『突然の別れ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ごめん。別れよう」
目の前の彼は突然そう告げた。
「なんで?」
「なんでもない……」
理由を聞きたいのに何も話してくれない。
これ以上問いつめても仕方がないと女は深く息を吐いて小さく「いいよ」と呟いた。
それが夏休みの終わりの頃の話だ。
母さんが腰を痛めたらしい。
だからこの家で動くことができるのは
俺と父さんと今年小6になった弟だけだ。
母さんは腰を痛めて動けないし
俺らは家事を毎日やっているわけじゃないから
その日の夜からドタバタで
母さんは口頭で教えてくれながら
俺らは精一杯母さんの真似事をした。
もしも母さんが死んでしまったらなんて
考えて俺は怖くなった。
母さんいつもありがとう
そう感謝を伝えたいと思った日
─────『突然の別れ』
じゃあまたと笑って別れて
そこに行けば迎えてくれる
何度も繰り返していると
この先もそうだと疑わない
いつものようにそこに行っても
迎えてくれないことがあると知るまで
何があったのか分からないまま
繰り返されてきた光景は
そのときどきで新鮮につくられていたことを知る
混乱のなかで
じゃあまたに込められた信頼と甘えを知る
だからと言って
目の前の一瞬一瞬を大切にすることを
突然の別れに備えてなんて
思いたくない
『突然の別れ』
夏休みが明けると、幼馴染がいなくなっていた。母を問い詰めると、夏休みの間に引っ越していったらしい。そんなこと俺は一言も聞いていなかった。アイツが教えてくれなかったこと、母も知っていて黙っていたことを恨んだ。学校が始まっていたが、いつも聞こえるアイツの笑い声がしない。なのに、クラスの奴らは平然としている。アイツという存在を忘れてしまったようだ。
[それが叶わなくても]
死とは突然の別れだ。寿命が来てなくても、病や心労、事故などでなくなってしまうことがある。
「なんで、私をおいていくの…」
彼が亡くなった。その知らせを聞いて、脳が一瞬認識ができなかった。意味はわかる。でも、なぜ。
それしか出てこずに言われるがまま病院に向かった。
昨日と何も変わらないように寝ているように見える亮。先生曰く、事故だそうだ。亮には、何も非がなく青信号のときにイヤホンもせずに渡っていたところ居眠り運転していた人が猛スピードで撥ね飛ばしたらしい。亮は、失くなる前に私にとペンダントを救急隊員に託したと聞かされた。
ペンダントは亮がいつも身に付けていたものだ。
裏返すと「happy for you」と彫られていた。
「ばかっ…亮がいない未来なんて、幸せなわけっ」
言葉が最後まで出ずに涙になった。
実感がわかなかったけれど、認めた瞬間に蓋をした気持ちが溢れてくる。「 」言葉にならない。
でも、この複雑な気持ちを閉じ込めるためにペンダントを首にかけた。
人にはにおいがあるでせう
かほりと云ったが正しいですが
十人十色とおんなじことで、においも様様あるのですけれど
みなさん暖かうございます
お向いの奥さんは白粉のにおい
隣の赤ン坊はバタのにおい
錦田さんのお嬢さんはヴァニラのにおい
ええ様様です
様様なのですけれども、みんな暖かいにおいです
人の温もり感ぜられます
けれどあの子はちがいますね
ほかとちがって涼しいにおい
ほのかに甘いシャボンのにおい
さう、恰度、夏の河に似てをります
プウルに飛び込んだ時に似てをります
なにやら、ツキンといたします
鼻を刺しまではしませんでせうが、
眼も耳も体のどこだって、傷付けられもしないのですが
ではなぜツキンとするのでせう
どこも傷付けられはしないのに
ああそれは、やはり心を突かれているのですよ。
心の臓と脳みそとを、貫かれているのですよ。
貫かれているから、こんなに痛むのですか。こんなに痛むのは、なにで貫いたからですか
サイダアですか、清流ですか、
いいえ、いいえ。
ではなんです
真逆、海と空をひとり行くうみねこの、だれも聞かないかなしいうた
海の底のくらげには判らぬ、うみねこの唄でもあるまいに───
