“計画”は確かにあった。
だが、今慌てて確認した文字盤の上では、短針がぐるりと頂点を過ぎているではないか。
昨晩の疲れきった頭でも、こうしてアラームまで掛けて置いたというのに、だ。
……であれば、それでもまあいいか。
もういっそ諦めて、もう一度この惰眠をむさぼることにしてしまおう。
まだ半日も残っているのだ。
そうして「ゆるく過ごす」というのも、自分にとっては充分な贅沢品となってくれるのだし。
【失われた時間】
自分自身、胸を張れるほど立派な大人になんて、まだまだなれた気がしない。
たくさん迷惑をかけてしまったことも、困らせたことも、数え切れないほど鮮明に浮かんでしまうのだ。
本来なら、日頃から感謝をカタチにするのが良いとも分かる。
きっかけを日付へ託す理由は、こそばゆさ。
慣れない贈り物をするのも、正直恥じらいが残る。
それでも今日は、ずっと見守ってくれた「あなた」のために、ありがとうを伝えよう。
【子供のままで】
好きなもの。大好きな、もの。
誰かに分かってもらわなくても、別にいいのだ。
己のこころが受け取るまま、感じるがままに、この想いを守り続けていれば。
それでも、いつか自ら手放すことになる瞬間は、きっと訪れてしまう。
ほどけるように執着も薄れ、どこか遠くへ消えてしまっても。
今こうして焦がれ過ごした時間こそが、大切な宝物であったと言い切れる。
時には、熱く語ろう。
大きく逃した息まで、強く吸い込んだ。
【愛を叫ぶ。】
いつまでも変わらないものは、意外と少なくて。
どれだけ大切に想い、あらゆる手を尽くしていても、突然すり抜けていくことも時にはあって。
自分から離れる気は無くても、それを動かす周りの世界がそうならないとは限らない。
スクロールで辿る画面の中、ずらりと並ぶ「あの時」の平穏な日々を残した記録が、もっと遠い過去のように考えてしまうのが苦しい。
いつか、こうやって昔を懐かしむ気持ちも薄れて、なにも感じなくなってしまう人になるのかな?
どうにも信じられずに眺める私だけ置き去りだ。
まだ今も、“ここ”に居られたら良かったのに。
不思議とこんなに後ろ向きな感情を抱くのは、少し肌寒い夜のせいだと思いたいんだけどな。
【一年後】
気の合う友人のなかに居たのが、あの人。
何気ない日常から一転、まるで不意打ちのように「それ」が動き出したのを覚えています。
その日からは勝手に気まずさを感じ始めて、そろそろと視線が後ろ姿を追ってみたりもして。
今までどうやって話しかけていたのかと考えてみたのに、もう何故だか少しも思い出せそうになくて。
こころが揺れる瞬間って、本当にあるんだね。
今日も私は、密やかに困った想いを抱えているのです。
【初恋の日】