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田舎の、人もまばらな列車は終点に向かっていくにつれ乗降客が減っていく。
この車両も、僕と幼馴染の2人だけになってしまった。
初めての出会いから特殊すぎて、幼馴染と言っても特に会話もしない僕ら。
今日も今日とて帰りの列車に揺られていると、不意に肩にずんっとした衝撃があった。
隣に座る彼がもたれかかってきたのだ。
君は僕の肩に頭を預け眠っていた。
リュックを抱きしめながらねむる、その横顔は、普段からは想像もつかないほど柔らかく穏やかで、思わず見とれてしまった。
ふたりきりの車両。
車窓からは夕日に照らされ茜色の見慣れた田園風景がながれていく。
僕らの降りる駅と終点の駅までは一駅分、普通に歩いても帰れる距離だ。
『次は――駅。――駅』
次の駅を告げるアナウンスが鳴った。
終点まで起こさなかったら君は怒るだろうか?

『終点』2023,08,10

8/10/2023, 1:05:45 PM