『終わらせないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
終わらせないでこの関係を
今が一番いい形だから
あなたが私を好きなのは知ってるし
私もあなたが好きなの
だけどあの子だってあなたが好きなんだよ
そう私は友達のままが居やすいの
3人で仲良くして居たいだから終わらせないで
告白したら終わっちゃうから
─────『終わらせないで』
終わった命には値段がつく
─いいひとだった
こんなひとだった─
なんの関わりがなくても
死にだけは群がる
点のような黒い虫のように
甘い欠片にだけ群がる
。
#終わらせないで
「もういいかい?」
「まだだよ。」
「「もう1回」」
終わりにしようと言うまで
終わらせないで
終わらないで-
今となれば
記憶の中だけの
恋だけれど
あのひとへの想いは
今でも胸の奥で
ふつふつとたぎっている
この想いが
時に流され
磨かれて
いつの日にか
懐かしさだけになれるまで
このままで
# 終わらせないで (334)
『終わらせないで』
あのね
ずっと見てたよ
あなたの努力
あなたの涙
時々見せる
あなたの笑顔
だけど
気づいてあげられなかった
あなたが
言葉にしなかった
内に隠していた 思い
頑張って良かったね
努力は報われたね
最後に
そう言って
一緒に喜びたいよ
だから
終わらせないで
夢を諦めないで
ここから ここから
命さえあれば
生きてさえいれば
また
新しい夢を
見つけることだって出来る
だから
終わらせないで
あなたの人生は
ここから
再スタートだよ
さぁ
幸せを掴むため
リベンジだ
終わらせないで
今好きな人がいるの。
とっても仲良いから、みんなから両思いって噂されてる。
今日も遊ぶつもりだし、手も繋いだことある、ハグだって。
抱っことか当たり前だよね。もう異性じゃないような接し方。
でもある日、こんなこと言われたの。
「こんな関係終わらせないで。」
お気に入り110ありがとうございます😿😿❤️🔥
これからも頑張ります!!
あぁ。どうこ此の時間が永遠に続けば良いのに…。
なんて、思った経験がある人は少なからず居ると思う
その瞬間が人生の中で何度あるかは分からないが
沢山えると思う。
私の場合はまさに今だ。
今日は付き合ってまぁまぁ経つ恋人と泊りがけでデートだ
私は今日が来るのがとても楽しみだった。
二人で過ごす時間が過ぎるのが早くて
少し寂しさも感じつつ
あっと云う間に夜になってしまった。
ご飯も食べてお風呂にも入った。
後は眠るだけだが、彼からのお誘いがあったのだ。
私は思わず嬉しくて彼に抱きついた
そして夜も深まり……
彼が私のなかに入って来るのが分かる…。
最初は恥ずかしさや緊張していて固まった身体も
今は彼を少しずつだけれども受入れてる
あぁ。幸せだ
心からそう思った。
此の時間が永遠に続けば良いのに…、
あぁ、神様お願いします。
まだ終わらせないで
題名:終わらせないで
【終わらせないで】
幾度も斬り結び、白刃を重ね合う。ほんの少しでも気を緩めれば即座に首が落ちる、ひりつくような緊張感。互いに互いの国と名誉をかけた神前での正式な試合で、コイツのような至高の剣士と刃を合わせることができたのは俺の人生で最大の僥倖だろう。
玉鋼のぶつかり合う高く澄んだ音が、夕空へと鳴り響く。間近に捉えた男の瞳は、爛々と輝いていた。互いに息は上がっていた。こんなに長く誰かと打ち合うのは初めてのことだ。気分が昂揚する。ああ、どうか、どうか。
(この時間が永遠に、続けば良いのに)
御簾の向こう、俺たちの試合を見守っている神様へ。どうかこの至福の瞬間を終わらせないでくれと祈った。
いつの間にか、帰り道を共有するようになった。正門から坂道をのぼって横断歩道を渡るまでの五分に満たない時間。
「フウね、いつか韓国に住みたい」
「韓国好きなの?」
「好き。韓国ってね……」
大抵はこんな感じで、彼女が好きなものや興味のあることについて話し、それに相槌を打つ。たまに相談事を持ちかけられ、誰にでも出来るようなアドバイスを送ったりすることもあった。
「……それでね、韓国語の本買いに行きたいんだけど、一緒に行こ?」
歩行者信号が青に切り替わるのを待っている時だった。いつもはここを渡ってまた明日と手を振るのだけれど、丁度欲しい本もある。
