透明
私の中身はないです。
光を通して無いように見えるだけですけれど
私の色はないです。
薄くて無いように見えるだけですけれど
私の顔はないです。
私の頭はないです。
私の声はないです。
私の足はないです。
でも全部、無いようにみえるだけです。
中身も、色も、
顔も頭も声も足も
皆を照らして、照り返させて、
色も中身も全部見えるようにしてくれるはずの光
それが、
私に気付きもしないかのように通り過ぎてしまって
本当は私にもあるんです。
中身も、色も。
顔も頭も声も足も全部、あるんです。
ただとても薄くて、光が通り過ぎてしまうだけで
だからどうか、私の中身を、色を
顔を、頭を、声を、足を
私を、見て欲しいのです
星
無数に光る星の中
一際大きく、ちかちかと目が眩むほどぎらぎらと、
眩く強く光り輝き照りつけ、
目を奪うはプレアデスの星団、通称すばる。
誰もが見失ってしまい諦めたというのに、僕だけは諦めようとしなかった。
強い輝きに目が眩んだときの、あの感覚が諦めさせてくれなかった。
その感覚を忘れることなく、決して諦めず、
僅かな星のかけらを追いかけ続けることこそが、
それだけが、僕が僕の心を保つ唯一の方法だったのかもしれない。
──────
時が流れ、もう用の無くなったその感覚。
でもやっぱり全部忘れるなんてことはなくて、
今でも僕の中にこびりついて離れない。
それどころか定期的に更新されている気さえするけれどね。
夜空を駆ける
小さい頃ずっと憧れていた、羨ましかった。
12月25日、ワクワクしながら、ドキドキしながら、
綺麗な瞳を輝かせ夜空を駆けるサンタクロースからのプレゼントを開ける、子供達が。
いや───
サンタクロースが居ることがと言った方がいいのだろう。
休み明け学校に行くと何を貰ったのかどこに行ったのか何を食べたのか何の番組を観たのか、そんな話で盛り上がっていた。
そしてそれを耳に入れる度に虚しくなった。
でも、それからはあいつが居た。あいつらが居た。
騒いで、ふざけて、笑って、バカやって。
もっとも、それも、もう出来なくなってしまったけれど。
そんな思い出を頭に浮かべる今日、12月25日。
窓の外ではイルミネーションが輝き、
恋人達が、幸せそうな家族達が手を繋ぎ楽しそうに笑いあっている。
それなのに僕ときたら───
暗くなった庁舎に輝くパソコンの前、
山積みになった書類の中、
缶コーヒーと仲良く手を繋ぎ仕事!
なんて侘しいことだろうと自分でも思う。
部下達や上司は彼女のひとつでも作ったらどうだとか、一緒に過ごせる友達でもとか言うが...
この仕事を、それに潜入捜査も続けるとなるとやはり危険な立場には立つことになるだろう。
一般の、民間人など最悪巻き込むことになってしまいかねない。
もうそんなことに耐えれる自信は無い。
そんな言い訳がましくもとれるようなことを考えながら画面に集中する。
"📱"
少し経ってから誰かから連絡が来た。こんな日の、こんな時間に連絡を送って来るような人物に心当たりは無い。
不思議に思いながらも私用の携帯の画面を見る。
───!
何を気軽に連絡してきているんだ、こいつは。
こんな日の、こんな時間に...って向こうでは違うんだったな。にしても恋人や、それこそ向こうでは家族と過ごすものだろうに...。
たったひとつの連絡で、たった一人からの言葉で、
こんなクリスマスも悪くないな、なんて思えてしまった。
ああもう、こんな仕事はやく片付けて有給取ってやる!
ひそかな想い
大切な想いの箱の中に新しい想いがひとつ増えた。
小さな、小さな、ひそかな想い。
でも少しづつ、少しづつ大きくなってきてしまう。
邪魔な想いだ、いらない想いだと隠そうとする。
それでも大きくなって、大きくなって、ついには箱の中に収まりきらないほどになってしまった。
これでは箱が想いに置き変わってしまう。
どうしようかと思案した末、少しづつ、少しづつでも小さくしていってしまうことにした。
それまでは何とか箱に包んで、隠して。
隠して、隠して、隠して。
そして、やっとの思いで幾分か小さくすることができた!
ここまで小さくできたのなら、このまま消してしまおう。そう、思った。
だから───
だからどうか、見つけようとしないでくれ。
そんなに必死に、大切な失くしものを探すかのように探さないで、見つけないで。
あぁ、駄目だ。
また、大きくなっていってしまう。
今度は少しづつなんかではいてくれない。
──────
ついに、収まらなくなった。
でも、もういいんだって。
箱、とびきり大きなのをやるからって。
ふふ...もう、中身はいっぱいで、ぎゅうぎゅうかもしれないけれどね。
あなたは誰だろう。
本名も顔も分からない。
でも不思議と話しやすい。
分からないから故なのだろうか?
そう思うと知ってしまうのが怖いと思うけれど、
もっと知りたいとも思ってしまう。
会ってみたいと言う気持ちと、会ってしまったらどうなるんだろうと言う不安な気持ちが入り交じっているが...
恐らくは前者の方が大きいのだろう...と思いたい。
でもまあ、きっと楽しいのだろう。
顔も名前も、互いを知ってみて話すのは...。
頭に浮かぶそんな考えで一喜一憂しながら、その時を待つ。
楽しみだ
あなたは誰だろうか。
なにこれ...?