『澄んだ瞳』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「澄んだ瞳」
幼い頃の純粋で素直な思考も綺麗な物を映す澄んだ瞳も大人になれば全て消えてしまった。純粋で素直な思考は出来なくなり、忖度と相手の顔色を伺いながら毎日を過ごしているし澄んでいたであろう瞳はすっかり濁り、醜いものしか映さなくなってしまった。公園のベンチに座り、一人ため息をこぼす。重苦しいそれは蝉の鳴き声と少年少女らの足音によってかき消された。
自分にもあんな頃があった。真夏だというのに朝から友達と外でひたすら駆け回ってはしゃいで服や靴を汚しては母親に怒られた日々。今ではもう周りの視線ばかりが気になり、そんなことは出来なくなってしまった。
あの頃に、戻りたい。
「3月14日付近に『安らかな瞳』があったわ」
当時も相当四苦八苦したわな。某所在住物書きは過去を思い出し、遠くを見た。
「去年も今年同様、サッパリイメージ湧かなくてさ。そもそも『安らかな瞳』って、『澄んだ瞳』ってどんな瞳よって。鏡見て再現しようとしてさ。
バチクソなアホ面で無事轟沈したわな」
どうせ今回も爆笑して敗北して崩れるぜ。
物書きはカードミラーを手繰り、『澄んだ瞳』を再現しようとして、案の定轟沈した。
ところで、人間の目というのは加齢とともに多少は濁っていく。よくよく澄んでいる瞳というのは、健康的な目の指標にもなりそうである。
ただ昨今、若年層の目の不調も増加の一途を辿っていると聞く。「澄んだ瞳」の維持が求められる。
――――――
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益ゆたかなお餅を売ったり、お母さん狐が店長をしているお茶っ葉屋さんの看板子狐をしたりして、絶賛修行中。
キラキラくりくり、まんまるお目々の澄んだ瞳で、現代の人間を、人間の社会で行きていく化け物を、あるいは幽霊だの何だの■■■だのを、見てきました。
今回は「澄んだ瞳」と題しまして、
コンコン子狐がその目で見てきたエピソードを、
2個ほど、ちょっとだけ、ご紹介しましょう。
まず1個目。
あるときコンコン子狐は、子狐のおうちの稲荷神社でアジサイの花が満開を迎える頃、
神社の参拝者さんがおばあちゃん狐、もとい巫女さんから冷たいお茶とみたらし団子を受け取って、ひと息ついているのを見つけました。
「最近、どうにもツイてないんですよ」
美しい瞳の若い巫女さん(に化けた優しいおばあちゃん狐)に、参拝者さん、言いました。
「ワケ分からないところで仕事をミスるし、この前なんか、危なくアパートの鍵を閉め忘れた」
かといって俺、落ち込んでるワケでもないし。誰かにパワハラ食らってるワケでもないし。
ホントにワケ分からなくて。
参拝者さんは少し、うわのそら。ぽわぽわした心で言いました。どうも、誰かにご執心のようでした。しかもその「誰か」とは、実は両思いだったのでした。
巫女さん、ハッキリ言いました。
「多分あなたが告白すれば全部解決しますよ」
どんがらがっしゃん。参拝者さんがマンガやアニメよろしく腰抜かすのを、コンコン子狐は澄んだ瞳で、一部始終、全部、見ておりました。
そして2個目。
あるときコンコン子狐は、子狐のおうちの稲荷神社でひらひら裏の葉見せる葛の花が見頃を迎える頃、
子狐の餅売り修行のお得意様が、お得意様の親友と一緒に、神社特製の冷やし甘酒とこしあん団子でひと息ついているのを見つけました。
「だからお前、今日は在宅にしておけと、あれほど散々言っただろう」
鋭く力強い瞳の親友さんが、優しく誠実な瞳のお得意様に、言いました。
「ただでさえ暑さに弱いくせに。酷暑手前のこんな日に、仕事優先して無理しやがって」
今日は部屋でこのまま休め。事情は俺が話しておく。親友さんはそう言いながら、甘酒をぐいっと飲み干して、おかわりを注文しに行きました。
「きょうは、仕方がなかったんだ」
雪国出身のお得意様、どうやら暑さで数十分前まで溶けていたらしく、弱々しい声で反論しました。
「あさから会議があるから、そうじと、かんようしょくぶつの整理と、コーヒーの、ほじゅうと……」
ぽわぽわぽわ。 あれ。それから私は、何をしていたっけ。いつこの親友に助けられたのだっけ。
お得意様の上司と他の上司と、他店の偉い人と、ともかく重役ばっかりの会議の部屋を、整えていた話をぽつりぽつり。お得意様、言い訳として言いました。
つまり真面目なのです。要は真面目なのです。
親友さん、お得意様にハッキリ言いました。
「その真面目を自分の体調管理にも使え」
甘酒4杯目。お買い上げありがとうございます。
コンコン子狐は澄んだ瞳で、商売繁盛、冷やし甘酒とお団子が売れるのを見ておりました。
「澄んだ瞳」と題しまして、子狐が見た人間と人間のおはなしでした。
子狐は人間の他にも、アレやらコレやら、不思議な不思議な物だの者だのを見ておるのですが、
それのおはなしは、また今度、またいつか。
おしまい、おしまい。
玩具を見つけて
キラキラキラ。
音が聞こえて
キラキラキラ。
ボールが弾んで
キラキラキラ。
この世界の
ほんとに
些細な出来事
一つ一つが
キミには
面白くて
興味があって
やりたい!