「いいよ。付き合う」
信号が切り替わって渡ろうとすると、袖を掴まれた。
「そっちじゃなくて、ショッピングモールの方に行きたい」
ショッピングモールは帰り道とは真反対にある。ここまで歩いてきたのだから、横断歩道を渡った先にあるレンタルショップの方に行くのかと思っていた。
「沢山あった方が見てて楽しいから」
踵を返してモールへと向かう。道中は彼女に流されるまま寄り道を繰り返して、十五分で着くところを倍近くの時間がかかった。
モール内の書店に着いてからは、新作小説のコーナーをさっと見渡した後に語学書のコーナーへと移った。表紙のイラストが可愛いとかカバーの手触りが良いとか、内容よりはその本自体を好きになれるかどうかを重視する選び方が、とても彼女らしい感じがした。
「帰り道って、なんで短いんだろ」
無事に買い物を終えて、いつもの帰り道まで戻ってきた時だった。
「歩いても歩いても前に進まない道があったらいいのに」
「怖い話だ」
「怪談は無理。でもお化けと仲良くなってみたい。数学のテスト中にこっそり答え教えてもらう」
「悪い話だ」
折悪しく、互いの帰路を分ける横断歩道に捕まってしまう。
「寄り道したらいいんじゃない?」
歩行者信号をじっと見つめる。
「今日みたいに。」
続きはあった。けれど言葉は上手く出てきてくれなかった。歯科医院の看板のキャラクターが自分を見ている気がした。
信号が青に変わる。二人は止まったままで、左折を試みるドライバーが訝しげな視線を投げかける。
「する。寄り道、たくさんする」
唸りを上げて車が左折していき、歩行者信号が赤に切り替わる。
近くにいるのに遠回りして。帰り道は、まだ終わりそうになかった。
『終わらせないで』
あなたの物語を どうか終わらせないでください
あなたの想いを どうか終わらせないでください
あなたの感じるままの その想いを
どうか 守り 祈り続けてください
時に休むことがあっても
終わらせてはいけません
時に敗北の姿のように感じても
物語はまだ、終わってはいないのです
物語は最後まで わからない
途中では 何も決まってはいない
自問自答しながら
最後まで どうか 歩み抜いてください
あなたの想いは
あなたの心は
あなたの決意は
あなたの悲しみは
あなたの憂いも喜びも、
絶望も希望も
あなただけしか感じられないものであるのと同時に
この世の財産を 全てかき集めたとしても
叶わないほどに 尊くて偉大な存在なのです
だから、あなたは今、ここにいるのです
続けてください
自分自身の生命が
心の底から安らぎを感じ、
何の憂いもなく
納得し、次なる生へと 旅立てる最期を
迎える日まで
『終わらせないで』 185
フランツ・カフカの名言に、こんな言葉があります。
『人生の意味とは、それが終わるということです』
今回はこの言葉について考察していきまぁぁ……しょうっ! (深夜テンション)
普通に考えれば"人生の意味とは死ぬことです"と、そんな寂しいことをただ言っているように聞こえますが……本当にそうでしょうか?
もしそれが本当ならば、どうして彼は『それが終わるということです』だなんて迂遠な言い回しをわざわざしたのでしょう?
別に『死ぬということです』と言えば分かりやすく済むはずなのに。
ですから自分は、ここに何かしらの意図があるように思うのです。
というわけで、一度それを前提にして考えてみましょう。
『終わる』という言葉を聞いて連想する言葉があります。それは『始まり』です。
終わりがあるのであれば、その因果として必ず始まりがあるものですから。
彼がそのことを含蓄していたのだとしたら、『それが終わるということ』というのは、『それが始まって終わるということ』と解釈しても許容出来ると自分は考えます。
そうしてみると、彼はとても普遍的なことに人生の意味を見出していたことになります。
先にも述べましたが、始まりがあれば終わりがあることなんて、人生に限らず当たり前の話ですから。
まとめると彼は、"人生にだけ付随するような時別な意味など無い"と言いたかったのではないだろうかと思うのです。
それと同時に、森羅万象全てのものが持っている因果関係、それこそに意味があるのだと。
過去が無ければ現在が、現在が無ければ未来が無くなるわけですからね。
以上がこの名言に対する自分の考えとなります。
もちろん異論は認めます!
