『美しい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
美しいと銘打たれたものを
ただ眺めて、
あぁ美しかったなあ
なんて、
なんとつまらないことか。
自らの感じたものを、
その心とその頭で言葉にしないと
それはただ美しいものとラベルされた商品を
購入しただけだ。
全ては自分だ
自分が感じて、自分で言葉にするのだ
他人が提示するのは、それっぽい何かでしかない
自分を信用してやろう
大事なものは他人に譲るな、奪われるな
じゃないとあなたがあなたである意味がねえ
その方が楽しいしね
獣に似た鳴き声が、夜の街に響く。
藁蓑を纏い俵を背負った影。足を擦り、ふらつきながら歩くのは、小さな靴が見え隠れする俵の中身が原因だろうか。
異形の面の奥に見える目が、一軒の家へと向けられる。手にした切り刃《きりは》を握り、ゆっくりと歩み寄っていく。
「すごい。迫力が違う」
目を輝かせ、睦月《むつき》は燈里《あかり》の服の裾を握り締めながら呟いた。
「そうだね。来訪神は豊穣や幸福をもたらしてくれる神様だけど、怠ける人を戒める存在でもあるからね。あれくらいの怖さがあると、子供たちに響くだろうな」
睦月の頭を撫で、燈里は微笑んだ。
荒々しく戸を叩く音に、燈里はカメラを構えた。レンズの向こう側、鍵のかけられていない引き戸を開けて来訪神たちが切り刃を構え、家の中に入り込む。
「泣ぐわらしはいねがぁ!」
響く来訪神の声。遅れて泣きわめく子供の声が聞こえて、睦月はびくりと肩を震わせた。
手に力が籠り、服に皺を作っていく。
「わたし、ここの来訪神が家に来たら、燈里ねぇの背中に隠れて泣いてしまいそう」
「睦月はいい子だから、大丈夫だよ」
ふふ、と燈里は小さく笑い声を上げ、服を掴む睦月の手を繋ぐ。伝わる手のぬくもりが戻ってきたことを伝え、それだけで泣きたいほどに嬉しくなった。
地蔵菩薩が消えた後。家に戻った燈里たちは、睦月と遅くまで語り合った。
両親が事故で亡くなったこと。ヒガタと、ヒガタに連れていかれた子供たちの夢を見るようになったこと。
夢の中のヒガタは、子供たちに優しかったのだという。あの欅の根元で、ヒガタはついてきた子供に寄り添っていた。何も語らず、けれど子供たちの終わりを酷く悲しんでいるように見えたと睦月は語る。
「顔は見えなかったけれど、とっても寂しそうだったのよ。誰もいなくなってしまった木の下で、ヒガタの隣に座っているとね、時々村から声が聞こえるの。苦しい、悲しい、痛い……わたしの声も聞こえたわ。あれはきっと、心の声だったのね」
燈里の隣で、睦月は静かに笑う。
「その声が強く聞こえるとね、ヒガタは山を下りるの。そしてヒガタを見た泣けない子供はね、ヒガタについていくのよ」
「その子たちはもしかしたら、感情が削がれた子供はヒガタに連れていかれる認識ではなく、ヒガタの中の地蔵菩薩に救いを見たからついていったのかもしれないね」
「救い?」
首を傾げる睦月の頭を撫で、燈里は優しく呟いた。
「そう。地蔵菩薩は人々を救い、導いてくれる存在だから」
ぱちん、と火が爆ぜた。
囲炉裏を囲み、揺れる火を見つめる。ややあって、今まで黙って話を聞いていた冬玄《とうげん》が、小さく息を吐いた。
「あれにとって、子供がついてくることは呪いでしかなかった」
「冬玄?」
「往生のために生きてほしいと、あれは願い続けていた。だからこそ山を下りる来訪神と習合してまで、声の元へと向かった……尤も、その願いは叶うことはなく、残された言葉を誰かに託す日が来るまで守り続けることしかできなかったがな」
障子戸に視線を向ける冬玄を見て、楓《かえで》は茶を啜りながら苦笑する。
「泣かない子供の認識が呪いとなり、だけど呪われた子供にとっては救いとなった……皮肉な話だね」
