空が泣く』の作文集

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空が泣く』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

9/18/2024, 8:11:42 PM

学園祭の準備期間が始まった。

ウチのクラスの出し物はお化け屋敷。手分けして小道具やら衣装やらを作りつつ、オリジナルカレンダーの作成にも取り掛かる。まるで私専用のチームができたようで高揚した。中でも藤江くんは宣言通り、精力的に私をサポートしてくれた。

私の担当月は2月に決まった。モチーフはバレンタインデー。赤やピンクのクッションに囲まれた私が、ハート型のチョコレートを持って微笑む構図にしようと言い出したのは藤江くんである。

クッション作りを女子メンバーに任せて、私と藤江くんはチョコレートを買いに行った。しかし、バレンタインシーズンでもなければハート型のチョコレートなんてそうそう売っていない。私たちは話し合いの末、「ないなら作ればいい」との結論に至った。

家庭科室を借りてチョコレート作りを始める。これがなかなか難しかった。

大量の板チョコを切り刻み、湯煎でとかしてテンパリングする。その間、型をキレイに拭き、オーブンシートでコルネを作っておく。下準備ができたらチョコレートをハートの型に流し込んで、冷蔵庫に入れ30分以上冷やす。

レシピだけ見れば簡単そうだが、ひとつひとつの工程には技が必要だ。特にテンパリングを失敗すると味が落ちたり、ガチガチに固まって食べづらくなったりする。

意外なことに、藤江くんはお菓子作りが上手かった。お姉さんの影響でちょくちょく作っているらしく知識もあり、スムーズに進めてくれた。実に頼もしい相棒だ。

完成したチョコレートは綺麗にラッピングして再び冷蔵庫へ。割れたりブルーム現象が起こってしまったりしたものはその場で口に放り込む。

「ん、おいひ〜♡」

思わず漏らした声に、藤江くんが嬉しそうな反応を見せる。

「よかった。岡野くんの笑顔が見れて嬉しいよ」

イケメンは言うことが違うなぁ……
私は思わずときめいてしまいそうな台詞を平然と言ってのける彼のことが、少し羨ましくなった。

チョコを食べたら何か飲みたくなって、家庭科室の隅っこに放置していた荷物の元へ向かった。中身をゴソゴソして財布を発見。取り出して立ち上がったと同時に、隣に置いてあった藤江くんの鞄を蹴っ飛ばしてしまった。

「あっ、ごめん!!」

慌てて謝りながら、飛び出してきた中身を拾い集める。藤江くんも急いで駆け寄ってきた。

「あ、いいよ岡野くん、自分で拾うから」

「そんな……ん?」

今まさに拾おうとしていた物体を見た瞬間、私の心臓はドクリと脈打った。

そこにはライオンがいた。

銀色のライオン。あのキーホルダーだ。

私が先日失くしたのと全く同じキーホルダーを、藤江くんは所有していた。

「これっ……どこで」

「ああ、それ格好いいよね。この前動物園で買ったんだ」

一瞬、彼が拾って持っていてくれたのかも、と思ったがために、私は内心ガッカリした。彼も私と先生が訪れた動物園に行って、同じものを購入したんだ。

「わかるよ、私も同じの持ってたから。失くしちゃったけどね」

「そうなんだ……」

私は気まずい空気を払拭するような笑顔を作り、拾い終わった荷物を藤江くんに渡して、家庭科室を出ようとした。

「岡野くん!」

「なに?」

「よかったらこれ、あげようか?」

「えっ!?」

突拍子のない提案すぎて受け入れ難い。

「いやいや、もらう理由がないよ!」

「ほら、クラスの代表になってくれたお礼にさ」

「えぇ…うん、いやでも、やっぱりもらえないよ」

「なんで?」

「私のキーホルダーは、大事な人からもらった特別なものだからね」

それとは全く違うんだ。私はそう言って、家庭科室を出た。


鞄を蹴っ飛ばしたお詫びに藤江くんの分の飲み物も買って戻ると、彼は大袈裟に驚き喜んでくれた。

教室へ戻るとちょうど今日の学園祭準備時間が終わる頃だったので、我々はそのまま一緒に帰ることにした。

「うわ、曇ってる」

今にも降り出しそうな空を見て、私は焦った声を上げた。今日は傘を持ってきていない。

「大丈夫だよ、折りたたみ持ってるから」

どこまでもイケメンだな。

「藤江くんの家ってどの辺?」

「✕✕あたり」

「ああ〜、それなら途中から逆方向だね」

「安心して、送ってくよ。ジュース奢ってもらったしね」

「そう? 無理しないでね」

「無理じゃないさ。僕が岡野くんともっと一緒にいたいだけ」

さ、行こう。藤江くんが歩き出したので、私も慌ててついていった。いい加減彼の言動には慣れつつあった。

「そういえば、さっきの話なんだけど」

藤江くんが口を開いた。

「さっき?」

「うん。あのキーホルダー、大事な人にもらったってやつ。それってさ、好きな人ってこと?」

「う、うん、まぁ」

「へぇ〜、好きな人いるんだ。彼女?」

「いや、付き合ってはないよ。それに……女性でもない」

藤江くんが黙ってこちらを見つめる。少し見開かれた目を見て、拒絶されるかもしれないと思ったのだが。

「ふーん、片想いか」

少し考えて、再び口を開く。

「僕にしない?」



え?



