『美しい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題[美しい]
この世で1番美しいものってなんだと思う?空?海?月?そんな壮大なものじゃないわ。もちろん、命や愛なんていう曖昧なものでもないわ。花?蝶?鳥?うーん…少し惜しいわ。正解はね、みんな大好きお金よ♡世の中結局お金なんだから、お金が1番美しいに決まっているじゃない♡
『美しい』
彼女はいつだって真っ直ぐで、信念をしっかりと持っている。
そんな彼女はとても美しく、いつだってキラキラ輝いていた。
そんな彼女に僕は恋をしている。
「妹は美しかった。容姿だけじゃねぇ。信念を貫く強さも、苛烈な生き方さえも……すべてが美しかった」
絵図に描かれた名を指先でなぞりながら、承一《しょういち》は目元を僅かに緩ませた。
その目はどこか遠く、在りし日を見つめ。過ぎ去り、届かない過去を思い目を細める。
「丙午《ひのえうま》の年に生まれちまったもんで、よく爺共からは疎まれていたよ。丙午に生まれた女は気性が激しく、夫を短命にさせるなんて、そんな迷信を信じて……けど結《ゆい》は、真っ直ぐに生きた。周りなんざ関係ないって、自分を曲げようとはしなかった」
その目に浮かぶのは、妹に対する親愛と誇りだ。そしてそれは悲しみと一抹の寂しさへと変わり、結を重ね見るようにして承一は燈里《あかり》を見た。
「あんた。結が死人だって知って怖くなったか?話を聞いて軽蔑するか?」
悲しみを帯びた問いかけに、燈里は目を逸らさず承一を見つめ。一つ呼吸をしてから、いいえと否定する。
「私は結さんに助けて貰ったんです。以前取材に来た時に……そして今回も。仏堂に連れて行ってくれて、管理人であるあなたの事を教えてくれました。そんな優しい人を怖がったり、況して軽蔑なんて出来ません」
燈里に言葉に、承一は口元を歪め。視線を絵図の中の花嫁へと向け、そうかと優しく呟いた。
「あいつの分かりにくい優しさが伝わるとはな……素直でないんだよ。優しいのに、言い方がきつくて誰にも気づかれん。今回もそうなんだろう。そこにどんな思いがあれ、知らぬ振りは出来なかったんだろうよ」
承一の、結を思う言葉はどこまでも優しい。花嫁の髪を撫ぜるような指先の動きもまた、愛おしさに満ちて。
静かに妹を思う承一に、燈里はただ頷く事しか出来なかった。
「あんたは容姿こそ結に生き写しだが、その在り方は真逆だな。冬に降る雪があんたなら、夏の差すような日差しが結だ。あんたのようにすべてを受け入れ包み込む、静かな美しさは結にはねぇ。どこまでも苛烈で、それでいて何もかもをその眩いばかりの光でさらけ出させる。真っ直ぐな美しさがあった……俺の自慢の妹だったよ」
深く息を吐いて、承一は顔を上げる。どこか泣きそうな、それでも決意を秘めた目をして燈里を見据え、笑った。
「――頃合い、なのかもしれんな」
「え?」
「あんたがここに来た。結に似ているってだけで巻き込まれた、可哀想な嬢ちゃんかと思ったが、そうじゃない。結に導かれて、訪れるべくして訪れた。それに幸い、一番に反対していた遠見の両親はとっくに墓の下だ……いい加減、兄として妹を送り出すべきなんだろうさ」
その決意は悲しいほどに美しく。
知らず燈里は俯き、膝の上に置いた手をきつく握り締める。しかしそれは上から冬玄《かずとら》の手に優しく包まれて、はっとして燈里は冬玄を見た。
「あんたが描くのか?」
冬玄の問いに、承一はあぁ、と頷いた。
「この絵も、遠見《とおみ》の絵も、俺が描いた。他の奴じゃあ、描き終えた瞬間に燃えちまうからな。それでも何度描き直してもすぐにこうなる」
だが、と言いながら承一は奥の部屋へと視線を向ける。絵図を持ってゆっくりと立ち上がり、話は終わりだと言わんばかりに歩き出した。
「遠見に言われて出せなかった絵がある。完成させる前に仕舞い込んだが、奉納する事にするよ。そうすれば、あんたも遠見から解放されるはずだ」
