小説だのの描写で葬式や誰かが亡くなるシーンがあると、たいてい雨だ。
太陽が照りつけた眩い日差しの中で葬式ってのはなんだか、中々見かけない。暗い雰囲気が丁度いいんだろう。読者にもどんよりとした感じが伝わりやすい。
逆に結婚式だのは大抵晴れだ。教会の外を歩くシーンなんかを入れたりするには雨は邪魔。柔らかい日差しの中で、二人幸せそうに笑う。大抵そんなもん。
だが、実際は天候はこっちの都合なんて考えちゃくれない。今日は親友の晴れ舞台だってのに外は大雨。
足元の悪い中〜、なんて台詞から新郎新婦の挨拶が始まる。
BGMがかかれば雨音なんざ言うほど目立たないもんで、皆天気なんか忘れて笑顔で祝福してる。
今日は、親友の結婚式。高校時代からの付き合いで、もう知り合ってから十年も経つ親友の。
そして、俺の好きだったやつを親友に奪われた日だ。「その結婚ちょっと待った!」なんてやるほど馬鹿じゃない。二人ともムカつくほど幸せそうだ。
新郎の友人代表でスピーチをする。当たり障りのない思い出話と、おめでとうと祝いの言葉を。俺が彼女を好きだったことを、あいつは知らない。だから別に、怒りもなにもない。ただ、俺はつくづく恋愛運がねぇなぁと。
式が終わり二次会があるらしい。誘われたから行く。
外は相変わらずの大雨だ。
……俺の失恋を嘆いてくれてんのかな、なんて。
そんなこと言うような柄じゃないし、絶対イタイし自分でもうわぁと思ってしまったから、二次会でたらふく酒を飲んで忘れてしまうことにしよう。
#14『空が泣く』
9/17/2024, 10:11:42 AM