『神様が舞い降りてきて、こう言った。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
春は春とて桜は蕾。先に咲いたは梅の花。枝の上にはうぐいす一羽。冬のころから先達に習い、朝に夕にと学んで歌う。ところが下手も下手なりで、メジロに笑われ、人には首を傾げられ、ぴよぴよ自信をなくし、植え込みの中へ隠れて泣いた。それでも学ぶを諦めず、霜の降る日も歌って泣いて、今日は今日こそ、晴れの舞台。仲間の声が谷を渡って、春よ春よと季節を告げる。いざと思って息を吸って、大きく開いたくちばしで、歌いたいのにため息ばかり。ぴよぴよ悲しくなってきて、梅の枝に座り込み、小さな体を震わせる。
ここは細道、通りゃんせ。びゅう、と一陣、風が吹く。桜に季節を譲ってか、梅の花は散り模様。花びらひとひら、ひらりと舞って、鳴かないうぐいすの頭を撫でた。
どうしてお前は鳴かないの
「歌が下手くそなんだもの。」
どうしてお前が下手だとわかるの
「皆と同じに歌えないもの。」
どうして同じになりたいの
「うぐいすの歌を歌えない鳥が、どうしてうぐいすでいられるの。」
私はおまえの歌を聴いてきた。ずっとずっと聴いてきた。お前が私のうぐいすで、お前の歌が、私にとってはうぐいすの歌だ。お前がうぐいすであることは、私には今更間違えようもない
うぐいすは少し考えて、小さな声で「ホケキョ。」と鳴いてみた。梅の木は優しく花を揺らし、うぐいすに頼んだ。
私はとても年寄で、小さな声は聞こえない。あぁ、私の花が全て散れば、私の春もそこまでだ。来年にはもう、咲けるかどうかわからない。春に春告げ鳥の歌を聴けないとは、なんとも寂しいことだ
びゅう、とまた風が吹き、わっ、と梅の木に巻き上がった。白い花びらがいくつもいくつも、枝から離れて散り落ちる。うぐいすは慌てて立ち上がると、胸いっぱいに息を吸った。失敗するのは変わらず嫌だった。けれど、歌いたいのも本当だった。仲間の名誉のためだからと、口をつぐむのは悲しかった。だから、たった一人でも、聴きたいと耳を傾けてくれるなら、春を告げるこの誇らしさを、どうか受け取って欲しいと願って。
「ホー、ホケッキョッ。」
谷を渡る、少し跳ねた歌声。誰のものとも違う、澄んだ声色。はら、と土に触れた梅の花が、微笑んでいた気がする。
【神様が舞い降りてきて、こう言った】
神様が舞い降りて、こう言った
「愚かなる人の子よ、私を楽しませてくれ。」
と不敵な笑みを含んだその声は嫌に脳内に響く。
そうしている内に意識が遠のいていく。
目が覚めると見知らぬ部屋に突っ伏していた。
見回していると、どうやらこの不可解な現象に巻き込まれたのは私だけでは無いようだ。
私の他にも
犬塚と名乗る明朗快活なボディビルダーの男性と
笹原と名乗る絵に描いたような杖を持った老紳士が居るようだ。
幾つか言葉を交わした後、私達は探索することにした。
辺りを見回すと床も天井も無機質なコンクリートでできている様だ。中央には木製の机と椅子、左右に扉が1つづつ有るだけの部屋だった。扉は木製と金属製と2種類のようだ。
机の上に1枚のメモと砂時計がある 。
私は紙を手に取り読む。
|―――――――――――――――――――――|
| |
| 帰りたければ杯を満たせ。 |
| 血で満たせ。 |
| さもなければ帰れない。 |
| 時が来ても帰れない。 |
| |
|―――――――――――――――――――――|
「恐らくこの砂時計が制限時間なのかな。」
砂時計の砂はまだ落ち始めたばかりのようだ。
「(杯を満たせ)ということは、この2つの扉の何処かに杯があるということなのか。」
神妙な面持ちで犬塚は口を開く。
「取り敢えず安全そうな木の扉から回ってみようかね。」
笹原はそう告げながらドアノブに手を伸ばす。
しかし扉は開かない。