部屋の奥へと続く襖に手を掛けながら凪いだ声音で呟くと、承一はそのまま襖を開け部屋に入っていく。残された燈里達もまた静かに立ち上がり、承一の家を後にした。
「まだ油断は出来ないが、終わる目処はついたか」
「そうだね。後はどこかで籠城でもしてみる?」
幾分か険しさが和らいだ冬玄に楓《かえで》が楽しそうに同意する。そんな二人の背を見ながら、燈里は密かに息を吐いた。
「燈里。あまりあの娘に、心を傾けるものではないよ」
前を行く楓が不意に振り返り、燈里に忠告する。曖昧に笑って首を振り、差し出される手を見ない振りをした。
結が死者であった事に、悲しみだけでなく死者に対しての畏れも少なからずある。しかし結は最初から燈里を助けてくれたのだ。その優しさを、死者だからという理由だけで拒みたくはなかった。
「まったく。困ったもんだ」
「仕方がない。燈里は優しい、良い子だからね」
呆れたように優しく笑って、楓は前を向き冬玄と共に歩き出す。その背にごめんね、と声なく呟いて、燈里も少し遅れて歩き出した。
無理矢理繋がれないのは優しさであり、もうすぐに終わるという安堵からだろう。その優しさに甘えて、もう少しだけ結を一人思っていたかった。
不意に、太鼓の音が聞こえた。
太鼓に続いて、笙や笛の音。足音が聞こえ出す。
「っ、冬玄」
前の二人はまだ、気づかない。
手を伸ばし、冬玄の腕を掴もうとして。
その手は、何も掴めずに空を切った。
「――え?」
何が起こったのか。理解を拒むように燈里はすり抜けた手に視線を向け。
その手が背後から伸びた知らない誰かの手に繋がれるのを見て、燈里は声にならない悲鳴をあげた。
慌てて周囲を見回すが、前を歩いていたはずの二人の姿はどこにもない。
「みつけた」
歪にひび割れた声。硬直する燈里の耳元で、愛おしげに笑う。
「ゆい、やくそく……ゆい。ゆい」
声は只管に結の名を呼ぶ。違うと否定する燈里の声は、喉の奥に張り付いて声にならない。
何故。どうして。
疑問が巡る。忠告通りに、今まで一度も紫陽花に触れてはいなかったはずだ。
怯え混乱し、身じろぎ一つ出来ぬ燈里の視界の隅で、白の何かが零れ落ちていく。
白の花びら。紫陽花の装飾花が、燈里の左肩から滑り落ちていく。
いつの間に。そう驚く燈里の脳裏を、ある一つの行為が過ぎていく。
仏堂にて、結に奥の間を教えられた時の事。結は燈里の左肩を叩いてから、場所を示した。
思い出すと同時。急速に意識が沈んでいく。抗う事を許さぬほどの深みへと引き込まれていく。
「――燈里っ!」
どこか遠くから、冬玄の声がして。
だがそれに答える前に、意識は黒く塗り潰された。
微かな違和感に、冬玄は弾かれたように背後を振り向いた。
だがそこにいるはずの、燈里の姿はどこにもない。
「燈里!」
周囲を見渡し名を呼ぶが、答える声はない。舌打ちして、気配を探る冬玄の耳に、低い太鼓の音が響いた。
音のする方へと視線を向ける。触れれば切れてしまいそうな鋭さを湛えた目が、遠く祝縁寺へと向かう行列を認め苛立ちに細められる。しかしその目は、ある一人を捉えた瞬間に、驚愕に見開かれた。
黒紋付羽織袴を来た男の隣。俯いて寄り添い歩く燈里の姿。
「燈里っ!」
叫んでも、燈里に反応はない。追いかけるために駆け出そうとした冬玄は、ふと込み上げた違和感に隣にいる楓へと視線を向けた。
「っおい。どうした」
崩れ落ち、震える肩を抱きしめ俯く楓の姿。嫌な予感に、膝をついて楓と視線を合わせた。
「燈里に何が起きている?なんであれの隣に燈里がいるんだ!」
楓は答えない。目を見開き、不規則な呼吸を繰り返し続けている。
それでも冬玄を認識した楓は、戦慄く唇を無理矢理に動かし、掠れた声で告げる。
「祝縁寺……閉ざされた。奥の間……意識が……追い出されて……」
焦点が揺らぐ。浅い呼吸を繰り返しながらも、楓は笑みを形作り。
「堕ちるなよ……燈里を、置いていくな」
そう告げて、楓の姿は跡形もなく消えた。
「――努力する」
一人残され、冬玄は低く呟いた。
