NoName

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君は私に笑いかけてくれる。
嘘偽りのない、太陽のようにあたたかな笑顔で。
私はそれが嬉しくてたまらなかった。
君の笑顔が大好きだ。
それを見るだけで私は幸せだった。
これ以上はもう何も望まないと、
そう思っていた。
そう思っていた、のに――――

君と過ごした時間や思い出が増えるにつれて、どんどん物足りなくなってきた。もっと私に笑いかけて、もっと私のことだけを見て、私のことだけを考えて。
心ががんじがらめになる。どんどん黒く染まっていく。こんなはずじゃなかったのに。深く深く、沈んでいく。欲望がみるみる溢れてくる。こんな自分は嫌だ。いつか君をめちゃくちゃにしてしまうかもしれない。このままじゃだめだ。変わらなきゃ。だめだ。だめだ、だめだ。理性が私を必死に引き留めようとする。欲望が私に甘く囁く。心が、壊れていく。支配されていく。
ごめんね、もう私の心は潤わない。



お題【欲望】
題名【緋色の渇き】

3/1/2024, 2:31:28 PM