子供の頃は毎日空を見上げていた
どこまでも続く大空
閉じた世界から見る大空はとても自由だった
大人になった今、多くのことを自分で決められる
お金があれば何でも帰る
どこにだって行ける
ふと気づく
最近空を見上げていないことに
ああ、分かってしまった
私はもう自由を渇望してはいないのだと
幼少期に恋い焦がれたあの自由は
もう手の届く場所にある
手に入るものは途端に色褪せる
空を見上げる
今日も変わらぬ青空だ
他人とすれ違った時
ふと知っている匂いがした気がした
思わず振り返るけど、彼の姿はない
彼への思いはもう絶ちきったはずなのに
どうしても思い出してしまう
もう好きではないのに
嬉しい報告はあなたにしてしまいたくなる
一緒にいれる未来はもうないはずなのに
忘れたくても忘れられないあなた
ほんの少しの切なさと胸の痛みを抱えて
過去に別れを告げる
また思い出すだろう
その度に悲しくなる
これもまた人生を歩むということだろう
『竹』
高く高く伸びる竹
どこまでもどこまでも
太く柔らかく瑞々しく
蒼天に突き上げる
雨風に負けない強さと
力をいなすしなやかさ
そんな竹のような生き方をしたい
放課後は特別な時間だ
学年が違うあなたと会える
今日は何を話そう
授業のこと、お弁当のこと、友達とのこと、
そしてあなたが大好きだということ
このために1日頑張れる
どんなにつまらない授業があっても、
嫌なことがおきても、
あなたに会えるのならちっとも辛くない
あなたが卒業するまであと1年
限られた時間を大切にしたい
今日は何を話そう
静かな放課後の教室には私とあなたしかいない
向かい合って座り本を読む
これがいつもの光景だった
私は本から顔を上げた
目の前のあなたは涙を流している
「どうして泣いているの」
そう聞くと、あなたは微笑みながら言った
「本の内容に感動して」
「そっか」
私は目線を手元の本に戻した
あなたは本に感動して、と言ったけれど私は知っている
本当は悲しみで泣いていることを
これが最後の読書になることを
もう二度とこの時間はやってこないことを
本を読み終わって窓の外を見るとすっかり暗くなっている
あなたはまだ泣きながら「じゃあね」と言って行ってしまった
最後までずっと泣き続けたあなたと泣くことすら出来なかった私
もう二度と会えないのに
あなたの声は聞けないのに
見ることも触れることも叶わないのに
1人になった教室であなたとの最後を思い出す
なんであんなに泣けるのだろう
あなたが私の元から去っていったというのに
「泣きたいのはこっちだよ」
そう呟き、空っぽになってしまった心で教室を後にした