「どうやら鍵が掛かっているようじゃな。仕方がないからそっちの扉も試してくれんかの。」
「それなら俺に任せてもらおうか。」
犬塚が扉を押す。彼の手や腕には血管が今まで以上に浮き出る。
古びた金属製の扉が重苦しい音を立てながら開く。
部屋の奥からはぼんやりとしたロウソクの灯りが見える。そこには祭壇があり、象を模した様な像を祀っていた。手前には鈍く光る金色の杯が置かれていた。
私達は恐る恐る部屋に足を踏み入れる。
像からは今すぐにでもこの部屋から逃げ出してしまいたい程おぞましい雰囲気を漂わせている。
「うわぁぁああああ!」
急な大声にギョッとし振り返ると、大男はあまり の恐怖に部屋から飛び出して行ったようだった。
「図体はデカイのに情けないわね。」
私がボソリと呟くと笹原は
「人にはそれぞれ苦手なものがある。だからそういうことは言うもんじゃないよ。」
と静かに諭す。
像の周りを調べると隠す様に一枚の古びた紙が落ちていた。
探索を終えて中央の部屋に戻ると、大きな体躯を最大限に縮め隅に蹲る男の姿を視界に捕らえる。
「先程はすみませんでした。大丈夫ですか?」
私は彼に駆け寄る。
彼は暫くして正気を取り戻したのか、立ち上がる。
「ありがとう。もう大丈夫だ。鍵は見つかったのか?」
「いえ、それがまだ見つかっていなくて…」
「そうか、仕方ないこっちの扉は鍵を壊すしかないようだな。」
そう言い終えると、彼は丸太の様な太い足で木製の扉を蹴破る。メギゴォと鈍い音を立てて扉は吹き飛ぶようにして開く。
中に明かりは無く、奥までは見えない様子だ。
すると部屋の中からヒタリヒタリと何者かの足音が聞こえてくる。
「下がれ」
犬塚は緊張した様子で私を一歩遠ざけ、身構える。
次第に足音の正体が鮮明に照らされていく。
そこには赤く染ったローブを身にまとった白髪の少女が立っていた。少女の手にはキラリと鋭く光る物が弱々しく握られていた。
「君はここの住人なのかい?」
笹原は穏やかな声色で刺激しないように問う。
すると少女は首を傾げるばかりである。
「なら、お前は俺達を殺す気でいるか?」
犬塚は彼女の手に握られているソレに怯え混じりの声で問う。
すると今度は横に首を振ってみせる。
犬塚は少女が手に持っている赤黒い液体が滴るナイフを渡すように頼むと、少女はゆっくりと犬塚の足元にソレを置く。
私は犬塚かナイフを預かると再び犬塚は口を開く。
「その血はお前が殺したのか?」
落ち着いてはいるが、少し乱暴な言い方だがこんな状況じゃ警戒もしているのだろう。
再び首を横に振る。
「それじゃあそれはお前の血か?」
再度首を振る。
目立った外傷もない事に不思議と安堵した。
「そろそろ警戒を解いてもいいんじゃないかな?どこからどう見てもただの女の子にしか見えないよ。」「貴方の名前はなんて言うの?」
私は犬塚に対して少しの抗議の後、彼女に質問をした。
彼女は首を傾げるばかりで喋らない。
恐らく彼女は喋ることが出来ないのだろう。
笹原がなにやら慌てた様子でこちらに呼びかけてくる。どうやら砂時計の残りの砂が4分の1を切ったようだ。
「慌てても仕方がない。メモによればあの気味の悪い像の部屋の杯を血で満たせば俺達は元の世界に帰れるのだろう?ならば簡単な話だ。コイツを使えばいいってことなんじゃねぇか。」
犬塚はそう言い放つと白髪の少女に視線を送る。
話を聞いていなかったのか少女は、あどけない表情で首を傾げる。
「私はそれには反対だ!こんな幼気な少女を犠牲にしたくは無い!」
「ならどうするってんだ!?」
2人の怒号が飛び交う中、笹原はゆっくりと口を開く。
「ならば儂が贄となろう。」
覚悟の決まった老人の顔は凛々しさを感じる。
「笹原さん、何を言いてるんだよ!それもだめだよ。」
「ならどうしろと言うんじゃ?残り時間も少ないのじゃぞ?」
そう言われ私は黙り込んでしまう。どうすれば誰も死なずにここから帰れるだろうか……そう考えながら再び辺りを見渡す。
