あれも、これも、この手に欲しい。以前逃した願いを満たせるチャンスが、今もう一度目の前にあるからこそ、彼はどうしたって諦められなかった。「もしかしたら」「今度こそ」そんな思考がから回って、のめり込んで、積もり切って。もう後には引けぬと、とある手段にまで手をつけた。──数分後。その手のひらの中で最後に残ったのは、身の丈から破綻した者の放心と、尚も報われぬ残骸であった。【欲望】
3/1/2024, 2:32:14 PM