『涙の理由』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
涙の理由
タマネギ。うっかり鼻呼吸のままタマネギを切って、作業を中断。涙を拭い、鼻をかんで、手を洗って、自分の学習能力の無さを一瞬だけ考えて、またタマネギを切る。最も明確な「涙の理由」だ。
自分自身で理由のわからない涙もたまにあるが、歳をとったせいか「良い心の話」や「小さな子ども達の全力」を見たりしたら涙腺に来る。柴田理恵さんナカーマ(笑)。
どこかで気づいている自分自身の胸の内。
『涙の理由』
初めて、彼女が泣いている所を見た。
静かに肩を震わせて。
辛そうに。
私は柱の影から見ていることしかできなかった。
泣いている彼女を前にして。
どうしても罪悪感のようなものがあって、一歩踏み出すことができなかった。
わからなかった。
知らなかった。
彼女が辛い思いをしているなんて。
さっき会ったときも、彼女は悲しむ素振りなんて一切見せなかった。
いつものように笑っていた。
友達も、先輩も、彼氏でさえも彼女の笑顔に騙されていた。
そして私も。
たとえ彼氏ができたって、彼女の一番近くにいるのは私だと思っていた。
私が一番彼女を理解していると思っていた。
でも違った。
気づけなかった。
私は、何も見なかったことにして、その場を去った。
自分が許せなかった。
いまとなってはもう、彼女の涙の理由すら分からない。
ぽっかり空いた心に
侘しさを感じて
過ぎ去った時間に
思いを馳せて
この涙は
脆くて ほろにがくて
ほんの少し 甘くて
そして透き通っている
ほろほろ と
カラフル細工なビー玉と 共に
ぽろぽろ と
溶けてしまいたい
透明に弾けて
濃紺に沈む ラムネ瓶
【涙の理由】
正直わからないな、生理現象だし。なんだろうね、不安の要素が溜まるとかどうしようもない時に泣くんじゃないかな。でも本当に辛いとかの時はなくではなくなけないよね、なんでだろう。
「涙の理由」
『涙の理由』
秘密を墓場まで持っていくことは難しいことらしい。母が病床で息も絶え絶えに語ったことは、罪の告白だった。語るだけ語ったあとに母は臨終となってしまったので、突然に自分の出生の秘密を知った私は気持ちの遣り場のないことや、聞き返したいことを問う相手の不在に憤りさえ憶えた。墓に向かって何を言っても徒労に終わる。仕方なくほうぼうへ聞いて回ることにした。
私の母は母ではなく赤の他人であった。金を積んで人さらいを雇い、連れられてきた赤子を母はそれはそれは大事に育てあげ、母としての役を満喫して人生を終えた。それはさておき、私には本来の母とおぼしきひとと幼少の頃に会っていたのかもしれないという記憶がある。母の用事について行き、母の手が離せないというときにひとりでふらふら歩いていた時に見知らぬひとに声を掛けられた。母と比べるとみすぼらしい身なりのその人は私を見ると手招きをして名前や年を聞き、はきはきと答えた私のことを眩しそうに見つめていた。私の話すことすべてに頷き、笑い、嬉しそうに聞いてくれたからとても楽しい時間だったのだが、血相を変えた母が怒鳴り込んできたことでご破算となった。母がなんの説明もなく乱暴に手を引いて歩いたことも悲しかったし、振り返ったときに見たひとが泣いていたらしいことも悲しかった。
うれしそうに話を聞いてくれたひとの、悲しみの涙のことを思う。役所で見聞きしたことを頼りに生みの親の所在をつかんだ私の足は一旦は鈍ったが、やがては歩き出すこととなった。
涙の記憶を辿ってみる。
悲しい涙、寂しい涙はあっても
嬉し涙はなかなか無い。
感動はあっても涙までは溢れない。
嬉し涙はきっと
涙も心もあったかいんだろうな。
♪涙の理由を知ってるか
俺には分からないが
濡れた頬の温かさは
恐らくお前がくれたんだ