確約は出来ない。今の状況では、何一つ希望は持てない。
楓は燈里の記憶の中に在る妖だ。楓が消えたという事はつまり、燈里に危機的な何かが起きたという事。
静かに立ち上がる。
行列は既に見えない。去った方角へと冬玄は視線を向けて。
「っ、貴様」
山門の下。無表情でこちらを見下ろす結の姿を認め、冬玄の影が感情に呼応するかのように揺らめいた。
「これは貴様の仕業か!」
声を張り上げるも、結は答えない。冬玄の目の鋭さが増し、影がさらに大きく揺らいでいく。
「――化け物」
微かな呟き。揺らぐ冬玄の影を見つめ吐き捨てられた結の言葉に、冬玄は激昂した。
冬玄の影から翁面が現れ、結へと襲いかかる。だかその前に。
「燈里には、相応しくない」
口元に緩く笑みを浮かべ。目には激しい怒りを宿して。
結の姿は解けるように消えていった。
20250610 『美しい』
一番愛した
一番愛された
人生の半分も生きてないのに
そう言い切れる自分に驚きを隠せない
この愛はあまりにも
不器用で痛くて切なくて脆くて
一番乱れて、満たされた
深く深く満たされた
一番狂って求めた
そんな愛を美しいと思う
それでも
彼女の腕に残った傷と
私の心に消えない傷を無視できない
一生残る傷と一緒に
私も生きて。
美しい
政治家とか。自民党とか。財務省とか。
税金もなんだけど、なんか嫌いじゃん?わかんないし。
とりあえずさ。
通知表を政治家さんにつけてあげたらいいんじゃないだろうか。
主要教科は公約の達成率で
副教科は国会での議事の参加度で
係の仕事や部活動は、国民からの支持率で
5段階評価で1番成績が良かった人が総理大臣になってさ。
クラス委員みたいな各党の党首はさ、成績が赤点になったらなれないようにしたらばさ、
ちょっとは美しい日本になるんじゃない?
だって、国民が送ってる人生じゃなくて、学生→公務員政治家みたいなのばっかりなんじゃない?通知表でしか切磋琢磨できないのかもしれないし、国民全員が評価がわかりやすいじゃん。
通知表は高校生が読める程度の言葉にしてさ。
じゃなきゃ、18歳から選挙権あっても推しはできないもん。
【美しい】
美しい人。
いつからか私の嗜好の方向は、そこに定まっていた。
顔や雰囲気が美しい人。
話し方や言葉遣いが美しい人。
生き様が美しい人。
多種多様な美しさがあるけれど、それに溺れる瞬間が一番幸せだ。
美しい国、日本。
そんなスローガンを引っさげて総理大臣に舞い戻ったのは誰であろうか。うろ覚えであれば、それで結構。すぐに出てくるのであれば、もう忘れたほうが良いのではないか。
当時も、辞任した後も、数年後の惨劇も。すべて含めてみても。「ったく、どこが『美しい国』だ」と嘲りの笑いを持った人は、きっとその人自身の目が腐りきっているのだろう。色眼鏡どころか、まつ毛も角膜も濁ってしまって、誰が誰だかよく分からない。水晶体にヒビが入ってしまっている。
先日、任天堂Switch2を取り上げたネットニュースがあった。転売ヤーによる価格釣り上げ祭の影響がある。対策しなければ、子供たちに……、欲しい人に……渡らない。ゲームは人の手に渡って娯楽になる。その前に、転売ヤーの玩具にされたら、娯楽にならない。
そんな世間の論調に対し、有名人は語る。
「いや、転売ヤーだって小売の一種なんだから合法だろ。まあ、俺は今すぐ必要じゃねーから、Switch2の価格とかどうでもいいけど」
「うわっ、正論おじさんだ!」と僕は思った。
相変わらず冷ややかな目を、ここぞとばかりに投げかけている。コメンテーターとしては正しい意見ではある。正論だからだ。
正論とは、被害者の気持ちを汲み取らない冷や水のことである。例えば野球特有の駆け引きがあって。投手がデットボールを投げてしまいました。
あーっと、これはどういうことか。手元が狂ってしまったか。実況席はちょっと心配げに中継する。しかし、ここで、
「いや、デットボール投げるくらいなら、ストライクど真ん中を投げた方が良いに決まってるでしょ」