呆気にとられた私の顔を見て、彼はクスッと笑った。

「僕にしときなよ」


足を止めた2人の頭上では、雨雲が最初の一粒を落とそうと待ち構えていた。


テーマ「空が泣く」

9/18/2024, 10:22:36 AM

空が泣く、傷の空ろが泣いている。
「そうか、無能か。無能とな…」
枝葉に止まった閑古鳥が金切り声を上げている。暇を余して早贄を稚拙に模倣しようとしているが、そもそもその習慣習性のない種族にはできるものではない。鬱血は大分吐き出したがまだ全てではない。自罰の奨励は是非を問うべきものではない不毛さだ。それを称えるのは的を外したナポレオンのようだろう。あるいはネルソンか。幾世紀も称賛を流すのは意図的で装飾性の高いコラージュかもしれない。
「中途半端に有能よりただの無能であるほうがよほど幸せかもしれない。まあ無能というのもナンセンスな表現かもしれないが」
能のない素振りもお役目なのだろう、演目の完遂には一つ欠けても足りはしないのだし。しかし傷口に塩を塗り込むのは皆好きだろう。思慮深くあっても無思慮であっても生きた先の大輪を見るのだから。だからこそ草木を育み育てるを誠心誠意、誠実に真心のまま、嫌味でない傑作を演じきれる。
「しかしほんの少しの裂傷を自ら裂いて広げようとするのは頂けない。君があまりやりすぎては諸共に死ぬのだが」
閑古鳥が居住まいを正す。
「不幸は安心するんだ、もう先がないから諦めがつく。そこまででなければ肯定できるものが何も無い、そこまでだったら泣きたいだけ泣けるような気がするんだ。知りもしないからこう言える。…怖いんだ、本当に。いつ足元が崩れるかわからない、引きずり込まれるのが怖いんだ。屑は地獄に落ちるって、みんな言ってたんだ。それが怖い、だがそうでないのも怖い。みんなから聞いていた道理と合わないんだ」
「それは伝聞を思い込んでるだけだ」
「でも本当に分からないんだ…どこか納得してないところもあるんだ、なりたくないのも本心だし、とても嫌なんだが」
長らく深呼吸。
「何回目だ?前を悔いるのか今回を嘆くのか、何やってるのか俺もお前もわかってない。いつまでやるんだ?」
「…まだ良くわかってないので」
閑古鳥に少年は暫し呆れた。

9/18/2024, 6:47:58 AM

星も月も見えない、暗い夜。
先導するように少し先を行く蜘蛛の片割れを、人の形を取った猫に手を引かれ少女が追う。
三人の間に会話はない。不自然なほど静まりかえる獣道を、誰一人気にかける事もなくただ歩いていた。


不意に蜘蛛の足が止まる。
その視線の先、目的とした池の畔に佇む影を認め、蜘蛛の纏う空気が鋭くなる。少し遅れて追いついた猫も、影を見る眼が鋭くなり。
けれどただ一人、少女だけは表情を変える事なく真っ直ぐに影を見つめていた。

影に向かい足を踏み出し。しかし猫の手に引かれ、止められる。

「壱《いち》。駄目だぞ。あれからは人の匂いがしない」
「日向《ひなた》の後ろでおとなしくしていろよ。余計な事をすんな」

警戒する蜘蛛と猫に、少女は戸惑うように引かれた手を見つめ。
二人を見て、静かに微笑んだ。

「大丈夫。あの人はきっと私達の邪魔はしない。だから行かないと」

少女の言葉に猫は目を瞬かせ、もう一度影を見る。
こちらに気づいているが、何かを待つように動かない影に、なるほど、と頷いて少女と目線を合わせた。

「壱は平気か。後悔したり疵になったりはしないか?」
「しない。きっと行かない方が後悔するから」
「そうか。なら行っておいで。気をつけて」

小さく笑って手を離す。
それに蜘蛛は微かに眉根を寄せるが何も言わず、影へと向かう少女を静観した。



「来ると思っていたよ。来なければいいとも思っていたが、仕方がない事だ。彼女を取り込みに来たのだね」

哀しく微笑む影に、少女は首を振って否定する。
予想していたものとは違う答えに、影は少女を見守る猫と蜘蛛を見て僅かに表情を和らげた。

「そうか。ならば邪魔をしなくていいようだ。頑固者の君がよく考えを改めてくれた」

そっと頭を撫でる。幼子を褒めるように慈しむ手に、少女は目を細めて微笑んだ。
擦り切れた記憶の断片に残るそれと変わらない温もりに、懐かしい呼び名が唇から溢れ落ちる。

