『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
舞い落ちる桜 夢を見た
遥か自由なあの空で
薄ピンクの翼に身を任せると
優しい風がキスをする
このまま あの光の先へ飛んで行けば
きっと楽園まで行けるはず
〜楽園〜
楽園 El Paraíso
地球は本来なら楽園である
多く生き物が進化と共に
絶滅を繰り返し生きてきた
人類は他の動物よりも
頭脳を進化させ
様々な科学技術を生み出して
便利な工業製品を生産し
生活は格段に楽になり
社会は成熟して来た
と思いきや
まだ愚かな人間は
同じHomo sapiens という同じ種の中で
限られた資源を巡り奪い合い
殺し合いをしている
楽園である地球
本当に美しい楽園の地球が来る日を
私は待ち望んでいる
愚かな人類よ
いつ目覚めるのか
早く目覚めてくれ
楽園に辿り着く道の途中
あと何度
人を地獄につき落とせばいい?
どんなけ考えても楽園というものが
僕にはわからない
【楽園】
#5
題.楽園
あちらには天使も死神もいる。
その存在なんて紙一重。
椰子の葉を揺らす風
白い砂浜に寄せる波
青い青い海 水平線
色鮮やかな花々 鳥や蝶
パラダイスアイランド
桟橋にひしめく豪華なクルーザー
巨大なリゾートホテルでは
世界からの旅行客が笑いさんざめく
でも
気づいてしまった
この島のすぐ裏手には
スラムで生活する人々
貧困と暴力 犯罪
苦しみが対になっている
そんな楽園が
欲しいんじゃないんだ
「楽園」
#92
空っぽの死に損ないと腐敗物に満ちた世界
血溜まりを足跡で隠しガラクタばかり築く畜生どもの薬園
苦しみのない幸せな生活ができるところ。
私は、あなたの
そういう場所になりたかった。
「楽園」
楽園と呼ばれる土地の存在は知っていた。ゴミ臭くて腐り落ちかけたようなところにいる俺達には、まったくもって縁がない場所だ。
「そうか?」
すると右耳に酷く冷たい声が届いた。それに相槌は打たないけれど背後の大男はそのまま続ける。
「まあたしかにここも酷ェ場所だが、お前らが楽園とやらに縁がねェとまでは……。いいか、死ぬ気ってのは人をなんにでも変えるんだぜ。どこにだって連れてってくれる」
ふたたび無視を決め込んだ。なんと驚くことにこの大男は幽霊で、生きた人間との会話が楽しいらしく、俺が返事をすれば嬉々として語り続ける存在だ。二度ほど経験したのでそう理解している。
それから数時間。俺は黙々と手前のスクラップの山から光沢に特徴のある金属を探し出していく。ついでに大した値打ちはなくとも屋根代くらいにはなる工業品も。
これらは鋭利な欠片も混ざっているから慎重に探らなければいけなかった。作業用の手袋すら買えないし傷口から広がる病気に対処する余裕はない。
「なァ、おい、国の外に出ねェか」
手を止めた。
「外にはもっとデカい国もある。あの楽園なんて目じゃねェほどの楽しい場所だってある。俺がいるんだ。煩いだろうがお前より経験もある。子供ひとりくらい外に出してやれる――」
「いい、いらない」
日も落ちてきて手元が覚束なくなるまで残り少ない時間帯だったから。おおよその収集物のキリが良かったから。
俺はいくつか理由を付けて大男を振り仰いだ。少し色づいた太陽が向こうに透けて見えていて、ああ、こいつって本当に幽霊なんだなと思った。
「いらない。妹も一緒に出られないなら、俺はここで生きて死ぬ。楽園なんてどうでもいい」
「……妹がいるのか」
大男が知らないのも無理はなかった。俺はこの得体の知れない、憑いてくる存在を妹の前に連れて行こうとは思わなかったし、今も思ってない。
