『秋晴れ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「秋の晴れ間に」
昨日、私は友人と栗拾いに行った。
秋は、晴れていることが少ないから、やはりその日も雨が降っていた。
残念がっていてもどうにもならないと思い、カッパを着て栗拾いをした。あまり気分が晴れなかったので栗もあまり取れなかった。
もともと、ピクニックをするつもりで来ていたので、東屋でお弁当を食べた。
すると、晴れてきたので、2人で喜んだ。
手持ち無沙汰に澄んだ青が続く空を見上げ、流れる雲を目で追いかけた。
いつもならば持ち歩いているはずのスケッチブックは、今日は家の中だ。不用意に持ち歩いて彼に出会ってしまえば、また一つページが彼で埋まってしまうから仕方がない。
空から目を逸らし。落ち着かなさに鞄を求めて彷徨う手を、きゅっと握る。
嫌な訳ではない。彼を描く事にまだ緊張はするけれども、それに苦しさを感じる事はなかった。
ただこれからも彼を描く事が少しだけ怖い。
描く度に気持ちを抑える事が出来なくなっているのが、絵を見て気づかれてしまう事が恐ろしかった。
――彼が好きなのですね。
恩師の言葉を思い返し、握る手に力が籠もる。
彼の絵を描き始めてから、まだ一月しか経っていない。彼の絵も片手で数えられるくらいだ。
――彼に対する気持ちが、絵に現れていますよ。
それなのに、恩師はその少ない彼の絵をすべて見て、そう言った。
気づかれるとは思っていなかった。いつもと変わらないようにあるままを描いていたはずだったから。
思わず赤面する自分に、恩師は柔らかく微笑んでいた。
「何してんの?」
背後から聞こえた声に、びくりと肩が跳ねる。
「今日は絵を描かないんだ」
硬直する自分を気にせず近づく足音。目の前まで来ると、握りしめたままの手を取り、そっと開いていく。
彼の手の熱に益々動けなくなってしまう自分に、彼は小さく笑い、開いた手に綺麗な赤色の飴を一つ乗せた。
「なに、これ」
「好きじゃん。イチゴ味」
手のひらの上の飴を見る。透明な袋の中の澄んだ赤はとても綺麗だ。
彼のようだな、と見入っていると、焦れた彼が飴を取り袋を破く。取り出した飴を口元まで運ばれて、促されるままに口を開いた。
「甘い」
「でしょ?」
飴の甘さに頬が緩む。
からころと転がしてその甘さを堪能しながら、お礼を言おうと彼を見て。
指先が視界に入り、一瞬前の記憶を思い出す。
彼の少し冷えた指先を、その冷たいはずの熱を思い起こす。
「どうした?」
固まる自分を心配して伸ばされた手から逃げるように、慌てて後退った。
鼓動が速くなる。頬がじわじわと熱を持つのを感じる。
「っ、なに、するの」
「何って、急に黙り込むから」
「そうじゃないっ!なんで、急に、なに、こんな、っ」
ほとんど意味のない言葉の羅列に、それでも言いたい事が伝わったのだろう。
彼の笑みが、いたずらが成功した子供のようなにやりとしたものに変わる。
「だって、ずっと見てるだけだったから。食べさせてほしいのかなって」
「そんな事言ってないし!思ってもなかったから!」
「でも、食べたじゃん」
あれは、と言いかけて黙り込む。ぼんやりしていたからだとか、出されたからだとか、同じような言い訳は思い浮かぶが、きっとそれを言葉にしても笑われるだけだ。
笑う彼から視線を逸らす。
このまま逃げてしまおうか。思いついて踏み出した足は、けれどそれ以上は動かせない。
「離してよ」
「やだ。折角いい天気なんだしさ、これからどっか行こうよ」
掴まれた手が熱い。
彼の誘いに答えを返さないでいると、有無を言わさずに手を掴んだまま歩き出した。
「ちょっと、行くって言ってない」
「行かないとも言ってないよ。いいじゃん。最近雨ばっかで、どこにも行けなかったんだし」
「だからって、急に。そんなの」
どうすればいいのだろうか。
嫌ではないのだから、余計に分からなくなる。
掴まれたままの手を軽く引けば、手は簡単に離されて。けれどその手はすぐに離した手を捕まえて、しっかりと繋ぎ直された。
がり、と。思わず噛んだ飴が小さな音を立てて割れる。
口の中の甘さと繋いだ手の熱で、くらりと一瞬だけ世界が回った気がした。