少女のローブと血の付いたナイフに目がいく。
「なんで今まで気付かなかったんだろう。少女が居た部屋になんらかの遺体があるんじゃないかな。それを使えばなんとかなるかもしれない。」
「それだけはならん!!死者を冒涜するような事はしちゃぁならん。そんな事をさせる位なら儂の血を使う。」
今まで大声を上げることの無かった笹原が声を荒げて叱りつける。すると年齢を感じさせない機敏な動作で私からナイフを取り上げ振り下ろす。
刹那、力強く太い腕がその手を掴む。
「あんたも大概馬鹿だろ。今更だがよ皆で少しづつ贄を出せば1人も死なずに済むんじゃねぇか?」
「それだぁ!」
完全に失念していた方法に思わず声を漏らす。
像に怯えるお大男の手を握りながら、順々に杯に血を注ぎ満たしていく。すると像が光り出し目が眩む。
薄れゆく意識の中で再びあの声が響く
「つまらないなぁ」
気が付くとそこは知らない天井だった。
お題︰【神様が舞い降りてきて、こう言った】
「今月の生きたもん勝ちで賞、当選おめでとう!栄えある強運のそなたに素敵な賞品をプレゼントしよう」
目の前に全身白いスーツを着た青年が現れた。
いつも通り、会社からの何の変哲もない帰り道だったはず。しかし、そこはただ全てが白い世界に変貌してしまっていた。
そして、その青年の顔は、何故か認識することが出来ない。状況が上手く飲み込めずに、ただ私は呆然とその青年を眺めた。
「さて、お待ちかねの賞品だが、好きな場所、時間、過去、未来、別の世界、どこでも構わない、たった一度だけ願いを叶えてやる」
なんとなく、柔らかい笑顔を浮かべている感じはする。その青年が発する声らしきものは、直接、頭に響いて聞こえた。
なんでも……だけど、彼はきっと優しい存在ではないはず、いままでいた場所へは戻れなくなるはず。
それでも構わない、私はずっと後悔していることがあったから……
「私をあの場所へ戻して下さい」
目の前の白い景色は消え去り、懐かしい人が私の顔を覗き込んでいた。
「ごめん、酔いすぎたかな……忘れて」
思わず、抱き締めていた私から離れようとする彼の腕を掴んでいた。
「ねぇ、どうしてキスしたの?私のこと好きなの?」
自分に自信が無さすぎて、彼と私では釣り合わないと最初から全てを否定してた。でも、ずっと知りたかった答え……
お互いの視線が絡み合い、時間が止まっていた。そして私を抱き締める、彼の腕に力が入る。
「聞いて欲しいことがある……俺のこと、信じてくれる?」
『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「これが破滅の運命を回避した結果だ。満足したかね?」
どうして。
どうして!?
「わたくしは幸せになりたかっただけなのに!!」
破滅に至る道筋を、トラウマとなる過去の出来事を、可能な限り回避しようと努めただけだった。
けれど、その結果……平民であるヒロインは、攻略(すくい)の道を閉ざされていた。
「君は幸せになっただろう」
「どこがですの?!」
わたくしという悪役が消え、攻略対象に会うことなく、階級社会に『正しく』歪められたヒロインは。
悪魔に憑かれて史上最悪の魔王となり、国の全てを瓦礫と変えた。
改心させる聖女(ヒロイン)が消えた以上、あの子をわたくし達の手で、滅ぼすしかなかった……
「わたくしは、わたくし達は、幸せな未来を望んで動いてきたのです! それなのに、」
「君の運命(やくわり)は『彼女の敵』だ。この世界にある限り、神であろうとそれを違えることはできない」
君が『悪役令嬢』となり破滅することが、一番平和なハッピーエンドなんだよね。
何度も言っているけれど、何度も忘れるんだから仕方がない。
「さて、コンテニューはやるのかい」
「当然ですわ!」
神様が舞い降りてきて、こう言った
あなたは神の存在を信じますか?
