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海岸のコンクリートの端に海に背を向けて立つ。そのまま勢いよく大空を見上げれば重力に従って体が海に吸い込まれていく。真っ青な空と白い雲を見ながらスローモーションのように海に落ちていくのを感じる。バシャン!夏の景色が水に溶けてすぐ、波も私が立てたしぶきの音も小さくなった。人の声も太陽の熱もない冷たくて静かな世界に沈んでいく。深く深く深く。水面のきらめきが遠くなって少し不安も覚えるけれど、我慢していると誰からも何からも逃れて私だけの世界に入れるのだ。
ここでは受験も将来も考える必要はない。私の心をかき乱す同級生も、少し話すだけで生徒を泣かせちゃう特殊技能を持った先生もいない。話したことないけど苦手な陽キャ女子も、数学の解法について話し合う男の子たちも、いつも仲良しのメンバーも、だあれもいない。
ただこの静寂を感じるだけでいい。薄暗い青を見つめるだけでいい。なんの解決にもならない現実逃避だけど。
将来なりたいものなんてこの歳で決まってる人なんかいないし、企業や大学の説明なんて綺麗事しか書いてなくてほんとのことなんかひとつもわからない。これから何十年も同じことをして過ごすなんて途方もなさすぎて想像さえできない。それでも選択の時は迫ってくるから仕方なく選ぶしかない。

でもそれは地上の私がやること。
海の私はそんな面倒くさいしがらみとは関係ないのだ。

1/20/2024, 4:27:07 PM