「どこ行こっか?いい天気だし、クレープとか買って公園散歩する?」
「…勝手にすれば」
割れた飴を甘さごと噛み砕く。小さな呟きに笑う彼から逃げるように、見上げた空はどこまでも青い。
秋晴れ。
涼やかな風が赤い顔を揶揄うように吹き抜けて、手や頬の熱を冷ましていく。その感覚が心地よい。
「手、離してよ。逃げないから」
「俺が繋いでたいからダメ。今日は絵を描けないから、その分手を繋いでいられるし」
繋いだ手を軽く振られ、風が冷ましたはずの熱がまた湧き上がる。
「ばか」
呟いて、おとなしく彼に連れられるまま歩いて行く。
彼を描いては、気持ちが溢れ。けれど彼を描かなくても、こうして触れた場所から気持ちが熱として伝わっていきそうだ。
どちらがましなのだろう。
形として残らない分、今がましだろうか。
空を見る振りをしながら、彼に視線を向ける。
「たまにはこういうのもいいよね」
上機嫌な彼に、どちらも変わらないのだと思い知る。
きっとこれから先、この青空を描く度に思い出してしまう。
口の中に広がる甘さを。手の熱を。
――彼が好きなのですね。
あの時は何も言えなかった。
肯定も、否定もしなかった。
けれど、次に会う時には。描き終わったスケッチブックがまた一つ増える頃には。
おそらく、返せる答えはあるのだろう。
「本当に、ばか」
憎らしい程に澄んだ青空と、笑顔の彼から視線を逸らして。
拗ねたように呟いた。
20241019 『秋晴れ』
暑くて大好きなはちみつ入りホットミルクが少し億劫だった季節が過ぎ去って行った頃。夜空は少しばかり早くに黒く染まり、昼間は風が心地よい。
そんな秋晴れの日――
午後は休みだった陸はホットミルクを片手に本を読んでいた。しかし手にしていた物語も後半に差し掛かった時だ。窓からかかる暖かな陽射しに攫われて陸の意識は遠のいていった。
「ただいま帰りま……」
「たでーま……んん!」
学校から帰宅した一織はリビングにいる一人の男を見て、手を環の口を慌てて当てる。
「しっ……。七瀬さんが寝ています」
訴えるようにして環は何度も首を縦に強く振ると、ようやくその手はゆっくりと離れる。
「おー……マジだ。りっくん、寝てる……」
「だから言ったでしょう。ほら、手を洗って部屋へ行ってください」
「へーへー。あ。そーだ。お菓子持ってきてくんね?」
「分かりました」
一織が再びリビングへ足を踏み入れようとした時、環が首だけ動かし一織の背に声を投げる。
「……寝込み襲っちゃえば?」
ニヤリ。そんな効果音が似合う笑みを浮かべた後、一織の返事も待たずに去っていく。
「……そんな事、しませんよ……」
頭に、一瞬、過ぎった思考を横に振り払った。
☆☆☆
「……よく眠る人だな……」
気持ち良さげに眠る陸に静かに微笑む。近くにはホットミルク。膝の上には、読みかけの本が開いた状態で乗っている。
どんな本を読んでいるのだろうか。
半端好奇心でその本に目を向けた時だ。偶然目に映った二文字に先の環の言葉が蘇る。
寝込み、襲っちゃえば――
一織はゴクリと生唾を飲み込んで陸を見つめる。これは襲おうとしたのではない。ただ、規則正しい寝息を立て無防備に眠っている陸につい魔が差したのだ。
自分の心音だけを聞きながら陸の頬に触れる。起きる気配が見られないことをいいことに、ゆっくり顔を近づける。互いの唇が重なり合おうとしたその瞬間、目を開いた陸と目が合う。
「な、な、なせさ」
体温が一気に顔全体まで巡り、勢いよく手が離れる。そうしてゆっくり後退りした……。はずだった。
一織は腕を掴まれ身動きが取れなかった。陸の赤い瞳が一織を捉え、目を離せない。
「ねえ。今何しようとしてたの?」
「あ、う……ちが……」
「一織」
「寝、ている、七瀬さんに、キ、キスを……」
「寝込み襲おうとしたの?」
陸は一度言葉を切ってから、口角を吊り上げた。
「……悪い子」
「っ……」
七瀬陸の、その笑みに、一織の背筋にゾクリと電流が走った。
「ねえ。キスしないの?」
「で、ですが……ッ」
そこで視線を扉へ向ける。自然と陸も後を追うように目線を上げる。
そろそろ誰かが入ってくるかも――