だって彼女は、どうしてこんな場所に生きているんだと縋りつき、詰りたくなるほど、美しかった。
まさに掃き溜めに鶴。
近所の頬がこけた奴が言っていた、その言葉が俺の手足の指針だ。飢えた鼠たちに見つかった鶴がどうなるかは考えたくもなかった。そいつは死んだから、もう妹の顔を知る者は俺しかいない。俺だけが妹を守れる。
「お前、兄貴なんだな」
大男は煙草をつけようとして一度固まり、それからやめた。
「じゃあ、妹も連れていく計画を立てなきゃな。正念場だぞ! 死ぬ気で、絶対、やり遂げろよヒーロー」
俺は目を見開く。ぴったり大男の顔の向こうに太陽が見えていた。普段なら眩しくて直視できないそれが幽かに光度を落として、血も滴るいびつな笑顔を明るく発光させている。
「……妹の前でその怖い顔したら許さねえから」
「なんでだ!? 笑顔だったろうが!」
そうか、この大男は俺をヒーローにしてくれるんだ。遠い昔に感じたことのあるような、ないような、そんな懐かしい歓喜が湧き上がってくるようだった。覚えてもいない両親が背中を押してくれるような。まるで普通の家族のような。
そしてそれと同時に恐れと悲しみが身を包む。
笑って手を貸してくれるこの幽霊こそ、死ぬ気でヒーローになったんだなと悟ったからだ。それで死んだんだ。きっと、間違いなく。
どうかこの優しい大男の向かう先が楽園でありますようにと、俺は初めて太陽に祈った。
楽園とは何だろうか?
一人一人が違うものを想像するだろう。
辺りがお菓子で埋め尽くされていたり、漫画やゲームが山ほどあったり、楽園とは人それぞれなのだ。
でも、僕が想像する楽園は......."天国"だ。
お題 楽園
蜘蛛の巣張る、夏の日。
あんな人生、嫌で
こんな人達が、嫌で
どこに行くかも決めずに飛び出した、夏の日。
どれだけ走ったのか。どれだけつまづいたのだろうか。それすらも分からないほどに、ただ走った。
メラメラと自分の体力を炙り出す陽がしつこく追って来るみたいで、余計に走った。
やがて走り終えた先は果てしなく海が続いていて、もう走れなかった。
広く深い海は、二度とこのばしょから出られない事を物語っていた。
楽園は、ないことを
お題
楽園 より
結婚の知らせが届いた。私は式に招待されていない。した、という噂を聞いた。
昔から親に気厳しい躾を受けていた。当時の私にはそこから逃げるという考えさえ持てなかったが、高校の時にあった彼女はそんな私を叱りつけて私に親の言うことを無視して遊ぶ、ということを覚えさせた。
私は買い食いも寄り道も初めてのことで、親から禁止されていた自分の好きな服を買うということも高校生になって初めてやったのだった。
大切な人だった。それなのに、今では原因さえも忘れてしまった些細なことで大喧嘩をして疎遠になった。SNSはブロックされて、共通の友だった人も私から離れていった。
私は彼女のことなんて忘れればいいのに、どうしてもふとした瞬間に彼女と笑いあったあの時を思い出すのだった。
彼女といるその時間が、わたしのとっての自由であり足枷のない楽園だった。
楽園
「おかえりー」
玄関を開けると××がリビングから顔を出す。
「ただいま」
と返事をすると、ぱたぱたとスリッパの音を立てて××が廊下を歩いてきた。靴を脱ぎながら、俺の目は××に釘付けだ。待て、お前が着てるソレ、俺のパーカーだろ。
「ちょうど今、ロールキャベツ出来たから」
「ん」
ぎゅう、と××を抱きしめた。可愛い。可愛すぎる。反則だろ。すーはーと深呼吸を繰り返すと、××が俺の腕の中でくすくす笑う。
「何、疲れてんの?」
疲れてはいる。休日出勤なんて意味分からないことをしてきたのだ。疲れてはいるが、今、この瞬間、全てが吹っ飛んだ。ここは楽園か?