茶請けの金平糖をいくつか取り、手のひらで転がしながら楓は呟く。
「生きているのに、生きてはいけないという感覚も、残された側の感情も、僕には分からないな……燈里と同じものが見えても、それだけは分からなかった」
「俺もだ。人間の心など、妖である俺らには分かりようがない……だが、分かる時が来るのかもしれないな」
緩く頭を振り、冬玄は燈里を見つめた。楓は手のひらの金平糖を握り締め、静かに口を開く。
「ならば、その時の傷を深くしないためにも、後悔のない選択をしないといけないよ」
「――そうだな」
楓の言葉に、冬玄は淡く笑みを浮かべた。
眠そうに目を擦る睦月の頭を膝に乗せながら話を聞いていた燈里の傍らに寄り、冬玄は静かに燈里の名を呼んだ。
「燈里」
「どうしたの?冬玄」
「――戻ったら、指輪を贈らせてくれ」
息を呑み、泣くのを耐える燈里の手を取り、冬玄は祈るように目を閉じた。
「燈里ねぇ。どうしたの?」
立ち止まったままの燈里を心配し、睦月が声をかける。それに燈里は何でもないと首を振り、さりげなく自身の指に視線を落とす。
翌朝。燈里たちは源護《げんご》の元を訪れ、祖先が元々暮らしていたという港町の話を聞いた。そして来訪神の取材を兼ねて、こうして今その港町を訪れている。
今はまだ何も嵌められていない指に、燈里は本日何度目かの溜息を吐く。家に戻るのが待ち遠しいような、恐ろしいような、そんな相反する気持ちに昨夜はあまり眠れなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫。何でもないよ……それよりも、本当に良かったの?私たちと一緒に来るのは不安じゃない?」
話を逸らす燈里に、だが睦月は気にすることなく首を振る。
「ううん。燈里ねぇたちと一緒にいたかったから、全然平気……燈里ねぇの方こそ、本当にいいの?わたし、燈里ねぇの家に住むの邪魔じゃない?」
不安げに見つめる睦月に、今度は燈里が首を振った。
村を出る際に、燈里は久子《ひさこ》に睦月のことを頼まれた。
両親が亡くなり、それ以来睦月は村から出られなかったらしい。そのため今まで通っていた麓の学校にも通えず、近所の人や久子に対しても、どこか距離を取って暮らしていたようだ。
そんな睦月が、燈里の側から離れようとはしない。それを見て、久子は睦月のためにと何度も燈里に頭を下げたのだった。
「邪魔なんかじゃないよ。私も睦月ちゃんと一緒にいれるのは嬉しいから」
「本当?よかった!」
燈里の言葉に睦月は破顔し、繋いだ手を大きく振る。安堵したように息を吐くのを見て、燈里は繋いだ手をきゅっと握りしめた。
「泣ぐわらしはいねがぁ!」
家々を巡り終えたのだろう。数人の来訪神が燈里たちを取り囲み、切り刃を手に声をかける。睦月は燈里の腕にしがみつきながらも、来訪神たちを見つめ声を上げた。
「泣かないよ!でも、燈里ねぇがいるから、ちゃんと泣けるようになったのよ!」
何人かの来訪神から、息を呑む音が聞こえた。睦月の言葉の裏に潜む、深い悲しみに気づいたのだろう。
「そうか。泣ぐことさ、できるようになったか。良がった、良がった」
「姉ちゃんさ、大事にな。無理すんでねぇぞ」
切り刃を持たない方の手で、来訪神たちが睦月の頭を撫でる。その力強さに体をふらつかせながら、睦月はあ、と小さく声を上げた。
「どうした?」
「泣く子はいないけど、怠け者《かばねやみ》はいるよ!ぐずらもずらして、ずっと燈里ねぇのこと、待たせてるの!」
睦月が指差す方には、離れて燈里たちの様子を伺う冬玄と楓の姿があった。気を利かせて離れていた冬玄は、突然に指をさされ眉を寄せる。
睦月の言葉で大方の理解はしたらしい来訪神が、切り刃を掲げ、冬玄の元へと歩み寄る。戸惑う冬玄を囲み、どこか楽しげに声を上げた。
「あんちゃん。あんな別嬪さんを待たせんのはよくねぇべ」