そんな予感が一織の頭を巡らせる。
「あぁ……。早くしないと誰か来るかもしれないね?」
ゴクリと唾を飲むと同時に解ける手。一織は膝を折って再び陸の頬に触れる。
先程とは違う感情の心音が耳をこだまする。
「あ、あの……目、閉じて」
「しょうがないなぁ……」
陸は恥ずかしそうにお願いをする自分の彼氏に自然と口元が緩み、軽く目を閉じる。一織はグッと口を結ぶと意を決して顔を近づける。
「ん」
ふにっと柔らかい唇が触れ、ゆっくり離れていく。
「よくできました」
「えっ?」
身体を起こした陸は離れていく一織の頭を掴み、驚きで開いた唇を塞いだ。
「んっ……?!」
舌が入るわけでもなく、ただただ唇を重ねているだけ。なのに、脳が朧気になってゆく。
「んんっ……ん…ぅ゛…」
息苦しさに陸の肩をトントン叩くと、重なっていた唇が名残惜しそうに離れる。一織は腰が抜けたように床にしりをついた。
「はっ……はっ……」
「息継ぎほんと下手だね、おまえ」
「や、やかましいです」
一織は頬を赤く染めたまま陸を軽く睨む。そこで環が自分を呼ぶ声が聞こえた。
「よ、四葉さんと課題をやる約束をしているので、失礼します」
近くにあったお菓子を手に一織はリビングから去って行った。
扉を閉め一織は触れていた唇に触れる。
課題に集中出来ないじゃないですか……バカ……
りくいお(二次創作)
秋晴れ
「お母さん見てて」と子供がいう。
「見てるよ」と返事をする。
雲一つもない秋晴れの今日。
子供と自転車に乗って少し遠くの公園にきた。
その公園には、ロープで作られた
ジャングルがある。子供はジャングルに
わき目も振らず走って行く。高さは5メートル位あって、子供は怖さも知らずグイグイ登って行く。親は下からハラハラ、ドキドキで見上げている。
「お母さ〜ん、見てる?」
「見てるよ〜。」
グングン登って頂上まで辿り着いた。
下にいる母を確認して、にっこり笑顔で
紅葉の様な小さな手をヒラヒラと振る。
青い空とジャングルと子供の笑顔。
(また、この公園に一緒に来よう)
「気をつけて降りて来てねー」と
声を掛けてながらそう思った。
秋晴れ
遠く遠く雲が見える
はずなのだが
今見える雲は
夏!?
秋晴れ
秋晴れ綺麗なのに……。
外と家の中で、あいつが大量発生。
いつの間にか家の中にいる。
ブーンの音と共に飛んでいる。
虫が嫌いな私は、『ぎゃー』
ドアを開ける度……。
窓を開ける度……。
隙間にいたんでしょうか?
くさいくさーいにおいが……。
もう、やめてくれー。
甘く匂う 太陽の色 晴れ誘う
テーマ 秋晴れ
日本にある金木犀ってほぼ雄株なんですね。知らなかった。
「まさかこんなことになるなんて…」
友達に誘われてフェスティバルのステージに一緒に応募することになった。
倍率は高くて狭き門だし、合格するとは思えなかった。
まあ記念みたいなものと思って、軽くOKと返事をした。
「合格したよ!信じられない!念願のステージ出演決まったよ!」
「え?出演決まったの?」
「うん!自分達の演奏を聴いてもらうチャンスだよ!」
今まで身内とか限られた関係者の前でしか演奏したことは無かった。急に激しい後悔の念と不安と緊張の渦に呑み込まれて目の前の風景が薄れていった…
「ねぇ、しっかりして!大丈夫?!」
あれから、友達と死に物狂いで練習した。
不安を打ち消すにはそうするしかない。
-秋晴れ-
(すみません、一旦途中で公開します……)
秋晴れの空の下、そこはかとない寂しさを感じながら
私は今 確かに生きている。
秋晴れが微かにトンネルの入り口に降り注ぎ、光が中に流れている。トンネルの道のりは百メートルほどあって、ゆるやかに右にカーブしている。出口はまだ見えない。
廃線跡を歩いている最中だった。
そろそろ秋の彩りが到来するだろう時期の山の中。
ツーリングの道の寄り道。小川から水が乾いた跡のような、ぽっかりと空いたスペースがそれだ。
その小道を一人行く。
今は、風が通り抜けるだけらしい。
去年の落ち葉が細かくなって地面に敷かれている。
一応足元には注意しつつ進んだ。
やがて、明治時代にたどり着いた。
名も捨てられたトンネルが佇んでいる。廃線を辿っているのだから、当然中へ入る。