こんな現場に冷や水を浴びせるような意見を聞いたら、「いやいや……」ってなりますね。
なぜかと言えば、書いた通り、野球特有の駆け引きがあって、手元が狂ってデットボールに……という流れですから。
正論って、実際の試合は見なくても言える意見ですね。そして、正しいけど事実に即していない。状況把握の理解を捨てた意見が正論です。
「試合見てたか? ルール分かっとるんか? お前、野球の駆け引きの何たるかが分かっとらん。」
投手が一体何の球種を投げようとしたか、葛藤があって「あっ」となった。その論点から一番遠ざかり、さらに論点ずらしまでやっていく。これはデットボールよりも悪い大幅なボールではないか。
それに違和感なく「そうだそうだ! バッターに謝れ!」と迫る同調者も、同じくらいズレている。きっとこれらは冷酷・冷笑主義。
こんな奴らにはなりたくない。なぜならポテチばかり喰ってぶくぶくお腹で不健康で、何の努力もせず威張ってばかりだからだ。
「たく、どこが『美しい国』だ」
うるせぇ。顔洗え、歯を磨け、髪洗え。
部屋片付けろ、ボロい服着て仕事しろ。
なに、そんな努力、もうやってる? なら、低賃金同士仲良く悪態つこうぜ。今の首相はダメだダメだってな。
私は佐々木先生に何度涙を見せちゃうんだろう。
一度目は浅尾先生への片想いを、浅尾先生から佐々木先生が力になってくれるよ、と暗に終止符を打たれたときだった。
嗚咽を漏らさないようにひとり、職場の休憩室で泣いていたのに、佐々木先生に見つかって、「ひとりで泣かないで」と胸に包まれて、涙が止まらなくなった。
浅尾先生は既婚者で、いつまでも好きでい続けちゃいけなかったのに、それすらも佐々木先生は許してくれる。佐々木先生は私のことが好きなのに、私は浅尾先生のことが好きで佐々木先生を傷つけることを言ってるのに、それでも「泣きなさい」って泣かせてくれる。
なんて心の美しい人なんだろう。
優しさにホッとして、佐々木先生を悲しませていることが申し訳なくて、失恋も哀しくて、私は佐々木先生の胸に縋って泣いた。
二度目の涙は、佐々木先生が帰郷する日が近づいて、別れを実感したときだった。
浅尾先生は年度末に病院を退職して、年度初めに私は外科病棟から小児科病棟に配属され、佐々木先生と医師と看護師として毎日職場で関わるようになった。
佐々木先生と知り合うきっかけになった、外科小児科混合病棟で働いたときよりも、小児科単独病棟は看護師の責任が重い。
だけど私の拙い看護でも佐々木先生は「よく頑張ってるね」「できることが増えたね」と励ましてくれて、看護に必要なことを熱心に教えてくれる。
そんな日々が、浅尾先生への恋を忘れさせて、少しずつでも佐々木先生の手助けができるようにと私を頑張らせた。
佐々木先生は私のことが好きだと職場でオープンにしていて、職場の人たちは気づくと私と佐々木先生を二人きりにしていることがあった。
そんなとき、佐々木先生は私が好きなことをそっと軽く伝えてきた。頬の熱さで頬が赤らんでいるのを自覚してる私に、佐々木先生の穏やかな笑い声が聞こえる。恥ずかしくて顔を見れなくて、でもきっと先生は嬉しそうにしてる。
そんな日々は恥ずかしいのに楽しくて。すごく楽しくて。職場へ向かう足取りが軽くなる。
そうして佐々木先生の退職が間近に迫って、もうこんなやり取りができないんだなって思ったとき、佐々木先生に夕食に誘われた。
夕食を食べ終わり駅まで歩いていると、佐々木先生に手を握られて私も握り返す。驚いた顔に笑うと佐々木先生も笑った。でもこんな日々はもう終わってしまう。
「寂しい?」と優しく問われ、「寂しい」と答えて涙する。
泣かないでおこうって思っていたのに、私が佐々木先生の前で涙を堪えることなんてやっぱり無理だった。
そんな私に先生は「新幹線で1時間半。近いよね」と笑ってくれる。
「寂しいときは寂しいと言って。きっと僕も寂しいから」と背中に手を回して伝えてくれる。