「最高……」
「へ?」
××に頬擦りしながら小さく呟く。口にするつもりではなかったが、出てしまったのなら仕方ない。腕に力を込めて、××の香りで胸をいっぱいにした。
「おい? マジで疲れてんの?」
「疲れてる。××によしよししてもらわないと動けない」
「はあー? っとに……」
顔は見えないけど、××は笑っているんだろう。肩に顔を埋める俺の頭をよしよしと撫でる。嬉しい。癒し。はあー、元気になる。明日は休みだからのんびりするぞ。
そのためにはまず、
「ありがとう。ロールキャベツ楽しみにしてた」
「ん。いっぱい作ったからな」
美味しいご飯を食べよう。パッと顔を上げて、体を離す前に××の額にキスをした。
同じ場所、同じ体験でニコニコ楽しそうにしている人を見る。なんでも楽しめるというのは一種才能だと思っていた。羨ましい。
同じことをしても不満に思う人もいれば、最高の時間だと感じる人もいる。それは好みのようなもので変えられないと思っていた。
けど少しの気の持ちようで変わることなのかもしれない。少しだけの楽しさでも「楽しかった!」と笑える人ならその瞬間は「最高の時間」となり、少しの不満が殊更目につく人なら「最低の時間」になる。
できれば私は前者のような人になりたい。
「楽園」
花が咲いている、
青い小ぶりな花が見渡す限りに広がっている。
ここは何処だろうか
空を見上げれば青みがかった白い雲に覆われている。
曇っているようだが何故か晴天の下のような明るさがある。
足元に何かが触れて見てみればそこには猫がいた。
マーキングするようにすりすりと顔を己のスラックスに擦り付け体毛が静電気によってへばり付く。
思わずしゃがみこんで頭を撫でてやれば足元で転がる。
花を潰しながらごろごろするのをあーあとか言いながら撫でているといつの間にか十匹ほどの色んな猫に囲まれている。
若干の恐怖を覚えたものの特に害は無く、ただ得体の知れない花畑にただの猫が沢山居るだけだ。
一体ここはなんなのかと思って周りに居た猫達を撫で回して転がしていれば少し離れた場所に木製の看板が立っていた。
猫達を避けて近寄ってみれば
【疲れた猫好きの人間用待機所】と書かれており
待機所????と首を傾げて居ると
ピンポンパンポーン
と謎のチャイムが空間に鳴り響く。
《来世の準備が出来ましたのでエントランスまで転送します》
来世?エントランス?とか思う間もなく気がつくと猫も花畑もなく真っ白い待ち合い室みたいな場所に立っていた。
柔和な笑みの人が来て受付の椅子に座らされて
死因とか来世の手続きみたいな話をされて、
そういや俺死んだんだっけとか来世も人間かよとか思うことは色々あったが言いたい事はただ一つ
「戻して、もう来世とか良いから!さっきの楽園に!!」
お題 楽園
きょう。晴れ 時々くもり。
朝から早起きして片道2時間、隣のとなり街まで。
ご機嫌でいい感じの洋楽を聴きながら運転。
(英語の歌詞はもちろん意味分かんない)
どこに行っても、ひと、ヒト、人に酔った。
あああああああ疲れたな。布団に入る。
楽園って聞いたら楽園ベイベーしか思い浮かばない。
ベイビーもいいけど、ベイベーって可愛い。
昔片想いしてた人が車の中でよくRIP流してたなぁ。
どきどきだったな。
この人の世代だとRIPが青春だったんだなぁ。
学生だった頃のこの人は、どんな恋愛してたのかなぁとか。
大人しく窓眺めながら、運転してる彼の横顔を盗み見て、内心にやにや想像するのが好きだった。
はー今聴いても最高。たまんねぇな
見渡す限りの草原へ、男女が手を取り合って走っていく。
黄金の太陽のもと、去っていく背をいつまでも眺めていた。
これで何組目だろうか。
造っても造っても、アレらは外に行ってしまう。
辛く苦しいばかりの外に憧れて、何も知らずに出ていくのだ。心底嬉しそうに。
直ぐに死ぬだろう、が私には既に関係のないことだ。
また、造るとするか。
次こそは、と儚い祈りを込めて。
テーマ「楽園」
『楽園』
レスリー・チャンという俳優さんをご存知でしょうか?