気持ちになるんだよね。
その
瞳のまま
大きくなってね。
#澄んだ瞳
愛猫の目は澄んでいてビー玉みたい
何を見てるのかな
何を感じてるのかな
何をかんがえているのかな
ねぇ教えて
友達に裏切られたあの日
泣きながら目をつぶって布団を被った
暗闇の中で幾度もシャウトした
私のシャウトの合間に
私の声ではない誰かの声で「ねぇ!」と呼ぶ声がする
目を開けると暗闇の中で
大人になった十年後くらいの私がいた
私より大人なのに波にもまれた彼女の瞳は澄んでいた
彼女は涙を溜めて私に訴えかける
「裏切られても、いつかはそれは謝罪に変わる。
裏切る理由はボタンのかけ違いから生まれる。
今はわからないだろうけど、
とにかく今は、めげずに学校へ通い続けて。
今の私はそのあなたの勇気で成り立っているの」
私はその澄んだ瞳にいつかはなれると信じて、
明日のためにまた宿題に取り組んだ。
《澄んだ瞳》
片目を失った私の前に広げられた型録にはありとあらゆる素材の澄んだ目玉が掲載されていた。
ガラスの義眼 水晶の義眼 ダイアモンドの義眼 氷の眼差し 梅花藻の繁茂する清水のグミ スピカの欠片 天狼星の光芒 熟練のバーテンダーが南極の氷塊から削り出した丸氷 ヒマラヤの大気を充溢させた透明ボール 聖母マリアの涙滴 無垢の獣の瞳 由緒正しき仏像の目玉を盗んだもの オスカル様の眼球
私は。
その中のヒトツを指さし所望した。それは……
意外と、澄んだ瞳をしているのだと思った。
そんなことを思っていたなんて知れたら、今浮かべている穏やかな微笑みはたちまち姿を消して、烈火のごとく怒り出すのだろうが。
池のほとりを歩く水鳥を見つめる眼差しが、他の誰に向けるよりもやわらかくて、はじめて動物に嫉妬した。
ボクがアナタにしてあげられること、その全てを完璧にしてみせる。アナタは特別な人だ。他の人ではその足下にも及ばない。そんなアナタを見つけ、側にいることができるボクは幸せ者だ。
光を失った虚ろな目。視線は合わないけれど確かにボクを見ている。ガラス玉のようにつるりとしていて綺麗だ。
また失うことはわかっている。これまでのようにボクは見送る側にしかなれない。
悲しいのに嬉しい。最期のときをボクとともに過ごしてくれた。そしてこれからは、その身が腐り、元の姿を失くし、白い欠片となるまで側にいてくれる。
―うっとりとした表情で泣く男とその腕の中で息絶える女
昔の猟奇殺人を題材にした映画だ。映画自体はあまり売れなかったが、主人公の男を演じた俳優はこの映画を機に爆発的に売れた。
ある記者が質問した『どうしたらあんな素晴らしい演技ができるのですか』に俳優は心底嬉しそうに笑って答えた。
その答えはただの冗談として流された。だが、察しのいい人ならきっと気づいただろう。ゾッとするくらい残酷な答えをあんな表情で、澄みきった瞳で、さも当然のように言えるものか。
役者で、演技だったとしても、気味が悪いったらない。
【題:澄んだ瞳】
No.75『澄んだ瞳』
やめてくれ。
僕なんかを見ると君の澄んだ瞳が穢れてしまう。
そう言うのに君は目を逸らしてくれない。
しかも、
「あなたに染まりたい」
なんて……。どうして君は僕を見捨ててくれないんだ。
僕が何よりも願ってるのは君の幸せなのに。
仕事って何の為にするものなんだろうか
自分の為?人の為?