どうでしたでしょうか……? 少しでも皆さんの暇つぶしになれたなら幸いです!
駄文によって構成される、恐ろしき長文を失礼しましたぁ。(震え声)
この恋心を殺してしまおうかと、何度思ったことか。
恋なんて怖くて怖くて、ただ弱みにしかならない。
この恋心を、殺してしまえば。
そうやって手に掛けようと頸を圧えれば、それは泡を吹く。苦しげに呻きながら。されど抵抗などせず。
もう少しで死のうかというとき。とん、と肩を叩かれる。
振り返れば悲しげな顔をした幼い自分が立っていた。
彼は一言、言う。
「終わらせないで」
それは絶望と、悲しみを含んだ、縋る様な声だった。
そんな声を聞いてようやく気づく。
自分はこの恋心に間違いなく救われていたのだ、と。
『終わらせないで』とか言われたい。そう、終わらせないで。
やっぱ言われたくないかも。
【初恋な鬼と厄介な少女】
「一重積んでは父のため」
「二重積んでは母のため〜...なーんて」
テンプレだよね〜と少女は笑う。
ここは賽の河原。親を残して亡くなった子供が行く地獄のはずだ。子どもらは、朝6時間、夜6時間、石を積み仏塔を作る。そうして、我ら鬼がそれを壊していく。そういう地獄なのだ。
「なあ、お前さんや。お前さんは、どうして死んじまったんだい?」
退屈そうな鬼は、暇を紛らわすため少女に尋ねた。
少し、少女のことが知りたい気持ちもあった。
「うーん…私のお母さんさ、なんか情緒不安定?でさ〜…。たまたまあの日、機嫌悪かったらしくってさ。雪だったんだけど、ベランダに出されてそのまま」
少女は気まずそうに眉を下げて笑う。
鬼は少しやっちまった。と思ったが、会話を続ける気なのか、ドカンと座り喋り始める。
「だがしかし、そういう理由ならば、新たな人生を選ぶかどうかって神さんに聞かれなかったかい?」
「どうしてわざわざ地獄なんかを選んだんだい?」
鬼は、いかにも不思議です、と言うように首を傾げて質問をすると、
少女は目を逸らし、口を開き
「えぇ〜…結構グイグイくるね、暇なの?」
「まあ言うけどさ〜、なんか…新しい人生とか、そういう気分じゃなかったっていうか〜…」
それは図星だったが、言いよる。と鬼が石を崩すと「あー!自信作だったのに」と少女はけたけた笑う。
地獄だなんて感じさせないような、ほのぼのとした空気だった。
「なあ、でも、お前さんや。お前さんは、もうこっちにきて3年も時が経つだろう?
もう、新しい人生を歩まなくてはいけないんだよ。」
わかっておくれ。と鬼は言い、少女に四つの石を渡し、
「さあ、これを積んでおくれ。父親の分、母親の分、兄の分、祖母の分。そうしたら、僕はもう石を崩さないよ。」
鬼だって初恋の相手と離れるのは悲しいのだ。初めてそれを言う日の前の夜はそれはもう泣いた。だが、何回言われたって新しい人生なんて御免な少女は
めんどくさそうに鬼に詰め寄り、抱きしめ、耳元で囁いた。
「ねえ、おにさん。わたしね、新しい人生より、おにさんがいるここの方がずぅっとすきなの。…だからね、おねがい。まだ」
終わらせないで
少女は、幼さを残しながらも、妖艶に笑った。
【終わらせないで】
砂利道を鳴らしながら僕の手を引く従姉妹のねえちゃん
ワンピースの小さな花柄が潮騒に滲んで、思わず立ち止まる
紅い夕暮れ、アブラゼミがヒグラシに代わって、僕の夏は明日ここへ置き去りになる
「ね、来年もまた来るんでしょ」
幼い僕にはとても永い時のように感じてしまうんだ。
だから、
終わらせないで。
ぎゅ、と強くしがみついた。
もっともっとと強請るように。乞い願うように。
「ッ、急にそんな締め付けんなって」
「だっ、て」
互いの息は荒い。限界が近いのはお互い様だ。
「これで最後なのに、終わっちゃう…っ」
ゆらゆらと揺れるのは、視界か二つの身体か。
「ン…ッ」
「あ…ッッ」
終わらせないで欲しかった望みとは裏腹に、二人は同時に絶頂を迎えた。
仕事をしていると、早く終われと思う。
だが、ある日、自分は、
生涯で終わらないで欲しいと思える仕事が
できるか考えたことがある。
順調に進めば良いのか、簡単だけど、金が手に入る仕事か。