「おとうさん」
「まだ私を父と呼んでくれるのだね。愛しい子。記憶でしかない私には過ぎたる言葉だが、記憶であるが故に伝えられるものもある」

首を傾げる少女に影は――父と呼ばれた男は静かに笑い、目線を合わせた。

「あの悪夢の日に言えなかった言葉を返そう。――ただいま、玲《れい》」

瞬きを一つして。
記憶が巡る。熱と、痛みと、悲しみに落ちていく意識を繋ぎ止める、必死な声を思い出す。

男の言葉の意味を正しく理解して、少女は泣くように微笑った。

「おとうさん、おかえりなさい」

あの日の言葉を繰り返す。
腕を広げた男に抱きつき、いつかのようにその首元に擦り寄った。
優しく抱き留め髪を撫でられ、少女はおとうさん、と名を囁く。その表情に涙はない。あの日の再現には必要ないものを、少女はひた隠して目を閉じた。


「壱」

凜とした猫の声が少女を呼ぶ。
名残惜しい気持ちに気づかないふりをして男から離れ、振り返った。
少し離れた場所に座る本来の姿の猫の元まで近づき、その体を抱き上げる。目を細めて少女を見上げ、猫はなぁ、と小さく鳴いた。

「壱。瑪瑙《めのう》の準備が終わったと銅藍《どうらん》が言っている。始めるぞ」
「分かった。おとうさん、」

正しく名を呼べる記憶である男に対して、続く言葉に迷う。感謝か謝罪か、それともあの日の続きの言葉か。
逡巡し口を閉ざす少女に、男は静かに笑って首を振った。

「私にはもう別れの言葉だけでいい。それだけで十分だ」

その言葉に少女は一つ頷いて。
ふわり、と綺麗な微笑みを浮かべた。

「さようなら。おとうさん」
「あぁ、さよならだ」

優しい眼差しに別れの言葉を溢す。
縋るように猫を一撫でして、背を向ける。静観する蜘蛛の元まで戻るとお願いします、と頭を下げた。
それに蜘蛛は何も答えず。表情もなく男の佇む池まで歩き出した。




「申し訳ないが、水の底にいる彼女に私を届けてはくれないか。慰めくらいにはなるだろう」
「自己満足か。反吐が出るな」

頭を下げ差し出された本を、蜘蛛はくだらないと吐き捨てる。しかし猫の手前無碍には出来ず、半ば奪い取る形で本を受け取った。

「すまない。巻き込んでしまった事を深くお詫びする。しかしあの子のために力を貸して頂ける事に感謝する」

舌打ちしながら本を検め、害がない事を確認し。そして蜘蛛は侮蔑を浮かべた眼で、男に問う。

「あんたがあれの生に執着したのは、あれの言葉があったからか?」
「いや。ただ私が弱かったからだ。一人になる事に、目の前で喪う事に耐えられなかった。どんな形であれ、側で生きていてくれる事だけが、あの時の私の生きる理由だったのだ」

悲しく、空しく男は笑う。
それを蜘蛛は嘲笑し、男の罪を突きつけた。

「あんたに言っても仕方がないが、一つ教えておいてやるよ。あいつはもう二度と人には戻れない。あいつの魂は人を忘れ、呪になった。人に戻れず、妖にも成れない。あんたのくだらない執着の結果がこれだ」

息を呑み項垂れる男を、蜘蛛はそれ以上言葉を紡ぐ事なく見下ろし。
霞み消えていくその様に、表情一つ変える事なく背を向けた。

「それでも、私は認められなかったのだ。あの子の未来を、私のために泣く事を我慢して笑う優しい娘を諦めきれなかった」

噛みしめるような呟きを、蜘蛛はくだらない、と一蹴した。


池に向かい蜘蛛は立つ。
手には男から託された本と、小さな白磁の壺。
記憶である男の依代。水の底に沈んでいる娘の名を与えられた化生を封じた壺。
壺に繋いだ蜘蛛の糸を池に落とし、暫くしてから壺と本を落としていく。
沈んでいく二つを見下ろし、水の底の狂骨が壺を認識して取り込んだのを確認して残していた糸を切った。


ぽつり、と。
暗い空から細かな雨が降り始める。
蜘蛛を、少女と猫を濡らし、すべてを濡らしていく。
激しさはない。静かに降り続ける雨は、何故だか少女の泣く様を思い起こさせた。

振り返る蜘蛛の視線の先には、雨に慌てる猫とそれを宥める少女の姿。
雨に濡れてはいるが、その頬に涙はない。

一つ息を吐く。頭を振って雨を振り払い。
二人の元へと歩き出した。



2024917 『空が泣く』

9/18/2024, 6:31:52 AM

《巡り逢うその先に》
        番外編
〈黒鉄銀次という男〉  ⑤

主な登場人物
 金城小夜子
     (きんじょうさよこ)
   玲央      (れお)
   真央      (まお)
   綾乃   (母 あやの)
 椎名友子  (しいなともこ)
 若宮園子 (わかみやそのこ)
   大吉    (だいきち)
 東山純 (ひがしやまじゅん)