会いに来るよって言う先生に、私も会いに行きたいと心が求めていることに気づいた。
「私も会いに行っても良いですか?」
「良い。良いよ。会いに来て」
切羽詰まったような声で、背中に回した腕に力が加わり強く抱きしめられる。
優しさに、暖かさに、安堵に、それなのに切なくて、ごちゃ混ぜの感情が私の涙腺を壊す。
泣き止んだ後、グスッと鼻を鳴らしたら、優しい微笑みで私の手をもう一度繋いでくれたから、私も握り返してちょっとだけ笑った。
マンション前に先生は車で送ってくれた。
今夜の佐々木先生との二人きりの時間が終わってしまうのが惜しくて帰れないでいると、「思い出を作ろうか」と優しく唇にキスを落とされた。驚いていると、目元にもふわっと唇が触れる。
先生は私のことを好きなのを知っているけど、今までは泣いてる私を慰めるために抱きしめられただけで。好きって軽く伝えられたことは何度もあるけど、でも、キスしちゃうほど私のことを好き、だったなんて。
「帰らないの?僕の部屋に連れてっちゃうよ」
冗談か本気かわからないよ。真剣味を帯びているような気もするし、冗談を言われている気もするし、瞳も声もどっちかわからないよ。
私は車を降りて、先生の笑顔に会釈する。
部屋に入り、姿見の自分の唇に視線が行きそっと触れる。
先生のキスは優しかった。
決して先生の気持ちを押し付けられただけじゃなくて、寂しくないように、私が佐々木先生のことを思い出せるように思い出を作ってくれたんだと思う。
先生はいつも私に優しさを与えてばかりで。
…キス、優しかったの。
嫌じゃなかった。感触の残ってる今も、胸がドキドキ熱くなってる。
今、気づいた。
「好きです」と鏡に向かって声に出さずに言葉にすると、涙がこぼれ落ちる。
好きって気持ちも言葉も大切すぎて、涙に向かわせる。
先生の心がまっすぐで美しいから、私は泣けちゃいます。
三度目は、今夜だった。
佐々木先生が1ヶ月ぶりに小児科学会のために東京へ来ることになり、今夜一緒にホテルディナーを食べることになっていた。
綺麗目なワンピースにコートを着て、先生からプレゼントされた手袋を身につける。上品で暖かくて重宝して、何より先生の心のこもったものだから毎日付けてる。私に似合っていると思ってくれたら良いな。
学会が行われているホテルのロビーで先生と待ち合わせ、先生が宿泊するホテルへ向かう。
そこの展望レストランが今日のディナーを食べる場所だから。
先生と手を繋ぎイルミネーション輝く街路樹そばのベンチへ腰をかける。
寂しくなかったか問われ、「会いたかった」と告げる。
「先生からのキスを思い出して、好きだって言われてるみたいで寂しくなかったです」と。
「僕に会えたら、何をして欲しかった?」
優しく問われる。私の願いを叶えようとしてくれてるのがわかって、好き、大好きって感情が膨れ上がる。
私は静かに首を振って、佐々木先生を涙を溜めながら微笑んで見上げた。
「好きって伝えたかったです。佐々木先生が大好きって」
言葉の途中で先生に背中を引き寄せられ強く抱きしめられる。
ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
先生が、「ありがとう」と呟いた声は涙に濡れてる。
少し震えているような気がして、私も背中に手を回して抱きしめ返す。
好きって気持ちが大きくなって、佐々木先生を包んであげたくて。
泣かせてごめんなさいって申し訳なく思う気持ちと、泣かないように我慢しつつ泣いてしまうほど喜んでくれる素直さに優しい気持ちになる。
告白して良かった。喜んでもらえて良かった。
安堵が、私の頬を濡らす。
先生が大きく息をついて、私の頭をよしよしと撫でた。優しい手。安心する手。
ひっついてわかる胸の鼓動の大きさ、速さ。全部が愛しい。
顔を上げると照れ臭そうに笑ってる。
でも瞳は潤んでいて、涙が光ってる。
私はバッグからハンカチを取り出して先生に渡した。先生はごめん、ありがとうと目元を拭った。