♪ダンデライオン/BUMP OF CHICKEN
「ただの幼馴染」
「恥ずかしいから、もう一緒に学校行くのやめよう」
そう言われたのは、小学四年生の秋。
「変な噂されるから、名前で呼ぶのやめろ」
そう言われたのは、中学一年の五月。
ずっと、私たちふたりきりでいられるのだと思っていた。
彼のそばにいるのは私だけなのだ、と。
だから彼のその言葉と態度に、当時の私は傷ついた。
そう、私は彼が好きだったのだ。
「なんだ、お前も同じ高校かよ」
高校の入学式後、教室で指定された席に座っていたら、彼の方から話しかけてきた。
それまでのことが無かったかのように。
「えー、びっくり。同じクラスなんて偶然だね」
私、女優になれるんじゃないかしらってくらい、自然な口調でいってやった。
でも本当は偶然じゃないよ。
お母さんから聞いて志望校決めたの。
知らないのは、彼だけ。
相変わらず苗字呼びをしてくることに寂しさを感じたけど、数年間避けられていたことを思えば、大したことではなかった。
「ただの幼馴染だよ」
クラスメイト達に私たちのことを揶揄われた時の、彼の言葉。
それが胸に突き刺さって、息すらも出来ない。
逃げるように屋上へと繋がる非常階段を駆け上がった。
誰にも見つからない秘密の場所。
唇を噛む。
雫が落ちていく。
やっぱり、私は彼が好きなのだ。
でも、彼にとっては……
私の名前を呼ぶ声がした。
彼だ。
苗字ではなく、あの頃のように名前を呼び捨てで呼んでいる。
何度も、何度も。
息の弾んだ彼に両肩を掴まれているけど、顔を上げる勇気なんてない。
どうして泣いているのかなんて、そんなこと、言えるわけない。
────涙の理由
涙に関しては、私と夫は真逆。
私はすぐに泣く。
夫は何があっても泣かない。
私はここ2年くらいですごい量の涙を流したと思う。
朝が来て泣き、昼も泣き、
とうとう夜になってベッドに入っても眠れずに
ひたすら涙を流してティッシュの山を作り続けた、
そんな数日間もあった。
別に泣きたくて泣いている訳じゃない。
悲しいと勝手に涙が出てくるの。
止めたくても止まらない、
本当に嫌な体質だなと思ってる。
そして、この前とうとうこんな私を慰め続けた夫が、
気づいたら涙を流してた。
本人もびっくりしてた。
長く一緒にいるけれど、初めて夫を慰めた。
涙の理由は私と同じだと思うけれど、
私の泣き虫がうつったのかなと
ちょっと悪いなと思った。
♯涙の理由
夜になると涙が溢れる。
1人になると暗闇の中に落ちていく感覚になる。だから夜が嫌いだ。何もないのにふと寂しくなって、不安になって、震えるぐらい怖くなって。私は、そんな日々が大っ嫌いだ。でも、不思議とあの人といるとそんな夜も安心して眠りにつけて、不安になって涙が出ても彼が抱きしめてくれた。私には彼の光が必要だ。だから努力するから。。振り向いて、私だけをみて。そう願いながら今日も誰もいない部屋で大嫌いな夜を訳もわからないまま、涙を流して1人暗闇の中で過ごすのだ。
なぜ、私は今泣いているのだろうか。あれだけ悲しいことには慣れてしまったはずなのに。私はこれまでの人生の中で幾度となく悲しい思いをしてきた。学生時代には散々いじめられてきたし、まともな連絡手段を持っていなかった頃に仲が良かった友人が遠くに引っ越していってしまったこともある。これ以上挙げるのも億劫なほどショックを受けてきたし、そのたびに泣くこともたびたびあった。そのかいあってか、今では多少のことでは動じなくなってきたしある程度のことであれば笑って流すことができるようにもなった。そのはずだったのに私は今涙を流してしまっている。