きっと、違う。
死ねまでに見つけたい。
終わらないで欲しいこと。
勝手に話を終わらせないでほしい。
最近、人との会話中にそう思うことがあった。
こういうことはたまにあり、こちらとしては共有したいことを話しているのに、相手は自分の用は済んだとばかりになおざりな返事で終わらせる。
投げたボールがキャッチされない。返ってくることを予期して投げたボールが地面に落ちてコロコロ転がっていくのを眺める。前のめりのまま、え〜?と心の中で間の抜けた声を出す。
人の話を聞く気がない。もしくは切り上げたいときの会話術、あるいは聞きたくないことを受け流す処世術なのかもしれないが、あからさまだとなかなか落胆する。会話の主導権はこっちにあると宣告されている気分になる。
次は塩対応をしてしまうかもしれない。
なんて、愚痴めいてしまったが、自分だって話が冗長だと切り上げたくなるときはある。
会話の終わりはなるべくなら軟着陸がいい。
『終わらせないで』
題名:終わらせないで
「もうすぐ冬だね」
「うん、そうだね」
彼女は頷いた。
彼と話す時は、いつも心臓が温かい何かに包まれて、ドクドクと速い鼓動を立てている。それが、今日はいつにも増して酷かった。その理由に、彼女自身ももう薄々気づき始めていたのだ。
「ねえ、真宙くん。受験勉強、一緒にしようよ」
彼のコートの袖を掴んで、動かしていた足を止める。そして、彼も私と同様に前へと踏み込もうとしていた一歩を踏みとどめて、こちらを振り返った。心臓の動悸が激しくて、苦しい。彼からどんな返事が返ってくるのか、粗方予想はついているから、それを聞くのが怖い。
「……ごめん、美穂。俺、そんな余裕はないみたい」
真宙くんは、本当に申し訳無さそうに顔を歪めて、そう言った。私の中で、何か大切なものがガラガラと崩れていく音がした。高3の冬のその日、私たちは何も言わずに、そのままそれぞれの帰路についた。
彼の謝罪に、私は何の言葉も返せなかった。
受験勉強をしよう、と彼に言い出したあの日から、2週間が経つ。その間私たちはラインや電話をしたり、たまに会ったりして“当たり前”を演じていたけれど、私にはその日常がだんだんと苦しくなっていった。
彼の本当の気持ちを知っているから、こんなにも胸が締め付けられる。彼の心は恐らくもう、私には向いていないのだろう。他の誰かに、想いを寄せているのかな……。
あぁ、やだなぁ……。苦しいな、だけど、別れたくない。私にとっての初恋を、そんな簡単に終わらせたくない。とにかく、彼自身から自分に別れを告げてくるその日まで、頑張ってみるとしよう。
大学受験の当日。その日は雪が降っていた。
「うっ……」
気持ちが悪い。吐きそう。
受験することへのストレスや圧迫感でどうにかなってしまいそうだ。私の前方、後方には同じ大学を受験する高校生や浪人生、そして大人たちが鞄を背負って同じ方向へと歩いている。
その表情からは、自信を感じられた。きっと、沢山勉強をして、私と同じようにストレスに苛まれながらも何とか頑張ってきた証拠なのだろう。……だけど、私には彼らと同じ自信がない。
もともと勉強が苦手な私が、県内最高レベルの学力を誇る国立大学を受験するのだ。無理もない。受験をしようと決意したきっかけは、私の彼氏である真宙くんが、この国立大学を受験するから。
学年で常に上位3位にいた彼からすれば、この大学の入試も難なく合格できるだろう。それに、彼の学力ならばもっと上の大学を目指せたはずだ。高校の先生たちも、それを惜しがっていた。
「おはよう、美穂」
「……!」
突然、隣から真宙くんの声が聞こえてきた。驚いて横を向くと、そこには穏やかで優しい笑みを浮かべた大好きな人が私の隣を歩いていた。
「お、おはよう」
慌ててそう言って、髪が乱れていないか心配になって手で髪を軽く撫でつけた。
「……、美穂、顔色が悪いよ。もしかして気分悪い?」
「……っ、え、っと。そんなこと、ないよ」
取り繕うのが精一杯だった。いつからだろう。本当のことを彼に真正面から伝えるのが、こんなにも難しく感じるようになったのは。きっと、本当はずっと前からそうだったのだろう。