神様って本当にいるのだろうか
信じているようで信じていない
信じていないようで信じてる
夢の中で神々しい龍と立派な獣の耳を生やした生き物を見た。夢の中の私は大泣きしていた、生き物はそっと私を慰めるかのように擦り寄ってきた。
私は優しさに悲しさが少し収まった気がした。
小さい頃のわたしは、よく夢をみた。
でも、その頃は寝相はよく、
あまり動かない方だったそうだ。
私は小さい頃夢を見た。
雲の上に、とても幸せだった時のわたしがいた。
そのわたしは、「こっちにおいで」と誘ってくる。
わたしは雲の上に乗ってみたかったし、
その頃のわたしが大好きだから、
少し近づいてみた。すると、何かに遮られた。
それでその何かが、もうひとつの雲だった。
わたしは、その雲を食べた。特に理由はなかったけど、雲にかぶりついた。
そうしたら目が覚めた。気づくと、わたしは枕にかぶりついていた。
父親が一緒にいた時の枕だった。
それからわたしは、寝相が悪くなっちゃった。
寝つきが悪くて、あまり夢をみなくなった。
1番最近見た夢…は
薬局の照らされた看板だけの、真っ暗な道にいて、
1人、わたしがいただけの、少し長い夢だった。
神様が舞い降りて言った。
こっちにおいで
『神情(しんじょう)』
疲れていた。疲れていたんだ。私は。
よく分からない言葉に耳を通し、崇めるものには歩みより、貶すものには罰をやり、
ずっと、こんな毎日が続くだけ、色などつかぬ透明の世界。
そんな中、ある声が耳を痛感させた。
「僕たちは何者なのだ」
数千数億ともある問いかけから、たった一つ、凛とした声で
「存在」について問いかけてきた。
その問いを聞いた瞬間、私の胸は
どきん
と苦し紛れに高鳴った。
何故だろう。生きているはずなどない、冷たいであろう私の手が
暖かく、色づいて視えた。
何者か。確かにそれは神しか知らぬ未知の世界、未知の言葉。
だが同時にそれは、神すらも恐れる「死」の言葉。
何者…問いかける度に自我が崩壊してゆく。
もし確証をもってして答えたとしても、それは言ってはいけないのだ。
世界のコトワリ、オキテなのだ。
しかし、しかし、しかし!!
私も気になる。その問いかけが、気になるのだ答えた後が。
世界は崩壊するのだろうか。それともよくやったとまた崇められるのだろうか。
それとも、死ぬのか?
あぁ、教えてほしい、もっと知りたい…
よもや気づかなかった。
「神」として存在する自分にこんな醜い欲があるなど。
そして私は下界に舞い降り、こう言った。
「________」
世界は白く、どす黒く、虹色に包まれた。
人々の反応は様々であった。
困惑する者、興奮する者、なにくわぬ顔の者。
…言った。言った。言ってやったぞ!!
ついに言ってやったのだ!!世界のオキテを破ってやったぞ!!
さぁ、どうなる?どうする?
煮るか、焼くか、殺すか?
ーーーー
私は、地獄に落とされた。
「欲にまみれた汚い下等生物が」と言われた。
…ハ、ハハハ!ハハハハハ!!
笑ってやろうじゃないか。
こんな汚ならしい世界から抜け出せたことを。
見たか?神よ、人間よ、地獄の鬼どもよ。
結局は変わらぬのだ。
私たちは「存在」という概念に囚われ続け、先など見えない。見ようとしない。
見ようとするのは己が心ばかり。
ーー嗚呼、そういえば忘れたいた。
何者だと問いかけたのは、前世の私だったのだ。
また私も、一人の人間であったのだ。
お題『神様が舞い降りてきて、こう言った』
※貶す=けなす
あとがき
ギリギリセーフ!!ですかね?塾で少し時間が余ったので、書いちゃいました。
この作品、お気づきのお方もいらっしゃるでしょうが、私の前作『神近感』の続きです。
いやーあの作品は自分が結構お気に入りなやつで、ついつい似たお題で書きたくなっちゃいました。他にも、題名は忘れましたが春爛漫がお題だったフランス人の彼女を亡くした彼氏がお墓参りに行くお話とかお気に入りです。
そういえば最近暑いですね。外を出るときは水筒や日傘など、暑さ対策をお忘れなきよう、気をつけていってらっしゃいませ。
神様が舞い降りてきて、こう云った。
「貴方は想い人と結ばれるだろう」
私は何かから開放されたような気がした。
今日のお題
╭━━━━━━━━━━━━━━╮
神様が舞い降りてきて、
こういった。
╰━v━━━━━━━━━━━━╯
神様が舞い降りてきて、こう言った。
誰かと比べることなんて、愚かなことだ。
あなたはあなたのままでいい。
ほら、彼も言っていたでしょう?