カツン、カツン、と靴の音は聞こえないが、幻聴で聞こえるような趣がある。
地下鉄のホームで待っている時のような静けさ。そして暗さ。
暗室特有のじめじめと湿気があって、数日前に雨水の通り道になっていたかもしれない、と考える人。
スマホを起動して、即席の懐中電灯。
トンネルの壁面を照らしてみると、それらは全てレンガ造り。
トンネル内で走る、明治時代の電車を想像する。
電気ではない。石炭で走る豪快な古めかしさだ。
煙突から黒煙とともに機関車の叫び散らかす音。
想像通りの騒々しい。文明開化の音……。
すすを浴びきって放置されているので、レンガの一つ一つの色は暗く、すす色に褪せている。
触ってみた。触るのを後悔した。手が汚れる。
でも、パパンと拍手をすると、その音がどこまでも突き抜けるようだった。
いま、私は人の棄てたなかにいる。
照明一つもない。
線路も一本もない。
一人のみの来訪者。
歩く。歩く遺構。
現代から遠ざかる歩み。
足音は聞こえないのが良かった。
出口近くになると秋の陽光の色で、本来のレンガの色を取り戻しているのがわかった。本来の色は朱色のようだ。
振り向くのを後悔する。
ちょっとまだ、引き返したくない。
“秋晴れ”
何それ?っていうのがこれを見た正直な感想。秋の中の、よく晴れた日という意味かな。物語に出てくる言葉だとしたら、何か良いことがあったときだろう。
学がない女子高生でなんとも申し訳ない感想だ。これが評定平均4.5の次期生徒会長とは思いもしない、いや、できないだろう。私はここ数日、修学旅行に行っていてアプリの更新ができなかったのだけれど、みなさまはどう過ごしていただろうか?いつも通り平和な日々であっただろうか。みなさまとはこのアプリを通しての詩友だと思っている。馴れ馴れしくて申し訳ないが、少なくとも私はそうだ。みなさまの毎日が温和で、平和な、穏やかな日々であるのならば、私もそれが嬉しい。
数多い詩友の“秋晴れ”らしい詩を今日も
また、読ませて頂こうではないか
今夏は台風が少なかったなあ、だなんて思っていたら、現在、十月。遅刻遅刻! とでも言いたげな勢いで怒涛の如く台風ラッシュがやってきた。
うーん、迷惑。日本に来るな。だなんて、脳内で台風をまるで人のように扱ってみたりなんてして。まあ、そんな事をしたところで無情な現実は変わらない。とはいえ。
朝。カーテンを開く。台風は夜のうちに過ぎ去ったらしい。澄み渡るような青空が広がっていた。雲一つすら、見当たらない。むむ、見事。窓を開けると、少し冷たい、清涼な空気が頬を撫ぜる。
台風は嫌いだけども。この空気感は好きなんだよなあ、なんて思ったり。しなくもないけど。いやいや、でもやっぱり台風は来てくれるな、と心を鬼にした。
テーマ「秋晴れ」
今日はいい日だった。気持ちのいい秋晴れで、小鳥も鳴いていて、少し暑い。ほんとに、いい日だ。そんな日に、僕の祖母は死んだ。
借りているアパートの一室。
たいして面白くもないのに、惰性で続けているソシャゲをやりながら……
「ハックション…うぁぁん…!」
どでかいクシャミをして唸る俺。
ついこの間まで、エアコンが壊れて困り果てていたのに、いつの間にかエアコンをつける必要もないくらい涼しくなっていた。当然である。季節は秋だ。
現在の室温、22℃。いまだに部屋着がタンクトップと短パンの俺からすると、少し肌寒い。
「そうか……もう秋か……」
とはいえ、まだ夕方までは暑いので、いまだにポロシャツにデニムで仕事先に行っている俺が秋を実感するのは、夜になって窓全開でほぼ裸のような恰好でいるこの時間くらいである。
『虫の声、秋を感じますね……』
などと、ソシャゲのキャラも秋について放置ボイスで語ってくれる。
誰からもなんのリアクションもないゆえ、ついつい日記感覚で書いているが、度がすぎるのもアレなので今日のテーマ『秋晴れ』
秋……
俺にとって一番、印象が薄い季節だ。
実家にいた頃は、秋になると栗ご飯を母さんや婆ちゃんが作ってくれたし、日曜日になると、父さんが紅葉見物に皆を連れ出してくれたので、それなりに季節感があった。が、一人で暮らしている今は、あんまり実感がない。