「……、そっか。それなら良かった」
彼は他人の嘘を見抜くのが上手だから、今だって私の嘘に気づいたはずだ。それでも、無理に問い詰めないところが彼らしかった。
「うん……。心配してくれてありがとう」
「はは、俺は美穂の彼氏なんだから少しでも様子が違えば心配するのは当たり前」
それって……、私の少しの変化にも、気づいてくれたってこと?そう問いかけようとした口は、臆病ゆえか開くことはなかった。
「試験、開始」
試験管のその合図で、皆が一斉にシャーペンを持って問題用紙を開く音が講堂に響き渡った。私はその音に気後れしながらも、皆に倣ってシャーペンを手に問題用紙の一項を開いた。
(うわぁ……、最初から文章問題。難しい、)
最初の数学1の試験で今日の朝家で奮い立たせていたやる気が一気に萎んでいくようだった。それでも、何とか頑張って合格しなくちゃ。そうじゃないと、私は今よりもっと真宙くんの近くにいることが出来なくなってしまう。
2人の心の距離も、今以上に遠く離れていってしまうかもしれない。そういう不安が、私の実力を最大限発揮させたのか、全ての試験科目を受け終えてすっかりと太陽が沈みきった冬の夜。結構手応えのある結果に、私は安堵のため息を吐いた。
「真宙くん、受験お疲れ様でした」
「ん、ありがと。美穂もお疲れ」
こうして暗い中2人一緒に帰るのは、私が真宙くんに一緒に受験勉強をしないかという提案を持ちかけたあの日以来だ。だからか、何となく気まずい空気が彼と私の間に流れている。
「……私ね、きっと合格できると思うの。これで真宙くんと同じ大学に通えるね」
「……うん、そうだね」
勇気を出して、言ってみた言葉は曖昧な相槌を返されただけで終わった。先程から、真宙くんの表情が暗い。今が夜だからという理由もあるだろうけど、それだけじゃない陰りが見られた。
「私ね、大学生になったら真宙くんのバスケットとか見るの夢なんだあ」
「うん、」
「真宙くん、サークはバスケットボール部に入るって言ってたでしょ?私、そのこと覚えてたよ」
「……うん」
真宙くんの声色が、だんだんと低く小さな掠れた声に変わっていく。その微妙な変化が私には怖くて恐ろしくて、必死に会話をつなげようと新しい話題はないか試行錯誤を繰り返す。
「きょ、今日は星がきれいだね」
「……、」
遂には、言葉すら発しなくなった真宙くん。私の不安は、その瞬間最高潮に達した。
「真宙、く──」
「───…ねえ、美穂。俺たち、別れよっか」
突然に、唐突に、突きつけられた現実。こうなることは前々から予想できていたはずなのに、いざそれが現実になってしまうと、心が折追いついてくれないみたい。
「……っ、やっぱり、好きな人…とか、できちゃった?」
情けないほどに掠れた、涙を含んだ私の声。真宙くんにとっては、そんな私の声なんて聞きたくもないだろうに。真宙くんはしばらくだんまりを決め込んだ後、ようやく短いため息を吐いた。
「───うん、そうだよ。だから、もう美穂とは付き合えない」
「……っぅ、そ、そっか。そう、だよね」
泣いてはいけない。真宙くんの前だけでは、泣きたくても涙が引っ込んでしまうから、泣けない。
「ごめんね、美穂。そして、………今までありがとう」
「う、ん……っ。こちらこそ、ごめんね……っ。好きな人と、結ばれるといいね」
綺麗な心の人間を演じながらも、本当は私以外の人となんか結ばれて欲しくない、なんて最低なことを思っている私は、どこまで汚い女なんだろう。卑しい感情は、今すぐにこのまっさらな雪に溶かして綺麗さっぱり消し去らないといけないのに。
いつまで経っても、大好きだった人に振られた痛みは、私の中から消えてくれることはなかった。
春の陽気な天気。今日は、いつもより空の青が引き立っていて、清々しい空気だ。1月の受験シーズンから約3か月が刻々と過ぎ去り、私は桜散るこの春、受験して合格できた国立大学の入学式に参加した。そこにはもちろん、真宙くんもいたわけで。
一体どんな顔をして会えばいいのかと危惧していた私だったけど、そんな心配の必要もなく、その日は真宙くんと目が合うどころか、会話することさえなかった。