「おい、何を言って……」
「さっさと捕まえとかんと、よその男さにかっさらわれちまうぞ」
「確かに。いつまでも待たせて、ようやく指輪の話が出てくるようなのより、身持ちのしっかりした男の方がいいのかも」
「お前まで何言ってやがる!燈里は誰にもやるつもりはねぇぞ!」
賑やかに騒ぐ冬玄たちを見て燈里は小さく笑うと、カメラを構えて写真を撮る。助けを求めるようにこちらを見る冬玄に手を振って答えていれば、控えめに睦月が服の裾を引っ張った。
「睦月?」
「燈里ねぇ。あそこ……」
冬玄たちとは正反対の方へ、睦月は指を差す。視線を向けて、燈里は思わず息を呑んだ。
そこには、一人の来訪神がいた。獣に似た青い異形の面。割れてはいないその見覚えのある面に、燈里は無意識に居住まいを正し深く礼をする。
隣で同じように頭を下げる睦月を感じながら、ゆっくりと頭を上げる。すでにその場には誰もいない。頭を上げた睦月と目を合わせ、どちらともなく笑みを浮かべた。
「今年は豊かな年になりそう」
「うん。何ていうか、春が来そうな感じがした」
目を細めて、睦月は来訪神がいた場所を見つめた。燈里と手を繋ぎ、ねぇ、と小さく呟いた。
「浜吉のおじちゃんにお願いしたら、村でもう一度来訪神の祭りを行ってくれるかな?」
「そうだね。今度戻る時に頼んでみようか」
村にも実り豊かな春が来るように。笑顔が溢れるように。
「寒くない?そろそろ戻ろうか?」
「手があったかいから平気……それにこうしていると、世界がとてもきらきらしているように見えるの。嫌いだったはずの雪も、とっても綺麗」
ほぅ、と息を吐いた。
白く曇る息すら煌めいて見えて、睦月は微笑む。
「世界って、こんなにも綺麗で、美しいんだね」
心からの笑顔に、言葉に、燈里は答える代わりに睦月を強く抱きしめた。
雪のちらつく、寒い夜。
春はまだ遠い。
けれども繋いだ手には、確かに春の木漏れ日のように柔らかなぬくもりがあった。
20260116 『美しい』
美しい
先に帰るって幼なじみから言われて、どこか寂しく感じた帰り道。
とある雑貨屋を通り抜けた時に、その幼なじみがいたような気がして足を止めた。
幼なじみの隣には、周りから綺麗、可愛いとか言われていた別のクラスの女の子。
あぁ、そういうことか…と、2人の笑い合う姿を見て、胸が苦しくなった。足早にその場を去った。
でも早く歩いているはずなのに、足が重たい。
あぁ、そうか…これが自分の心に見て見ぬふりしてきた代償なのかと、ようやく自分の想いに向き合った。
美しい
カーテンの隙間から太陽がこっちを見ている
「おはよう!朝だよ!!」そう言ってるみたいだった
重い体をグイッと起こしてゆっくり目をあける
今日のご飯は、食パンとコンスープだった
遅刻しそうになって急いで家をでた
息を出すと真っ白で鼻で息を吸うと奥が痛かった
今日の空は雲がいっぱいあって綺麗だった
前を通った車は他の車よりピカピカだった
土を踏むとザクザク言ってとっても面白かった
目に映る全部美しいもので出来てるから
たまには視野を広げて見てもいいね
一目惚れだった。君の横顔に釘付けになった。
あんなに、美しいと思ったのは初めての体験だった。
また、会いたい君と話してみたいな。
《美しい》
僕にとって美しいは呪いだ。
度が過ぎた美しさは人を狂わせるという言葉がある。
本当にその言葉の通りだ。
僕はそのせいで人に会うことを許されない。
許されるのは目が見えない女の子だけだった。
その子も僕へ関われる嫉妬で殺された。
僕はその子を殺したやつを八つ裂きにした。
僕は美しいからその行為を許された。
そんな美しさなんて要らなかった。
女の子と幸せに生きる日々が、欲しかった。
美しさで得るものも と失うものは美しさに比例する。
美しかった僕は働かず暮らせるが、人を失った。
