『欲望』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
僕には、はっきり言って、いろんな欲望がある。
仕事に関すること、プライベートに関すること
将来についても。
あと、何年生きていられるかわからないし、
あと、好きなことが、どれくらいできるか
わからないし。
果たして、明日も僕にとって、一日が普通で
あるか、わからないし。
叶えられること、叶えたいこと、
一つずつ、目標をもって楽しみながら、
挑戦していく。僕のありのままに。
人は誰しも欲望というものがある。
私はそれに例外は無いと思っている。
どんなに聖人と謳われていても、どんなに無欲な人と言われても、どんなに純粋無垢な人だと言われても、心のどこかには必ずその人の欲望があるのだ。そういった意味では人は完璧には到底なり得ないのだと思う。
ただ、私はそれでいいと思う。完璧な人間などもはや人間では無いのではないか、私はそう思ってしまう。
生き物とは未完成なものだ、だからこそ美しい、だからこそ進化していける。それでもなお完璧になりたいと思うのは、やはり人間に欲望があるからなのか、それとも単に人間にプログラムされているだけの潜在意識だからなのか、それは少なからず私には分からない、いや、私は分かろうとも思わないだろう。
言ってしまった。
とても軽率な発言だった。
ベッドの中で微睡んでいると、隣から動く気配を感じた。私は咄嗟に隣の彼の手を掴んでいた。本当は手を動かす気にもならないくらいに気怠かったけれど。私の手は、いつの間にか彼のソレに重なっていた。
彼は体を起こした状態でこちらを振り返った。その目は真ん丸としていて、驚いていることがありありと分かった。
意外だったのかもしれない。私も今、自分の行動をそう感じているから。
彼の指が、私のソレを絡め取った。
「何? 足りないの?」
ニヤついた顔が、近づいてきた。唇が重なる前に、私は首を振った。
「じゃあ何?」
勝手に絡め取って、人を弄んでいた手が離れていく。彼はこちらを変わらず見ているが、その目には先程までの熱はこもっていなかった。冷え切った彼の目が、私はあまり得意ではなかった。ニヤついた顔は引っ込み、明らかに不機嫌なことを隠そうとしていない。
いつもの私なら飲み込めた。我慢して、一人になった途端に泣いて発散させてしまう。気分がスッキリするわけではない。ただ行き場に困った感情をどう処理していいか未だに分からないだけだ。
ただ、今日はどうしても飲み込めなかった。
「そばにいて」
口から溢れてしまってから気がついた。自分でどんな表情をしていたか分からない。でも、目を見開いた彼から次第に表情がなくなっていくところを見て、私は取り返しのつかないことをしたと思った。
「何で?」
必要ある? そんな面倒なこと。
声には出してないが、彼の目はそう訴えているように思えた。
「ごめん。悪いけど明日早いからさ、今日は帰るよ」
明日早いから何だ。いつもそう言って私を置いてきぼりにする。朝を一緒に迎えたことなんて数えるだけじゃない。ここから通勤しちゃえばいいのに。一層のこと同棲してしまおう。というか今日何の日か覚えてるの。プレゼントは期待してなかったけど、もしかして何も言ってくれないわけ。私が今日に至るまで結構頑張ってアピールしたんだけど気が付いてないの。まさか、他にいい子でもできたの。
言いたいことは山ほどあるのに、全て飲み込んだ。後々溢れてしまわないように、厳重に蓋をして、重石を乗っけて、紐でぐるぐる巻きにして。心の奥底に放り込んで、目の届かないところに追いやった。
「そっか。引き止めてごめん」
「こっちこそゆっくりできなくてごめん。また連絡するから」
彼は背を向けて着替えているから、私の方は見ていない。それでも口角を上げて努めて明るく振る舞った。鈍感な彼は、いつも通り全く気が付かない。
「じゃあね」
最後にチラリとこちらを見て、部屋から出ていった。遠くの方で鍵の閉まる音が聞こえたのを確認して、枕に顔を埋めた。
眠い。疲れた。もう何もかも忘れてしまおう。
頬を伝わず枕に染み込む涙をそのままに、目を閉じた。
今日、私の誕生日だったのに。
… … … … … …
【欲望】
--物質的・肉体的に常により良い状態に自分を置きたいと思い続けてやまない心。
(『新明解国語辞典 第六版』三省堂 より引用)
追伸:悩んで思わず調べた結果、さらに混乱して結局迷走しました。
欲望。
こう書くとどうしてこうも俗くさくなるのだろう。
強く望み欲する。
何一つ悪いことではないはずだ。
人間の言動理由の一つである。無欲からくる徳があるのは知っているが欲望にもまた人の世には必要であり不可欠。ともすれば、口にし書いた途端に卑しい気持ちになる。
この心理は何処からくるのだろう。
欲望
欲望
はっきり云って、私は、欲望の塊です…真剣な眼差しで私を見つめ乍ら、そう告げた、あなた…欲しいと思ったら、どんな事をしてでも、手に入れるんです…今一番欲しいのは、先輩なんです…初めて出逢って、先輩に色々教えて頂いて、時々ミスをすると、優しくフォローして貰って…そしたら、段々好きになって、でも、先輩にとっては、私はただの後輩でしかなくて…でもどうして..も諦められなくて、どんどんこの気持ちを抑えきれなくて…だから、今日は、先輩を…
足るを知る。
世界にはモノがあふれている。
中でも、日本の品揃えはヤバすぎないか。
カップラーメンひとつとっても、種類が多すぎて選べない。
悩んでしまう。…そんなにいる?
