星蒼楼

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海の底

そろそろ考えるのが嫌になってきた。
このまま目の前の海に飛び込んで、深く深くまで沈んでしまえば、理想郷に辿り着けるだろうか。

ときどき同じ夢を見る。
自分は広大な海の中にいて、どこへだって自由に泳いでいける。しばらく気の向くままに、水の心地良さを感じて泳いでいくと、必ず最後には海の底にたどり着くのだ。
そこは現実とは違って、明るい世界。好きな食べ物がずらりと並び、好きな本、好きなゲーム、好きなもので埋めつくされている。毎日小言を言ってくる煩い上司も、嫌味な顔して私を遠ざけてくる同僚も、ここにはいない。

全てが自分にとって都合がいい世界。こんな世界は幻想に過ぎず存在しないと、全てわかっているはずだ。
わかっているのに。
それでも私はこの海の底に希望を抱いてしまう。

1/20/2024, 3:34:09 PM