好きになれない、嫌いになれない
折れないようにするための力もろくにないのに
無駄に高いプライドも
色んなことに理由をつけて逃げる癖も
どうすればいいか分からないのに誰かに相談せずに突っ走って取り返しつかなくするとこも
いつもベラベラ煩く憎まれ口を叩くのに肝心な時は口も足も動かないとこも
人にされて嫌だったことは何時までも忘れないくせに自分がしてしまったことはさっさと忘れてしまうとこも
こうありたいって思ってるのに大事な時には曲げてしまう薄っぺらな価値観と正義感も
いらない遠慮して気配って無駄に精神すり減らしてそんな自分が可哀想って思ってるとこも
学校のプリントの自分の長所を書く所を何も出てこなくて白紙で提出してたとこも
何も出来ない何も生まない自分を変えたいって思うだけのとこも
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、
好きになれないんだ。
なのに
ゲームで勝って負けた奴を煽り散らかす時の自分でも知らないくらいよく回って
嘘を吐く時ほどすらすらと言葉を紡ぐ口が
大人ぶって使う難しい言葉と
小説の中の名探偵に憧れてつけた知識を詰め込んだ子供すぎる頭が
薄っぺらで自己中心的な正義感と価値観を動力に
誰かのために動かす足が
好きにはなれない、でも嫌いになれない。
好きになれない、嫌いになれない。
こんなことを書きながら多分僕は、自分のことが
世界一大好きだと思う。
そんなところしかない僕だから、僕なんだろう。
好きになれない、嫌いになれない。
ひとひら
通勤中、吐いた息が空気に出て白くなった時。
寝ようと布団に潜り込んで、足元が寒かった時。
湯船に浸かって、じわーっとした感覚を覚えた時。
冷たい風の通る音と、枯葉が走る音が聞こえた時。
朝起きるのがつらくて、二度寝してしまった時。
家族とリビングを片付けて、こたつを出した時。
仕事終わり、きらきら光るオブジェが目に入る時。
部活帰り、暗く薄い青と橙色の空が綺麗な時。
起きた時、外は静まり返って心地いい時。
今まで色々な冬を感じる瞬間があったけれど
君と出会ってからは私は、
君の赤くなった耳にひとひらの雪が当たって、
びっくりして、小さく悲鳴を上げた後
耳を抑えながら冷たい!と笑う時、一等冬が来たと感じるようになったよ。
ひとひら。
君と僕
手入れされて艶々した黒の綺麗なロングの髪の毛
ブリーチのしすぎでぼさぼさのショートの髪の毛
リボンをつけボタンを留めて綺麗に正された襟元
リボンも失くしてしまいボタンも外れかけの襟元
日常的に使っている様子のある綺麗な付箋とメモ帳
一度も使わず机の中ボロボロの肥やしとなった付箋
学業成就のお守りが一つで綺麗に整えられた鞄
ストラップ類がじゃらじゃらで中身の荒れた鞄
丁寧に綺麗にまとめられているわかりやすいノート
時々白紙の何が書かれているのか分からないノート
自転車の鍵に付けられた
黄色のイルカ
水色のイルカ
無造作に切られた黒い髪の毛
どこにいったのかリボンとボタンのない襟元
ぐちゃぐちゃになった筆箱の中で破られた付箋
びちゃびちゃになった鞄
油性ペンで殴り書きの字が書かれたノート
川の底に沈んだ一匹のイルカ
君と僕。
君と
君と花、君と海、君と空、君と星、君と蝶、君と...
一枚一枚丁寧に、
白いインクのペンで写真の隅に書かれた綺麗な字。
どれも自分が主体の様に思えて、顔がほころぶ。
腑抜けた顔のままアルバムのページを一番後ろまでめくっていくと、一箇所だけ空いている所がある。
私はそこに、同じように白いペンで字を書き足した写真をいれた。
君と私。
雲り
夜の雲り空が好き。
厚い雲に覆われてるのに
街の灯りが雲に当たって散らばって
いつもの晴れた空より明るく見える。
夜の雲り空が好き。
夕方の雲り空が好き。
部活が終わって帰る時、
夕方のピンクや水色になった空の色が雲に綺麗に写っていて、空が好きなあの子にも見せてあげようと嬉しい気持ちで写真を撮る。
夕方の雲り空が好き。