中には、こんなカップラーメン誰が食う?みたいなんもあって、遊び半分で作ってんのか?と勘ぐってしまう。
個人的には、カップヌードルがあれば十分だけどな。
でも、シーフードが好き。
都庁にプロジェクションマッピング。
ピカピカさせて映像を見せるだけで総じて18億円かかるそーだ。
下手な映画よりコストがかかってる。
雷もオーロラも無料だぞ。
都内にはたくさんのホームレスの人とか、生活困窮者がいるのに。
人が生きることが第一優先だよな。
鑑賞料取って、それを財政に回せばいい。
だけど、人は欲望の生き物だから、
いろんな種類のカップラーメンも食べたいし、
綺麗なプロジェクションマッピングだって見たい。
食べたことのない珍しいラーメンがあれば食べてみたくなるし、壮大な光のShowが無料なんて願ってもない。
素晴らしい世の中だけど、歯止めが効かなくなりそーで、ちょっと不安。
老子は言った。足るを知る。
そんなにたくさんの種類のラーメンがなくたって、デッカイ建物をスクリーン扱いしなくたって、私達は幸せに生きていける。
でも、娯楽がいろいろあればあるほど、その幸せは増幅されるだろう。
人間の欲望は尽きることがないから、ずっと何かが足りないと錯覚してしまうのだろう。
だからつまり、無理や無駄や無茶がなければいいのかな。
全員が、とはいかずとも、たくさんの人がそれを楽しめるのなら、それは決して無駄じゃない。
日本中が停電になるほどの無理な電力供給はせずに、
コーラ味のラーメンなんて無茶なレシピは考えずに。
欲望のままに生きてちゃ、人間だって単なる獣だからね。
ただ、あれ…居酒屋の残飯処理はちょっとな。
…いや、居酒屋が悪いんじゃなくて、食えもしないのに次々と注文する奴ら。
海賊かっての。食べ残して貴重な食料を無駄にする。
足るを知れ。一品二品で十分なはずだ。
いや、何品頼もうと勝手だが、頼んだからには全部食え。食えるだけ頼め。
まあ、たまには酔っぱらって細かいこと考えないで、自分の好きなもん頼んで失敗することもあるか。
だけどせめて失敗した時には、世界には満足に食べられない人達がたくさんいることを、ほんの少しでも思い出して欲しい。
ダイエットの励みにも…なるかもよ?
#欲望
あれがしたいこれがしたい。あれが欲しいこれが欲しい。けどこんなのは嫌。
ひとつ欲しいものを手に入れると、次から次へと新しく欲しいものが出来て、欲しくて手に入れたはずのものには目もくれない。
私が本当に欲しかったものは、何なのだろう...
欲望
「私なんて欲望まみれで自分のことしか考えれない 最低だ…」
ついさっきまで 欲望まみれ というのは
悪いことだと思っていた だけど改めて
考えてみたら違うと思った
欲望は大切 「あれもほしい」
「もっと満たされたい」と思うのは自分のこと
しか考えてない それは悪いことではない
自分のことだけを考えるのは大切
他人のことばっかり考えて自分の欲を満たせず
我慢する するといつか爆発したりしてしまう
人間は皆自分のことが大好きなんだそう
だから 大嫌いなあのこも 仲のいいあこのも
私より自分のことが大切なんだろう
じゃあ私のことは 誰が好きなの?私のことを一番大切に 大好きでいてくれる人は?