あっちいなあ~と思っていたら、急に肌寒くなってパーカーを着込み、それから少しもしないうちに本格的に寒くなってダウンジャケットを羽織る。冬は年末を感じるので物悲しくなるけど、秋に思い入れはない。俺にとっての秋は冬までの短い繋ぎにしかすぎなかった。
数日前……
それでも、せっかくの休みなので出かけた。
家に閉じこもってユーチューブやソシャゲに耽るのは、時間の使い方としてもったいない感じがするからだ。
外は快晴だった。俺がボーっと見てるユーチューブのお天気ニュースで予報していた通りに。
いつもどおりポロシャツとデニムを着て外に出かけた俺が最初に思ったのは……
「涼しいなあ……」
気温は10月としては異常と言える、28℃を越えているはずなのに、妙に肌寒かった。
「湿気が少ないからかなぁ」
元より頭は良くないくせに、それっぽい理由をつけて納得する。
とりあえず、1キロほど先にあるリサイクルショップに散歩がてら徒歩で向かう。羽織れるような古着を買うのだ。
道中、すれ違う人々の大半が長袖を着ていた。なんだか、ポロシャツをきて、これからゴルフで一勝負するぜ!ってな感じの自分のことが無性に恥ずかしく思えてきた。
(す、涼しいけど……まだ半袖でいけるよな……変じゃないよな……?)
いい大人になっても、やっぱり自意識はあるのである。
(お、おお!!)
と、そこで俺は感嘆した。半袖短パンのおじさんとすれ違ったからである。おじさんは堂々としていた。俺もああなりたいものだ。
で……
リサイクルショップでいい感じの長袖シャツとパーカー、トレーナーを安く入手した俺は家に帰って試着をする。
「ううーん、弱そうだ……」
鏡の前で呟く。
かっこいいとか、カッコ悪いとか以前の問題であった。胸板と肩幅が狭い俺は、なにを着ても弱そうに見えてしまう。
「まあ、いいか。誰に見られるでもなし。温かければ問題なしだ!」
こういうところが、誰からも相手にされない要因だと自覚はしているが……
とりあえず試着を終え、いつものタンクトップと短パン姿に戻り、やはりというかクシャミをひとつ。
「ヘックション!!」
日が沈むと、一気に気温がグっと下がる。日中は28℃でも、夜になると急に18℃とかになるのである。この寒暖差は、もはや、地球が人間をころしにかかっているとしか思えなかった。
そして今。
「俺も、いつまでもこの姿じゃあいられないな……」
つぶやき、いつだったか母さんが送ってくれた冬用の布団の荷を解き、万年床を夏用の布団から冬用の布団に新調する。
そして、タンクトップと短パンを脱ぎ、それらを洗濯機に投げ入れ、アパートに備え付けられているクローゼットからカビ臭いジャージセットを取り出し、わが身に着用する。
「あったけえ……」
臭かったが、それはまぁ、仕方ない……
『秋晴れ』……
衣替え……
そういう季節である。
: 秋晴れ。
キンモクセイの甘い香りがする通りを歩く。空は清々しく、木々の葉も色付いてきた。どんぐりもそろそろ落ちている頃だろうか。
先日、道脇に鈴虫が鳴いていたのを聴いて秋を感じた。私は日本の秋を来年も味わうことがあるのだろうか。
まだ引越し先が決まっていないから、来年は北の方へ行くか、海外へ行くか、全く分からない。ただ今大切なことは、秋晴れの美しさを感じて幸せに浸ること。
今を大切に生きるって、きっと季節変わる自然のメッセージを感じとることなんだ。
《秋晴れ》
保全させていただきます。
いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
最近の天候か、体調を崩しがちになっております。
皆様もどうかお身体にはお気を付けてお過ごしください。
どうにかしてあなたの記憶に、金木犀の香りと私を結びつけられたなら、
この気持ちのいい秋の日があなたにとって、生き地獄みたいになったなら、
いいのにな。
お題:秋晴れ
秋晴れが広がる空の下、キミと公園を散歩する。
「デート、公園で良かったの?」
手を繋ぎ、のんびり歩きながら聞いてみると
「うん。…というか…」
キミはピタリと足を止め
「ごめんね。ホントは、遊園地とか、ショッピングモールのお店をいっぱい見て回るとか、苦手なの」