祖母の容体が急変したという連絡がきたのは2日前のことだった。そこからは坂を転げ落ちるようにどんどん悪くなっていき、いよいよ今夜だろうと告げられる段階まで来てしまった。その報に驚き慌てて最後に顔を見せるために、今私は病室を訪れている。一人一人がきちんとお別れを言うことができるように周りに誰もいないことも相まって様々なことを伝えることはできた。そのうちに気が付いたら涙を流していたのだ。もう彼女の声を聴くことは叶わない。そして私に与えられた時間も残り少ない。だから最後に一言、「ありがとう。」
不意に出た涙の理由を、まだ誰も知らない
私の気持ちなんて、誰にもわかるはずがないもの
寂しさ、空しさ、その虚脱感
理解してほしい
わたしの心を埋めてくれる人を、ずっと待っている
「しにたい」「消えたい」「私は必要ない」と思って涙がでるみたいな。
私もつらいとき泣きたいけど泣けなくてつらいなっておもう
涙に理由なんか必要ないのよ。
泣きたい時に泣けばいい。
自分の大切な人や、信頼できる人の傍で。
思いっきり泣けばいい。
そんな話を、彼としてたっけ。
つー……。それは、映画のワンシーンの様だった。ある日
貴方は涙を流した。その後、嬉しい様な悲しい様な…そんな顔をしていたから、私はつい見惚れてしまい、その理由も聞けずじまいだった。
今でも聞いた方が良かったか、と後悔が絶たない。
嗚呼、神様。もしも再び貴方に逢え、その時に涙をながしていたのなら。貴方の
: 涙の理由
を私は知りたい。
わたしの存在がちいさくちいさくちいさくなって
あの子たちがおおきくおおきくおおきくなって
ある日を境にくるりと入れ替わって
高いところにある物も
私の気づかないあそこの目線も
全部任せられるようになったから
立場が逆転そんな日が ついに来たなとココロオドル
✼•┈┈ココロオドル┈┈•✼
「要は涙さえ出せば良いんだろ、って考えたんよ」
もらい泣き、あくび、催涙スプレーに激辛料理、それから酷く咳き込んだ後の惨状。
別に感情の発露からの落涙でなくとも、涙は出る。
某所在住物書きは、なんとか己の不得意分野であるところのエモネタを回避すべく、「涙の状況」を列挙している。 涙だ。涙さえ出れば良いのである。
最初に閃いたのが、クマ撃退スプレー。
軽い気持ちによる試射で大惨事になり、涙轟々の動画をどこかで観たような気がするのだ。
「花粉症も、時には涙よな……」
ところで実体験として、子供の頃は転んだり痛い思いをしたりすると、すぐ泣いていたように思う。
痛覚から落涙に対して極度に繋がりやすかったあの時期は、何故あれほど簡単に涙が出たのだろう?
――――――
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
稲荷神社は森の中。神社の神様のご利益とご加護によって、参道の花は美しく、和漢和ハーブの庭は副産物のキノコに山菜も含めていつも何かが豊作。
神様のいらっしゃる厳粛な領域は、しかし穏やかで平野で、不思議な空気に満たされておるのでした。
で、そんな神社はごくまれに、数ヶ月に1〜2回程度の低頻度で、善良無害なおばけが成仏昇天できずに迷い込んでくるワケでして。
その日神社にやってきた男の霊が、今回のお題「涙の理由」の回収担当なのでした。
というのもこの稲荷神社在住の末っ子子狐がこの男霊の話を聞いてバチクソにギャン泣きしまして。
『どうしても未練なんだよ。どうしても……』
本日稲荷神社に辿り着いたのは、仕事盛りでブラック一歩手前のグレー企業に勤めていた若手。
『だって、文字通り、「さいごの一杯」だぞ』
長時間労働が常習化して、退勤時間も詐称で、日常唯一の楽しみといえば、出勤前と退勤後に食べる濃い味の醤油ラーメン、あるいはにんにくラーメン。
食べて、仕事して、ストレスで心と身体を疲弊させて残業して、退勤して食べて。
その日も「今日」というクソな平日をしめくくる、脂増っし増しであつあつのラーメンを、
まずチャーシューから胃に収め、
麺をズズっとすすろうと、
した矢先に頭のどこかがガツン!プッツン!