自分自身だ
「私なんか」「いない方がいい」
と思わないで せめて自分だけは自分のことを好きでいよう じゃないと本当に私は誰からも必要とされていない人間になってしまう
「私なんか必要じゃない」
違う
一人一人自分のことを好きでいて
そんな自分を必要としよう
承認欲求はあってもいい
ただ承認欲求が強い人は「認めてもらいたい」ではなくまず自分のことを認めてあげよう
あれもこれも。
あとこれも。
足りない足りない。満たされない。
そして、全てを手に入れたら…?
ん~。やっぱ君以外全部いらないや。
お題 : 欲望 #46
欲望で動く
満たされるために
心は さようなら
辿った道は間違いなんか じゃない
ただ もう一度だけ
光が差し込む場所へ
心を やろうかな
#45 欲望
あれも、これも、この手に欲しい。
以前逃した願いを満たせるチャンスが、今もう一度目の前にあるからこそ、彼はどうしたって諦められなかった。
「もしかしたら」「今度こそ」
そんな思考がから回って、のめり込んで、積もり切って。
もう後には引けぬと、とある手段にまで手をつけた。
──数分後。
その手のひらの中で最後に残ったのは、身の丈から破綻した者の放心と、尚も報われぬ残骸であった。
【欲望】
君は私に笑いかけてくれる。
嘘偽りのない、太陽のようにあたたかな笑顔で。
私はそれが嬉しくてたまらなかった。
君の笑顔が大好きだ。
それを見るだけで私は幸せだった。
これ以上はもう何も望まないと、
そう思っていた。
そう思っていた、のに――――
君と過ごした時間や思い出が増えるにつれて、どんどん物足りなくなってきた。もっと私に笑いかけて、もっと私のことだけを見て、私のことだけを考えて。
心ががんじがらめになる。どんどん黒く染まっていく。こんなはずじゃなかったのに。深く深く、沈んでいく。欲望がみるみる溢れてくる。こんな自分は嫌だ。いつか君をめちゃくちゃにしてしまうかもしれない。このままじゃだめだ。変わらなきゃ。だめだ。だめだ、だめだ。理性が私を必死に引き留めようとする。欲望が私に甘く囁く。心が、壊れていく。支配されていく。
ごめんね、もう私の心は潤わない。
お題【欲望】
題名【緋色の渇き】
たまに、本当にたまーにだけどふとした時に、
“いままでコツコツと貯めてきたお金を、私が今欲しいもの全てにバーっと注ぎ込んで、ぽっくりと逝ってしまいたい”
そんな風に考えてしまうことがある。
目に付いた「欲しい」を色々と我慢して、
お財布のなかで、そして見知らぬどこかで眠っている私のお金。
もしものため、将来のためにとそう短くはない年月をかけて蓄えてきた割と大事なはずのお金。
けれど、「じゃあ実際にそれを全部使ってまで、何が欲しいの?」って聞かれてもなぜだか何にもしっくりこなくて。
結局のところ、私は何かを得たいわけじゃないし、何かに消費したところで代わりに満たされるものはきっと何もない。
多分、単純に、自分自身を放棄してしまいたいだけなのだ。
欲望。
怠惰に過ごしたいって、いつも思っている。できるだけ楽な様に、自分だけでも得をしたい。
私はいつも感じている。楽をするのってとても気持ちがいいって。一瞬の背徳感でも、数秒の娯楽でも、例えしっぺ返しにあったとしても、欲の満ちる気持ちの良いことが続けばいいって思ってる。君の歪んだ表情も、怒った声も、呆れた目線も、吐かれた罵倒も、軽蔑の目だって気にならないくらいには、図太い神経を持っているんだと思う。いや、持つしか無かったんだと思う。
自分の欲が見えるってのは面白くて、あなたの欲だって見えてしまう。今は楽をしたい時、今は優しくされたい時、今は黙って欲しい時、今は話したい時。あなたの感情は丸見えで、画面に吹き出しが浮かぶかのように鮮明な望みが湧いている。
私の欲望を叶えるより、君の欲望を叶えよう。その方が円滑で順調で円満な道を辿って、関係を構築できるから。
