『涙の理由』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
涙のわけかー??
足の小指に聞いてほしい!
なんで、あなたはそんなに痛いのぉ??
まー
朝起きたら泣いていた
でも、何の夢を見たのかは思い出せない
いつも同じ夢で泣いている気がする
涙の理由を 知ってるか
俺には分からないが
濡れた頬の 温かさは
恐らく お前が くれたんだ
「なんでこんな所で歌ってるの?その歌、タイトル何だっけ?」
放課後の屋上は、教師や親の煩わしさから逃れられるサンクチュアリだ。
かつて在籍していた顔も知らない諸先輩の中にも、自分と同じ感覚の人がいたのだろう。
鍵がなければ開くはずのない扉は、ノブを反時計回りに2回、次いで1回半時計回りに回すと開く様に細工されていた。
その事実を知ったのはつい最近の事だ。
大抵どこの学校の屋上も、安全の為とやらで入れないのは馬鹿な俺でも知っている。
それでも、開かないかな?なんて、ガチャガチャ試したら開いてしまったのだ。
あまりに偶然だったから、ノブに施された仕掛けの解明には少し時間を要したが。
解明してからは手慣れたもので、放課後の度に一人屋上に忍び込むようになった。
馬鹿みたいにマジメに青春してる運動部の奴らを眺めたり、スマホにダウンロードした音楽を聴いたり、偶に歌ってみたり。
マジメに塾に行っていると思い込んでいる独善的で過干渉な親を欺いて、押し付けがましい教師たちが寄越す鬱陶しい青春を嘲笑って、不条理で掃き溜めのようなこの世界で、短い青春とやらを棒に振る。
最高にイカれている中で、放課後のこの時間だけは自分が自分たり得る時間だった。さっきまでは。
サンクチュアリの闖入者は、女子だ。
短めのスカートを履いているくせに、髪は肩にかからないボブカットで、地味なカーディガンとぶ厚い瓶底眼鏡を着用している。
化粧をしていない顔は、整っている方だが地味だ。
スカートの長さ以外ギャル要素がないので、クラスのカーストでどの位置の女子なのか分からない。
「あんた、どうやって入ってきたんだ?」
俺は相手の質問には答えず、この闖入者がどうやってここに来たのかを確認することにした。
俺は屋上に忍び込む時、必ず鍵を掛けたことを確認するようにしている。
今日もその事は抜かりなくしたので、鍵が開いていてたまたまという事はない。
俺と同じように偶然開いて入ってきたのだろうか?
こんな地味眼鏡女子が屋上に?
「…あの細工したの私だから」
「えっ」
サラリと爆弾発言を食らった俺は、鳩が豆鉄砲を食らった顔で眼鏡女子を見返した。
「だから逆に問うけど、どうやって細工を突破したわけ?あと、貴方以外知っている人はいる?…あぁ、あと、さっきのタイトル何?」
淡々と温度を感じない声で眼鏡女子が質問してきた。
かなりマイペースなのだろう。普通、質問は一個ずつだろう?コイツはきっと、いや、かなりの変わり者だ。
あの細工はてっきり先輩達が残したものだと思っていたが、こんな変わり者の女子がやっていたとは。
俺と同じ感覚の顔も知らない先輩という妄想が儚く消えた。意外とショックだ。
「私は質問に答えたのだから、貴方も答えるべきだと思うのだけど?」
僅かに苛立ちを含ませた声が妄想に沈みかけた俺の耳を打った。
眉を顰めてジーッとこちらを見ている。答えないと逆に面倒くさそうだ。
「たまたま鍵があいて、法則を見つけた。ここに人を呼んだことはないし、ここの話をしたこともない。さっきの歌はBUMP OF CHICKENのダンデライオン」
必要最低限で済ました俺を眼鏡女子がジッと見てくる。
なんか、この人を観察する目の感じ…ノラ猫みたいだ。
多分懐かないタイプの。
「もう少し細工しておけば良かったな…。でも、まあ曲のタイトルを知ることが出来たから、良いか」
俺に対してというより独り言のように呟く。
理不尽に怒られるかと思ったが、どうやらその気配はない。ちょっと安心した。怒るとヒステリーになる女子もいるからな。
