袋野ねず美

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願い事



消して、消して消して消して消して

消して消して消して、
酷く感情が昂った時、
どうにもできないことになった時、
頭の中でずっと唱える

どうにかして、助けて、気づいて、
声に出さないと、声をあげないとどうにかしてもらえることも助けてもらえることも気づいてもらえることもないのに

なにかに願うようにずっと、ずっとずっと。
頭の中で飽和している願い事が叶ったことは一度もないのに



願い事の対象はいつだって人だ。ものじゃない
これだと主語が大きく思えるかな、あくまで私はそうだと言える。

現代社会の中で未成年が苦しみ、自ら命を絶つまで思い詰める理由の多くを占めているだろう。

頭の中で飽和されるそれの対象が自然だの宇宙だのだとしたらなかなか自らが叶えられるような範疇には留まらないが、大多数の人間のそれの対象は人。

多少なりとも自らの手でどうにか手を加えて行動できる余地があることも、全くそんなものはなく自分以外に手を伸ばされないとどうにもできないこともある。
前者はともかく後者は助けを乞い差し伸べてもらうために手を伸ばすことから始まる。無論気づいては貰えなかったなんて事が多いのも事実だろうけれど。

それでも結局願い事なんて言うのは眉唾で自分で行動しないと叶わないものだ。

助けて欲しくて、
気づいて欲しくて、
どうにかして欲しくて、
だったら声をあげて辛いですって手を挙げなきゃいけない。最後は全部自分が動かなきゃどうにもしてはくれないってことだ。

そんなことは分かっているけど、
分かっていても、追い詰められた時、
今の世界に存在する言葉では到底言い表すことが出来ないほどの思いが生まれた時、大きくなった時、開いた口からは声が出なくて、
あげようとした手は震えて、降ろされて、
そんな時、願わずにはいられないから。

今日も僕は頭の中で、願い事を飽和させる。


願い事

7/7/2025, 1:38:26 PM