 向井加寿磨 (むかいかずま)
   ユカリ      (母)
   秀一      (義父)

 桜井華   (さくらいはな)
   大樹  (父 たいじゅ)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)
 葛城晴美 (かつらぎはるみ)
 犬塚刑事    (いぬづか)
 足立刑事     (あだち)

 柳田剛志 (やなぎだたかし)
 桜井大樹(さくらいたいじゅ)
 横山雅  (よこやまみやび)

 京町琴美(きょうまちことみ)
 倉敷響  (くらしきひびき)

 黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
   詩乃    (母 しの)
   巌    (父 いわお)

黒鉄さんたら、子供に暴力を振るうなんて最低だわ。
今度お店に来た時に私のことを話してわかってもらおう。
休みの日はいつもお昼まで寝ているのだが今日は電話で起こされた。
相手は静香さんだった。
「カスミちゃん、大事な話があるの。今マンションの下にいるんだけど、ちょっと寄ってもいいかしら」
「あの、散らかってるので、5分後にピンポンしてください」
詩乃は脱ぎっぱなしの服などを急いでクローゼットに押し込んだ。
そして5分後
「いらっしゃい、静香さんがうちに来るのは初めてですよね」
「急でごめんなさいね。咲ちゃんとマリエちゃんは留守なの?」
「はい、ふたりはデートみたいですよ」
「そう、よかったわ。実はカスミちゃんに確かめたいことがあるの」
「なんですか?」
「この前もちょっと聞いたけど、ここに来る前にいたお店って喫茶スナック、源氏名はアケミじゃなかった?」
「どうして知ってるんですか?」
「やっぱりそうだったの...。これから大事な話しをするからよく聞いてちょうだい。うちのママとカスミちゃんが前にいた喫茶スナックのママは刺根組っていう暴力団と繋がりがあるの。先月刺根組の主催する旅行があってママ達も参加したのよ。そしてカスミちゃんが怪我をさせた郷田が懸賞金を付けて、あなたを探していることを小耳に挟んだのよ」
なんてことなの、もう4年もたつのに、もう忘れかけていたのに。
「私は偶然ママの電話を聞いてしまったの。このままだとカスミちゃんは捕まってしまうわ。逃がしてあげたいけど、カスミちゃんはすでに見張られているのよ。下手に動いたら危ないから、黒鉄さんにカスミちゃんを逃がしてほしいって相談したのよ」
「エッ、黒鉄さんに?」
「そしたら、助ける価値があるヤツなら手を貸してくれるって言ったの。だからカスミちゃんを黒鉄さんのテーブルに付いてもらったのよ」
「だったらダメですね、私 黒鉄さんに酷いこと言ったから」
「いいえ、助けてくれるそうよ。今も近くで待機してくれているわ」
「本当ですか」
「すでに郷田はここに向かっているらしいから急いだ方がいいわ。支度をしてちょうだい」
私は支度をしながら黒鉄さんてどういう人なのか聞いてみた。
「黒鉄さんは元ヤクザよ結婚を期に足を洗ったのよ。今一緒に暮らしているのは次男の銀次君、長男は生まれつき難病を抱えていて、2人の子を育てるのは難しいと言って、奥さんが実家で長男を育てているそうよ」
‘ピンポーン’
「あらっ、黒鉄さんだわ。もしもし、何かありましたか?」
「郷田が、事務所を出てこっちに向かったと、連絡があった。急げ時間がないぞ」
「わかったわ、すぐに行くわ。でも、見張りは大丈夫かしら」
「今、寝かしつけたところだ」
「カスミちゃん急いで!」
詩乃達は大急ぎでエントランスに降りて行った。
「黒鉄さん、お待たせしました」
「早く車に乗れ」
「はい」
「カスミ、いや、詩乃元気でね。
無事なのか心配だから落ち着いたらここに連絡して、私の従兄弟だから大丈夫よ。そして二度とここには戻ってきちゃダメよ」
「はい、静香さんありがとうございます」
「ちょっとお待ち!」
「ママ!」
「カスミ、あれだけ面倒をみてやったのに恩を仇で返す気かい!」
「ママもうやめて、カスミが可愛くないの、奴らに渡したら何をされるか、ママなら想像できるでしょ。黒鉄さん早く行って」
車は猛スピードで走り出した。
「カスミ逃げるなこの恩知らず、絶対見つけ出してやるからな」
ママの声が遠ざかっていく。
あんなに優しかったママが、前の店のママもそうだった。
止めどなく涙が溢れてくる。
「所詮、刺根組には逆らえないんだ」と黒鉄が呟く。
「そんなに大きな組織なんですか?」
「この辺じゃダントツだ」
「そんなのに逆らって黒鉄さんは大丈夫なんですか?」
「俺が足を洗った後、何かに付けて嫌がらせをしてきたのが郷田だ。長男の謙信が難病に侵され看病に専念したいと言って、嫁が謙信と実家に行ってからも勤め先に“こいつの旦那はヤクザだ”と言い廻ったそうだ。もう俺と関わらない方がいいと思い離婚した。俺は郷田を許さねぇ、キッチリ落とし前を付けてやる」
そんなことがあったんだ。
「黒鉄さん、どこへ向かってるんですか?」
「この先に坊主を待たせてあるんだ」
「銀次君をですか?」
「ああ、俺たちもこの町を出るんだ」
「私が巻き込んでしまったからですか?」
「そうじゃない、そろそろ潮時だったってことだ。そんなことより、追手が現れたようだ。飛ばすぞ、しっかり捕まっておけよ」
黒鉄は物凄いスピードで飛ばした。
「マズイ、前からも来やがった」
黒鉄のドライビングテクニックは見事なものだったが、相手も次々と湧いてくる。
「このままでは、いずれ挟み撃ちされて終わりだ。これから言うことをよく聞いてくれ、この先に宅配便の会社がある。No.17のトラックの荷台に坊主を隠してある。そのトラックは坊主の母親の実家方向に行く便で、30分後に出発する。悪いが母親の実家へ、坊主を送ってもらえないか。これが、住所だ」
