あめ

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月の海は20個ほどあるという。


地球から見てこれらの海は暗く見え、いかにもそこに宇宙の闇を映す水面があるように思えるけど、実はその暗さの理由は黒い玄武岩にあるらしい。


月ができたばかりの頃、周囲には惑星になりたかったけどなれなかった小さな星がたくさんあった。微惑星と言って、それらの星が引力に引き寄せられて月に落ち、できたのが直径数百kmという大きなクレーター。


巨大クレーターは何億年もかけていくつも生まれ、星の落下が落ち着いた頃、その穴の底から玄武岩質のマグマが噴出した。噴き出たマグマはやがて冷め、玄武岩は暗い平らな海になった。


昨日、月面探査機SLIMが降り立ったのは「神酒の海」の近くにある、「SHIOLI」という白く小さなクレーターだ。太陽電池がうまく働かないSLIMがこの後どうゆう動きをするか分からないんだけど、やがてSLIMは海の底に到達するかなぁと夢想している。


45億年前に月は地球から引きはがされて、地球人は月の底の夢を見た。そこは自分の住処・地球の記憶を持っていて、忘れ去られた過去を私たちに見せてくれる。


風や雨や生き物たち、もしくは地中に埋没していくプレートなんかのせいで形を変えていく地球と違い、数億年の過去をとどめおく、お月様の海の底。


今日また人類のロマンが一歩おずおずと歩を進めて、地球の成り立ち、月の構造、宇宙の歴史、それらを紐解く足がかりに触れる。海の底は記憶と繋がっていて、私達をまたロマンに突き落とす。



余談だけど、クレーター「SHIOLI」は、SLIMが歴史のターニングポイントに挟まれる「栞」となりますようにという願いを込めて名付けられたらしい。その詩情にうっとりしながら、海の底の夢を今日は見ようと思う。





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【43】海の底




1/20/2024, 3:48:35 PM