『海の底』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ゆっくりと目を開ける。
あぁ、夢か。
苦しくもない。辛くもない。寂しくもない。痛くもない。冷たくもない。
ただ、どこかあたたかい。
ずっとこのままでいたい。このまま沈んでいきたい。けれども明日はやってくる。
だから、少し。ほんの少しだけでいいから。
自分に優しく。
_海の底_
海岸のコンクリートの端に海に背を向けて立つ。そのまま勢いよく大空を見上げれば重力に従って体が海に吸い込まれていく。真っ青な空と白い雲を見ながらスローモーションのように海に落ちていくのを感じる。バシャン!夏の景色が水に溶けてすぐ、波も私が立てたしぶきの音も小さくなった。人の声も太陽の熱もない冷たくて静かな世界に沈んでいく。深く深く深く。水面のきらめきが遠くなって少し不安も覚えるけれど、我慢していると誰からも何からも逃れて私だけの世界に入れるのだ。
ここでは受験も将来も考える必要はない。私の心をかき乱す同級生も、少し話すだけで生徒を泣かせちゃう特殊技能を持った先生もいない。話したことないけど苦手な陽キャ女子も、数学の解法について話し合う男の子たちも、いつも仲良しのメンバーも、だあれもいない。
ただこの静寂を感じるだけでいい。薄暗い青を見つめるだけでいい。なんの解決にもならない現実逃避だけど。
将来なりたいものなんてこの歳で決まってる人なんかいないし、企業や大学の説明なんて綺麗事しか書いてなくてほんとのことなんかひとつもわからない。これから何十年も同じことをして過ごすなんて途方もなさすぎて想像さえできない。それでも選択の時は迫ってくるから仕方なく選ぶしかない。
でもそれは地上の私がやること。
海の私はそんな面倒くさいしがらみとは関係ないのだ。
絶望はしていない
むしろ落ち着いている
心地のいい静寂
見上げると希望があり
足元は穏やかだ
未知なのに既視感がある
懐かしくはないけれど感動はある
始まりと終わり
微かな予感がする
【海の底】
「ゲームばっかりってどういうこと? 僕は今日朝起きて学校へいって授業を受けて昼休みに宿題をしてご飯食べて、午後も授業を受けて部活をして家に帰ってきて今に至るんだけど、これの何処がゲームばっかりなの? 本当にゲームばっかりの人はトイレする時間すら惜しんでゲームするらしいよ。それに比べたら僕のゲームの時間なんてかわいいもんだと思うんだけど違う? え? 今? 今は深海のステージ進んでる。結構難しいってのに親がうるさいんだよ」
苦しい。海の底に沈んでいるみたいに。
うまく息ができなくて、どうすれば楽になるのかもわからない。
必死になってもがいて、余計に沈んでいく。
このまま諦めた方が楽かもしれない。
何も考えず、抗わず、漂うだけ。
今日は満月だった。海に映る月が、クラゲみたいに
ゆれていた。
海の底
「海底にはお宝が眠ってるんだって」
そういえば、と話を振ると隣の彼は興味津々といった様子で僕の方を見てニヤッと笑った。
土曜の夕方、テレビの特番を見ながら行ったことのない場所についてあれこれと考える時間が僕の楽しみのひとつだ。
最近はその楽しみを共有する相手ができて、この時間が充実したものになっている気がする。
この噂も何気なく聞いた程度の話で、僕も詳しくは知らない。
でも暇つぶしに色々と議論するにはちょうど良い話題だった。
画面には 不思議な海の生物たち と題されて深海の生き物などが紹介されている。美しい形の魚や、とても大きな魚もいてどんな世界が広がっているのかと密かに胸を躍らせた。
「じゃあそのお宝は、きっと竜宮城みたいなお城に大事に管理されていて、認められた人にしか与えられないんだ」
「ふーん。じゃあ竜宮城ってどんなとこだと思う?」
「そりゃあ庭は大きな美しい珊瑚礁が広がっていてお城は太陽の光が反射してキラキラしているんだよ!それでね…」
興奮した様子で熱心に語る彼は先月から隣に越してきた隣人だ。出会ったのはつい最近だが、なんだか昔からの友人だったかのように気が合って、休みの日はほぼ僕の家でテレビを見ながらこういうくだらない話で盛り上がった。
時間はあっという間に過ぎ去って、テレビが消える。
そろそろお開きにしようかと家を出る。
じゃあまた明日ね!