黒鉄はメモを詩乃に渡した。
「黒鉄さんはどうするんですか」
「一人の方が無理がきく、必ず後から行くから心配するな。坊主のこと、頼んだぞ。次の角を曲がったらスピードを落とす、その時に降りてくれ」
車は十字路を右折してスピードを落とした。
「今だ!」
詩乃は言われた通りに飛び降りて、そのまま身を隠した。
そういえば、前にもこんなことがあったな。
そんなことはどうでもいい。
今は銀次君の所に急がないと。
宅配便の会社は思ったよりも遠くて、出発ギリギリになってしまった。
No.17の荷台に入り銀次君に声をかけた。
「銀次君、いるの、この間公園であったよね、覚えてる?」
銀次は恐る恐る顔を覗かせて、詩乃のことを公園で庇ってくれた人だとわかると、「父ちゃんはどこ?」と聞いてきた。
「お父さんは少し遅れるから、お母さんの所で待っててって言ってたわよ」
銀次が少し不安がっていたので
「大丈夫よ、それよりノド渇いてない、ジュース買ってきたの、オレンジジュースとコーラどっちがいい?」
「オレンジジュース」
「はい、どうぞ」
「ありがとう、おばちゃん」
「あの、おばちゃんじゃなくてお姉ちゃんね」
黒鉄さんからもらったメモの住所までは3時間くらいで着くはずだが、まだ出発してから1時間くらいしかたっていない。
あと2時間、先は長そうだ。
お腹も空いてきた。
そういえば、今日は何も食べていないことに気がついた。
‘食べ物もいっしょに買ってくればよかったな’と思っていると。
「おばちゃんオシッコ」
エッ!どうしよう、ここはトラックの荷台だ、しかも走っている。
まさかここでするわけにもいかないし。と考えているとトラックが止まって運転席のドアが開く音がした。
そして、荷台の幌が勢いよく開けられた。
「ここまでくればもう大丈夫だ。助手席に乗りな」
「私達がいること知ってたんですか?」
「黒鉄さんに頼まれてたからな」
「この子、トイレに行きたいんですけど?」
「ここはドライブインだ。トイレもあるから行ってきな」
銀次君をトイレに行かせて、私も食べ物を買いに行こうと思ったところで話しかけられた。
「アンタに言っておくことがある。ここに来る途中で刺根組の事務所の前を通ったら、黒鉄さんがチンピラ数人に引きずられて中に入って行くのが見えた。だから、奥さんの所には来ないだろう」
「そんな、銀次君がかわいそうだわ、みんな私のせいだわ」
「アンタのせいかどうかは俺にはわからないが、このことはあの子には言うなよ」
「そんなこと、とても言えないわ」
2時間後無事に目的地に着いた。
「俺の役目はここまでだ」
「ありがとうございました。あとは私が銀次君をお母さんの所へ
連れて行きます」
私達を降ろすとトラックは再び走り出した。
「行こう銀次君、お母さんのところへ」
「おばちゃん道わかるの?」
「こういう時はお店で聞けば何とかなるのよ。それと、おばちゃんじゃなくてお姉ちゃんよ。覚えておいてね」
何とか家にたどり着き、インターホンを押した。
ドアが開き女性が現れた。
「どちら様で...銀次?」
「初めまして、黒鉄さんに頼まれて銀次君を連れてきました」
「黒鉄に頼まれたって、どういうことよ」
「黒鉄さんが迎えに来るまで銀次君を預かっててほしいということです」
そう言ったものの、刺根組に捕まった黒鉄さんが来れるはずがないと思った。
「で、いつ迎えに来るって?」
「それはわかりません」
「もう、アイツには関わりあいたくないのよね、アタシも仕事と
謙信の世話で手一杯なのよ。銀次の面倒までみてらんないわ。悪いけど帰ってちょうだい」
「そんな、あなたの子じゃないですか」
「無理なものは無理なのよ」
ドアは勢いよく閉められた。
銀次は今にも泣きそうな顔をしている。
「お腹空いてない、ご飯食べに行こうか?」と言ってなだめた。
「うん」
食事中も、銀次は元気がなかった。
「後でもう一度お母さんに会いに行こうね。さっきは突然だったからビックリしただけだよ」
と言ったものの、詩乃は無理だろうなと思っていた。
でも、このままでもしょうがない。当たって砕けろだ。
そしてまたインターホンをならした。
「しつこいね、ダメなものはダメなんだよ」
「それじゃ銀次君がかわいそうじゃないですか」
「もうウンザリなんだよ、コイツの顔見るとアイツのことを思い出して腹ワタが煮え繰り返るんだよ」
そう言うと鬼の形相で銀次を睨みつけた。
思わず銀次は泣き出してしまった。
「あなたは、それでも親ですか」
「うるさい、二度と来るな!」
仕方なくその場を離れたもののどこにも行く当てがなく公園のベンチで休憩していた。
このままではいけない、何とかお母さんを説得しなければ。
「銀次君ちょっとここで待っててくれる。私、もう一度お母さんと話しをしてくるからね」
銀次は不安そうな顔をしていたがうなずいた。
お母さんの家の近くまで行くと言い争う声が聞こえてきた。
「ガキと女がいるだろ、出せ」
「さっき来たけど追い返してやったわよ。もう私達には関わらないでちょうだい」
「ウソ付くんじゃねェ!」
男は部屋の中へ入っていった。
「ちょっと、辞めておくれよ」
男は中を確認すると出てきた。
「また来たら捕まえて連絡しろ。隠したら為にならないぞ。女には懸賞金が掛かってるからな」
マズイ、ここには居られない。すぐに逃げなきゃ。
詩乃は公園で待たせていた銀次をつれタクシーで小倉駅にむかった。もうここには居られない九州を出よう。
「おばちゃん、どこにいくの」
「おばちゃんにもわかんない」
ダメだ、銀次君が不安になってしまう。
「ううん、おばちゃんの友達のところよ。ちょっと遠いけど心配しなくていいわよ。それと、おばちゃんじゃなくてお姉ちゃんよ。もう間違わないでね」
こうして、詩乃と銀次は九州を離れた。