そんなの最初から分かりきっていたことなのに、それにざっくりと心を殺られて傷つきまくって。私は一体、何がしたいんだろう。「美穂、これ、お弁当。今日も大学頑張ってくるんだよ」
「はぁい……。いつもありがとね、お母さん」
「なに素直になってんだい。早く行ってきな」
「ふふふ、行ってきまーす」
こうやって家で明るく振る舞えるようになったのは、つい1ヶ月前ほどから。私が真宙くんと付き合っていたことを知っていた両親は、私の酷い落ち込みように別れたことに気づいていただろうけど、それを口にすることはなかった。
きっとそれは彼らなりの優しさだ。それを分かっているからこそ、いつまでも気を使わせて心配させてしまっていることに対しての申し訳無さが日々募っていく。
もう、平気だよ、だから安心して、の一言でも両親に言えたらいいのに、残念ながら私はそんなことも言えない。まだ完全に、真宙くんへの未練が消えたわけじゃないから。どこまでも恋々とした恋心を今すぐに消し去って楽になりたいと思うのに、頭のどこかでまだ彼を思い続けていたいという感情が湧き上がる。
どうやったら想いを断ち切ることができるのかのなぁ……。
そんな疑問に耽りながら、電車に乗って駅を降りて、ホームを通り過ぎて大学に向かった。
ああ、もう。私って、本当にツイてない。元カレが女の子に告白されている現場に、偶然居合わせてしまうなんて。しかも、その元カレというのはまだ私の想い人であって。一気に食欲が失われたよ。手にぶら下げた弁当袋がゆらゆらと揺れる。
とりあえず木の茂みの影に隠れて、2人の様子を窺う。大きな中庭で、1人女の子が顔を真っ赤にさせて真宙くんの方へと手を差し伸べている。
「もし良かったら、わたしと付き合ってください!」
その時、不意に真宙くんがこちら視線を向けた。茂みの中にちゃんと隠れていたはずなのに、バッチリと彼と目があってしまったような気がするのは、私の気のせいだろうか。
「……うん、いいよ」
真宙くんが、その子の告白を受け入れた。あれ……?真宙くん、好きな人がいるんじゃなかったの……?それともあれかな、その好きな人のことも今じゃもう好きじゃなくなったのかな。私と同じように……。私の中で築き上げられてきた真宙くんのイメージが、大学生になったと同時に変わり果てていっている。それも、悪い方向にだ。
真宙くんは、簡単に好きっていう気持ちは変わらない一途な男の子だったのに。今では1週間も経てば彼の隣を歩く女子はコロコロと変わり、誰が彼女なのかも分からないほどだ。
とにかく、私が好きだった彼がどんどん変わっていってしまうのをこれ以上見ていられなかった。
春が過ぎ、長い夏もあっという間に過ぎていき、秋の季節が到来した。食欲の秋とはよく言うものだと最近思うことが増えるようになったのは、うちのお父さんの食欲が最近半端ないからだ。
「ほらほら、美穂も沢山食べて元気をつけなさい。母さんが焼いてくれたサンマの塩焼き、相当美味いぞ」
「わ、私はもう十分お腹いっぱいだよ……!」
「ふんっ、そんな風には全く見えないがな!」
「ふぬさふっ、父さんたら。美穂を怒らせないで」
もう、お父さん子供みたいだよ。不貞腐れないで。そうやって家族3人で食卓を囲み、楽しい団らんの時を過ごした。
そのラインが来たのは、それからすぐのことだった。
【今から会って話せないかな】
これは、私が見ている幻影……?だって、こんなこと、現実には起こり得ないよ。別れを切り出した彼の方から、私の方にメッセージを送ってくるだなんて。しかも、内容が内容だ。さすがの私でも、信じられるわけがない。
そう思いながらも、結局私は僅かな希望を捨てきれずに、後から送られてきた指定の場所に向かった。
「……お待たせ。真宙くん」
「……っ、!」
私の言葉に、肩を揺らして明らかに動揺を見せた彼。私を振り返って、ベンチから腰を上げた彼は随分と背が伸びて、何だか前よりも痩せていた。
「……本当に来てくれるとは思わなかった」
「…はは、じゃあなんでラインなんか送ってきたの」
「うん、まぁ、そうだよね」