おや、あの子はどこですか、
あんなに私を惑わせた子は、どこにいるのですか
あの雲に、隠れているのですか
それとも、それとも……
いいえ、いいえ。
シャボンのにおいのする子は、
この世のものではないのです
この世のものではありませんから、
消えてゆくしかないのです
シャボンのように
消えてゆくのです
お題『突然の別れ』
あのひととの
突然の別れは
わたしの心を
打ちのめし
粉々にして
暗闇の中に
ばらまいた
# 突然の別れ
それはあまりにも急な知らせだった。
全然構えていなかったから、とても驚いた。
よく思い返してみると、確かにその前兆(と言ってしまっては至極失礼に当たるかもしれない)があったと感じる。
以前のように機敏に動くことができなくなってきていた。どの動作もゆったりとしていて、一苦労していたのだろう。
深く考え込む場面も何度か遭遇した。ひたすら沈黙を貫き、脳の奥深いところまで考えが至っていたのかもしれない。
体調も崩しやすかった。急に猛烈な熱を上げてしまい、体力の消耗が激しかったのだろう。日中眠りに落ちてしまうことが度々起こった。休んでいるうちにまた元気が湧いてきたようだけど、不調に変わりはなかった。
だから衝撃はあったものの、どこか冷静に受け入れた自分がいた。
もう寿命なんだな。
目が覚めて体を起き上がらせ、布団を被ってボサボサ頭のまま、手の中のソレをジッと見つめていた。指先でなぞっても、押しても、コンセントに繋いでも、暗い画面のまま無反応のスマホを。
これでは、機種変更の申し込みも、データ移行も、何もできない。
スマホ片手に途方に暮れた朝六時ごろ(腹時計)の出来事である。
『突然の別れ』
我が身から
お便りをチェック
習慣も
自動洗浄
突然の別れ
お題☆突然の別れ
突然の別れだった。
知らなかった。そんなことになっていたなんて。
いろんなこと、まだ全然できていないのに。どうして。
悲しい。
私にも悪いところがあったのかもしれない。
でも。こんなのって、ないよ。まださよならしたくないのに。
プレイしてたスマホゲーが急にサービス終了なんて!
お知らせ見てなかったのが悪いのかもしれないけど! まだ全然ストーリークリアしてないのに!
悲しいー。
『突然の別れ』
もう随分と昔のこと。深い付き合いではなかったけれどいいなと思っていた女の子からある日突然もう付き合うのは辞めましょうと言われた。突然の別れとなった。
短い間に私はいくつもの「突然の別れ」を経験した
そのどれもが「永遠の別れ」だ
当然まだまだ生々し過ぎて、今回のお題は書くつもりは無かった
悲しみに向き合うことはまだ出来そうに無いが、ただ、心の状態を淡々と記しておいても良いかも知れないと思っている
喜びの感情は始めこそ大きいけれど次から次に経験すると、次第にその感覚に慣れてしまい、その感動は薄れてくるものだ
ところが、悲しみは例えそれが次から次に押し寄せたとしても、そのどれもがそれぞれの悲しみの大きさのまま覆い被さってくる
慣れるどころか、何倍にも膨れ上がる感覚がある
それは一度ヒビの入った茶碗が脆くなるように、一度大きな悲しみを経験してしまうと次の悲しみを更に大きく吸収してしまうような感覚が私の中では起きている
悲しみに耐性はつかない…
そう実感している
時がいずれ癒してくれる
その言葉にすがりつつ、この悲しみの本当の大きさに向き合わなくはならない恐怖を今こうして紛らわそうとしている
『突然の別れ』
突然の別れ
ぼくときみで、秘密基地を作ったのが、春のころ。
楽しかった。
異性で、ここまで気が合う子はこれまでいなかった。とても、うれしかったんだ。
でも、お別れは突然だった。
「転校……!?」
「うん、お父さんのお仕事で、遠いところに」
びっくりするくらい、きみは落ち着いてた。焦るぼくが、おかしいのか? いやいや、落ち着きすぎでしょきみ。
「それでね、ちょっと提案なんだけど」
「う、うん……?」
「十年後、またここで会いたいの」
「……はあ?」
「ほら、歌があるでしょ。あれ、わたしたちもやりたい」