           つづく

9/17/2024, 1:11:51 PM

雨が降ってる時に

『お空が泣いてるね〜』って、言う大人がいた

お空って泣くの?

と子供心に違和感を覚えた

自然を味わって、自分のこころと身体で感じて、それを一番ピンとくる言葉で表せばいい

自分のこころを表現できる言葉が見つからなければ、ゆっくり探してみるのがいい

それをお手伝いするのは、とてもいい

小さい人のそばにいる大人は、不用意に詩的表現を使って子供のこころを惑わせてはいけないなと、私は思う

9/17/2024, 10:11:42 AM

小説だのの描写で葬式や誰かが亡くなるシーンがあると、たいてい雨だ。
 太陽が照りつけた眩い日差しの中で葬式ってのはなんだか、中々見かけない。暗い雰囲気が丁度いいんだろう。読者にもどんよりとした感じが伝わりやすい。
 逆に結婚式だのは大抵晴れだ。教会の外を歩くシーンなんかを入れたりするには雨は邪魔。柔らかい日差しの中で、二人幸せそうに笑う。大抵そんなもん。
 だが、実際は天候はこっちの都合なんて考えちゃくれない。今日は親友の晴れ舞台だってのに外は大雨。
 足元の悪い中〜、なんて台詞から新郎新婦の挨拶が始まる。
 BGMがかかれば雨音なんざ言うほど目立たないもんで、皆天気なんか忘れて笑顔で祝福してる。
 今日は、親友の結婚式。高校時代からの付き合いで、もう知り合ってから十年も経つ親友の。
 そして、俺の好きだったやつを親友に奪われた日だ。「その結婚ちょっと待った!」なんてやるほど馬鹿じゃない。二人ともムカつくほど幸せそうだ。
 新郎の友人代表でスピーチをする。当たり障りのない思い出話と、おめでとうと祝いの言葉を。俺が彼女を好きだったことを、あいつは知らない。だから別に、怒りもなにもない。ただ、俺はつくづく恋愛運がねぇなぁと。

 式が終わり二次会があるらしい。誘われたから行く。
 外は相変わらずの大雨だ。
 ……俺の失恋を嘆いてくれてんのかな、なんて。
 そんなこと言うような柄じゃないし、絶対イタイし自分でもうわぁと思ってしまったから、二次会でたらふく酒を飲んで忘れてしまうことにしよう。


