『竹』
高く高く伸びる竹
どこまでもどこまでも
太く柔らかく瑞々しく
蒼天に突き上げる
雨風に負けない強さと
力をいなすしなやかさ
そんな竹のような生き方をしたい
放課後は特別な時間だ
学年が違うあなたと会える
今日は何を話そう
授業のこと、お弁当のこと、友達とのこと、
そしてあなたが大好きだということ
このために1日頑張れる
どんなにつまらない授業があっても、
嫌なことがおきても、
あなたに会えるのならちっとも辛くない
あなたが卒業するまであと1年
限られた時間を大切にしたい
今日は何を話そう
静かな放課後の教室には私とあなたしかいない
向かい合って座り本を読む
これがいつもの光景だった
私は本から顔を上げた
目の前のあなたは涙を流している
「どうして泣いているの」
そう聞くと、あなたは微笑みながら言った
「本の内容に感動して」
「そっか」
私は目線を手元の本に戻した
あなたは本に感動して、と言ったけれど私は知っている
本当は悲しみで泣いていることを
これが最後の読書になることを
もう二度とこの時間はやってこないことを
本を読み終わって窓の外を見るとすっかり暗くなっている
あなたはまだ泣きながら「じゃあね」と言って行ってしまった
最後までずっと泣き続けたあなたと泣くことすら出来なかった私
もう二度と会えないのに
あなたの声は聞けないのに
見ることも触れることも叶わないのに
1人になった教室であなたとの最後を思い出す
なんであんなに泣けるのだろう
あなたが私の元から去っていったというのに
「泣きたいのはこっちだよ」
そう呟き、空っぽになってしまった心で教室を後にした
せっかくの休日なのに平日用の目覚ましのせいで飛び起きてしまった
時間を確認して「本当だったらもっと寝れたのに」
そう悪態をつきながら二度寝しようと布団を掛けなおす
しかし一度身体を起こしてしまうとそうそう寝れやしない
仕方なく早朝散歩に出かける
あーあもっと寝たかったなあ
近所の公園まで歩きベンチで小休憩をする
ふと空を見るときれいな虹が出ていた
そういえば昨日は雨が降っていたっけ
こんなにきれいな虹を見るのはいつぶりだ?
さっきまでの恨めしい気持ちはどこへやら、すっかり心が晴れやかになっていた
今日は良いことがありそうだ
柄にもなくスキップをしそうな足取りで家へ帰る
都会のうるささにうんざりして
静かな空間を求め逃げてきた
何の音もしない
これでようやく落ち着ける
そう思ったのに
静かであればあるほど考えてしまう
お金のこと仕事のこと将来への不安
どうしてだろう
静寂さがプレッシャーとなってのし掛かる