――十年後の8月、また会えるのを信じて――
「いや、ええと。でもここ、来年アパートになるんじゃなかったっけ」
「まあ、そこは深く考えずにね」
「えぇ……?」
そんな、お世辞にも感動的な約束とは言えない会話で、十年後の約束を取り付けられたわけだけど。
「……やっぱり、アパート建ってるじゃねえか」
十年後、俺は来た。ここに。
彼女もいるのか、なんてわからない。何せ十年だ。あれこれ色々と、変わってるはずだ。
そう。「ぼく」が「俺」になるみたいに。
「……なんか、馬鹿みたいだよな」
いないだろうと思い直して、歩きだそうとした、その時。
「あのー。そちらのひと。ちょっと聞いていいですか?」
「?」
後ろからの声に、振り向くと。
「――え」
そのひとは。
「ええっと。あのー。……十年後にここで会おう、なんて約束を、してはいませんか?」
「……きみ、変わってないな」
髪も染めてない。まなざしにも面影がある。声も、なんとなく聞き覚えがあるような気がする。
そこにいたのは、正真正銘の「きみ」だった。
「……やっぱり! あなたは、かなり変わったね。髪も染めてるし、やっぱり声変わりしてるし。……でも、わかるよちゃんと。大丈夫!」
これもこれで。あまり「感動的な再会」かはわからないけど。まあ、現実はそんなものだろう。
別れが突然なら、再会も突然だ。
突然の別れ
突然の別れは、突然訪れる。
会えるときにあって、やれるときにやっておかないと
後悔だけが残ってしまう。
突然の別れ
初めて突然の別れをしたのは中学の1年のときだった
人を思い浮かべてるかもしれないが、5年しか飼ってないうさぎである。
その日は中間試験ということで朝バタバタしていてその子の異変に気づいてあげられなかった。
草を咥えたまま死んでいった子は今にも動きそうで動かない。
火葬して土にかえした。
ただ残ったのは写真と思い出と空っぽの小屋だけだった
9.11 同時多発テロの追悼集会で朗読された詩、『最後だとわかっていたなら』。
これを聞いて、涙が止まらなかったことを覚えている。
あなたがドアを出て行くのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは あなたを抱きしめて キスをして
そしてまたもう一度呼び寄せて
抱きしめただろう
その詩の一節だが、これは、いつの日も忘れてはいけない想いだなと改めて思った。
家族として暮らしていれば、そりゃあ喧嘩だってする。
だけど、険悪なまま言葉も交わさずに送り出して、そのまま帰って来なかったら?
どれだけ後悔してもしきれないだろう。
もちろん、言葉を交わしていれば平気という訳ではないが、私達は何が起きてもおかしくない世界で生きている。
いつ突然の別れが訪れても、精一杯の自分で接していたと言えるようでありたい。
運命を前に、私達の出来ることはそれくらいだから。
スティーブ・ジョブズは言った。
「今日が人生最後の日だったら、今日やろうとしていることをやりたいと思うか」
ジョブズは仕事も含めて話したのかもしれないが、私が人生最後の日にやりたいことは仕事なんかじゃない。
真っ先に家に帰って、家族との精一杯の時間を過ごすだろう。
普段の生活では、頭を過ぎらない突然の別れ。
だがそれはいずれ、必ずやって来る。
それを見据えて、どう生きるか。
私はただ、自分という人間を偽りなく表現して人と接していこうと思う。
それしか出来ない。
突然の別れ
同期が海外支店へ。周囲からのおめでとうに、笑顔で礼を返す。その様子を僕はなんとも言えない気持ちで見ていた。
発表の数日前に二人で呑んだ。僕はその時に知らされた。周りの人間と同じ様に、おめでとうを言ったはず。だが、彼の表情はイマイチ浮かないものだった。
実は会社にばれてな、と彼は言った。
不倫だ。部下との。
彼はいわゆるできる奴だ。家庭もある。ただ、会社側としては知ってしまった以上、何らかの対応をしなければならない。できるだけ穏便な。
その結果が、昇進というかたちで海外赴任へ、ということらしい。
奥さんには?
