あのとき、その手を離さないでと懇願したい
あの日も暑かった、と思う。季節なんてどうでもよかったし、暑かろうが寒かろうが結末に支障はない。地に着けた足から力が抜けて這いつくばるときに熱いか冷たいかの差だ。
ジッとレンズの奥の目をみて逸らさない。今も昔もその辺の覚悟は変わらないから笑える。痛いのは初めだけ、段々と苦しさに変わって、ジワジワと滲むような痺れが苦しみすら消していく。ドキドキした。歓喜と安堵できっと笑っていたと自分では思っている。
唐突に手が離されて、呼吸をする苦しさと激しく巡る血流が気持ち悪い。
「反抗しろよ」
そう言って去っていく背中を見送ることしかできなかった。力のない私と人を殺す覚悟のない小心者。
もし、その場に居合わせることができるなら、
幼い私の首をもう一度両手で包んで、困惑した表情をしながらも無抵抗に死を受け入れる私に、おめでとう、と言ってあげる。羨ましく妬ましい最高のプレゼントを私の手で私に贈る。このときにはもう狂ってしまって戻れない私に未来で浴びる暴言暴力から身を守る首輪をあげる。
いつも、いつだって、その身にふさわしいものを思い出してね。このまま死んでくれれば私も死ねるから。
ねえ、偽善は楽しかった?
手をかけてもらえることがそんなに嬉しい?
与えられるものを素直に受け取れて偉いね
生まれなければこんな思いをしなくてよかったのにね
アンハッピーバースデー、私
【題:もしも過去へと行けるなら】
私のこの声が聴こえないというのなら、何度だって声が枯れるまで繰り返し伝えましょう。
聴こえてはいるのに無視するのなら、もう二度と語りかけることはないでしょう。その覚悟をもって言葉と会話の重みを噛み締めてください。
優しさも、愛も、永遠ではないと学んでください。
一度壊れたものは元には戻らない。
覆水盆に返らず、のような言葉が生まれるほど先人がその経験と後悔と色々な思いを込めて今世まで語り継がれているのです。
まだ分かりませんか。
ならばもう私からあなたに伝えられることはありません。
またいつかどこかで出会ったときは、そのときはもう私たちは何の関係もない他人です。むしろ道でたまたますれ違った犯罪者のようだと私は認識することでしょう。
それほどのことをしたと、深く心に刻んでください。
あなたに傷つく権利はありません。
私を傷つけた罪をいつまでも背負って生きて、死んでください。
【題:またいつか】
ただ愛してほしかった、それだけだった。
どんどん欲張りになって嫉妬して、でも妬むことはなかった。羨ましいとは思えなかったから。頭を撫でられ喜ぶ姿に馬鹿だなと思っていた。だって痛いことされてたくさん我慢したからそうしてもらえてる、少なくとも私の知っている世界ではそれが普通だから、毎日のほほんとしているのも全部我慢の上で成り立っていると信じて疑わなかった。
でも違った、何もしなくても愛されてた。
嘘つき、と思った。だったら私も嘘をつこう。そうすれば愛される、痛いのも我慢も嫌だからたくさん嘘をついてあげる。無意味なのは最初から気づいていたしもっと嫌われることも知っていた。それでも許される人たちをみて私もそうなれるはずだと信じて疑わなかった。
「素直だね」
その言葉が気持ち悪いのに嬉しい。嘘ばかりの私をみて褒められるのは苦しいけど救いだった。だって本来の私だったら絶対にもらえない言葉だから。大切に大切にゴミ箱に捨てる。
今?今ね。今は何してるんだろうね。
疲れちゃったから、休もうかなって思ってるの。
そうなの、だからまた今度誘ってね。
また今度が、あったらね
あ、間違えちゃった。
また今度会おうね、だよ。
そうだよ私が病むわけないじゃん。
そうでしょ、ね?
【題:今を生きる】
生まれてきてくれてありがとう
祝福をもらい
生きていてくれてありがとう
感謝され
幸せでありますように
祈りを受ける
理想の日
【題:Special day】
血も涙も分け合いましょう
いつか消えてしまう命を繋ぎ止めてほしい
儚いものよりずっと意味のあるものだから
永遠なんて夢物語がなくても大丈夫
どんなに離れていてもきっと見つける
大切な半身、おやすみなさい
【題:二人だけの。】