#14『空が泣く』

9/17/2024, 9:59:18 AM

『空が泣く』

 この国では雨が降らない。気圧だか風だかの関係で雨雲が出来づらいのだ。ずっと晴れていて青空が清々しいと観光客は言うが、暑いだけで嫌になる。
 とある国では晴れのことを「空が笑っている」、雨のことを「空が泣いている」、と表現するらしい。
 ではうちの国のお天道様は、何があって笑顔なのだろうか。何もかも飲み込んで我慢しているのだろうか。年に数回しか『泣いて』いないけれど、そんなんで大丈夫なのだろうか。笑ってばっかじゃつまらないし、大変だ。だからちょっとぐらい泣いてもいいのに。そんな空想をした。

9/17/2024, 9:51:24 AM

【空が泣く】〜Mrs.GREEN APPLE様〚藍〛〜

泣きべそかいて 歩いた道

見えた景色のお空は青

何故ここにいて 何故生きていて

何故悲しませるかは謎

泣いて 去って 逃げて ほらまた笑顔な藍

9/17/2024, 9:51:09 AM

青い空が、泣いている
晴れた午後の、澄んだ青空が泣いている

あれ?

おかしいな

こんなに気持ちよく晴れた日の青空が泣いているなんて

天気雨かな

手のひらを伸ばしてみる
陽の光のあたたかさと、やさしい風を感じるだけ

そうか

わたしが泣いているんだ
泣いているのはわたしのこころ

こんなにお天気なのに
こんなにお天気だから
涙がとまらない

青空はいじわるだ
しあわせな人の上にも、悲しみにくれた人の上にも、同じようにひろがる

まるで、あなたの笑顔みたいじゃないか

9/17/2024, 9:44:10 AM

〝空が泣く〟



雨って結構嫌いじゃないかもしれない。

起きてカーテンを開けて空が曇ってると、なんか自分てもよくわかんないけどちょっと安心する。

逆にめちゃくちゃ天気がいいと「また1日始まるんだなぁ」って感じがしてちょっと気が重い。休みの日はこれに限らないけど、これは学校に行く時の話で。

なんか雨が降ってると天気が自分の憂鬱さに共鳴してくれてる気がするというか……勝手に「分かるよ〜だるいよな〜」って寄り添ってくれてる気がして。

荷物が濡れるのとかは普通にめんどくさいけど。

9/17/2024, 9:43:57 AM

あの日は

大雨だった。









自分より
もっと
悲しい思いをしてる人がいたから


なんか

泣けなくて。







でも、

わたしだって




本当の
本当は





悲しくて。






代わりに

空が

泣いてくれた。


#空が泣く

9/17/2024, 9:41:09 AM

✳空が泣く

体を引きずるようにして歩く。
もう、自分の命は長くはない、そう分かっていて傍らに静かに眠る竜の元へ向かう。
この竜もまた、息を引き取っていた。
レビナは竜に覆いかぶさると、静かに撫でた。

「⋯⋯よく⋯⋯頑張ったな⋯⋯」

あたり一面、いく人もの焼け焦げた人の成れの果てが転がっていた。
国と国との醜い戦争、それに狩り出されたのがレビナとこの赤い竜、ランヘルだった。

レビナの腹には剣が深く突き刺され、血が止まらず流れている。
痛みはとうに麻痺し、体の感覚も消えていた。

「そうだな⋯⋯また、あの世で共に空を架けようか」

力なく倒れ込むと、空からポツリポツリと雨が体を濡らす。
レビナは竜にそっと寄り添うと、瞳を閉じた。

9/17/2024, 9:35:41 AM

空が泣く
私はあの人に言われたことがある

「君が泣くと、まるで空が泣いているようだから笑ってほしい」と

だから、出来るだけ笑うように

笑顔でいるようにしている

9/17/2024, 9:32:54 AM

空が泣く


(本稿を下書きとして保管)


2024.9.16 藍

9/17/2024, 9:32:17 AM

空が泣いて

貴方も悲しんで

でも私だけは
ひとつ屋根の下で嬉しくなってる

9/17/2024, 9:27:25 AM

ぽつりぽつり。しとしと。ざーざー。

空の泣き方はいつも違う。今日はどうして泣いているんだろう。
きっと嬉しくて泣いているんだ。
今日みたいな天気は天泣とも言うらしい。

明日も元気になーれ!


