みこ

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静かな放課後の教室には私とあなたしかいない
向かい合って座り本を読む
これがいつもの光景だった
私は本から顔を上げた
目の前のあなたは涙を流している
「どうして泣いているの」
そう聞くと、あなたは微笑みながら言った
「本の内容に感動して」
「そっか」
私は目線を手元の本に戻した
あなたは本に感動して、と言ったけれど私は知っている
本当は悲しみで泣いていることを
これが最後の読書になることを
もう二度とこの時間はやってこないことを

本を読み終わって窓の外を見るとすっかり暗くなっている
あなたはまだ泣きながら「じゃあね」と言って行ってしまった
最後までずっと泣き続けたあなたと泣くことすら出来なかった私
もう二度と会えないのに
あなたの声は聞けないのに
見ることも触れることも叶わないのに
1人になった教室であなたとの最後を思い出す
なんであんなに泣けるのだろう
あなたが私の元から去っていったというのに
「泣きたいのはこっちだよ」
そう呟き、空っぽになってしまった心で教室を後にした

10/11/2024, 2:09:46 AM