この女子は変わっているところはあるけれど、話は出来そうだ。
「なんでタイトル知りたかったんだ?」
「たまたま有線かなんかで聴いて、物語調で面白いなって思っていて曲だけは覚えていたんだけど。タイトルは聞きそびれちゃったのよね」
確かに有線で聞く曲の多くは、タイトル部分を聞きそびれることがよくある。曲調が気に入っても、歌詞部分の記憶が曖昧になったり、聞き逃したりで探すのに苦労したことが俺もある。
「有線あるあるだな。この歌の物語、良いよな」
俺の何気ない一言に彼女は、ホロリと涙をこぼした。
思わずギョッとして固まる俺の前で、彼女は吐露し始めた。
「私は、孤独であることに苦痛はない。けれど、あの音楽の物語にある、自分を受け入れてくれるモノに出会う喜びは、痛いほど羨ましいと思ったよ」
だから一度聴いただけでも忘れられなかった。彼女はそう静かに呟いた。
あぁ、俺もあの歌のライオンが羨ましいと思っていた。
ありのままの自分を受け入れてくれる存在に出会うなんて、現実ではあり得ないと思っているから。
あの歌の物語はファンタジー。非現実的。
そう思ってもやっぱり、どこか羨ましかった。
「ライオンも、そして、ライオンを受け入れライオンに大切にされた花も得た、尊いものは、このちっぽけな作られた世界じゃ得られない」
ハラハラと流れる涙が儚くて綺麗だと思った。
「あんた、俺と似てるな」
性別も顔も違うのに。
今あったばかりで彼女が見てきた世界なんて知らない。俺にはわからない。
でも、心の何処かが共鳴している。
「あんたの名前を教えてくれ。あんたさえよければ、あんたの事も」
涙の理由を 知ってるか
俺には分からないが
この心の 温かさが
そのまま 答えで 良さそうだ
なんで君は泣いてるの?僕は今まで君のために尽くしてきたのに。一生懸命働いて、記念日は忘れずにお祝いして、君の喜ぶ言葉を沢山伝えて。君はいつも"ありがとう"とか、"嬉しい"なんて言ってたじゃないか。僕がする事全てに、感謝や喜びを表してたじゃないか。それに、僕がどんな風になっても、笑って受け入れるって言ったじゃないか、あぁ、彼女の声が聞こえない。もう僕の意識は真っ黒になってしまう。僕は君の笑顔が好きなんだ。だから、泣かないで。
笑って?僕は心のそこからの本音を呟く。すると彼女は、泣きながら笑った。もう、泣いてても、笑っているのは嬉しかった。だけど最後に、涙の理由くらいは知りたかったなぁ。
この人は、なんでもう死にそうで、とっても辛かった筈なのに……あなたのそんな姿を見て、笑えるわけがないでしょう。そう思った気持ちを奥へ消し、徐々にぬくもりを失うあなたを抱いた。
涙が嫌いだ。誰かが一粒涙を溢せば、他人の冷たい視線はこちらに集まる。逆に私が涙でも流せば、降り注ぐ視線、陰口の雨。そんなものに怯えている私は、弱くて崩れてしまう砂でできた城のようで、思わず乾いた笑いが出てしまう。涙は嫌いなのに、脆い自分が悔しくて涙が零れそうになる。それでも必死に堪えてしまうのは、涙のせいで私が作った砂上の楼閣が崩れるような気がするから。
涙の理由?
そんなものありません。
私が涙したのは大した理由ではなく、ただ泣きたかったからなのです。
貴方が今にも泣き出しそうな顔をしているものですから、私はその想いを糸で結んでたべてしまったのです。
貴方がどんなに辛いことがあろうと、涙を見せず強くあろうとするから、私は反対に気持ちに囚われ弱くなってしまうのです。
私は強い女でしたから、貴方はとても動揺するでしょうね。
わたしの涙の理由…
それは、1人で静かに布団の中にこもり泣いてしまったあの日のことを思い出す
1人で抱え込んでしまって誰にも言えずに…
でも、今は大切な君と会って
君が"抱え込まんでいいよ"って言ってくれたあの日
それからは、話を聞いてくれて一緒に考えてくれた
わたしは君にありがとって言いたい
感謝してると
I.m.