2024/10/08 #空が泣く

9/17/2024, 9:27:11 AM

目が覚めると、空気が暗かった。

朝からずっと

太陽は一度も挨拶をしてくれない。

なんだか寂しくて、急に心細くなって

窓の外を見上げたら

私のかわりに、空が泣いていた。



#空が泣く

9/17/2024, 9:11:56 AM

→『彼らの時間』9 ~ストップウォッチ~

 自分が同性愛者なのだと気がついたのは小学生の時だ。隣の席の男の子が僕に言った。
「時を告げるって、なんか大層な言葉だよね」
 彼のきれいな横顔と人懐っこい雰囲気に一目ぼれした。
 そんな初恋話を司さんにしたら、彼は「お前は筋金入りだな」と笑った。
 このやり取り以降、彼は僕に対して支配的な一面を見せるようになった。怖くなかったと言えばウソになる。でも当時は、彼との毎日を続けるうちに男性同士の付き合いはこういうもので、彼しか僕の相手をしてくれる人はいないと思い込むようになっていた。

「おい! オッサン!! コウセイ、嫌がってんだろ!! さっさと離れろ!! 前時代的ご都合主義振りかざしてんじゃねぇよ!!!!」
 ヒロトくんは僕の手を引いて、司さんと僕のあいだに割って入った。僕の盾になろうと司さんに立ち向かう。
 今から1年前、司さんが消えて、ヒロトくんは僕の話し相手になってくれた。-って言っても、LINEだけど。寄り添いながらも深入りしない彼のおかげで、僕は少しずつ自分を取り戻していった。
「コウセイは! 捩れてるところもあるけど、素直なヤツなんだよ!」
 僕の手を掴む彼の手の節が白い筋を浮き立たせている。その強さが痛みとなって、彼の勇気と想いが伝わる。
 ヒロトくん、ヒロトくん、ごめんね。僕、どうして司さんとの関係を基本に考えてたんだろう? 思いやりで育てる関係があるって、どうして信じられなかったんだろう? 君はいつでも僕に真剣に向かい合ってくれていたのに。
「アンタの変な性癖を押し付けんな!」
 ん?? あれ? 何か……、イヤ、助けてもらってなんだけど、話の方向が?? 何か、こう、嫌な予感が……。
「確かに嫌がってるときヤラシイけど、気持ちイイときはもっとエロいし、何なら……!!!」
―ズゴン! 
「何で?! 背後から?!」と驚くヒロトくん。
「うわぁ……、脳天に手刀」と司さんの小声。
「ヒロトくん! 話の論点、そこじゃない!!!!!」と僕の涙の叫び。
 顔から火が出そう―って!!! あぁ、玄関が開けっぱなしだよぉぉぉ。

「あ、あの、ヒロトくん?? 耳が、痛いよ? ね?」
「まだダメ!」
「はい」
 僕はバスチェアに座って身を小さくした。頭を洗うみたいにヒロトくんは僕の背後に立って念入りに僕の耳をひたすらに洗っている。僕だって司さんに舐められて気持ち悪かったけど……「じ、自分で洗おうか?」
「俺が洗う」
 言葉少なくいヒロトくん。まぁ、そうだよね、怒ってるよね。司さんにいいようにされて情けないな、僕。
 司さんは呆れて僕に完全に興味を失った。「やってらんねぇわ」との司さんに「うっせぇわ」と歌詞みたいにヒロトくんが返した。
 素っ裸で二人、お風呂場でほとんど無言。シャワシャワと耳元に泡の音。
 突然、ヒロトくんが僕を背後から抱きしめた。
「……怖かったよな」
 ポツリと呟く。「本当は、俺も怖かった」
「ヒロトくん?」
「情けないよなぁ、今になって震えてきた。でも、絶対にコウセイを守りたくて、それだけしか考えられなくて……」
 杏奈ちゃんは言った。本気の恋ならタイマー切って、歩み寄れ、と。本気の恋の相手は、絶対にヒロトくんがイイ。
「頭、まだ痛い?」と僕はヒロトくんの頭に手を当てた。
「少し痛い」とヒロトくんの拗ねた口調。あ、これ、ウソだ。遊んでほしいときのやつだ。よしよし。
「冷そっか」と僕はシャワーを捻った。空が泣くみたいに二人の頭上に冷水が振り落ちる。
「ウッワ! 冷てぇ! 心臓止まる!」とヒロトくんのウキウキした叫び声。
「でも冷やさないと!」と笑いながらの僕。
 石鹸の泡が流れてゆく。シャワーの音、溶け合う二人の体温。君と僕の身体。
「あのね、僕、ヒロトくんに色々聞いてもらいた話があるんだ」
「もちろん」とヒロトくんは僕の両手を取った。まるで巣で休む小鳥のように僕の手が彼に包まれる。
「ずっと話してもらえるの待ってたよ、コウセイ」
 彼が僕の名を呼ぶ、その声はとても優しく心地よく耳を撫でた。
「ありがとう、ヒロトくん」 
 僕たちの今にカウントダウンは必要ない。同じやるならカウントアップ。
 終わらないストップウォッチを君と刻みたい。

 
テーマ; 空が泣く

9/17/2024, 9:06:23 AM

いま正に泣いています
(大雨…豪雨?)

十数分程度のゲリラ豪雨だったようです


(空が泣く)

9/17/2024, 9:03:32 AM

ねぇ、知ってる?
魔女が泣くと、空も泣くんだって。

…その魔女さんは優しい人だったんだね。

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