今まで経験したことのないような痛みを感じて、
それから、何も覚えていないのでした。
脳卒中です。詳しくは、脳出血です。
それは日頃の不摂生で発症リスクが高まり、
それは酷いストレスもトリガーになり得るのです。
『麺のひとくいちくらい、食いたかったなぁ。
あーあ。成仏の仕方なんて検索に出てこねぇし、
なんか、夢の中をさまよってる気分だわ』
「かわいそう!かわいそう!!」
子狐ギャンギャン、稲荷の子狐ゆえに食べ物には信条がありまして、すなわち豊作と美味と満腹と、食による幸福を善良としておるのです。
なのにこの霊はどうでしょう。せっかくの「最後の晩餐」を、かわいそうに、食えなかったのです。
「ウカサマ、ウカノミタマのオオカミさま!しもべの声を、お聞き届けください!この者に、おいしいおいしいごちそうを、たっぷり与えてください!」
ギャンギャン、ギャンギャン。コンコン子狐は涙をびゃーびゃー流して、稲荷の神様にお願いします。
これこそお題回収です。子狐の、「涙の理由」なのです。不運な男霊を、あわれんでおるのです。
なお稲荷の神様への陳情取りつぎ係、オチを知っておるので知らんぷり。
子狐の優しくかわいらしい訴えを、あらあらまぁまぁ、ペット動画を観る尊みでほっこりします。
「ウカサマ、どうか、お聞き届けください!」
ぎゃあん、ぎゃあん!稲荷の子狐は一生懸命、あわれみの涙を声にかえて、吠え続けました。
で、ここからがオチの話。
あんまり末っ子子狐が泣きますので、都内の病院で漢方医をしてるお父さん狐が到着。「夢の中をさまよってる気分」の男霊から事情を聞きます。
「生霊ですね。あなたがたで言う、接続障害です」
『せつぞくしょうがい』
「心魂と身体の接続が、不安定なのです。手術が成功して麻酔が切れれば、ちゃんと目が覚めますよ」
『せつぞくが、ふあんてい』
フッと気の抜けた男霊。「接続障害」が「解消」されたのか、ポンとその場から消え去ります。
目が覚めたら白い天井の下、白いベッドの上。
結婚したばかりのお嫁さんが、涙をぼろぼろ溢れさせて、男の手を握っておったとさ。 おしまい。
僕は4年お付き合いをしていた彼女と別れた。
どうして別れたのか僕には分からなかったけれど
今なら別れた理由が分かりそうだ。
対応 態度 そんな物では無かった 彼女との時間 彼女は
僕に会おうと必死になっていたのに 僕は気付けなかった
どうして、どうしてと悔やんでも もう彼女は戻っては
来ない
別れの理由を自分で痛感しては自分がどれだけ
未熟者なのかが分かる
今日も、別れた彼女を想って夜空に煌めく星を眺めては
泣いて 泣いて 過去を悔やんでいる。
少し小高い丘の上からは、小さな村の全てが見えていた。夜が更けてきたからか、灯りがついている家は少なく、数少ない酒場ももうすぐ閉店なのか人が帰っているのが見える。
「あれ、にゃんこ、今日もここにいるんだ」
ガサガサと音をたてながら、三つ編み姿の少女がやってきた。私はにゃんと声をあげる。
「おまえも好きだね、ここが」
わしゃわしゃとひとの頭を撫でつつ、少女は隣に腰掛ける。ここで数日に一回顔を合わせる程度の中だが、何となくいつもと雰囲気が違うのがわかる。なんといっても10年一緒にいるのだ。分からないわけもない。
「今日は1人が良かったんだけどなあ」
三角座りをして、膝に顔をうずくめる。チラリとしか見えなかったが、目元に光る何かが見えた気がした。