私の問いかけに、真宙くんは苦笑いで答える。彼も何となく気まずいのか、さっきから頭の後ろをポリポリと掻いている。それが何だか照れくさく思えてきて、私までその気まずさが伝染した。
「……それで、今日はどうしたの」
ここは、すぐ近くに大学病院がある公園の入口付近。公園では沢山の親子が遊んでいて、賑やかな喧騒や子供たちの笑い声が時折聞こえてくる。そんな中、私たちの間に流れる空気だけ何だか重かった。一向に口を開こうとしない真宙くんの言葉を、じっと待つ私。
「……まあ、な」
ようやく口を開いたと思えば、言葉を濁す彼は、珍しい。いつもはっきりと自分の思いや物事に対しての感情を口にする彼なのに、今日はそうはいかないのだろうか。
「真宙くん、本当にどうしちゃったの。私たち、もう別れたんだよ?それなのに、なんで今さら……」
早く彼から呼び出された真相を知りたいがために、わざと呆れた声を出して彼を急かす私。そんな私を見るのは初めてだったのか、真宙くんの目が大きく見開かれている。
「……強くなったんだね、美穂」
だけど、次の瞬間にはもう、真宙くんは優しげに目尻を下げて、感慨深げにそう呟いた。
「うん、そうだよ。私、誰かさんに振られたおかげで強くなったんだ」
真宙くんを挑発するみたいに、私らしくない言葉を連発する。どうして、私は今こんなにめ苛立っているのだろう。こんなの、いつもの私らしくない。
「うん、そうみたいだね。……今日はわざわざ俺なんかのために美穂の時間を割いてくれてありがとう。もう2度と、こんな真似はしないから、許して欲しい」
別に、そんなことを言ってほしかったわけじゃないのに。だけど、さっきの私の刺々しい言葉を聞けば、真宙くんがそういう言葉を返してくるのは当たり前だろう、とも思って、文句も言えなかった。
「ほんと、今日はありがとう。美穂に会えて、美穂の顔が見れて、本当に良かった」
なんで、そんなこと言うの。まだ私に気持ちがあるのかもって、期待しちゃうじゃん。だけど君は、期待させて、私をどん底まで落とすのが好きなんでしょ。だからもう、君との幸せは願わないって、その時私は覚悟を固めた。
「ごほっごほっごほっ……!!」
「ちょ、お母さん大丈夫!?酷い咳込み様だよ!?」
「……っう、大丈夫、よ。これくらい…うぉっほ、ゴホッゴホッ!!」
「ちょ、ちょっと!猿化してるって!病院行こう、今すぐに!」
秋が終わり、冬へと移り変わる季節の変わり目だからか、お母さんは風邪を引いてしまった。人よりも少しだけ体の弱いお母さんが体調を崩したから、大げさに心配してしまった私はお母さんを大学病院まで連れて行った。
「ただの風邪ですね。そこまで症状も重くないので、風邪薬と咳止め薬を処方しておきます。次回からは風邪を引いてもここには来ずに、保健所か保健センターに行ってもらえると助かります。ここは重篤な患者への手術を1番に考えている大学病院ですので。お金も保健所の倍はかかりますよ」
「は、はぁ……。分かりました」
お母さんのことが心配で病院を訪れたというのに、まさかの医師に説教されているこの状況は一体なんだ……?とにかく、凄く気分を害したのだけは間違いない。
受診料を窓口で払い終わり、後は薬局に向かうた病院の出口へと歩いていた。
「お母さん、大丈夫……?」
「ええ、もう平気。咳もだいぶ落ち着いてきたみたいだし……ってあれ?あの子って確か、植村真宙くんじゃない?」
お母さんの言葉に、「まさか」と思いながら、全く信じていない疑い100%の脳内でお母さんが指さした方向に目を向けたら、本当にそこに真宙くんがいたから、目が飛び出た。
「えっ……!?」
広い1階のロビーで、私の驚いた声は比較的大きく響いたからか、真宙くんが徐ろにこちらに視線を投げた。と同時に、バチッと視線が混じり合った。
「……っ、」
私の姿を捉えた真宙くんが、すぐに私に背を向けて反対方向に走り出す。
え、待って……っ。今、確かに私たち、目が合ったのに。
どうして私から逃げるように走っていくの。私が追いかけようとした時には、もうその階に真宙くんの姿はなく。真宙くんを見つけるというのを渋々と諦めて、お母さんと共に薬局へ向かった。