「もらい泣きしちゃった」
「もらい泣きですか?」
「うん、もらい泣き」
私の頬の涙を先生がハンカチを押し当て拭ってくれる。
先生の頭上や背後からイルミネーションの光が届き、輪郭を柔らかに見せる。
「綺麗」
「ん?ああ、イルミネーション綺麗だよね。僕は宮島さんを輝かせて綺麗だと思うけど」
「私じゃなくって、佐々木先生です」
「僕?」
心底心外だと不思議そうな表情をしているのに笑った。
「佐々木先生はいつでも綺麗ですよ。
容姿も、心の美しさも。
私だけじゃなくて、きっと、佐々木先生に関わる人、皆んなが感じることですよ」
「それ、そっくりそのまま宮島さんに返したいな。
僕はいつも、君の涙を美しいと見惚れていたから」
「いつも?」
「うん。切ない涙、寂しがる涙、喜びの涙、緊張の涙。そこには君の純粋な気持ちが溢れ出してて、」
佐々木先生はそこで一旦言葉を切った。
私は胸を手で押さえて、止まない動悸を感じてる。
「僕は君の涙を見るたびに、恋心が強くなってた」
そっと、口元に唇が近づく。
「危なかったね。今、車の中ならキスしてたよ」
素早く頬にキスをしかけられて、私はどうすれば良いの?熱くなる頬を押さえることしかできなくて。
「ご飯食べに行こうか。神戸牛、絶対に美味しいよ」
「はい」
イルミネーションに照らされる佐々木先生に手を差し出され、指を絡めて恋人繋ぎをする。
コートの袖が触れ合って、都会の夜空に白い息が溶け合った。
美しい
大好きなあなたが私の嫌いな人と付き合ったって
裏切られた気分になって
目の前が真っ暗になるぐらいに絶望して
何を信じたらいいかわからなくって
でも、アイツの横で笑うあなたの横顔は
ずっと一緒にいた私でも見たことないほどに
美しかったよ
美しい
同じものを見たりして、同じ感想を持つ人はどれだけいるのだろうか
そんな取り留めも無いことを考えながら雨に濡れる紫陽花を見つめていると「綺麗ですね」と声を掛けられた
声が聞こえた方を見るとニッコリ微笑んでこちらを見る女性がいた
彼女があまりにも美しくてパッと顔を背けてしまった
失礼だったか?と不安になってチラッと彼女の様子を伺うが気に触ったようではなさそうだった
「私はどんな花もそれぞれの良さがあると思うんですが、雨に濡れた紫陽花が1番 魅力的で好きなんです」
「そうなんですね
俺はあんまり花を知らないですが、雨に濡れた紫陽花が1番 美しく見えて好きなんです」
本当に好きな気持ちが伝わる彼女の言葉に無難な答えしか返せない自分が情けなく感じた
『美しい』
あぁ、なんて綺麗なんだろう
その美しい美貌で何人もの
人の心を奪ってきたのだろう
その美しい顔、性格、笑い方全て羨ましい
もし、自分があんなだったら人気者なんだろう
あー 悔しい。憎しみが滲み出て来そうだ
君ってば、僕にも優しいなんてさ
呆れるなぁ…君が僕に優しくなかったら
僕は、僕は……
君を美しいなんて思わなかったのに……
今日のテーマは美しいか。
美しい…
美しい…
と独り言ちてたら
台所の母が
「私のこと?」
と聞いてきた。
(美しい)
4月から高校生になった
周りの環境や友達がガラリと変わった
今までの環境が特殊だったのもあるだろうけど
全体的に周りのレベルが下がった気がする
教科書を見ても何一つ頭に入っていなかったり
自分で考えようともせずに質問してきたり
挙句の果てにちょっと浮いてる頭のいい子のことを
コソコソ言ってる人達までいる
本当に気持ち悪く感じてしまう
この人たちと同じに見られてしまうんだという
劣等感に似たものを感じてしまう
でも周りからの好感度は段々と上がっていく
それに反して自己肯定感はどんどん下がっていく
自分のことを好きになれるように
色んなことを前向きに捉えてみようと思う
こんな人間関係に真剣に悩んでる私は
誰よりも必死で美しい
「美しい」
ほらお話の時間だよ。みんな集まりなさい。
今日は何のお話にしようかね。
