袋野ねずみ

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美しい


綺麗だと、思った。

美しいと、そう思った。

それはきらきらひかる宝石でもなく、
色とりどりの花が咲く花畑でもなく、病室のベッドの横に座り歌う君の横顔。

自分は耳が聞こえなくなってしまったから分からないけれど、本人や共通の友人から聞いたところによるととんでもなく音痴らしい。

だけどきっと、私はその音痴な歌声が聞こえていても同じことを思った。

こんな部屋なのに、どんなに一生懸命歌ったって、たったひとり隣に横たわっている人間にその声は聞こえないのに。

何よりも楽しそうに、一生懸命、全力で歌って聞かせようとしてくれる。

ああ、君はどんな声で、どんなふうに音を外してるんだろうね。

見えるだけでいいと思っていたけれど、どんなに下手くそだろうと、君の声を聞いてみたくなった。

もうじきその声はもってのほか、唯一見られる君の横顔すら見えなくなってしまうのだろう。

その美しい顔で、君はどんな声で歌うんだろう。

もう二度と、私の耳に音は帰ってこないけれど。

どうか、君はずっとその美しい横顔のまま、歌い続けて欲しい。

来世はきっと、美しい君の声を。




美しい


1/17/2026, 8:49:56 AM