涙の理由
涙の理由は人それぞれ。
人生、何回涙を流すのか。
数えきれないほどなのか、それとも数えられるほどなのか。
嬉しくて、悲しくて、楽しくて、笑いすぎて、感情が爆発してなど。
種類は様々。一番いいのは、笑いすぎて泣くことだと思う。
「今日は結婚式来てくれてありがとう」
『…うん。ドレス…綺麗だね』
「〇〇が選んでくれたおかげだよ」
『……幸せになってね』
「え、ちょっと泣いてるの?」
『ご、ごめん。嬉し泣きで……』
「もー、ほらおいで」
そう言うと、貴方は私を抱きしめた。
私は少し冷えた胸の中で泣いた。
旦那さんは嬉しいだろうな。
こんな優しい子をお嫁に出来て。
本当は悔し涙だなんて、言えない。
ここが日本じゃなければ、
貴方の隣には、私がいたのかもしれないのに。
ー涙の理由ー
涙の理由
視界が滲む。
頭が痛い。何も考えられない。
あー…どうして何もしなかったんだろう。
「うわぁ、泣いてる?どうした!?」
突然顔を覗き込まれてドキッとする。
心配そうな彼の顔が目の前にある。
「ーー大丈夫。小説の結末に感動しただけ」
咄嗟に机の中にあった単行本を取り出して見せる。
「ふーん、それそんなに泣けるやつだったか?」
「うるさいなぁ。感じ方は人それぞれでしょ?」
「ま、そうだよな」
納得したのか、笑顔になって前の席に座る彼。
「そういえば、彼女できたんでしょ?良かったね」
「うわ、情報はやっ!ありがとうな」
噂はやっぱり本当なんだ。
また、泣きたくなる。
彼の友達のような立ち位置にいて油断していた。
女子の中でも、彼に一番近いのは自分なんだと思っていた。
何も努力をしなかった。気持ちを伝えなかった。
いつか気づいてくれるかもと期待していた。
今、目の前で照れながらも幸せそうな彼。
涙の理由を知らない彼。
「そんなに幸せそうに話してさ、私がキミのこと好きだったらどうするの?」
「え?あー…、嬉しいと思う」
「なにそれー」
あぁ、やっぱり優しいんだ。
そういうキミが、好きでした。
笑って窓の外に視線を向ける。
やっぱり少し、滲んだ景色。
カーテンコール、満員の観客を前に、いつも気丈に振る舞っていた君の涙を初めて見た。
そうだよね。君の友人が練習への無断欠席を繰り返したせいで、本当はその友人がやるはずだった役はただのOGである私に頼まざるを得なくなって。私がその役をやることになっても、君は最後まで、この役は彼女にやってほしかった、と言っていたね。
頼りにならない先輩たちと、なにも知らない後輩たちを一人で引っ張っていかなきゃって思い込んで。誰にも頼らず孤独に頑張ってきたんだよね。辛かったね。よく、頑張ったね。
でもね。
本当は、私の前でだけ泣いてほしかった。私が君の異変に気づいて、声をかけたその日に。その日君は頑なに、笑顔で、大丈夫です、としか言わなかったけれど。その笑顔の裏に、人知れず抱えた苦悩があったことを、私は知っていたよ。きっと、私の聞き出し方が良くなかったのかな。あの時、もっと上手に話せたら、君は本心を打ち明けてくれたのかな。
私は、すでに泣きすがるべき胸を持っている君を見ながら、そんなことを思っていた。
一度だけ、年下の男の子からの好意を利用して、遠回しに君に気持ちを伝えたことがある。
その時、君は笑いながらこう言ったね。
「男性の◯◯先輩より、女の私が選ばれたってことですかwww◯◯先輩、完全に脈なしじゃないですかwww」
(涙の理由)
昔に「涙活」という言葉を聞いたことがある。
意識して泣くことによって、心のデドックスをする活動をいうらしい。
メディア鑑賞や読書で泣くのを図るんだとか。
そういうのだったら、私は意識しなくても大丈夫だ。
涙もろくて、メディアでも音楽でも本でも漫画でも、自分のアンテナに触れれば、簡単に泣けてしまう。
