『終点』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
テーマ:終点 #270
青春の終点の駅は涙の海。
紅葉の森から
苦労の山を乗り越え
滝の岬をくぐり抜けた。
そんな青春の旅の最後は
美しい涙で終わりたい。
笑顔なのもいいけど
涙が出るのはそれだけその場所に
想い出がある事だから。
暑い日が続いていた。辰巳は2Lのペットボトルを逆さにして、中に入っていたスポーツドリンクを最後の一滴まで喉に流し込んだ。
現場仕事は撤収が早いぶん仕事を始めるのも早い。だが、最近の夏は朝から夜まで一日中ずっと暑いままだな、と辰巳は日陰で休憩をとりながら思った。
日干しになったミミズが土の上で伸びている。土が温まってしまったために地上へ出てきたものの、外はもっと暑い。殺人的な日差しにあっという間に体内の水分を取られ、そのまま干からびたのだ。辰巳は少し同情した。
自分も若いときはそうだった。ままならない環境やうまくいかない人生に苛立ち、故郷を飛び出して都会でその日暮らしのような仕事を転々とした。
ここを出たら前よりはマシだろう、そういう希望を抱いて様々な場所へ、界隈へと飛び込んだが、結局どこも似たりよったりで、孤独と持て余した苛立ちは募るばかりだった。
あの頃から考えれば、今の自分はなんとも平穏な生活ではないか、と辰巳は思った。
タバコも金がかさむからやめたし、酒もほどほどにしか飲まない。パチンコにすら長らく行っていない。心身ともにそこそこ健全で健康な暮らしをしている。
あの頃から考えれば。
ある日、なけなしの金で飲んだ帰りにそのへんのヤンキー崩れのような輩数人に絡まれ、近くの路上で小競り合いになった。
当然、多勢に無勢で一人きりの辰巳は彼らに殴られ蹴られてアスファルトの上で横になることになった。
路上で伸びているミミズよろしく、辰巳は電信柱に背をもたせかけて、吐き気と痛みをやり過ごしていた。
「あの。大丈夫ですか?」
そう声をかけてきたやつがいた。ヤンキー崩れに絡まれたとはいえ、そのヤンキー崩れたちよりチンピラ風情のある格好をして倒れていた酔っぱらいに声をかけてきた女がいた…。
ピリリリ、と携帯が鳴り、辰巳は物思いから現実へと引き戻される。
発信は梨花からだった。
「瑞希が熱を出しちゃったのよ。大したことはないと思うけど。今日はどれくらいで帰れる?」
「ああ…、わかった。今日は昨日よりは早くなると思う。あとでもう一回連絡するよ。」
答えて別れを告げ、電話を切った。
まさか自分のような人間がこんな暮らしができるとは思いもしなかったな、と考えた。
もう一度地面に目をやると、ミミズの姿はもうなかった。どうやら、完全に死んではいなかったようで、どこかへ這って逃げたらしい。
俺もまだここが終点じゃないな。
ペットボトルをカバンに投げ入れ、辰巳は仕事に戻っていった。
今歩いているこの道は、どこに続いているのだろう。
モラトリアムにありがちな、ベタなことをふと考える。
終点、というものが明確にあるのならどんなところなんだろう。
誰もいない古びた無人駅?
開通式のように華やかな駅?
どこであれ、
「あぁ、ここが私の終点だ」
と胸を撫で下ろして降りられるように、
今を生きていたいなと思う。
ベタなことを考える自分が結構好きだ。
案外いつも使ってるこの駅に行き着くのかもしれない、と蒸し暑いホームに降り立った。
今はまだ、ここも終点じゃない。
『終点』
「終点」
終点というと、
寂しかったり
悲しかったり
もうおわり だと思ってる?
終点駅というのは
電車でいうと始発駅でしょう。
段々と混んでゆく朝の
ギュウギュウ詰めの通勤列車なら
必ず座って通勤できるってわけ
つまり おわりは始まりになれる
だからあなたに伝えたい
絶望する必要なんてないってこと
「終点」
電車が発車します。
お母さんの大きなお腹から産まれてきた君
幼稚園でお友達が沢山できた君
小学校に初めてランドセルを背負って
楽しそうに歩いていく君
中学校で部活勉強テスト色んなことに
ぶつかって、それでも挫けず挑戦し続ける素敵な君
高校生、仲間の別れや人を愛すということを知った君
そして、大人になった君
しかし人生には終わりがある
おじいちゃんおばあちゃんになる時が来る
君がおじいちゃん、おばあちゃんになった頃に必ず聞こえてくる音がある。
「次は終点、終点」と。
最近よく考える。
昔あった辛いこと
忘れられない出来事
そう思いながら終点に向かって一生懸命走っている
ただ今も尚亡くしてしまった大事なものを
想いだしては涙が止まらない
二度と手に入らないのはわかっているのに恋しくて仕方がない⋯
上手くいかなくたっていい
「失敗したっていい。まずは挑戦するところからだ」
そうだ。動き出さなければ始まらない。
手持ちのピースをかき集め、より分け、頭の中に大まかな設計図を組み立てる。できるだけあるもので、どうしても足りないものは行きつけの店に買いに走る。360度の完成形を思い描きつつ、あとはひたすら手を動かしていく。積む。重ねる。並べる。俯瞰する。資料画像と見比べて修正を重ねる。
「は? レゴで首里城作った? バカじゃないの?」
蝶よ花よ
「あんた、いうほどかわいくないから」
殴られたような衝撃が私を襲った。
「パパもママもレナのことかわいいって、 にいさんたちもてんしーとかようせいみたいーっていうよ!?」
「そういうの『おやのよくめ』っていうんだよ」
親の……欲目……!