好きでするならかまわないけど、ムリしてキレイにならなくてもいい。しなくていい。
幸せそうに笑ってくれる、今のままのキミが俺は好きだから。って。
だから、ね、あなたはあなたのままでいい。
ネコと和解せよ。
完
お題:神様が舞い降りてきて、こう言った
昔のこと、とあるふたつの国があった。
裕福な国の神様は、国民たちに向けてこう言った。
「裕福なお前たちには、もっともっと富を与えよう。それで、貧しい者たちを必ず救ってやるのだ」
貧乏な国の神様は、国民たちに向けてこう言った。
「貧乏なお前たちには、もっともっと貧を与えよう。それで、裕福な者たちからお恵みを分けてもらうのだ」
両国民はそれぞれ、神のお告げに従うことにした。
全くもってその通りにした。
それからこのふたつの国はどうなったのでしょうか――
後はご想像にお任せします。
〜神様が舞い降りてきて、こう言った。〜
神様が舞い降りてきて、こう言った。
『おまえの願いを1つ叶えてやろう』
「お願いです神様。私の髪を増やしてください!」
『...ふむ。よかろう。それっ!』
パァァァ
次の日から良い事が起こり続けた。いつもいじめてくる上司は左遷され、仕事を認められ給料アップ、更にはストレスがなくなり肥満体質が治り、自分に少し自信がつき、彼女まで出来た。
あぁ、神様ありがとう。しかし神様、貴方に1つ伝えたいことがあります...それは
「神様(守護神)を増やせじゃなくて、髪を増やせって言ったんだー!!」
ストレスがなくなり髪が増えるかと思いきや、むしろ減る一方だ。
するとまたも神様が降りてきてこう言った
『神と髪、おまえはどちらをとる?』
私は迷わずこう言った
「カミだ!」
神様、ぼくの大切な人をお救いください。
なんでもします、ぼくの命を捧げます、お願いします。
"その願い叶えてあげましょう"
空から声がした。
そっと顔を上げると真っ白な人がこちらを見下ろしていた。
"あなたの命と引き換えにあなたの大切な人を救ってあげましょう"
ああ良かった…これでぼくは…
"しかしあなたの命はまだ必要ありません、あなたの命の灯火が消える時その魂を頂きます。さあお行きなさい愛する者のもとへ"
そして真っ白な人は姿を消した。
ぼくはここで死ぬのだと思っていた。覚悟していた。
早くあの子のところに行かなくては!
(あなたの行いはずっと見ていますから)
#神様が舞い降りてきて、こう言った
今日のテーマ
《神様が舞い降りてきて、こう言った。》
「神様、どうか願いを叶えて下さい」
奇跡なんて起こらない。
どんなに願ってもそんなのきっと叶わない。
神様なんてどこを探したって見つからない。
頭の片隅で、そんな風に諦めを促す声がする。
それでは僕は諦めきれなくて、その場に額ずいて祈り続ける。
僕の住む街と隣の街を繋ぐ街道には途中に大きな森がある。
森の奥には湖があって、その畔には人の姿を象った不思議な像があるという。
その像は地元の住人の間では『神を宿しき像』と呼ばれている。
曰く、村一番の人気者の男を想う娘が恋が叶うように祈ったら、数日後にその男から求婚されたとか。
曰く、日照り続きの時にその像に祈ったら翌日に雨が降ったとか。
曰く、幼い我が子が病に倒れ、藁に縋る思いで母親が祈ったら、それから程なく快癒したとか。
曰く、戦のために徴兵されることが決まった家族が無事の帰還を祈ったら、戦地に赴く直前に戦が終わったとか。
眉唾物の話も多いけど、大きなものから小さなものまでそうした逸話に事欠かない。
おかげでこの辺りの住民はみな信心深く、何かあるとその像の元を訪れて祈りを捧げる。
願う人の数が増えれば、当然ながら叶わなかった願いも数多くなる。
願いが叶わず当てが外れたり、そうした話を聞いて「あんなのただの迷信だ」と一蹴する者も少なくない。
僕は、どちらかと言えば信じていない方だった。
といっても、僕の場合は別に自分が何かを祈って叶わなかったわけではない。
叶ったと言われている願いはきっと偶然の産物で、たまたま運良くそのタイミングが合致しただけなのだろう、と思っていただけだ。
もしも本当に神様なんてものがいて、祈るだけで願いを叶えてもらえるというのなら、きっと世の中はもっと平和に、そしてもっと豊かになっているはずだ。
しかし、現実にはそうはなっていない。
隣国とは常に緊張状態が続いているというし、貧しい人や飢える人もいなくなることはない。
それこそが、みなが信じているような全知全能の神なんて存在しないという証ではないだろうか。
でも、僕は信じていなかったけど、だからといって信じている人を否定するつもりはない。
ましてや信じている人の前で「僕は信じてない」なんて言って水を差すつもりもない。
信じたい人は信じればいいし、信じない人は信じなくてもいいだろう。
僕が神様の存在に対して懐疑的なのは、元々の出身があまり信心深くない土地柄だったというのもある。
しかし同時にその地では、他人の信仰を否定したりすることもなかった。