「真宙くん、どうしてパジャマ姿だったんだろう……」
「本当ね、言われてみると確かに」
私の独り言に、すぐさまお母さんが驚きの声を上げる。薬局に着いて、医師から受け取った、処方箋を受付員に渡し、名前が呼ばれるのを待っている時。私の脳裏に、ふとさっきの真宙くんの姿が思い出された。
「もしかしたら真宙くん、入院してるんじゃないかしら…?」
「ええっ……!?そんなこと、あるわけない…っ」
「どうして?」
断定した私をお母さんが不思議そうな目で見つめながら、首を傾げた。
「……っえ、えっと、その……。真宙くんは、健康だから」
いざ入院してないと言える理由を聞かれたら、意外にもそれはすぐには思いつかなくて、焦る。真宙くんのことを沢山知っているのは私だから、っていう自信が私に断定口調をさせているのかも。
「そんなの、今は分からないでしょ。体調を崩して入院しているって場合もあると思うし、……」
お母さんが言ったことは確かだった。だからこそ言い返せない。私が知っている真宙くんと、本当の真宙くんは違うのかもしれない。それに、今まで真宙くんが己の全てを私に話してくれていたという確証もない。
「……私、真宙くんに直接聞こうと思う」
「うん、それがいいわね。そうしなさい」
もうとっくの昔に分かれている元カノから心配されても、真宙くんにとってはいい迷惑かもしれないけれど、そう思われてもいい。私はただ、彼のことが心配なんだ。……どうしようもないくらいには。今さら会いに行っても迷惑なんじゃないかっていう不安は、薬局を出る頃にはもうすっかりと消えていた。
「この病院に植村真宙くんっていう男の子が入院していたりしませんか?」
翌日。大学病院の受付員さんに、私はさっそく真宙くんのことについて訊ねていた。自分でもここまで早く決めたことを行動に移したことはないってくらい。
「申し訳ございません。こちらとしては患者様の個人情報を伝えることができません。あなたはその方の親族か何かですか」
「……いや、その……。違います」
そう、だよね……。真宙くん親族じゃないのなら真宙くんが入院しているかどうかさえ教えてもらえないのが普通だ。こんな考えなしに突っ走って、馬鹿みたい。それよりも、直接ラインか電話をして訊ねればよかったんだ。
……だけど、それをしなかった理由は、できなかった理由は、私たちがもうカレカノでもなんでもなく、今はただの他人同士になってしまったからだ。だから、何となくラインも電話もしづらいっていうのが現状。
「それではお教えすることは不可能です。お帰りください」
「……はい、」
受付員の声が、こんなにも冷たく聞こえたのは、今日が初めてだった。とぼとぼと重い足取りで病院を出た。
今日はどんよりとした灰色の雲が空一面を覆い隠している。それだからか、なんとなく気分も上がらない。少し歩くと、前に真宙くんと話したあの公園の前に置かれているベンチが見えてきた。
そして、驚いたことにそのベンチの上には私が連絡したくてもできなかった、パジャマ姿の真宙くんが静かに座っていたのだ。
「…っ、真宙、くん?」
彼は私の声が聞こえたのかそれとも気配を感じたのか、こちらへゆっくりと視線を投げた。私の姿を捉えた彼の瞳がだんだんと大きく見開かれていく。
そんなことを望まれても困る。舞台はもう終わりの終わり。残すところ君のセリフただひとつ。ひるがえる身体が、浴びるライトが、つくりだされる陰影が、響き出す音色が、固唾を呑む観客が、少しばかり冷たいホールが、君のおわりの合図を望んでいる。夢はここでおしまい。君は私に視線を寄越す。刺すような視線を。針でもナイフでもなくただ君という存在が私を刺す。残念、終わらなければ。私の可愛い人。今宵の物語は過去最高の出来だよ。天上の神、地上の人間、あるいは悪魔と呼ばれる者たちが、立ち上がり拍手をする準備すら忘れるほどに。さあ、その手に握ったトカレフに込めた弾丸で私を撃ち抜いてくれ。私だけが君のセリフを聞く前にこの舞台から立ち去れる。だから私だけが君を永遠に終わらせることがない。悪いね、私の可愛い人。