初夕 紺

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欲望

 欲望が欲しい。周りの人の言葉とか、それの一般的な価値とかを全部無視してでも捕まえたくなる「何か」が欲しい。もしそれが手に入らないとわかったとして、絶望して死ぬなんてのももう、生ぬるい。だって、心の底から湧き上がる欲望は、まるで津波が押し寄せるように僕を飲み込む。欲望に毒された僕は、すでに正気もなくなって、それ以外は考えられないんだ。ただ一つ、渇望した光が僕のはるか頭上に浮かんでいるのがみえるだけ。僕はそれが存在する限り、光に向かって走って走って飛んでいく。たとえ犯罪者になろうと幽霊になろうと僕は追いかけ続けるだろう。それほどまでに僕の心を揺り動かす「何か」があれば、僕の人生はそこらの映画にも負けないくらい魅力と刺激に溢れるものになるはず。
「欲望、魅力、刺激……ねぇ。オナ禁でもしたら?」
「初めと終わりしか聞いてなかったろ、君」
「まさか。正気じゃないとか、犯罪とか、飛ぶとか生とか言ってたじゃん。真面目な話、恋の一つでもすればいい」
「もういい。君に話した僕が馬鹿だったよ、バーカ。僕はもっと知的で崇高な話をしてるんだ。性欲なんかと一緒にしないで」
「はぁ。もうすぐ高校にもなって厨二病はモテないよ、知的で崇高なお馬鹿さん」

3/1/2024, 2:27:37 PM