コラ坊主。お主その石、祭壇から盗んだものだろう。すぐに返してきなさい。
え?綺麗だから持っておきたい?馬鹿者が。
美しさに目が眩むと痛い目にあうぞ。
ほらさっさと返してこんか。
…まったく。もっと厳しく躾をしたほうがいいね、あの坊主は。
じゃあ今日は美しい石の話をしようかね。
こら、そこ静かにしな。村のおばあの話はちゃんと聞くもんだ。それがどれほどつまらない話であってもね。
その石は海の王ポセイドンが座った岩から欠けたものだと言われている。それが巡り巡って、ある貴婦人の元に辿り着いたのさ。
その海辺の街一番の金持ちと言われていたその夫人は美しいものが大好きだった。美しい服、美しい宝飾品、美しい召使、美しい家具といったように自分の周りを美しいもので囲んでいないと気が済まなかった。もちろん堂々とそんな暮らしをしていたら悪い奴らに目をつけられる。ある朝、主人が夫人の部屋に入るとそこには無惨に殺された遺体があったのさ。顔も潰され、腸が飛び出るほどざっくりと体を引き裂かれていたが、着ているドレスやバラバラになった指に嵌められていた宝石から夫人だと判明した。盗まれたのはただ一つ。ポセイドンの石だ。
もっと価値の高い宝石やドレスもあったのに盗まれたのはそれだけだ。ショックを受けた主人は犯人を捕まえるよう街中に御触れを出した。
しかし何年、何十年経っても犯人はおろか、ポセイドンの石も見つからなかったんだよ。
それからその家は惨殺事件の起こった家として落ちぶれてしまった。夫人は色々な噂があったから、街の人々から好かれてはいなかったけれど、息子は別でね。心の優しい青年だった。でも一家が落ちぶれてしまってから、行方不明になってしまったのさ。
しかしある時、悲しい事実が判明したんだ。
何だと思う?
あ、こら坊主、まだ返してきてないのかい?まったく悪ガキだねえ。
ほらこっちへ寄越しな。あとでおばあからこっそり返しておくから。
え?あ、そうそう話の続きだね。
ある日、夫人が殺されてからおよそ40年ほど経った頃だよ。石が見つかったんだ。見つけたのはなんの因果か、夫人の息子。
国一番の都の市場で婚約者への指輪を探していたら、偶然見つけてしまったんだよ。
その息子は可哀想な子でね、美しくないという理由で夫人に虐待されていた上に、その虐殺事件のせいで家が落ちぶれてしまったものだから、海辺の修道院に預けられていたんだ。そして美しい漁師の娘と恋に落ち、婚約したんだよ。
息子はその石が夫人の殺された原因だと知らず恋人にプレゼントしてしまった。
するとその娘は石を見るなりこう言って泣き崩れた。
「なぜ私の罪を知っているのですか?」
元々彼女は人魚でね、ポセイドンの石は彼女が人間から人魚に戻るときに必要なものだったんだ。それを美しい物好きの夫人の目に留まり無理矢理奪われてしまった。海に帰れなくなった人魚は漁師の養女となって生きていた。しかし毎日故郷の海を眺めて泣く彼女を見かねた漁師は夫人から石を奪い返すことにしたのさ。
しかし奪い返したその石の美しいこと。人魚が住み着いて家計が逼迫していた漁師は石を売り払ってしまったのさ。
人魚が全てを知ったのは漁師が死ぬ間際のことさ。もうそのときにはどうしようもない。すべては自分が人間界に石を持ち込んでしまったから起きたこと。
そうして彼女は石を持って海に帰ってしまったのさ。
その後の青年がどうなったか誰も知らない。
え?ああ、そうだよ。ポセイドンの石は無事人魚の世界に戻ってきたのさ。
しかしまあ、いわくつきの石をおもちゃにするとは血は争えないね。
いいかいみんな。我々が人間になるのか禁忌とされているのはこういう話があるからだ。そして決してこの世界のものを人間界に持ちこんではいけないんだ。
よく覚えておくんだよ。
美しさと汚さは同居する
そう思った
可愛いとそうでもないが
隣り合わせに感じるような
時もある。
整った唇 その口が大きく開かれる
その姿に下品さを感じなくもない
でもそれは普段の美しさから