もう20年近く前にお空に帰った、香港の役者さんであり、偉大な歌手でした。
『張国栄』もしくは『張國榮』と漢字なら書きますが、その頃はまだ香港は英国領で英名をつけている人がほとんどでした。
彼の場合はレスリー。
段々と年齢を重ね、香港を代表するアーティストになってからは『哥哥』、香港語の兄貴というあだ名でも呼ばれていました。
繊細かと思えば鋼鉄の心臓ぶりを見せたり、陽気でハイテンションな人柄と見せて実は思慮深い落ち着いた人だったり、とても綺麗な笑顔が天使にも悪魔にも見えたり。
とても、とてもアンビバレンツな人。
本当にもう、レスリーを好きになればなるほど、その実態は見えなくなっていって、ずっと翻弄される推し活でした。
親に言わせれば、小さなマンションぐらい買えたかもらしいのですが、レスリーと共に歩んだ、レスリーと同じ時代を生きれた、何なら香港で、或いは来日してくれた東京や大阪の地で同じ空気が吸えた、もうそれだけで私の人生は満ち足りています。
いえ。
正直、何年かはレスリーの姿を見るのが辛い時期もあったんです。
でももう、それも乗り越えて、やっぱり今でもレスリー・チャンが好き!
彼の生きた証の、映画やコンサートの映像を見てるだけで幸せ!
レスリー・チャンが居なくなったショックは大きかったけど、じゃあレスリー・チャンを知らないままの人生を選びますか?と聞かれれば、輪廻転生があるのなら、何度ショックを受けてもレスリーと同じ時代を生きたい!と言いきれます。
昨年は、彼が出演した『男たちの挽歌』が4Kになったり、WKW4Kといって映画監督のウォン・カーウァイの作品が4Kになって、レスリーの『ブエノスアイレス』が上映されたりしました。
あまりに好評で、4Kになっていないのに『欲望の翼』や『楽園の瑕』なんかも急遽上映されました。
ここまで長く読んでくださって、どこに『楽園』のタイトルと関係あるんだと思っていられた方、お待たせしました。
ここでやっと楽園繋がりの映画『楽園の瑕』です。
この映画、レスリーの美しさが割と封印されていて、ヒゲなんかもはやしちゃったり、衣装も地味めなんですけど、一瞬見せる戦いの時のおろした長い髪が風になびく様や、女優さんとの絡みの艶っぽさや、本当にもう『ありがたや〜!』なシーンを繰り返し見てしまう大好きな映画の1つです。
個人的に、大オススメ映画なので、このGW、お時間あったら是非!
なんて、結局推し活しちゃいましたね。
その国はロボットの楽園と呼ばれていたが、我々人型アンドロイドは異端者だった。
人に使役されるのを拒んだものたちが築いた楽園は、人を模した我々が暮らすには不便な場所であったのだ。
「君たちに売れるようなものなんてない!」
今日もまた小型ロボットたちに威嚇された私は、すこすごと店を出る。
我々のような中型に位置するロボットは、この国では満足に食事だってできない。人が乗り込むような大型のロボットには、それ用の補給場所が用意されている。人が入れないような場所で活躍する小型ロボットには、小型用の補給場所がある。人と同じサイズの我々だけが、いつも路頭に迷う。
「困ったなぁ」
だから私は今日も細道を慎重に歩く。大型用の道は怖くて歩けたものではないから、小型用の道に少しだけお邪魔することになる。これが彼らとしては気に食わないらしい。
「本当に困った」
私のエネルギー残量は三メモリほど。もうそろそろ省エネモードに入ってしまう。いつもはたまに出くわす心優しい小型ロボットに助けてもらっているが、今日は運が悪いらしい。
どうやら本当にそらそろまずいようだ。視覚の歪みを認知した私は足を止めた。
前方に何か人型のようなものが見えるが、この国でアンドロイドに出会ったことはない。まさか同胞? いや、まさか。
私は最後の力を振り絞るような気持ちで、視覚へとエネルギーを集中させた。
——違う。
そうして私は愕然とした。あれはアンドロイドではない。そう、あれは、人だ。人間だ。
ようこそ!何にも縛られない
あなただけの楽園へ!
ここではあなたの望む世界が
待っていますよ!
どんなことでも思い通り!
何にも縛られない
素敵な世界をお楽しみください!
…そう
その裏で私達や
それ以外の人たちが貴方だけのために
苦しんでいるとも知らずに。
浮かれていればいいさ。
世の中のことなぁんにも知らない
子供のようにね。
–楽園–