死してすら美しいと称えられる僕は、どうしたら普通になれるのだろう。
「美しい」
美しいとは何か。
仏の教えでは、泥中の蓮や清らかな精神性を示すらしい。無垢なる魂とも言えるのかもしれない。
神に連なる聖なる者の教えには、修練を重ねた後の審判において、その可否が下されるらしい。
何をもって美しいとするのかは、きっとわたしの心持ち次第なのだろう。
※閲覧注意※
【美しい】
泥中の蓮の如く、美しい。
どれ程に傷付けられても、傷付いても。
どれ程の苦難に遭おうとも、足掻き藻掻く。
その矜持と誇りを護りたいとさえ思わせる。
泥中に埋まりそうになる度、足を取られかける度に、その手は確かにこちらへ伸びてくる。
引き上げてやるから、掴まれ。
決して離すな、と
その手はいつも暖かく、温もりに満ちている。
愛と情けが溢れていて、縋るべきでは無いのに、縋ってしまう。
いつかその手の主を泥中に沈めてしまうのではないかと恐れ慄いても、それすら振り払う温かな手が己を引き上げていくのだ。
ふらりと訪れたその茶屋で。
妖艶に演じるかの男のその仕草が。
とても美しく見えたのだ。
それから目に焼きついて離れない。
この世にもはや存在しない至高の女。
その姿に魅入られてしまったのだ。
華麗に宙を舞うその指先。
囚われて離さない。
妖しく微笑むそのくちびる。
舞いなど微塵も興味がなかったのに、
本当に美しいと思ったのだ。
(美しい)
更新が21時以降であったならもっとちゃんと文章に出来るのに…という負け惜しみ(笑)
更新ギリギリ30分前で考えるの辞めたい←
最近、寝付きが悪い日がある。以前はいつも、横になったらストンと眠っていたのに。眠れない日は、夜の闇が何となく落ち着かない。目をつぶっていても、得体のしれない焦りがわいてくる。
ふっと目が覚める。いつのまにか少し眠っていた。朝の光が入るように、カーテンの端を少し開けていた。まっすぐな光が差し込んでいる。ゆるゆると体を起こして、カーテンを開けた。
突き抜けるような空の水色が見える。冬の空はすこーんと高く、どこまでも澄んだ水色だ。
あぁ、美しい。今日も新しい一日がはじまる。
「美しい」
お前以外に使おうなんて思えない言葉だ。
【美しい】
フックを左手で軽く押さえ、できるだけ静かに受話器を置く。隣から伊田島さんが手のひらを上に向けて促すような仕草をした。デスクの上に、GABA入りチョコレートが置かれている。『ストレスと戦うあなたに』。
いわゆるクレームの電話をストレスだと捉えたことはない。商品になにか不満があれば、ネットにクソ評価をつけて自分なら二度と買わない。わざわざ時間と手間をかけてお気持ち表明してくださるのだから、むしろ感謝である。
とはいえカロリーを消費したことに違いはないので、礼を言ってさっそく封を切った。
「いつもながらすごいですよね」
伊田島さんが、同じジップ式のパッケージを手の上で傾ける。
「なにが?」
「浪江さんの代弁力というか、納得させる能力?」
チロッと目だけで右上を見ながら疑問形で言われ、チョコレートをガリガリ噛んだ。
「そうかな」
思ったより甘い。
「別にうち、そういう専門部署ってわけでもないのに。様式美さえ感じます」
「単なる慣れだと思うけど」
「いえ。美しいの域に達してますね」
伊田島さんの言葉は言い得て妙だった。
似たような用件を受けるうち、形式のようなものが見えたのは確かだ。もっとも、気持ちが伴っていないとすぐに見透かされてはしまうが。
「まあ、長くやってるとね」
いまはもう居ない同僚の姿が浮かび、チームの昼休憩を示すアラームにひっそりとかき消された。
『美しい』
東京の街並み、人々の生活の営み
田舎に住んでる私からしたらどれも新鮮で儚くて、
それぞれ違う美しさが田舎や大都会にはあるんだなぁ