下品さが垣間見えた事に
強く印象深く残っただけの事かもしれない
どうあれ君の一つ一つの表情が
意味ありげに映ってしまうんだ
実際君はそんな表情や動きを
楽しんでいる
相手の反応を鏡代わりにして
夢見る少女のように 君と歩いた道 どうしてこの世界は 美しい です
夢見る少女のように
「応援してるね」
僕の夢を応援して、いろんな面で支えてくれているキミ。叶うかわからない。けれど、諦めたくない。で、頑張ってはいるけれど、芽が出る気配はない。
「…どうしたら」
応援してくれるキミのためにも頑張りたい。けどこのままだと、キミに負担をかけてばかりで、キミを幸せにしたい。という願いは叶わなくなる。
「夢見る少女のように、いつまでも夢を見ているわけにはいかない」
夢は諦めなければいつだって叶えられる。
そう信じて、まずはキミを幸せにする道を探そうと決めたのだった。
君と歩いた道
君と歩いた道。
その道のりは、平坦なものではなかった。
それでも、今こうして笑っていられるから、大変ではあったけど、幸せなんだと思う。
これからも、2人で笑って歩いていけたら、最高の人生だ。と言えるんだろうな。
どうしてこの世界は
どうしてこの世界は、楽しいことばかりじゃないんだろう。
記憶に残っているのは、辛いことや悲しいことばかり。
何で自分だけ、こんなにどん底なんだ。
と、唇を噛みしめたこともあったっけ。
でも、そんな日々を乗り越えたからこそ、今がある。
辛いことや悲しいことも、今につながる出来事だった。と笑えたなら、上出来なんだろうな。
美しい
瞳に映る美しいもの。
雨上がりの虹、夜空で輝く星、キラキラと眩しい海。いろいろとあるけれど…。
僕が一番美しいと思うのは、社会に揉まれながらも前を向き、進むことをためらわないキミという人。
何が待っているかわからない明日を、怖がることなく進んでく。
凛としているキミを、美しい。見習わなければ。
と、僕は思っている。
美しい
(ごめんなさい。
なにも思いつきませんでした…。
思いついたら書きます)
子供の頃の話です
彼女は可愛くないと言われました
大人の思い通りにならないことを
可愛くないと言われました
彼女は随分幼くて
そして素直でしたから
己は可愛くないのだと
愚直に信じ込みました
暫く彼女が大きくなり
可愛いさに言及されなくなった頃
彼女はふと思いました
己が可愛くないというのは
つまり己は美しく
綺麗な格好いい系なのではと
彼女は随分素直が過ぎて
そして酷く愚直でしたから
言葉の裏の意味なんて
知っていたって認識しません
物語でも授業でもないのだから
言葉通りにしか汲みません
‹美しい›
美しい
紅葉を模したかのような小さなてのひらをめいっぱい天に掲げて貴方は何を掴もうとしてるのだろう。
少し何かぶつかって仕舞えば壊れてしまいそうな、ガラス細工より繊細で綺麗な瞳がキラキラと光り輝いてみえる。
映り込んだ私の顔が貴方にどんなふうに見えるのか。
人差し指を目の前にかざせば小さな手が力を込めて握り返した。弱々しくさえ映る細くて小さな指に思わぬ力で握り込まれて温かな体温に命を感じた。
貴方を彩る世界が美しいものだけであればいいのに。
そう心から祈る私は、醜いものを知りすぎた。
美しいものが何かすらもうわからないまま、
ただただ、目の前で笑う美しい命の幸福を願う。
少し雲がある海岸の夕焼け
明け方のビル街
女優さん
相手のことを考えて自発的にする行為
正直、美しいというテーマを見た瞬間
何も浮かばなかった。。
自分の感情って
怒りや悲しみがメインで
あとは承認欲求が大半を占めていると
最近、気づいた。
美しい、きれい、汚い、気持ち悪いとか
そんな感情は、明確に自分で自覚できるほど
感じないなぁと思っている。
美しいものや美しいことを見たり感じたり
今までもこれからもたくさん経験すると思うけど
自分の心に正直に本気で”美しい”と思えるものに
生きている間に出会いたい。
「美しい」