「まあでもにゃんこだし、いっか」
独り言ちる彼女が寂しくないように、にゃんと相槌をうってやる。
「あはは、ほんと、お前はヒトの言葉がわかるように鳴くね」
またわしゃわしゃと頭を撫でる手に、すりすりと頭を擦り付けた。これで数日で消えてしまった私の匂いもつき直しただろう。
「実はね、私もうすぐこの村を出るの。結婚しなきゃいけないんだって」
遠くを眺めるように言った少女は、また目に涙を溜める。月の光に照らされた涙はキラキラと光り輝き、とても美しい。
「私が結婚するのはお金持ちの人で、村にお金も入れてくれるんだって。優しいよね、顔を見たこともない人の村にお金なんてあげるなんて」
おや、めでたい話だと耳をすませていたが、随分ときなくさい話になってきた。香箱座りしていたがゆっくりと立ち上がり、本格的に涙を流しはじめた少女の顔を舐めてやる。
猫の世も人の世もこんな話ばかりだ。より弱いものが割を食う話ばかり。
「別にね、結婚するのが嫌なわけじゃないの。今よりもいいご飯食べられるかもしれないでしょ?」
そう笑うと、少女は涙をぐいっと拭う。
「でもね、もうここには帰ってこれないんだと思うと寂しくって。にゃんこともこれでお別れだね」
少女の涙の理由は本当にそれだけなのだろうか。強く賢いこの子に未来が、閉ざされてしまうのでは?とおもうと実に歯痒い。
それなら。
『私を連れていくといい。君のことくらいなら守ってやるさ』
猫らしくにやっと笑った私をみて、少女は目をまん丸くさせた。
「え!猫が喋った!!!」
『私は普通の猫じゃないからね』
一つにまとめていた二つの尻尾を、ふわりと離して見せる。
『世の中にはまだまだ不思議なことばかりだろう?』
またニヤリと笑ってみれば、涙を溜めた目で少女はケラケラと笑い出した。
「うん、本当に!びっくりすることばかり!にゃんこ、名前は?」
『いっぱいありすぎるからね。君が好きにつけるといい』
「んー、じゃあ、何にしようかなあ」
ケラケラと笑い合った一匹の猫と少女は、月明かりの中、楽しげに帰路へとついた。
静かな放課後の教室には私とあなたしかいない
向かい合って座り本を読む
これがいつもの光景だった
私は本から顔を上げた
目の前のあなたは涙を流している
「どうして泣いているの」
そう聞くと、あなたは微笑みながら言った
「本の内容に感動して」
「そっか」
私は目線を手元の本に戻した
あなたは本に感動して、と言ったけれど私は知っている
本当は悲しみで泣いていることを
これが最後の読書になることを
もう二度とこの時間はやってこないことを
本を読み終わって窓の外を見るとすっかり暗くなっている
あなたはまだ泣きながら「じゃあね」と言って行ってしまった
最後までずっと泣き続けたあなたと泣くことすら出来なかった私
もう二度と会えないのに
あなたの声は聞けないのに
見ることも触れることも叶わないのに
1人になった教室であなたとの最後を思い出す
なんであんなに泣けるのだろう
あなたが私の元から去っていったというのに
「泣きたいのはこっちだよ」
そう呟き、空っぽになってしまった心で教室を後にした
ぶつけようのない気持ちは生まれるのに
攻撃してもいい対象なんて存在しなくて
そういう時は知らない何かのせいにすればいいって
教えてもらった。
だから今は
何も知らずに助手席のドアを開けるあの子に
女の子の憧れみたいな容姿を詰め合わせた
ずっと遠くのアダムとイブを選んだんだ。
涙の理由