#修学旅行の思い出
昨日の夜からの荷造り&引っ越しがようやく落ち着いた。
お題のことを考える暇、というかスマホを触る暇すらなかった。
……こうして一段落してやっと自分の好きなことができる。それが無償に嬉しい。
お題の『美しい』が欠片もない文章になってしまったが、たまにはいいだろう。
……まあ滅多にこんなドッタンバッタン大騒ぎは起こらないと願いたいが。
美しい
この世界には美しいと思えるものがたくさんある。
夜空を埋め尽くす星たち。
空に架かる虹。
透き通った海。
湖面に映る富士。
本当にたくさんある。
でも僕が1番美しいと思うのは、言うまでもなく、愛するキミ。
怒っても、拗ねても、泣いて…嬉し涙以外は見たくないけど泣いてても、寝顔も美しい。
ま、その中でも、笑顔はまぶしいくらいに美しい。
いつまでもいつまでも見ていたい、僕の1番大切な宝物。
美しい
綺麗だと、思った。
美しいと、そう思った。
それはきらきらひかる宝石でもなく、
色とりどりの花が咲く花畑でもなく、病室のベッドの横に座り歌う君の横顔。
自分は耳が聞こえなくなってしまったから分からないけれど、本人や共通の友人から聞いたところによるととんでもなく音痴らしい。
だけどきっと、私はその音痴な歌声が聞こえていても同じことを思った。
こんな部屋なのに、どんなに一生懸命歌ったって、たったひとり隣に横たわっている人間にその声は聞こえないのに。
何よりも楽しそうに、一生懸命、全力で歌って聞かせようとしてくれる。
ああ、君はどんな声で、どんなふうに音を外してるんだろうね。
見えるだけでいいと思っていたけれど、どんなに下手くそだろうと、君の声を聞いてみたくなった。
もうじきその声はもってのほか、唯一見られる君の横顔すら見えなくなってしまうのだろう。
その美しい顔で、君はどんな声で歌うんだろう。
もう二度と、私の耳に音は帰ってこないけれど。
どうか、君はずっとその美しい横顔のまま、歌い続けて欲しい。
来世はきっと、美しい君の声を。
美しい
眼下に広がるビル達は、定時を遠に過ぎたこんな時間でも光が消えることはなく、キラキラと大都会の夜を照らしていた。
眠らない街、眠れない街
まさにそんな感じ。
こんな時間まで必死に働いて少ない給料を貰っては、家賃やら、税金やら、生活費に消えていって、また働くの繰り返し。
生活のために働いていたはずなのに、働くために生活を犠牲にする毎日。
タバコを一本取り出して火をつける。
ふーっと息を吐き出すと、キラキラ光るビルに煙が入り込む。
このビル達が美しく見えていた頃が懐かしい。街並みも、職場も、家具の配置も、何一つ変わっていないのに、あの頃と今では何かが決定的に変わってしまった。
それは情熱か、意欲か、はたまた希望か。
まあ、今更考える必要もない。
吸いかけのタバコを踏みつけて、目の前の柵に足をかける。
不思議と恐怖はない。
ごうごうと吹き抜けるビル風に身を任せて、足を踏み出す。
一瞬の浮遊感の後に、体は真っ逆様に落ちていく。
赤、青、黄色、キラキラした光に包まれて落ちていく。
美しい
美しいものが好き
宝石、花、装飾それから人間
美しいものだけを周りに囲って
汚く醜いものは外においやる これこそがシアワセ
間違ってると思う?酷いだとか冷酷だとか残忍だとか
でも、みんなだってそうじゃない
自分にとって美しいものをそばに置いて、醜いものは
排除しようとするじゃない
本当に醜い
美しいと思った。
その瞬間にもう 戻れない気がした。
触れなくても、失っても
胸に残る光だけが
本物だった。
『美しい』
いつもありがとうございます。
家族の風邪を引き受けてしまったのかな……💦体調が悪くてスペースのみです。
みなさまもご自愛してお過ごしください。
客観的な美しいより主観的な美しいを大切にしたいよね