
花咲いて
(本稿を下書きとして保管)
2024.7.23 藍
花咲いて
「おぉぉ」どうしても聞こえてくる歓声。数十年に一度花を咲かせる植物が、開花したのだ。その花は、人々の背を優に超え、空に向かって咲き誇る。
私は思う。「自分らは、どこまでこの植物について知っているのだ?珍しい花が咲いた、それだけじゃないのか?」私の苛立ちは、どうも消えたくないようだ。
あなた達は、この植物が今までしてきた行動を全く知らない。いや、知ろうとしない。この植物も同様に、あなた達のことを知ろうとしない。この考えを具現化するかのように、花は人々に見向きもせず、自由に伸び、空に花を見せる。本当の花の美しさを、私たちは知らない。知ろうとしなければ、知り得ない。
上辺だけの関係で、相手をわかった気でいてはならないのだ。
ぱっと花が開くように、貴女は笑います。
その笑顔に、幾人が癒され、慰められ、魅了されたでしょうか。
どうか、そのままの貴女でいてください。
どうか、その笑顔を忘れずに、貴女の幸福を歩んでください。