まもなく〜、終点、終点〜。
運転手の声で目が覚めた。
周りにバレないように小さく伸びをする。
夜遅いからか俺以外にこの車両に乗っているのは2人。
男性と女性。男性は眠っているようだった。
終点〜、終点〜。お忘れ物の無いようーーーー。
さて、降りるか。
座席を立った時、
「あの…大丈夫ですか?」
女性が眠っている男性に声をかけていた。
しかし、あまりにも声掛けに応じないため身体を揺さぶる。
ドサッ
男性はその場に倒れた。動かない。呼吸をしていない。
「キャアアア!!だ、誰か!!」
女性は車両を飛び出した。
…なんで俺に助けを求めないんだ……?
ふと、倒れた男性の顔を見る。
呼吸が、鼓動が徐々に速くなっていく。
『………こいつ…俺じゃねーか』
ー終点ー
8/10/2023, 12:53:58 PM