人の為にやった事を、巡りまわって自分に回り回るまで?
光があれば影もある。
眩しいスポットライトに照らされる世界があればその逆もまた然り。
でも存外俺はこの場所を気に入っている。
舞台袖唯一の扉。
所謂「扉付き」と呼ばれる俺は、役者に扉を開く合図を送るのが仕事だ。
ここは役者が何処よりも光る場所。
舞台に上がる寸前の高揚感、緊張感、それ故の恐怖感の興奮。
この光の入らぬ場所に何を置いていくかでその役者の全てが決まると言っても過言では無い。
さて、次は…あぁそうだ、彼女は今日が初舞台だっけ。
ちらと目を横にやると、まだあどけない少女が扉のハンドル前に立っている。心做しかその手は微かに震えていた。
鬼が出るか蛇が出るか。
そう思いながら彼女に合図を送る。
彼女は恐る恐るハンドルを握り、一度強く目を閉じた。
ぱっと彼女が目を開き、ハンドルを押す。
重い音を立てる扉から射し込んでくる光が彼女を貫く。
黒い瞳に光が乱反射して、彼女はまるで火花が散った様な顔をする。
暗い中照らされた瞳は挑戦的に弧を描いた。
再び重い音を立てながら閉じる扉を見て、ふとつられ笑みを浮かべる。
あぁ、蛇は蛇でも。
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2024.7.31°
「黒曜石」
あなたの横顔を見たとき、何を考えてるかわからなくてときどき少しさみしそうな瞳をしてる…
その理由、いつになったら話してくれるの?
いつまで自分はその答えを待ったらいいの?
頼ってよバカ
小さな子どもは
なんでも手を伸ばしたがる
何かは分からなくても
そこにあるから触れてみたい
そうやって目の前のものを
ありのまま見ていると
世界は瑞々しく見えて
澄んだ瞳がまた澄んでいくんだろう
去年の今日
【澄んだ瞳】の君に会ったんだ
初めまして
君からはどう見えてるんだろうって
すごくドキドキした
それがもう一年たつんだね
君と出会えたこと
お祝いしよう
澄んだ瞳がこちらを覗いているのがわかる。やめろ。見るんじゃない。いたたまれなくなってついに俺はその場からそっと離れ、ショッピングモールの中を1人早歩きで家に逃げ帰った。
駄目だ。まだ早い。
……犬を飼うのは。
俺は自分自身の世話だって出来ていないのに。給料は家賃や光熱費などで手一杯だ。もし犬が病気にかかったらどうする? 犬と俺共々生きてはいけなくなるだろう。
こんな葛藤を毎日のように続けている。じゃあ行かなきゃいいじゃないかと言われたらぐうの音も出ないが、無意識に足を運んでしまう。
「しっかりしろ……俺」
欲望を閉じ込めろ。今はあの瞳から逃げ続けなければいけない。
パソコン画面にペットの広告が混ざった転職サイトを映しながら、俺はそう呟いた。
私の瞳は澄んでいた。
清らかで、それでいて無邪気な瞳だった。
私の瞳は、色んなものを有りの儘の姿で映した。
善を善として、悪を悪として映し出した。
私の心と体は、瞳に映ったもの全てに感動を覚えた。
蜘蛛の巣にかかった雫を美しいと感じ、
冬にしか無い白い息に楽しさを感じ、
雨に打たれる蛙と共に天の恵みを肌で感じた。
そんな清らかな川で過ごしていた私は、突然誰かに腕を掴まれ、大きな河に放り投げられた。
流れの速い、少し濁った河だった。
水底にある石が河の流れにのって踊り狂っていた。
尖った石が私の体を突き刺した。
痛い、痛いよ、
近くをゆうゆうと游いでいた子が振り返り、
痛さに顔をしかめ泣いている私を見た。
気味の悪い笑みを浮かべていた。
そこへ泳ぎの上手な子が一人やってきた。
その子はたくさんのことを教えてくれた。
流れに身を任せるんだよ
曲がるときはこっち側に寄るといいよ
石の数はそこまで多くないから落ち着いて
泳ぐんだ
わあ、できた!できたよ!