隣人はそう言い残して僕の家を後にした。
翌日、目が覚めると僕は海底にいた。
まさに昨日隣人が言っていた、光り輝く竜宮城が聳え立っている。珊瑚が潮の流れに揺れ、空気の泡が至る所から溢れて幻想的な美しさだ。
ああこれが竜宮城か。ここについてやけに詳しかった隣人はきっとこの海底から来たんだろう。もしかして竜宮城の遣いだったのかもしれない。気にも留めなかったが、たしかに美しい紅色のひらひらと舞うような衣纏っていたし、白銀の体をしていた。
よく見るとこの大きな城には似たような容姿の従者が忙しく働いている。城の周りは黒い鎧を纏っている強そうな護衛が固めていた。
この城の中にお宝がある。そう確信して僕は城の門を開ける。
「一緒に暮らすことになりました金魚です!これからよろしくお願いします」
この広い海の底にはまだ知らない世界が広がっている。
手始めに噂の宝を探し出そう。
見つけ出したら家に帰って彼に見せてやるんだ。
そしたら目が飛び出るくらい驚くだろうな。
そんな隣人の姿を想像して荘厳な竜宮城の門をくぐった。
海の底
深い深い海の底には、まだ人が見たことない生き物が、
沢山いるらしい。
夢を見た。私は太平洋のど真ん中で一人泳いでいる。最初は足のつく程の浅い海だったが時間がたつにつれ深く、深くなっていく。海は気持ちが悪いほどに透き通り、海の底に泳いでいる私の影がゆらゆらと揺れているのが見える。その影に隠れて三葉虫が蠢いていて、まとっている甲羅をギラギラと輝かせていた。だがそれは宝石のようにきれいなきらめきではなく、泥水の中でゆらめくビンビールのような異様な輝きだった。ふと足が動かなくなった。さすがに「ヤバい」と思い必死に暴れようとしたが、思いも空しく海の底へ沈んでいってしまった。海の底は暗かったが、相変わらず三葉虫のギラギラした背中は光の柱をつくっていた。私は海底の圧力に負けそうになり地面を這いつくばって進んでいた。どのぐらい経ったのだろう。私は疲れはて食べ物か何か無いかポケットをまさぐってみると、吸うはずの無いタバコとアメリカの国旗が出てきた。取り敢えず私はそれをしまい三葉虫の背中にのってやすむとにした。ギラギラと品の無い光を放つ背中は苔むしていて、硬くツルツルした表面はあまり気持ちのいいものではなかった。私は上に座って先程のタバコをもう一度出し、何を思ったのか三葉虫の日を浴びているところに先の方を向けた。するとジリジリと音を立て火が着いた。海の中にも関わらず着いたのだ。そういえばさっきから長い間沈んでいるが、多少の息苦しさしか感じていない。私はさすがに恐ろしく思えてこの場所から逃げようと試みた。立ち上がって水面に向かって飛び上がるが、あと少しにも及ばず、手を伸ばすことしか出来なかった。足下を見ると瑠璃色の地面にどんどん足がくいこんでいっている。その時に冷たい風が海に吹き混んできて私を凍えさせようとしてきた。その瞬間視界が風と共に流れていき、三葉虫も粉のようになり、暗闇に消えていった。そしてぼうっと目の前の海が消えて、視界が薄くチョウチンアンコウのような明かりの着いた天井に変わった。私は起き上がり、見てみると布団がめくれ足にまとわりつき、床に転げ落ち誇りにまみれたラヂオの裏のツルツルした部分を触っていた。そしてつけっぱなしだったデスクスタンドを顔に浴び、顔に枕を押し付け寝ている。「あぁ、そういうことね」と私は呟き、ベッドに戻って朝までの短い眠りを堪能した。そして私がこれを書いていて2つほど奇妙におもった事がある。というのは夢というものは簡単に忘れるものなはずなのに、自然と私の潜在意識の中に潜り込んでいる事。もう1つは他の事は一致する点が現実で会ったのに、「タバコ」と「アメリカの国旗」に関しては全くもって身に覚えがないということだ。多分私は無意識にどこかでそれを見ていて、感じ取っていたのだろう。それを踏まえて、起きているときよりも、眠っているときの方が感が働くのではないかと私は考えた。それからというもの私は「人間以外でも夢を見るのか?」「人間は生涯でどれ程の夢を見るのか」というように夢について考えるようになった。だが、こ れ以上追求すると眠れなくなってしまう危険もあるし、哲学的になってしまうので、取り敢えずは「睡眠」を心から楽しむことにした。
