一輪のコスモス
花を貰った。
一輪の赤いコスモス。
植物詳しくないし、花言葉とかもわかんないけど、
ただ何となく、綺麗だなと思った。
いや花だし当たり前なんだけど、学校の玄関に並んでるのとかそういうのとはなんか、違う感じで綺麗だと思った。
明日誰かになんで違うのかとか聞いてみようかと思ったけど、きっと好きな人に貰ったからじゃないかとか恋愛脳の馬鹿なこと言い出すから絶対ダメだ。
何となく気恥ずかしいけど、花瓶に突っ込むだけ突っ込んで枯れていくよりかはましだと思って、押し花にしようと思った。
「押し花 やり方 簡単」って、二度と調べなさそうなことを検索してみる。
ダンボールとかキッチンペーパーとか、
道具は家にあるもので揃いそうだったから、スマホを置いて取りに行く。
...。
いや別に、なんでくれたのかとか気にならないし。
花言葉とか調べなくていいし。
...。
そう思いながら置いたスマホを再び手に取ってしまうんだから、とんでもない恋愛脳の馬鹿だ僕は。
「コスモス 赤 一輪 意味 」って、二度と調べなさそうなことを検索してみる。
これから僕が何度もそれを調べるようになるのはまた今度のお話。
一輪のコスモス。
涙の理由
悲しくて
苦しくて
辛くて
痛くて
嬉しくて
楽しくて
感動して
あくびをして
聞かれて答えられるものも、答えられないものも、
無数にある涙の理由。
でもやっぱり数には限りがあって、その何倍も多い涙には、理由がつけられないものだってあって。
そんな理由のない溢れる涙は、何として存在できるんだろうななんて、思って。
でもきっと、
悲しいからでも
苦しいからでも
辛いからでも
痛いからでも
嬉しいからでも
楽しいからでも
感動したからでも
あくびをしたからでも
説明できなくても
理由がなくても、全部普通に一緒で、目から流れてくるものは涙として流れてくる。
涙の理由なんて、突き詰めれば誰も分からないのかもしれない。
目を乾燥や汚れや細菌から守るためにとか、血の代わりに目に栄養を持っていくためだとか、身体の仕組みでいえばいっぱいあるんだろうけど。
生きていく為だけなら必要のないはずの、
感情表現に使うことが出来る涙が、
他の何でもないぼくらだけに備わってる理由も。
感情の変化で出てくる仕組みになってる理由も。
きっと本当は誰にも分からない。
存在しない涙の理由。
もしも世界が終わるなら
もしも世界が終わるなら。
その日その時、おれはいったい何をするだろう。
最後に何を食べて、どこに行って、どんな言葉を残して、どんな思いで何を。
最初に頭に浮かんでしまったことはあるけど、よくあるフィクションじゃあるまいし。
世界最後の日に告白をなんてことはできない。
きっと最後だとわかっていてもそんな勇気出せないのがおれなんだろうな。
いや、もし言えたとしても返ってくるのは優しいあいつの困った申し訳なさそうな笑顔だろうから。
そんなことを、何度考えただろう。
万に一つも可能性のない想い。
それだけ不毛なものなんだから捨ててしまえばいい、と。
そんなことを正当化して救われたいが為に何度。
こんなことを、友達の話だとか誤魔化して伝えてみた。であいつは大笑いした。
そして勝率0%なんて夢も希望もないもの、傷つくくらいなら捨てた方がいいと、そういった。
でも結局、きっと、
おれは最後の日に諦めてしまう。
もしも世界が終わるなら。
そう考えた時、ネットニュースなんかを見ながらあいつといつものように、馬鹿みたいに笑ってるおれが何よりも鮮明に浮かんだから。
きっとおれは捨てることを諦めてしまう。
「もしも世界が終わるなら?」
「それでも、その友達は捨てれないと思うよ。」
「ふーん」
きっと、いや絶対に、
おれはこれを捨てられないから。
もしも世界が終わっても。
フィルター
ノートが破られてた。
でもあの子だから、なにかわけがあるんだろうな。
席に足をぶつけられた。
本当に気持ち悪い。謝ってきたけれどあいつだからきっとわざとやったんだ。
貸したシャーペン壊されちゃった。
あの子だし、ごめんって言ってたし、きっと悪気はなかったんだろうな。
教科書を見せて欲しいって言われた。
あいつなんだから、なにかイタズラでもするつもりだった?本当に忘れてたんだとしてもちゃんと自分で持ってこいよ。気持ち悪い汚い。
あの子だからきっと。
あいつだからきっと。
あれ
どっちがだめなんだったっけ。
フィルター。
※信号関係ないです!!すいません!!!
独白
誰かに見られることなんていうことはないと思うので、これには独白と名前をつけさせて頂きます。
私はもう老い先が短く、いつ何があってもおかしくない身です。
もちろん歳も歳ですが、
それよりもっと老い先の短さの理由を占めるのは、私の病気でしょう。
産まれた時からもう治ることは無いだろうと言われた病気でした。
寿命が人より短い。
それになんの実感もわかず恐怖もなく、
なのにどうせいつ消えるか分からない命だと。
弱い体を引きずり卑屈に生きてきました。
そんな事を続けて、40年が経った時でした。
私が彼女に出会ったのは。
母国の内外に限らず世界中を旅する彼女は、私の半分ほどしか生きてきていないというのに沢山の視点と、そして知識を持ち合わせておりとても遠くのところ、ましてや国外なんて出られやしない私は、彼女が話してくれるお話の中のような現実のストーリーを子供のように熱中して聴いていました。
彼女は不定期に何年も色々なところを飛び回っていますから、会える時はとても少なかったのです。
ですが一区切り着くと必ず私のところに来て、また新しい話を聞かせてくれるのです。
そんな優しい彼女に私は劣情を抱いてしまった。
無論伝える気なんてありません。
老い先も短く歳をとったこんな私が、未来ある優しい彼女に余計なことを言い足を引きずらせることはできませんから。
──なんて、ことを言い訳にしてはいますが、きっと私がそばにいて欲しいと、横で話をもっと聴かせてくれなんて言えば、優しい彼女は迷わず飛び回るのをやめ私の横に居てくれるのでしょう。
でもそんなことは許されない。他でもない私が許さない。
私は世界中を飛び回って、嬉しそうに元気に帰ってくる彼女を、きらきらして絶望なんて写したことがなさそうな瞳で語ってくれる彼女を愛していたのですから。
この短い先、二度と口に出すことの無いこの思いをこの文に残し、私はずっと彼女を待ちます。
この文の入った瓶を拾ったかもしれないどこかの誰かへ。
海が見えた。
世界を飛び回っていれば珍しいものでもないけれど、わたしはいつも海が見えると飛び込みそうになってしまう。
色んなところと繋がっている海は、きっと大好きなあの人にも繋がっているから。
今度はどんな話を持って帰ろうかななんて思いながら砂浜に近づく。
ふと、小さな小瓶が目に入った。
コルクを留めている真っ赤なシーリングの模様に、見覚えがあった。
急いで開けて中身を確認したわたしは、次の瞬間急いでスマホを操作し帰りの飛行機をとった。
独白。