「レナかわいくなかったんだ」
「ふつう。ちゅうのじょう」
中の上かぁ。リアルだなぁ。
「まおちゃんとともだちになれてよかったよ」
「ふーん。あたしも」
親友のおかげで現実を知った日。
終点の駅で降りるあの子は、どんな顔をしているのだろう。
終点は幻覚みたいなもんだよね
これで終わりだと
泣いて叫べばそこが終点
なんて事は全然無く
時計の秒針は止まらないし
締め切りも過ぎたままだし
書類もできてない
締め切りまでに書類が出来てたとしても
次の作業が待っている
つまり終点なんて幻覚
ついでに締め切りも幻で
仕事なんて夢の類で間違いない
// 終点
お客さん、終点ですよ、と紋切り型の台詞が降ってくる。私は携帯から目を上げて、終点ってことは始発ですよね。お構いなく――とだけ返して視線を落とす。掃除があるんで、と制服は言う。足を上げるのでその下を掃けばいいじゃないですか、と今度は顔も上げずに返すと、一旦出ていてください、終わった呼びますから、と言う。キセルにならないんですか?と問うと、私は困らないんで、と言って制服は重心を崩してラフな立ち姿になる。...足しか見えないけれど。面白い乗務員さんですね、と顔を上げると、制服は意外と爽やかな顔立ちをした若い人だった。知りませんよ、会社に怒られても。 怒られてばっかですよ。 だったら真面目にやったらどうです? そういうのは他の人が勝手にやりますよ、鉄道会社ですから。 日勤教育とか。 ああ、あれ違法だってことで禁止になりました。ざまあみろです。 始末書とか。 そんなもの寝ながら書けます。 減給とか。 連れ合いがいっぱい稼いでいるので。 いやいや。 宝くじも当たりましたし。一等。 はぁ? 予定ですけど。 予定...
それはそうとそろそろ降りてくれませんか? ああ、もういいです。あなたの相手のほうが面倒です。 ご協力ありがとうございます。ところで...
キセル、ってご自分で言いましたよね。一応切符、見せてもらいますよ?
『終点』
目を覚ますと窓の外は真っ暗な田舎の風景で、車内アナウンスが私の知らない駅名を終点だと告げている。どうやら、いつの間にか降りるべき駅を寝過ごして終点まで来てしまったらしい。
「次は終点、○○、○○です。右側のドアが開きます。お降りの際は足元にご注意下さい。」
アナウンスが流れる静かな車内には私の他にもう一人だけ乗客がいた。私と同じくらいの年齢だろうか、白と黒のシンプルな服に身を包んだ青年が眠っている。
たった二人、私と彼を乗せた電車は次第にスピードを落とし、やがて古びた無人駅に止まった。ホーム側のドアが開いて、冷房が効いていた車内に生温い夜の風が入ってくる。ドアのすぐ横に座っていた彼は急に周囲が夏の空気に包まれてびっくりしたのか、ゆっくりと目を擦り、自分が知らない駅に着いていることに気付いて驚いたという表情を浮かべている。彼のその表情がまるで私の気持ちを代弁しているかのようで、思わず笑ってしまった。
「お兄さんも降りる駅寝過ごしちゃったんですか」と私が笑いながら尋ねると
「…みたいですね」と彼も苦笑しながら答える。取り敢えず二人で電車から降りて次の折り返し電車の時間を確認してみると、なんと今乗ってきた電車が終電だったらしい。最悪だ、と思っていたら、それが顔に出ていたのだろう、今度は彼が私を見て笑い出した。笑っている彼と目が合って私まで可笑しくなってきて、私も笑う。「夏の奇跡」と言うにはちんけすぎる出逢いかもしれないけど、この何もない駅で初対面の彼と笑い合っているのがなんだかとても不思議で、それでいてとても心地良かった。
真っ暗な夏の夜、私たち二人の笑い声はいつまでもこの片田舎の町に響き渡っていった。
終点
終点で思い浮かべるものは、電車やバスの終点。人生の終点。
そんな感じだろう。
でも、もうすぐ還暦を迎える私が考えるのは仕事の終点である。
60歳定年制だけど、60歳なんてまだ体は動くし、多少鈍くなっても頭は働く。60歳で定年だけど、まだ使えるから嘱託職員になる。でも、ボーナスは出ない。
神奈川県の田園都市線でいうと、終点が中央林間だとすると、60歳は長津田あたり。電車あまり詳しくないんで、例えがマニアック?