「Good Night」
月の海は20個ほどあるという。
地球から見てこれらの海は暗く見え、いかにもそこに宇宙の闇を映す水面があるように思えるけど、実はその暗さの理由は黒い玄武岩にあるらしい。
月ができたばかりの頃、周囲には惑星になりたかったけどなれなかった小さな星がたくさんあった。微惑星と言って、それらの星が引力に引き寄せられて月に落ち、できたのが直径数百kmという大きなクレーター。
巨大クレーターは何億年もかけていくつも生まれ、星の落下が落ち着いた頃、その穴の底から玄武岩質のマグマが噴出した。噴き出たマグマはやがて冷め、玄武岩は暗い平らな海になった。
昨日、月面探査機SLIMが降り立ったのは「神酒の海」の近くにある、「SHIOLI」という白く小さなクレーターだ。太陽電池がうまく働かないSLIMがこの後どうゆう動きをするか分からないんだけど、やがてSLIMは海の底に到達するかなぁと夢想している。
45億年前に月は地球から引きはがされて、地球人は月の底の夢を見た。そこは自分の住処・地球の記憶を持っていて、忘れ去られた過去を私たちに見せてくれる。
風や雨や生き物たち、もしくは地中に埋没していくプレートなんかのせいで形を変えていく地球と違い、数億年の過去をとどめおく、お月様の海の底。
今日また人類のロマンが一歩おずおずと歩を進めて、地球の成り立ち、月の構造、宇宙の歴史、それらを紐解く足がかりに触れる。海の底は記憶と繋がっていて、私達をまたロマンに突き落とす。
余談だけど、クレーター「SHIOLI」は、SLIMが歴史のターニングポイントに挟まれる「栞」となりますようにという願いを込めて名付けられたらしい。その詩情にうっとりしながら、海の底の夢を今日は見ようと思う。
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【43】海の底
海の底は寂しそうで静かそうで少し怖いイメージがある。昔テレビで深海の紹介があってそこでは結構いろいろな生き物が過ごしているとかかなり個性的な生き物がいるのを見た気がする。泳げない自分には水の中は恐ろしいイメージがある、息苦しそうでとても不安になる。呼吸ができないのは恐怖だと思うシンプルに恐ろしい不安を感じるものだ。どうしたものかと思うが。困ったものだ。神秘的なイメージと適応したいきものには多分それぞれの暮らしもあるのだろう。なんとなく離れてみているときは案外楽しいのかもしれない。勝手に楽しんでいるのはそこに生きる彼らにはふかいかもしれないが向こうからすれば知ったこっちゃないかもしれない、寂しいようなそれぐらいがいいような。
「ずっと貴方と一緒に居たい」
学園生活を送る中で、いつしか僕はそう思うようになってしまった。
けれど貴方は人間で、僕は…人魚。
陸でしか生きることのできない者に「僕と共に海へ」だなんて。夢見がちなオヒメサマじゃないんだから。
こんなことを言ったって、貴方にとっては迷惑以外のなんでもないでしょう。
ならばこの想いは、内に秘めたままにしなければ。
深い深い海の底へ。
誰も知らない、寒いところへ。
#海の底
息を吐くとブクブクと音を立てる。
視界がぼやけても美しく映る景色は
汚れた世界を隠してくれる
僕は綺麗な深海で世界を見るよ
綺麗な所だけを見ていたい
そして僕は眠る
海の底で─────
海の底
そろそろ考えるのが嫌になってきた。
このまま目の前の海に飛び込んで、深く深くまで沈んでしまえば、理想郷に辿り着けるだろうか。
ときどき同じ夢を見る。
自分は広大な海の中にいて、どこへだって自由に泳いでいける。しばらく気の向くままに、水の心地良さを感じて泳いでいくと、必ず最後には海の底にたどり着くのだ。
そこは現実とは違って、明るい世界。好きな食べ物がずらりと並び、好きな本、好きなゲーム、好きなもので埋めつくされている。毎日小言を言ってくる煩い上司も、嫌味な顔して私を遠ざけてくる同僚も、ここにはいない。
全てが自分にとって都合がいい世界。こんな世界は幻想に過ぎず存在しないと、全てわかっているはずだ。