だからこそ、僕もまた「そういう人もいる」という考えが根付いているのだろうと思う。
僕は信じてないけど、あなたがそれを信じることは否定しませんよ、と。
そんな僕が、今は、必死の形相で件の『神の宿る像』に額ずいて祈りを捧げているのには理由がある。
僕がこの辺りに住むようになったのはほんの1年ほど前のこと。
行商に赴いたこの地で、一生に一度と思える恋に落ち、故郷を捨ててもここで彼女と添い遂げたいと願ったからだ。
恋が叶うまでは紆余曲折あったし、口説き落とすまでには何年もかかった。
やっと想いが成就して結婚してからも、些細なことで喧嘩をしてしまうこともあった。
それでも彼女に対する愛情は日々いや増すばかりで、僕がその選択を後悔することはなかった。
幸せに日々はこのままずっと続くと思っていた。
少し前には子供も身籠もり、幸せの絶頂だと思われた。
いや、真実、それが幸せの絶頂だったのだろう。
しかしそんな日々は、2ヶ月ほど前に彼女が謎の症状に見舞われ、倒れてしまったことで終わりを告げた。
医者には原因不明だと匙を投げられた。
妊娠が起因して何らかの持病が顕在化したのではないかという見立てをしたが、その持病が何なのかが分からないというのだ。
王都の偉いお医者様にも問い合わせをしてくれたが、彼女と同様の症例はこれまで確認されていないらしい。
原因が判らなければ施せる治療などあるはずもない。
体力が落ちないよう、栄養価のあるものを食べさせてやる程度のことが関の山。
それでも彼女は日に日に弱っていくばかりで、ついに先日、医者から「母子共に助かる見込みは少ない」と言われた。
正確には「子供の方はもしかしたら助かるかもしれないが、母親の方は覚悟をした方がいい」と。
彼女との子供が欲しくないはずがない。
だけど、どちらが大事かと言われたら、僕が選ぶのは間違いなく彼女だ。
なのに、その彼女が助からないと言われて、どうして絶望せずにいられるだろう。
こうなると分かっていたら子供なんて望まなかったのに。
だからこそ、僕は今、信じていなかった神に祈りを捧げているのだ。
こうして祈っている間も神の存在には懐疑的で、もしも本当に神様がいたとしても、そんな僕の願いが聞き届けられるはずがないと僕の中の冷静な部分が断じている。
それでも、僕にはもう、こうする以外の手段が思いつかなかった。
些細な希望であったとしても、それに縋らなければ気が狂ってしまいそうだった。
どれくらいそうしていただろうか。
月の光が湖面に反射してキラキラと輝いている。
その傍らで一心不乱に祈り続けていると、不意に風が吹いたと思ったら、僕の目の前にふわりと誰かが降り立った。
目の前にあったはずの神像の姿はない。
まさかと思いながら顔を上げると、そこには目も眩まんばかりに美しい人が立っていた。
(神様だ……)
僕は茫然としながら、しかしはっきりとそう確信した。
そうでなければこの不可思議な現象の説明はできないし、何よりも目の前に立つ人物は筆舌に尽くしがたいほどに神々しい。
僕の目の前に舞い降りてきた神様は、心の奥底まで見通すような眼差しを向けてこう言った。
「そなたは妻を助けたいと望むか」
「はい」
「その望みを叶えるために、そなたが犠牲を払わなければならないと言ってもその気持ちは変わらぬか」
「変わりません。彼女が助かるなら、僕の命を彼女にあげてもいい。僕に払える犠牲なら、何だってします」
「内容も聞かずにそのような早計なことを」
「僕に払える犠牲なら、と言いました。でも、僕は彼女を助けるためなら何だってしたい。たとえ神様じゃなく悪魔に魂を売ったとしても」
「それで彼女が悲しむとは思わぬのか」
「それは……」
犠牲を払えと言いながら、神様と思しき人はそんな風に苦言を呈してくる。
だったら僕にどうしろって言うんだ。
たしかに彼女のことは悲しませたくない。
でも、僕が身代わりになることで彼女を助けられるなら、僕は迷わずそれを選択するだろう。
一番いいのは彼女が助かって、彼女と共にこの後の人生を全うすることだけど、願いに犠牲が必要だというならそれを払うことに否やはない。
そんな僕の心を読んだかのように、神様はやれやれと肩を竦めた。
その仕草はやけに人間くさく、しかしどことなく、親しみを感じられた。
それはきっと、僕が馬鹿なことを言った時などに見せる彼女の仕草を少しだけ彷彿とさせられたからかもしれない。
「そなたの妻は、人によく似た姿をしているが、生憎と人ではない」
「は?」
「人ではない者が人との子を胎に宿したために、拒絶反応が出てしまったのだ」
思いもよらない言葉に頭の中が真っ白になる。
いや、たしかに彼女は飛び抜けて美人だし、たまに世間知らずなところもあるけど。
恐らく僕は相当疑惑に満ちた目をしてしまっているのだろう。
神様がそっと目を逸らして小さく咳払いする。
「あれは人の世に遣わした我が眷族。もしもそなたもまた、ここで我が眷属になるというのであれば、胎の子は今ならまだ同族の子として変化できよう。さすればそなたの妻は回復し、胎の子も無事に生まれてくることができよう」