60歳で働くの辞めて、65歳で年金もらうとちょー少ない。
嘱託で70歳まで働いても、なーんかお荷物扱いぽい。かと言って、新しい事を始める勇気もない。転職なんか無理。
仕事の終点って難しい。ただただ、脱線しないで終点に到着するまで、慎重に進むしかない。
あ〜歳はとりたくない。
人生の終点は、
いつ
どこで
誰によって
終わってしまうのか
誰も想像できない。
明日死ぬかもしれないのに、
あと1分後息を止めるかもしれないのに、
私は貴方とやりたい事なにも出来てない。
貴方も明日が人生の終点かもしれないのに
私は貴方に何もしてあげられてない。
もう、貴方に
会いたくて、
会いたくて、
会いたくて、
好きと伝えたくて、
触れたくて、
見つめたくて、
ただただ今日も淋しく夜を過ごす。
田舎の、人もまばらな列車は終点に向かっていくにつれ乗降客が減っていく。
この車両も、僕と幼馴染の2人だけになってしまった。
初めての出会いから特殊すぎて、幼馴染と言っても特に会話もしない僕ら。
今日も今日とて帰りの列車に揺られていると、不意に肩にずんっとした衝撃があった。
隣に座る彼がもたれかかってきたのだ。
君は僕の肩に頭を預け眠っていた。
リュックを抱きしめながらねむる、その横顔は、普段からは想像もつかないほど柔らかく穏やかで、思わず見とれてしまった。
ふたりきりの車両。
車窓からは夕日に照らされ茜色の見慣れた田園風景がながれていく。
僕らの降りる駅と終点の駅までは一駅分、普通に歩いても帰れる距離だ。
『次は――駅。――駅』
次の駅を告げるアナウンスが鳴った。
終点まで起こさなかったら君は怒るだろうか?
『終点』2023,08,10
最寄駅が終点にある電車で座れた時は、帰り途で最も嬉しい瞬間だと思う。
乗り過ごす心配もなく、心置きなくうたた寝もできるチャンスが持てるからだ。
やがて宵の口になるにつれて、車窓からの眺めがより一層美しく感じる。
そうして終点に着く頃には、もうすっかり夜の空間に変わっていた。
ほんの少しだけタイムワープしたかのような、そんな不思議でなんともいえない感覚にとらわれるような-でもその哀愁の漂うこの時間が好きなのだ。
またいつか、どこかへ引っ越しすることがあったら、次の場所も終点にある駅だといいな。
ひっそりと決意するのだった。
まもなく〜、終点、終点〜。
運転手の声で目が覚めた。
周りにバレないように小さく伸びをする。
夜遅いからか俺以外にこの車両に乗っているのは2人。
男性と女性。男性は眠っているようだった。
終点〜、終点〜。お忘れ物の無いようーーーー。
さて、降りるか。
座席を立った時、
「あの…大丈夫ですか?」
女性が眠っている男性に声をかけていた。
しかし、あまりにも声掛けに応じないため身体を揺さぶる。
ドサッ
男性はその場に倒れた。動かない。呼吸をしていない。
「キャアアア!!だ、誰か!!」
女性は車両を飛び出した。
…なんで俺に助けを求めないんだ……?
ふと、倒れた男性の顔を見る。
呼吸が、鼓動が徐々に速くなっていく。
『………こいつ…俺じゃねーか』
ー終点ー
「終点」
やってしまった…
電車の中で眠ってしまい、いつの間にか終点まで来てしまっていた。
閑散としていて、駅のホームの明かりがあるだけの場所だ。
周りには誰もいない。
でも、悪くない
家の近所じゃ見えない景色がここにある。
まんまるな月、赤や白に輝く星星
たまにはここに来るのもいいかも…
何もかもが嫌になった僕は、電車で終点まで行って、そこからさらにバスに乗った
目的があったわけじゃない
とにかく現実から逃げ出したかったんだ
行き先も確かめずに乗ったバスは、山の奥の古びた茶店の前で停まった
意外や意外
そこは天然氷で作ったかき氷が人気の店で、行列ができてたんだよね
僕も行列に並んで、ほうじ茶白蜜っていうのを頼んだら、これがめっちゃおいしくてさ
完食する頃にはすっかり元気になって、次のバスで帰って来たってわけ
終点? 私は終点が恐ろしい
私はどこまでも走り続ける電車に揺られていたい
わたしの終点ってどこにある?
帰ってくる言葉はいつも同じ
「知らない」
未来は見えないところにある。
誰にだってわかる事だけど、
考え出したらキリないし怖いよね
よく自分は生きてるって思うよ