いぐあな

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ファンタジー
300字小説

女神の涙

 王都の神殿。その最奥には、この世界を創造したという女神の像がある。
 司教と巫女が立つ中、王は祭壇に祈りを捧げ、女神の神託を望んだ。
 つうと女神の両目から涙が落ちる。
「精霊の森を切り拓いてはならないと女神様は仰っておられます」
「精霊の森は天然の砦。人の手によるどんな砦よりも隣国に対する強固な壁になるでしょう、と」
 神託を読み解く司教と巫女の言葉に王は頷いて去っていった。

「上手くいったな」
 司教の声に像の後ろから、水の妖精の乙女が現れる。
「これで貴女達の森は無事でしょう」
 巫女がニヤリと笑う。
『ありがとう』
「何、我々は事実を示唆したまでのこと」
「人と精霊の争いが未然に防げるなら女神様も笑って許して下さるわ」

お題「涙の理由」

10/10/2023, 12:01:59 PM