話した。離婚はしない。子供のためだと泣きながら言われた。
その、相手とは。
別れた。さすがに。
そうか。向こうには。
ひとりで行く。
そうか。 とだけ言った。
そこからしばらく無言が続いた。グラスに口をつけることも無く。
店内の客が引き始めたところで、
俺達も出るか。 と彼が口を開いた。
頷き僕らも店を出た。
じゃあな、と彼が言う。あっさりとした挨拶だった。
じゃあ。とだけ返した。
離れていく背中に、頑張れよ、と声に出さずにエールを送った。
天災。
とりわけ、地震や津波などは多くのものを奪った。建物、金銭、土地、車、なかでも特に酷いのは人間を多く冥界へと連れて行ってしまうことだ。家族や友達と互いに感謝の言葉をもいえずに、突然別れるのはさぞ辛いことであろう。
ところで、それを人為的にしてしまう行いがあることを知っているだろうか?戦争である。
戦争も天災と同じく、多くのものを奪う。さらに、それは長く長く続き、意図的にものを奪うこともあるから尚更タチが悪い。
天災と違って、戦争は過ぎ去るのが比較的遅い。それはなぜか?簡単だ。人は皆滅びるまで戦うから。そして、天災と違ってリーダー、例えば大統領などが消えなければ終わらないからである。天災は一瞬で全てを奪うが、戦争はまるで消毒液を肌に染み込ませるようにじんわりと奪う。そう、人為的に行われる戦争こそがもっとも恐れるものである。
さて、本題に戻ろう。
これからお見せする映像には、ある国で行われた戦争の一部始終が収められている。その映像が撮られたのは、今から10年ほど前のことだろうか。その映像は後々まで語り継がれることになる。なぜか、まぁ映像を見れば分かるだろう。始まりは、まるでつまらないギャグのようになんの前触れもなく訪れた。いや、もしかしたら前触れはあったのかもしれない。ただ、この映像を見ている君たちには感じ取れなかっただけなのかもしれない。
だが、それは起きてしまった。戦争を起こしてしまった。人間は天災をも人為的に引き起こす術を知っているのだ。
さぁ、ご覧いただこうか!人類の歴史を!
そう説明文が流れたあと、私は映像を見た。まるで劇の前口上みたいな台詞に最初は呆れていたが、なるほどそれはこの映像にできるだけ衝撃を与えないようにするためかもしれない。
なぜなら、人々は核兵器で次から次へと死んでいくからだ。第二次世界大戦……そんなもの過去だ。たしか今は第六次世界大戦が地上で起きているはずだ。だから、これはその戦争か、あるいはもっと前……いずれにしても、人々は焼け爛れていく。突然の別れ?そんなものこの時代には、少なくともこの場にはない。人間はみんなコンピュータによって管理されているのだから。だが、地上ではそうではないらしい。彼らは愛するものに別れを告げられぬまま、別れるのだ。地上で戦うのはお金や地位のない貧しいものばかりで、目的としては娯楽か権力誇示と言った些細なものだ。だが、だが、それでも核兵器を使用しての戦争は今も起きている。私の妹が、それの目撃者としてそこにいる。妹は映像を見ながら、目を手で覆った。この光景が苦しいのだろう。しかし、私は止めなかった。いや、止められなかった。なぜなら、私もこの惨劇にたいして吐き気がするほどの怒りを覚えたからだ。そして、それと同時に涙が止まらなかった。
「あ、あぁ」
私は思わず声を漏らした。その映像には、ある男が映っていたのだ。それは、私がよく知る男であった。そう、彼は。
「父さん」
私は呟いた。画面に映る彼の目の奥には動揺か、怒りか。妹は男の姿を見た途端にゆっくりと手を離した。そして、大粒の涙をポタポタと落としながら彼の最期を見届ける。彼は核によってではなく、人間の銃によって心臓を撃ち抜かれて倒れていた。物価の上がったここでは二人も子を育てるのは現実上無理だ。だから、大金の手に入る戦争で働くしかなかった。それは頭では理解できている。だが、なぜ戦争をしてまでお金を稼がなければいけないのか。それは、彼が亡くなってしまった今でもわからない。妹は耐えきれなくなったのか、蹲り嗚咽している。私は背中をさすることしかできない。大丈夫?と声をかけるが、彼女はただ首を横に振るだけだった。
「父さん」
私はもう一度呟いた。彼は私が生まれた時にはすでに戦争に行っていて、それからは会っていない。だからなのか、彼の死に対しての悲しみよりも戦争に対する怒りの方が勝っていた。そしてそれは妹も同じであったようだ。私たちはこの映像を見終わった。私はその場を去った。
しばらくすると、誰もいない部屋で先程戦争が流れたテレビに、しかも電源の付いていないテレビに、ピエロが現れたのだ。
そしてピエロはこんな言葉を吐かれたのだ。
「如何だったかな?こーんなことになりたくなればみんな頑張って働いてねぇ。でも見るのは楽しいんでしょ?なら、また来てねぇ。バイバーイ」
プツン
突然の別れを告げられて
ずいぶんうろたえてしまったけれど
きっと以前から予兆はあって
それに気付けなかったことが
この別れをまねいたのだろう
突然の別れ睫毛も濡れぬまま さよならだけが心に積もる
題目「突然の別れ」