「なら、僕をあなた様の眷属にして下さい」
「我が眷属になれば、もう人には戻れぬぞ」
「彼女を失わなくて済む上に、彼女と同族になれるってことですよね? だったら願ってもないことです」
一瞬の迷いもなく頷いた僕に、神様は呆れた目を向けたが、やがて苦笑混じりの笑みを浮かべて何かを納得するように頷いた。
それから僕の額に、綺麗に整えられ彩られた爪の先を押し当てる。
触れた爪の先から、何か不思議な、熱いものが流れ込んでくる。
「ならば、願いを叶えよう。今後は我が眷属として、彼女と共に末永く我に仕えよ」
ああ、これで彼女が助かる。
僕が思ったのはそれだけだった。
これから先の僕の身の上がどうなるのかや、僕の体が何か違うものに造り替えられていく感覚などは二の次だ。
僕にとって一番大事なのは、自身のことでも神様のことでもなく、彼女のことだったのだから。
こうして僕は、彼女同様、神様の眷属となった。
翌日には神様が言った通り、彼女はすっかり回復して医者を驚かせ、それから数ヶ月後に元気な子供を産んだ。
彼女は最初、僕の選択にとても怒っていたけど、最終的には納得してくれた。
本当の意味で、これで最期まで添い遂げられることになったから、と。
神様の眷属である彼女は、実はあのままでも死にはしなかったらしい。
数年か、はたまた数十年か、眠りにつくだけで、いずれ復活を遂げられたのだという。
だけど、僕や子供が生きている間にそれが叶うかは分からなかったのだそうだ。
そして、もし奇跡的に助かったとしても、寿命も違うため、僕を看取った後はそれを思い出に独りきりでずっと生き永らえることになっただろう、と。
僕達の仕事は、例の神像に捧げられた願いをピックアップして神様に届けること。
願いの選別は恣意的には行えない。
できるのは、災いをもたらすような願いが届くことのないよう選別することだけ。
そして、あの神像が苔むしてしまったりしないよう、日々綺麗に保つこと。
以前は彼女がこっそりやっていたらしいそれを、これからは夫婦でせっせと行うことになる。
もっとも彼女はまだ産後で休養が必要だから、今は僕が1人でやっているけれど。
あともう数年もすれば、きっと成長した子供も手伝ってくれるようになるだろう。
我が子もまた、生まれながらにして神様の眷属となったのだから。
神様はいて、奇跡は起きた。
そして僕は、今日もせっせと神像を磨く。
彼女を助け、僕をずっと彼女の傍にいられるようにしてくれた、心温かい神様に感謝しながら。
《神様が舞い降りてきて、こう言った》
・家族を大事にな
・心配することはないぞ
・見守っているからな
「もう老いや病、怪我に苦しむことはありません。幸せに生きなさい。」
目の前を歩いていた人が突然そう言った。首だけを振り返りながら。
その言葉の意味はなんなのか、
なぜ首だけが動いたのか、
なぜそれを私に言ったのか。
その人は、私に3つの謎を残して消えた。
最初は、ただの変質者だと思って、忘れようとした。
が、その謎を解くのに、そう時間はかからなかった。
「全国の病院で、患者の怪我や病気が突然完治するという事態が起きました。都内の病院内でも混乱が起きています。渋谷区の病院で勤務している医療従事者の方に話を聞きました……」
なんの変哲もない普通の朝だった。
口に入れたパンが溢れる。すぐさま、朝早くに家を出た看護師の母に連絡をとった。この混乱の中、連絡が取れるとは限らなかったが、たまたま母と電話が繋がった。
「ねえ今テレビで…」
「テレビ見たの?!もう今大変よ!大混乱!」
最初に気づいたのは、夜勤をしていた看護師だった。交代の時間となり、着替えをし出口へと向かっていると、ほぼ寝たきりの状態だった老人がウロウロと歩き回っているのを発見した。老人に話を聞くと、昨日までが嘘のように体が軽いという。興奮した様子で話す老人をなだめ、他の病室も見ていくと、早く起きていた老人達も一様に体が軽いと飛び跳ねていた。中には半身不随と診断されていた人もいたという。しばらく時間が経つと、目覚めた老人から小児科の子どもたちまで、ベッドから動ける状態で無い人も、病気や怪我が完治したかのように歩いたり、走ったりしていた。
同僚の看護師と混乱する中、他の病院からも同じ現象が起こっていると電話がきた。
そこに母が通勤してきて、今は元気になった患者達の対応で大忙しだ、と母は鼻息荒く現在の病院の様子を話してくれた。
ここで1つ目の謎の意味が解けた。
謎も何も、あの言葉はそのままの意味だったのだ。ショックを受けた私は、時間も忘れ考え込んだ。きっとしばらくしたら、老いが来なくなったというニュースも報道されるだろう。新たに怪我や病気をしなくなった、とも。
そして、2つ目の謎も解けた。
あの人は神様だったのではないか。変質者ではなくて、あれは神様で、私が聞いたのはお告げだった。
でも、なぜ私に?
