ボクがアナタにしてあげられること、その全てを完璧にしてみせる。アナタは特別な人だ。他の人ではその足下にも及ばない。そんなアナタを見つけ、側にいることができるボクは幸せ者だ。
光を失った虚ろな目。視線は合わないけれど確かにボクを見ている。ガラス玉のようにつるりとしていて綺麗だ。
また失うことはわかっている。これまでのようにボクは見送る側にしかなれない。
悲しいのに嬉しい。最期のときをボクとともに過ごしてくれた。そしてこれからは、その身が腐り、元の姿を失くし、白い欠片となるまで側にいてくれる。
―うっとりとした表情で泣く男とその腕の中で息絶える女
昔の猟奇殺人を題材にした映画だ。映画自体はあまり売れなかったが、主人公の男を演じた俳優はこの映画を機に爆発的に売れた。
ある記者が質問した『どうしたらあんな素晴らしい演技ができるのですか』に俳優は心底嬉しそうに笑って答えた。
その答えはただの冗談として流された。だが、察しのいい人ならきっと気づいただろう。ゾッとするくらい残酷な答えをあんな表情で、澄みきった瞳で、さも当然のように言えるものか。
役者で、演技だったとしても、気味が悪いったらない。
【題:澄んだ瞳】
7/31/2024, 2:10:22 AM