わかっているのに。
それでも私はこの海の底に希望を抱いてしまう。
今日のお題は〝海の底〟だという。
海が好きだ。
特に泳げもしないし遊びたいわけじゃない。
水の音、そこに生きる生命が好きなだけだ。
深く深く
太陽の光さえも届かぬ場所で生きてるいる者たちは
とても尊い。
私は地上で立って歩ける足を思うように動かせず
陸で溺れているというのに。
懸命に命を繋げて後世に残そうとするものが価値ないわけなかろう。
ゆっくりゆっくり沈み
その命が尽きても
他の生命体の糧になり海に還る
そういう風に
この命が尽きたときに他の子らの糧になりたかった。
けれど、そう上手くいく子らは立派に生きている子らなのだろう。
歴史にも人の記憶にも残らぬ私など
この世に存在してる者の中で1番価値のない生き物ではなかろうか。
ふとたまに鬱がひどかった頃に精神が戻る。
私は立って歩ける足を持ち、前を向いて歩けているのに、
もう足ばかりを見て太陽の光を嫌って外に出れない事などないのに
鬱というわだかまりは時折私を無価値な生き物というレッテルを貼ろうとする。
海の深い深いところでは1秒も無駄にせず懸命に生きているもの達がいるというのに。
「困りましたわ。ええ、困りました」
「どうしたのです、お嬢さん」
海岸沿いに座り込んで嘆いていると、空色の服を着た青年が声をかけてきた。どこかの制服なのか、上下空色、帽子も空色。
「友人に手紙を届けたいのだけど、私はこれ以上動けないの。とても困っているわ」
「手紙ですか」
「ええ、そう」
青年は、私が持っている手紙をジッと見たあと、私の視線に合わせてしゃがみこんだ。
「僕が届けましょう」
「貴方が? なぜ?」
「僕は郵便屋です。それに、貴方のご友人が住む場所まで、飛んでいく羽根もある」
彼の背中から、真っ白い翼が広げられる。触れたら消えてしまいそうなほど、柔らかそうな翼だ。
「あら、そうなの。奇遇だわ」
「ええ、本当に。なので、手紙をお預かりします」
「お願いね。友人は空の上の、鈴白というお店にいるわ」
彼はおまかせを、とはにかんで早速空に向かって飛び立った。白い羽根が傍に落ちてくる。羽根を手に取り、太陽に透かしてみる。やはり、消えてしまいそうなほど美しい。
「羨ましい……私にも、羽根があったなら」
海の底に住む私と、空の上に住む友人。私たちが会えるのはこの海岸でだけ。それも月に一度か二度。
それ以外は手紙でやり取りをしているけれど、今のところ自分が海岸のどこかに手紙を隠して、相手が隠された手紙を見つけて持って帰るしか方法がない。すぐに届けたい時は、どうしても焦れったいのだ。
だから、私は悔しい。羽根があったなら、私はもっと自由なのに。
「……いけないわ。海が荒れる前に早く帰りましょう」
風が徐々に強くなる。
私は無事手紙が届くのを祈りながら、海の底へと帰った。
「海の底」
もしあの海に身を投げたなら何が見えるだろう
空気のかわりに海水で身体を満たして
海の底へと沈んでいきたい
そこから見る光はどんな色をしているだろう
遠く 弱くなっていく光を見ながら
海の底で死んでいきたい
夜中、ふと目が覚める。
また夢を見た。
ここ最近は決まって同じ夢を見る。
貴方と私の過去。
幸せに笑い合っていた頃の夢。
過去の夢を見て、過去を思い出して。
過去の私にまで自信をなくしていく。
欠片しかなかった私の自信は粉々に砕けてしまう。
思考が沈んでいく。
昏い深い海の底まで。
今更悩んだって変わらないのに。
今更自信をなくしたってもう助けてはくれないのに。
思考が底についた。
いつのまにかまた眠っていたようだ。
そんな私を海の底から引き上げてくれるのも、
いつだって貴方との記憶なのだ。
海の底
暗い深海に一筋の輝き。そんな存在になりたい。
~海の底~
私たち人間が普段いられる場所じゃない。
深い海の底。
もうひとつは、太陽の光りが水面に揺れる
浅い海の底。
どちらを想像するものだろう?
手に届くもの
手の届かぬもの
目に見えるもの
目に見えないもの
なにを知り、なにを得たいのか
それは自分が決めていい。
「海の底」
息をすることも忘れて
君に会うために溺れる。
【#26】