泣くことは必要だと思う。つらい気持ち、悲しい思いを胸に秘めておいても、心身ともに良いことでは
ないからだ。
嬉し泣き、というのもある。大人になってからするようになったと思う。できたら、こういう泣き方の方がいいな。
「涙の理由」
ファンタジー
300字小説
女神の涙
王都の神殿。その最奥には、この世界を創造したという女神の像がある。
司教と巫女が立つ中、王は祭壇に祈りを捧げ、女神の神託を望んだ。
つうと女神の両目から涙が落ちる。
「精霊の森を切り拓いてはならないと女神様は仰っておられます」
「精霊の森は天然の砦。人の手によるどんな砦よりも隣国に対する強固な壁になるでしょう、と」
神託を読み解く司教と巫女の言葉に王は頷いて去っていった。
「上手くいったな」
司教の声に像の後ろから、水の妖精の乙女が現れる。
「これで貴女達の森は無事でしょう」
巫女がニヤリと笑う。
『ありがとう』
「何、我々は事実を示唆したまでのこと」
「人と精霊の争いが未然に防げるなら女神様も笑って許して下さるわ」
お題「涙の理由」
待って!行かないで、お願いだから。
貴方の背中を見ることしかできなかった。
こんなに好きなのに、。
こんなに大切に思っていなのに、。
それは、私だけだったみたいだね。
貴方は元彼に入るのかな、?
ずっと、あなたに片想い。
頬に冷たい雫が流れた。
分からない。
分からないんだよ。
だけど不安で不安で
仕方がなくて
怖くて怖くて
仕方がなくて
自分って惨めで…
上手く説明できないんだよ。
助けてほしい
救ってほしい
どうにか
してほしい。
分からない
分からないんだよ。
–涙の理由–
涙の理由
作者:ノワール
自分は朔。周りからは無表情、クールと言われてるだけあって趣味がなければ感情が出てこない。
朔「……。」
何も感じない。楽しさも嬉しさもつらさも悲しさも。感動する映画、本を読んでも何も感じない。
自分はふらふらとなんとなく何処かに行くことがある。行きたい場所がないが健康に悪いから適当に散歩をしている。いつものようにイヤホンをし、スタスタと思いのままに進む。ふと視界に何か白いもふもふが入ってきた。白猫だった。なぜだか分からない、分からないがなんとなく付いて行った。猫を見つめながら進む。髪が揺れた。猫が座り止まっていた。ふと顔を上げると
朔「……!」
視界には風に乗ってひらひらと舞う色とりどりの花びら。
その中央に大きな桜の木が。
花が沢山咲いているのにそれに負けず1本、綺麗な満開となって咲いていたのだ。
ふと違和感を覚え目元に手をやる。雫がすっと流れ落ちていたのだった。
改めて自己紹介をする。
僕は朔。好きな音楽も、本も、映画も、なにもない。
ただーー
ただ、桜は好き。
あとがき
お読みいただき嬉しいです、中々こういう系は慣れないので文がおかしかったらごめんなさい。 ノワール
先日、曽祖母の葬式に行ってきた。
曽祖母といっても血の繋がりはない。祖父と祖父のお兄さんが養子縁組をしたから戸籍上は…といった感じだ。幼いながらにこの関係が特殊だと気づいてから曽祖母ですと紹介することを心のどこかで躊躇うようになっていた。祖父母と一回り程しか離れていないからひ孫というより実の孫のように小さな頃は身の回りの世話をしてくれた。いつもにこやかな優しい人だった。そしていつも畑か台所にいる元気な人だった。贔屓目なしでも絵に描いたような理想的なおばあちゃんだと思う。
でもそれは何年前までの姿だろう。弔辞を考えていると蘇るのは最近の曽祖母ではない思い出ばかりだった。
油断していたんだ。私は色々と見てみぬふりをした、
いちばん長生きしそうだったのに
あっさりいなくならないで
20年間ありがとうございました
涙の理由