その代わり、私の欲望には蓋をかけよう。あなたにみせてしまう前に。そうやって生きていると、段々と欲望なんて分からなくなってくる。
欲望が欲しい。この欲には替え難い願望が、頭の中をいつも駆け巡っている。
欲望
欲望が欲しい。周りの人の言葉とか、それの一般的な価値とかを全部無視してでも捕まえたくなる「何か」が欲しい。もしそれが手に入らないとわかったとして、絶望して死ぬなんてのももう、生ぬるい。だって、心の底から湧き上がる欲望は、まるで津波が押し寄せるように僕を飲み込む。欲望に毒された僕は、すでに正気もなくなって、それ以外は考えられないんだ。ただ一つ、渇望した光が僕のはるか頭上に浮かんでいるのがみえるだけ。僕はそれが存在する限り、光に向かって走って走って飛んでいく。たとえ犯罪者になろうと幽霊になろうと僕は追いかけ続けるだろう。それほどまでに僕の心を揺り動かす「何か」があれば、僕の人生はそこらの映画にも負けないくらい魅力と刺激に溢れるものになるはず。
「欲望、魅力、刺激……ねぇ。オナ禁でもしたら?」
「初めと終わりしか聞いてなかったろ、君」
「まさか。正気じゃないとか、犯罪とか、飛ぶとか生とか言ってたじゃん。真面目な話、恋の一つでもすればいい」
「もういい。君に話した僕が馬鹿だったよ、バーカ。僕はもっと知的で崇高な話をしてるんだ。性欲なんかと一緒にしないで」
「はぁ。もうすぐ高校にもなって厨二病はモテないよ、知的で崇高なお馬鹿さん」
いっその事手に届かない人であればよかったのに
あなたは簡単に手に入ってきてしまって
でもそれは誰にでもそうで
お互いの欲望をぶつけている間だけ
「好き」
だなんて言うから泣けてきて
「泣いてるの、可愛い」
違うの、違うよ、
悔しくて、それでもまた繰り返す
欲望? 最初に断っておこう。文章長いぞ。自分の投稿の過去文を一部引っ張って来てる。欲望に関しては誤解が多い上に、欲望が「強い力」である割には、曖昧に扱われているからだ。まず「動機」と「欲望」は別物だが、ほぼ区別されないまま認識されていることが多いようでもある。動機と欲望が愛と思いやりの上に合致しているとき、人間は「生まれながらの凄さ」を発揮する。しかもそれは清しく温かく、力強い。欲望は大切な力のひとつだ。発揮する方向や使い方を間違えないように、注意深くいることは、きっと役に立つ。…まあ、関心も縁なんだけどね。
「幸せ」のお題のとき、欲について書いた。ここに持って来てみる。↓
人間にはいくつかの欲やねがいがあるという。諸説ある。
役に立ちたい、認められたい、愛したい、愛されたい、生きていたい。これは「肯定性」に関する心のねがいと言える。
眼耳鼻舌身で五根とかもある。解釈はいくつかあるようだが、心に関するものと身体に関するものとがある。肉体を持つ以上、当然のものとして食欲、睡眠欲。物理と精神の間にありそうな色欲と財欲と名誉欲。食欲と睡眠欲は生きものとして生存するためのものであり、なんなら色欲だって生きものが持ち合わせている必須性を含んでいる。財欲と名誉欲は両方とも、その底流に本当のねがいを隠している。
食べて美味しいのは幸せだが食べ過ぎれば苦しいし、質の良い眠りは元気になるけど眠り過ぎると疲れる。性の表現は心と意図の方向が違えば幸福から地獄まで顕す強力な諸刃の剣だ。財は生活の安心になるが財があり過ぎればイヤな経験をしやすいし、名誉は自己肯定を支えてくれるが名誉に囚われれば自由が遠ざかる。つまるところ、欲に執せず自分にちょうど良いバランス点に居ることが「この世にある幸せ」に触れるありようなのだろう。物理的身体を持つ人間であるうちは、欲がまったく無いという状態は、無力ですらある。受け取れないなら喜べない。望むものが無いなら前に進むこともできない。「欲を滅せば」悟りに至る? 何のために悟るのか?