ようやくその河で泳ぐ術を身に付けたとき、
みんなはもっと遠くにいた。
みんな最初に出会った子に同じか笑みを浮かべていた。
その「みんな」の中には、あの泳ぎを教えてくれた子もいた。
さーっと顔から血の気が引いた。
追い付かなきゃ
追い付かなきゃ
追い付かなきゃ
追い付かなきゃ
追い付かなきゃ
あれ
どうしよう足が動かない
手も動かない
なんでもっと動いてよ
動いてよ!
あーあ
なんで私は泣いてるんだろう
私の涙は誰にも気づいてもらえないのに。
河の流れが涙すら流してしまうから。
苦しいよ
そこで突然
私はより大きな河へ放り込まれた。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も
出来たと思ったときには
みんなはもっと出来ていて
私を見て笑っている
みんなに追い付かないといけないのに
足が動かなくて手が動かなくて
辛いときに流す涙に限って誰にも気づいてもらえなくて
それの繰り返し。
みんなずっと笑っている。
最初は優しい笑みを浮かべ
最後は気味の悪い笑みを浮かべて去っていく。
なんだ
偽善者ばっかりじゃないか
「手伝おうか?」
「あはは、大丈夫だよ」
そんな汚れた手をさしのべてこないでくれ
「もっと人を信じたら?」
どの口が言うんだ
信じさせてくれないのはそっちだろ
あーあ
もう疲れたな
大きな大きな海の真ん中で考えた。
もうこれ以上大きな水たまりに突然放り込まれることはないだろうけれど
もう限界だなあ
人魚姫のように泡になって消えてしまいたい
そう思って全身の力を抜いた。
笑ってしまうほど簡単に、
体は海の水面にぽっかりと浮かんだ。
海に浮かぶと目前に澄んだ青い空があった。
『気持ちの悪い空だな』
そう思った。
「はは」と乾いた笑いがこぼれる。
ああ
いつだったっけ
私の瞳が濁り始めたのは
瞳を閉じると、
今まで瞳をおおっていた水の膜が雫となって目の縁からこぼれ落ち、海に流されていった。
あの頃と同じように。
私はもう二度と
この瞳を開けることはないだろう。
こんなに濁ってしまった瞳では
美しいものすら
ドブネズミ色に染まって見えるから。
2024/7/31(水)
お題「澄んだ瞳」
おくを刺す
雲なき眼
鋭くやさし
波紋の眼
映った時に
澄んだ瞳
澄んだ瞳、すっと通る鼻筋、
ぷっくりとした頬、艷やかな唇、
彼女はとても綺麗だった。
凛と佇むその姿は、まるで雪解けの春。
私はそんな彼女が好きだった。
彼女が教えてくれた歌、
『猫のおなかはバラでいっぱい』
なんの意味かは、私にはわからなかったが、
彼女の死体を見たのは確か。
✡
私にはわからないことばかりだより
夢を語る人は、澄んだ瞳をしている。みんな未来にワクワクしている。
夢のない人は、どこか諦めたような目をしている。
澄んだ瞳をしている人は、とても魅力的に映る。
そして、その人から見る世界はどんなものだろうか。興味が湧いてくる。
その人から見る世界はどれだけ美しいのだろうか。
澄んだ瞳
「澄んだ瞳発売中!」私は貯めたお金を握りしめ購入した。憧れのアイドルの子みたいな澄んだ瞳。鏡を見る度に嬉しくなる。キラキラキラキラどこから見ても綺麗。帰り道人にぶつかった。すごく怒られた。けど、相手は逃げちゃった。やっぱり「澄んだ瞳」のおかげだな。笑った時も、泣いた時も、怒ってる時もずーっとキラキラな瞳。これで上司に怒られても、同期に悪口言われても大丈夫。ずっとずっと瞳のキラキラは絶えないから。