申し訳なさそうに俯く。
「嫌われたくなくて、今まで言えなかったんだけど…」
手を離さないで。とでも言うように、繋いだ手に力が込もる。
「…そっか」
僕の声に、キミは肩をビクリと震わせ
「ホントにごめ…」
「そうじゃなくて」
顔を上げたキミの声を遮り
「ホントは僕も、あまり好きじゃないんだ」
本音を話す。
「デートの場所。女の子は遊園地好きなんだろうな。って選んでた。けど、乗り物に乗れないわけじゃないんだけど、得意ではなくて…。僕は、動物園とか水族館、プラネタリウムとかが、好きなんだ」
僕の話に
「…嫌われるのが怖くて言えなかったけど、ちゃんと話せば良かったね」
キミは微笑む。
「ホントにね」
お互いに言えなかった本音。伝え合えたことで、僕たちの心は秋晴れの空のように、キレイに晴れたのでした。
10月。晴天。
私は友人のリコと2人、母校の中学校を訪れていた。
今日は運動会。リコの弟のショウタが出ているので、その観戦に来たのだ。
「まもなく保護者の方による綱引きが開始されます。参加をご希望の保護者の方は、グランド中央付近にお急ぎください」
平坦な声でアナウンスがかかった。
途端に、リコに腕を引っ張られる。
「ほら、アオイ!行くわよ!」
「えー、私も参加すんの?運動不足の大学生に綱引きはきついって」
最近すっかり運動しておらず体力ゲージが短い私としては、なるべく参加したくはなかった。
「何言ってんの。あんたも参加すんのよ。参加賞も出るわよ」
「参加賞?何?」
「学校名入りフェイスタオル」
「え、要らない……。リコだけ参加してきなよ。私ここで見てるし」
「まあまあそう言わず!あんたが出たらショウタも喜ぶわよ!」
「え、そう……?ならしょうがない、出るわ」
リコの言葉に負けて、腕を引かれるまま、グラウンドの中央付近へ歩いた。長い綱がまっすぐに伸ばされて置かれている。ショウタは紅組なので、私たちも紅組の側に立った。
ふと、紅組の生徒応援席を見ると、ショウタがこちらを見ていた。目が合った途端、そらされる。
リコと私は中学からの付き合いで、ショウタのことも小さい頃からよく知っている。私にとっても弟みたいな存在だ。昔は家に遊びに行けば「アオちゃん!あそんで!」とよく甘えてきたのに、最近は目も合わさず軽く頭だけ下げて、さっさと自分の部屋に引っ込んでしまうようになった。今、ショウタは思春期というやつなのだと思う。それを私は少し寂しく思っていた。
体育教師の合図で、みんなが綱を握る。
明日筋肉痛になってもやだし、テキトーにやればいいか、と思いながら、私も綱を握った。
ピーッという笛の音とともに、競技が始まる。
「オーエス!オーエス!」
周囲から掛け声が上がる。え、そんなにガチでやるの、と思った。
応援席からも、親や兄弟姉妹を応援する声が聞こえてくる。こっちも一所懸命だ。
えー、私もガチになんなきゃだめかな、なんて、考えていたとき。
「リコ姉、アオちゃん、頑張れーーー!!!」
ショウタの声だった。ちらりと視線をやれば、顔を真っ赤にして声を張り上げる姿が見えた。
なんだよ。こういうときは一所懸命になって応援してくれるのか。可愛いとこあるな。
そう思ったら、つい、綱を持つ手に力が入った。腰を低くして、後ろに体重をかけて、思いきり綱を引いた。
周りと一緒に「オーエス!オーエス!」と叫ぶ。
いつの間にか、明日の筋肉痛のことなんか頭から飛んでいた。
ピピーッと終了の笛が鳴った。
「紅組の勝利です!」と体育教師が言った。
自然と拍手が起こる。
隣でリコがガッツポーズをしている。
他の大人たちも、ハイタッチしたり、お疲れ様と言い合ったり、それぞれに感情を分かちあっていた。
私は、ショウタの方を見た。ショウタもこちらを見ていた。どちらともなく、親指をグッと立て合う。私たちは、笑い合った。
いつの間にかかいていた汗を拭い、空を仰ぐ。空は高く、気持ちよく晴れ渡っていた。
待ってたよ
雲ひとつない澄み切った青い空
大地が心地良い空気に覆われるこの時期を
だって今なら何でもできる
そんな気さえしてくるの
自由を後押しするような
晴れやかなこの良き日
【秋晴れ】