この世にはもっと神様からお告げを直接貰えるような、私より徳を積んでいる人がいるだろう。なぜ私に?
いくら考えても答えは出ない。
神様もくじでお告げを下すこともあるだろう。それがたまたま私だったんだ。
ヤケになった私は、無理やり答えを捻り出してその日は眠った。
……本当は気づいている。気づいているんだ。認めたくないだけで。
なぜ私なのか、違う。私しかいないんだ。私以外、いなくなっちゃったんだ。
外は荒野が広がっている。ここは都心だった。全世界を巻き込んだ核戦争は、何もかもを壊して、この美しかった世界を、人類を代償にして、収束した。
たまたま生き残った私を除いて。
もう母は死んだし、病院なんてもう吹き飛んだ。全ては妄想。ただ、一番フィクションのような神様のお告げだけが、リアルだ。あのお告げは、可哀想な私にだけ向けられた、神様からのメッセージ。
何もかもを失った私に、死という幸せすら残してくれないのか。
滅びた世界で一人、叫んだ。
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『我が愛すべき人類、滅ぶな』
神様が舞い降りてきて、こう言った(2023.7.27)
ある日、神様が舞い降りてきて、こう言った。
『そなたの願いを一つ叶えてやろう。明日のこの時間までに、願いを考えておくがいい』
「…って夢を見たんだよ」
「夢かよ」
あっけらかんと述べた俺に、目の前の少年、ユウタは少し呆れたように答える。
「まぁ夢は夢なんだけど、今日の夜同じ夢を見ないとも限らないし、ユウタなら何を願うか聞きたいなぁと」
「えー…?」
ユウタは困ったように首を大きく傾げて、長考する。
「うーん…特に欲しいものもないし、今のまま幸せに暮らせますように、ってぐらいか?」
「なるほど、枯れてんな」
「悪かったな、夢がなくて。そういうお前は、何を願うつもりなんだよ?」
「願うつもりっていうか…もう願ったよ」
「は?」
「『ユウタが生きていた頃の夢を見せてください』ってね」
薄暗い部屋の中で、ゆっくりと意識が覚醒する。神を自称するだけあって、あの謎の人物はちゃんと夢を叶えてくれたらしい。
あたたかな夢の余韻に浸りながら、頬を冷たいものが伝うのを感じた。
神様が舞い降りてきてそう言った。
「一つだけ願いを叶えてやろう」
僕は迷わずこう言った
「過去に戻して。」
あの子の事を救いたいんだ。気付かなかった。気付けなかった。過去に戻れば今を変えれる。あの子が飛び降りてしまう前に。
神様が舞い降りてきてそう言った。
「一つだけ願いを叶えてやろう」
僕は迷わずこう言った
「過去に戻して。」
あの子の事を救いたいんだ。気付かなかった。気付けなかった。過去に戻れば今を変えれる。あの子が飛び降りてしまう前に。
神様が舞い降りてきてそう言った。
「一つだけ願いを叶えてやろう」
僕は迷わずこう言った
「過去に戻して。」
あの子の事を救いたいんだ。気付かなかった。気付けなかった。過去に戻れば。過去に戻れば。過去に戻れば今を変えれる_____?