そこは薄暗い部屋だった。
四畳半程度の四角い部屋、窓から外の景色は見えないが秋の澄んだ陽の光がワックスで磨かれた床を照らしていた。スポットライトのようなその光は舞い上がった埃の存在を暴いてしまうが、ふわふわと舞うその様は静謐な今の状況に相応しく心を落ち着けてくれる。
部屋に響くのは自分の呼吸の音。意識せずとも規則的に繰り返される音。蛍光灯から鳴る音、カーテンが靡く音、部屋の外を行き来する人の靴が交わり合って心地よいリズムを生み出していた。
そんな音に耳を傾けているうちに寝てしまっていたらしく、目が覚めたのがつい先程のことだった。
ベッドなど用意されていないので椅子に腰掛けていたので背中が痛い。立ち上がって狭い部屋の中を散歩する。先ほどまで寝ていたというのに、時計が目に入った途端にソワソワしてしまう。自分のこととはいえ単純で笑えてしまう。
外の景色が見たいと思い窓に手を伸ばそうとした瞬間、木製のドアをノックする小気味良い音が響く。
ドアを開けると瑕疵一つない正装に身を包んだ女性が立っていた。
女性は自分のことを見て満足そうに一度頷き、何も言わずに一歩下がる。言葉はないが意味は十分に伝わった。
僕は部屋から一歩外に踏み出した。部屋の中も居心地は良かったが、一気に視界が開けて気分が良い。
女性は向かって左側を指し示し、僕はそれに頷きを一つ返して歩みを進めた。
向かう先には一つの扉。金の取手、金の装飾で彩られた白亜の両扉。それが両側から開け放たれた。
急な眩しさに思わず目をすぼめてしまうが、順応した視界には白を基調とした華で彩られた空間が広がった。
その中心に背を向けて1人の女性が佇んでいる。自分の目で捉えた瞬間に心の中を温かいものが伝播していくのを感じた。
僕は一歩ずつ、一歩ずつ距離を縮めて遂には手が届く距離に至った。惜しげもなく晒された肩口に触れるとビクッと震えるのを感じた。それだけでは収まらず、目の前の女性は背を向けたまま震え続けていた。
怖いの?と尋ねると女性は首を横にブンブンと振って否定の意思を示した。
そしてくるっと周り僕にその表情を見せてくれた。晴れ渡った秋の空よりも眩しい、身に纏った純白のドレスよりも美しい、周囲を彩った華々よりも暖かな笑顔なのだけれどその眼からは涙がとめどなく流れていて笑えるほどのミスマッチを生んでいた。思わず吹き出しそうになるがグッと堪える。こういう時のために持たされたのだなと得心して、胸ポケットからハンカチを取り出して涙を拭いてあげる。うん、綺麗な笑顔だ。と眺めていたのだがまた涙が彼女頬を濡らしていく。再びハンカチを持った手を伸ばそうとするが彼女はゆっくりと首を振る。
確かな意志を持った眼は僕の眼を捉えて離さない。
彼女は口を開いて言葉を紡ごうとするが、緊張のためか声にならない。だが僕には声にされる必要もなく伝わっていた。
幸せです。と
なぜなら僕も同じ気持ちなのだから。
2人が夫婦として祝福されるまで、あと一時間。
なんで…
素直に言ってくれないの…
もう…
教えてあげないよ…
……
あのさ…
だからさ…
抱きしめてよ…
ねえ…抱きしめて…
抱きしめてくれたら話すから…
ねえ…だから…
抱きしめて…
ねえ…ねえ…
……
涙の理由が増えてく前に…
抱きしめてくれよ…
美佐子…
抱きしめてくれ…
俺の疲れきった魂を…
色褪せた夢を…
失った明日を…
抱いてくれ…
美佐子の笑顔に…
抱かれたい…
お前の笑顔に包まれて泣きたいから…
抱きしめてくれないか…
……
魂を抱いてくれ
氷室京介
泣きたい
のに
泣けなくて
後から
ずっと
当時を
思い出して
涙が出る
ことがある。
悲しい
悔しい
辛い
嬉しい
感情は
その時だけの
ものだから
我慢しないで
思いっきり
泣いて
いいんだよ。
#涙の理由