釈迦牟尼は不幸なんかじゃなかったはずだ。
抜粋ここまで。↑
「欲望」という言葉にあまり良くないイメージを持つ人はたぶん少なくないのだろう。もしかして仏教で言う「煩悩」という言葉みたいに、なんだか違う「イメージ的なズレ」があるのかもしれない。「欲し望む」「煩い悩む」は、人間なら必ずというほど出会うものだし、それ自体が悪いなどということは絶対ない。
いつからよろしくないイメージが持たれたのかはわからないが、はたして「欲望」のしわざかどうか、ある意味で典型的な人間社会のものを眺めてみる。
軽薄な動機・低俗な手段・残酷な行為がセットになって、物理的あるいは立場的に「自分より強力じゃない」、つまり「こいつを虐めたって自分の脅威にはならない」などと品定めした相手を「侵害」する。はっきり言って“仕置きが必要”な愚行だ。
さて、このパターンは「欲望」なのだろうか?
むしろ、それを後押ししているのは、「自分は無価値」「自分は無力」といった「否定的自己認識」なのではなかろうか? 特に無力感は、抑圧そのものとして心に作用する。無力感にともなう感情は、「前向きな考えを見つけて行動選択に昇華」されないままだと、いつか「破裂」する。それは「侵害行為」というかたちを取ってしまうことも多いのじゃないか?
「欲し望む」と「煩い悩む」と「破れ裂ける」、どれも同じものなんかではない。
心が「破れ裂ける」ことの無いように、
「煩い悩む」ところから成長できるように、
自分の内へ本当の力を「欲し望む」ことで、
ねがいを叶える推進力に手を伸ばせる。
その果実はよきものだ、多分。
『欲望』
彼女の頬を伝う涙。月明かりに照らされて輝く雫が溢れてはこぼれ落ちていくのを見て、俺はようやく自分の行為が愚かなことだったのだと悟った。
欲望のままに掻き抱いた細い体躯が、腕の中で小さく震えている。
「……ごめん」
ぽつりと零した謝罪の言葉に、彼女が俯けていた顔をゆっくりと上げる。その瞳は恐怖に揺れていて、口元には赤く血が滲んでいた。先程、俺が乱暴に口づけてしまったせいで出来た傷。今更湧いてきた罪悪感に駆られてその紅にそっと触れれば、彼女は大げさに肩を跳ねさせた。
すっかり怯え切ってしまった様子の彼女に、俺は居た堪れなくなってその体に回していた腕を離した。
「ごめん、ごめんな」
じわりと、目の前が滲む。彼女が目を見開いたのが、ぼやけた視界の中でもなんとなく分かった。泣きたいのは彼女の方だというのに、俺に涙を流す資格なんてないと分かっているのに、自分の情けなさを痛いほど実感してしまえばもう堪えることは出来なかった。せめて嗚咽は漏らさないようにと唇を噛んでいれば、彼女の手が俺の頬にそっと添えられた。
「…大丈夫、大丈夫だよ」
彼女の優しい声が、ひっそりとした夜の空気に響いて溶けていく。思わず目を向ければ、そこにはどこかうっとりとした表情の彼女がいた。
「ごめんね、もう別れるなんて言わないから。…だから、泣かないで?ね?」
鮮烈な色彩が滲む唇が紡ぐ甘い言葉。
思考の全てが、彼女の声に持っていかれる。
駄目だ、これ以上彼女の側にいたら、また彼女を傷つけてしまう。
でも、彼女がそれでも良いというのなら、離れる必要なんてないんじゃないか。
でも、だって、でも。
ぐるぐると考えを巡らせる俺に、彼女は優しく口付ける。
柔らかな感触とふわりと香った甘やかな香りに、僅かに残っていた理性が一つ残らず掻っ攫われていく。
「ほら、帰ろう?」
いっそ幻想的だと思えるほどに綺麗な笑みを浮かべる彼女。その手を取らないという選択肢は、もう今の俺には無かった。
重ねた手から伝わる仄かな体温が、今はただどうしようもなく愛おしくて仕方がなかった。
望んだら望んだ分だけ 僕ら 離れられるから
きっと 喧嘩するために 出会った訳じゃない
欲望
ドンヨクバール!
オルーバ様ー!
大好きー!